伯爵令嬢のアルバイト事情ー婚約者様が疑わしいですー

柚木

文字の大きさ
30 / 77
2章 アルバイト開始

開店前にもいろいろあるのですね

しおりを挟む
 突き刺さる視線は、お茶会のときのような悪意あるものではなく、興味があるといったものだった。
 それに、気付くことが出来たのは、この朝礼が終わってからなのだけれど。
 グレン樣とユーゴのお姉様であるオリヴィア樣に挟まれた私は正に借りてきた猫のように大人しい…ではなく、萎縮してしまう。
 横で「それでは、朝礼をはじめます」と告げられる。朝礼が何なのかわからないが、大人しく隣に立っていることにした。
 挨拶からはじまり、つらつらと日替わりの紅茶、調達が遅れている食材について話されるが、私としては何がグラッチェにあるのかわかっていないので呪文のように聞こえてしまう。
 現実逃避に近い形で、ぼーっとしながら話を聞いていたら、突然「では、自己紹介をお願いします」と言われるが、心の準備など出来ていない。
「アンジュ・グレ……ひゃ」と名前を言おうとしたら、冷たい感触が首を襲う。
 何だろうと思い、後ろを振り向こうとしたら冷たい感触の主であろうオリヴィア様が「家名は禁止」と耳元で囁く。その囁きにより顔に熱が…というよりも、手で触られたことにより変な声をあげてしまったことにより、顔が赤くなる。
「アンジュです。不束者ですがよろしくお願いします」
 声が徐々に小さくなるが、パチパチと拍手は聞こえる。だけれど、「グレってさっき言いかけていたのは」と、言いかけた言葉が気になっている人もいるようだ。
「ああ、そうです。皆さんに言い忘れましたが、ここにいるアンジュはに当たりますがの者です。いままで、給仕される側でしたので、その点を踏まえて教育係の方や他の方は指導をお願いします」
 私が犯した失態を、グレン様の苦しい言い訳フォローでどうにか乗り切ろうとする。その言葉を信じる者は何人いるかはわからない。
「皆さん、アンジュちゃんのことよろしく頼みますよ。あまり前にでることがないので、グレンの親戚に何かあったらと思うと…ね」
 オリヴィア様の言葉を聞き、頷く者が多い。ここはオリヴィア様が実権を握っているようだ。
 あまり前にでないという言葉に引っ掛かりを覚えていると、ごほんと、咳払いが聞こえる。グレン様は、そろそろこの話を終わりにしたいのだろう。
「では、皆さん。本日もご来店いただく方々に粗相がないようにお願いします。何かあれば、オリヴィアに伝えてください。では、朝礼を終わりにします。開店準備に取り掛かってください」
 朝礼が終わり、解散となった。開店まであと30分らしい。
 それまで何をしていいのかわからないでいると、グレン様に「殿下の推薦状を頂いても」と声を掛けられる。グレン様が屋敷に持ってきたものを、再びグレン様に渡すのは妙だが、言われたことなので従うしかない。
「鞄の中に置いてきてしまったので、一度取に戻ります」と告げて、更衣室に向かう。
 鞄の奥深くに入れられた推薦状を持ち出し、グレン様に渡そうと思ったが先程朝礼していた場所にいないのできょろきょろと辺りを見回してしまう。
「きょとんとした顔をしてどうしたの?」
 前からやって来る男装の麗人テイラー様に声を掛けられたので、正直に「グレン様に呼ばれたのですが、姿が見えなくて…」と言えば、「事務室の方にいるよ。案内してあげるから、お手をどうぞ。可憐なレディ」と言われるので、差し出された手に手を重ねる。
 エスコートしてもらいながら、連れて行かれた場所は父の書斎の様な場所だった。
 そこにはグレン様が席に着き、オリヴィア様が給仕している姿があった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

白い結婚のはずでしたが、幼馴染の夫が離してくれません!

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。 同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。 おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。 幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。 しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。 実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。 それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?

処理中です...