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閑話
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連れか…。その連れとやらを見れば目が合う。直ぐに視線外されたが、俺が誰かはわかたっていたようだ。ユーゴと話している間に感じていた視線は彼女からのものだとわかればいい。悪意なき視線だから放っておいたのだから。
婚約者候補が親族でもない婚約者のいる男と出歩いていることで、自身が候補から外れるということを考えられないのか、それとも、元から候補になどなりたくなかったのか。
どちらにせよ、彼女とは縁がなかったと考えるべきだな。
ユーゴが彼女をエスコートしようと、席から立たせたときに彼女は何故か会釈をしてくる。
その姿をぼんやりと眺めていると、ドンと音が聞こえる。ユーゴ達が一瞬だけ此方を見たがすぐ退店すべく出口に向かった。
それにしても、デートにしては時間が短すぎる。そのことを考えると、ユーゴと彼女は何がしたかったのだろう。
彼女に悪意がなくとも、ユーゴは妹を不安にさせる行動ばかりをとっている。それが、もし仕事として請け負っていることならば、話すことは出来なくとも誠意ある行動はとれるはずだ。それを怠っているいまの彼奴に妹を任せたくないと思ってしまうのは兄心というものだろうか。
考えていると、視界にクリスが映り込み最高の笑みを浮かべながら横に座らせた妹を口説き始めている。だが、ユーゴのことで頭が一杯な妹には効果がないようだ。ざまあみろ。婚約者がいるのだから大人しくしていて欲しい。
いきなり給仕を呼ぶベルを鳴らし始め「私、ここで働きたいのです」と妹が告げる。その発言に驚いてしまったが、いい案を思い付いたと言わんばかりの能天気な声だったから呆れてしまう。
兄として妹の自立を喜ぶべきなのかと思いながらも、行儀見習いをしたいなら父に紹介してもらえばいいとは思うが、この単純な妹が行儀見習いなど務まるはずもない。
「おい、アンジュ」
声を掛けているのに、能天気馬鹿は気づきもせずに身体をユサユサと横に揺らす。その姿はとても可愛らしいが、クリスが肩を抱き寄せたことにより終了してしまった。
勝手に妹に触れるとはどういうことだ。それにしても、さっきからクリスの笑顔が張り付きっぱなしで正直不気味だ。というよりも、少し苛ついているようだ。
そのことに気付かない妹は、少し頬を染めている。笑顔のままでいるクリスが不気味で「アン、君はいま無茶なことを考えていただろう」と吹雪が吹き荒れるような雰囲気で話すものだから、妹は慌てて否定していたが、完全に目が泳いでいる。王子相手に嘘吐いてもすぐにわかってしまうということに何故気づかない。
そして、丁寧にこの場についての説明をされ「男爵、子爵、裕福な商家の者が行儀見習いの場として提供されているということを知らないわけではないだろう」と言われた瞬間の間抜け顔は最高に可愛らしい。
きょとんとした顔から「初めて知った」とわかる。何でも、顔に出るから可愛いな。
不意に妹と目が合うから、真顔になれば妹の横にいるクリスが口うるさい家庭教師みたいに注意している。
そして、妹に対して言ってはいけないあの場所の名を簡単に出す。
「そんなにもやりたいと言うのなら王宮に来ればいい」
その言葉に一瞬だがピクリと肩が跳ねる。それを見逃すほど馬鹿ではない。
きっと、思い出してしまったのだろう。
妹にとって、思い出したくない記憶。王城の茶会でシルビア王女に言われた言葉を。
あの王女は俺もどちらかと言えば好かない。クリスの異母妹だが、性格は最悪だ。ジェード殿下やクリスと同じ血を求め、彼らの従兄弟であるユーゴを手に入れようとする。そして何より、自分が美しいと思ったものは手に入れないと気が済まない性格をしているということだ。
いまの王家に姫はシルビア王女しかいない。そのため、王に甘やかされて育った。それが原因とは言わないが、ユーゴを手に入れることが出来るのは当たり前だと思っている。
そのせいで、妹は王宮が苦手になり親しい友人との茶会にしか参加しないのだから。
婚約者候補が親族でもない婚約者のいる男と出歩いていることで、自身が候補から外れるということを考えられないのか、それとも、元から候補になどなりたくなかったのか。
どちらにせよ、彼女とは縁がなかったと考えるべきだな。
ユーゴが彼女をエスコートしようと、席から立たせたときに彼女は何故か会釈をしてくる。
その姿をぼんやりと眺めていると、ドンと音が聞こえる。ユーゴ達が一瞬だけ此方を見たがすぐ退店すべく出口に向かった。
それにしても、デートにしては時間が短すぎる。そのことを考えると、ユーゴと彼女は何がしたかったのだろう。
彼女に悪意がなくとも、ユーゴは妹を不安にさせる行動ばかりをとっている。それが、もし仕事として請け負っていることならば、話すことは出来なくとも誠意ある行動はとれるはずだ。それを怠っているいまの彼奴に妹を任せたくないと思ってしまうのは兄心というものだろうか。
考えていると、視界にクリスが映り込み最高の笑みを浮かべながら横に座らせた妹を口説き始めている。だが、ユーゴのことで頭が一杯な妹には効果がないようだ。ざまあみろ。婚約者がいるのだから大人しくしていて欲しい。
いきなり給仕を呼ぶベルを鳴らし始め「私、ここで働きたいのです」と妹が告げる。その発言に驚いてしまったが、いい案を思い付いたと言わんばかりの能天気な声だったから呆れてしまう。
兄として妹の自立を喜ぶべきなのかと思いながらも、行儀見習いをしたいなら父に紹介してもらえばいいとは思うが、この単純な妹が行儀見習いなど務まるはずもない。
「おい、アンジュ」
声を掛けているのに、能天気馬鹿は気づきもせずに身体をユサユサと横に揺らす。その姿はとても可愛らしいが、クリスが肩を抱き寄せたことにより終了してしまった。
勝手に妹に触れるとはどういうことだ。それにしても、さっきからクリスの笑顔が張り付きっぱなしで正直不気味だ。というよりも、少し苛ついているようだ。
そのことに気付かない妹は、少し頬を染めている。笑顔のままでいるクリスが不気味で「アン、君はいま無茶なことを考えていただろう」と吹雪が吹き荒れるような雰囲気で話すものだから、妹は慌てて否定していたが、完全に目が泳いでいる。王子相手に嘘吐いてもすぐにわかってしまうということに何故気づかない。
そして、丁寧にこの場についての説明をされ「男爵、子爵、裕福な商家の者が行儀見習いの場として提供されているということを知らないわけではないだろう」と言われた瞬間の間抜け顔は最高に可愛らしい。
きょとんとした顔から「初めて知った」とわかる。何でも、顔に出るから可愛いな。
不意に妹と目が合うから、真顔になれば妹の横にいるクリスが口うるさい家庭教師みたいに注意している。
そして、妹に対して言ってはいけないあの場所の名を簡単に出す。
「そんなにもやりたいと言うのなら王宮に来ればいい」
その言葉に一瞬だがピクリと肩が跳ねる。それを見逃すほど馬鹿ではない。
きっと、思い出してしまったのだろう。
妹にとって、思い出したくない記憶。王城の茶会でシルビア王女に言われた言葉を。
あの王女は俺もどちらかと言えば好かない。クリスの異母妹だが、性格は最悪だ。ジェード殿下やクリスと同じ血を求め、彼らの従兄弟であるユーゴを手に入れようとする。そして何より、自分が美しいと思ったものは手に入れないと気が済まない性格をしているということだ。
いまの王家に姫はシルビア王女しかいない。そのため、王に甘やかされて育った。それが原因とは言わないが、ユーゴを手に入れることが出来るのは当たり前だと思っている。
そのせいで、妹は王宮が苦手になり親しい友人との茶会にしか参加しないのだから。
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