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2章 アルバイト開始
開店前にもいろいろあるのですね
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突き刺さる視線は、お茶会のときのような悪意あるものではなく、興味があるといったものだった。
それに、気付くことが出来たのは、この朝礼が終わってからなのだけれど。
グレン樣とユーゴのお姉様であるオリヴィア樣に挟まれた私は正に借りてきた猫のように大人しい…ではなく、萎縮してしまう。
横で「それでは、朝礼をはじめます」と告げられる。朝礼が何なのかわからないが、大人しく隣に立っていることにした。
挨拶からはじまり、つらつらと日替わりの紅茶、調達が遅れている食材について話されるが、私としては何がグラッチェにあるのかわかっていないので呪文のように聞こえてしまう。
現実逃避に近い形で、ぼーっとしながら話を聞いていたら、突然「では、自己紹介をお願いします」と言われるが、心の準備など出来ていない。
「アンジュ・グレ……ひゃ」と名前を言おうとしたら、冷たい感触が首を襲う。
何だろうと思い、後ろを振り向こうとしたら冷たい感触の主であろうオリヴィア様が「家名は禁止」と耳元で囁く。その囁きにより顔に熱が…というよりも、手で触られたことにより変な声をあげてしまったことにより、顔が赤くなる。
「アンジュです。不束者ですがよろしくお願いします」
声が徐々に小さくなるが、パチパチと拍手は聞こえる。だけれど、「グレってさっき言いかけていたのは」と、言いかけた言葉が気になっている人もいるようだ。
「ああ、そうです。皆さんに言い忘れましたが、ここにいるアンジュは私の遠縁に当たりますが貴族でなく、裕福な家の者です。いままで、給仕される側でしたので、その点を踏まえて教育係の方や他の方は指導をお願いします」
私が犯した失態を、グレン様の苦しい言い訳でどうにか乗り切ろうとする。その言葉を信じる者は何人いるかはわからない。
「皆さん、アンジュちゃんのことよろしく頼みますよ。あまり前にでることがないので、グレンの親戚に何かあったらと思うと…ね」
オリヴィア様の言葉を聞き、頷く者が多い。ここはオリヴィア様が実権を握っているようだ。
あまり前にでないという言葉に引っ掛かりを覚えていると、ごほんと、咳払いが聞こえる。グレン様は、そろそろこの話を終わりにしたいのだろう。
「では、皆さん。本日もご来店いただく方々に粗相がないようにお願いします。何かあれば、オリヴィアに伝えてください。では、朝礼を終わりにします。開店準備に取り掛かってください」
朝礼が終わり、解散となった。開店まであと30分らしい。
それまで何をしていいのかわからないでいると、グレン様に「殿下の推薦状を頂いても」と声を掛けられる。グレン様が屋敷に持ってきたものを、再びグレン様に渡すのは妙だが、言われたことなので従うしかない。
「鞄の中に置いてきてしまったので、一度取に戻ります」と告げて、更衣室に向かう。
鞄の奥深くに入れられた推薦状を持ち出し、グレン様に渡そうと思ったが先程朝礼していた場所にいないのできょろきょろと辺りを見回してしまう。
「きょとんとした顔をしてどうしたの?」
前からやって来る男装の麗人テイラー様に声を掛けられたので、正直に「グレン様に呼ばれたのですが、姿が見えなくて…」と言えば、「事務室の方にいるよ。案内してあげるから、お手をどうぞ。可憐なレディ」と言われるので、差し出された手に手を重ねる。
エスコートしてもらいながら、連れて行かれた場所は父の書斎の様な場所だった。
そこにはグレン様が席に着き、オリヴィア様が給仕している姿があった。
それに、気付くことが出来たのは、この朝礼が終わってからなのだけれど。
グレン樣とユーゴのお姉様であるオリヴィア樣に挟まれた私は正に借りてきた猫のように大人しい…ではなく、萎縮してしまう。
横で「それでは、朝礼をはじめます」と告げられる。朝礼が何なのかわからないが、大人しく隣に立っていることにした。
挨拶からはじまり、つらつらと日替わりの紅茶、調達が遅れている食材について話されるが、私としては何がグラッチェにあるのかわかっていないので呪文のように聞こえてしまう。
現実逃避に近い形で、ぼーっとしながら話を聞いていたら、突然「では、自己紹介をお願いします」と言われるが、心の準備など出来ていない。
「アンジュ・グレ……ひゃ」と名前を言おうとしたら、冷たい感触が首を襲う。
何だろうと思い、後ろを振り向こうとしたら冷たい感触の主であろうオリヴィア様が「家名は禁止」と耳元で囁く。その囁きにより顔に熱が…というよりも、手で触られたことにより変な声をあげてしまったことにより、顔が赤くなる。
「アンジュです。不束者ですがよろしくお願いします」
声が徐々に小さくなるが、パチパチと拍手は聞こえる。だけれど、「グレってさっき言いかけていたのは」と、言いかけた言葉が気になっている人もいるようだ。
「ああ、そうです。皆さんに言い忘れましたが、ここにいるアンジュは私の遠縁に当たりますが貴族でなく、裕福な家の者です。いままで、給仕される側でしたので、その点を踏まえて教育係の方や他の方は指導をお願いします」
私が犯した失態を、グレン様の苦しい言い訳でどうにか乗り切ろうとする。その言葉を信じる者は何人いるかはわからない。
「皆さん、アンジュちゃんのことよろしく頼みますよ。あまり前にでることがないので、グレンの親戚に何かあったらと思うと…ね」
オリヴィア様の言葉を聞き、頷く者が多い。ここはオリヴィア様が実権を握っているようだ。
あまり前にでないという言葉に引っ掛かりを覚えていると、ごほんと、咳払いが聞こえる。グレン様は、そろそろこの話を終わりにしたいのだろう。
「では、皆さん。本日もご来店いただく方々に粗相がないようにお願いします。何かあれば、オリヴィアに伝えてください。では、朝礼を終わりにします。開店準備に取り掛かってください」
朝礼が終わり、解散となった。開店まであと30分らしい。
それまで何をしていいのかわからないでいると、グレン様に「殿下の推薦状を頂いても」と声を掛けられる。グレン様が屋敷に持ってきたものを、再びグレン様に渡すのは妙だが、言われたことなので従うしかない。
「鞄の中に置いてきてしまったので、一度取に戻ります」と告げて、更衣室に向かう。
鞄の奥深くに入れられた推薦状を持ち出し、グレン様に渡そうと思ったが先程朝礼していた場所にいないのできょろきょろと辺りを見回してしまう。
「きょとんとした顔をしてどうしたの?」
前からやって来る男装の麗人テイラー様に声を掛けられたので、正直に「グレン様に呼ばれたのですが、姿が見えなくて…」と言えば、「事務室の方にいるよ。案内してあげるから、お手をどうぞ。可憐なレディ」と言われるので、差し出された手に手を重ねる。
エスコートしてもらいながら、連れて行かれた場所は父の書斎の様な場所だった。
そこにはグレン様が席に着き、オリヴィア様が給仕している姿があった。
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