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2章 アルバイト開始
隠れ部屋にて(ニコライ視点)
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隠れ部屋という名の休憩室に向かえば案の定、ソファーで寛いでいる主君がいる。テーブルの上にあるカップ数を見れば先程まで、ここには他に2名いたようだ。きっと、ユーゴくんとアンジュちゃんだろう。
ここに来る途中に廊下でデートに誘っているところを見掛けた。彼が彼女を、この城内で連れ込む場所といえばここだと思って、書類確認のためにやって来たのはいいけど、ふらりと消えた主君を見つけ出せたのは、いい収穫だ。
嫌そうな顔をすると思って、入室していくが機嫌がよさそうな顔をしていた。
「ここから、そんなに離れていない廊下でユーゴくんとアンジュちゃんを見たんだけどね。ジェードちょっと意地悪しすぎじゃない?」
この部屋から追い出した帳本人は、ソファーで寛ぎ、まだ湯気が出ている紅茶を楽しんでいる。そろそろ、温くなりそうだが。
皆、僕のことを敵に回したくないと言うが、にこにこしている此奴が1番胡散臭いというか、敵に回したくない男だ。
態度に出さないように、いろいろと此奴は掌握術を学んだと思う。まだ、完成していないだろうが、大抵の奴らは騙せるだろう。
先程までユーゴが座っていただろうイスに掛けながら、持ち出してきた書類に目を通し出す。
「ここでするなら、執務室でしろ」
「執務室でもいいんだけど、グレンを弄って遊んでたら怒られちゃってね」
「わかっていてやるな。彼奴が不憫で仕方がない」
「僕からすれば、ユーゴくんが不憫で仕方がないな」
そろそろ、冷めたであろう紅茶を含みなが眉をひそめるジェードをじーっと見つめてみる。
視線に気づいたのか、更に皺を寄せるものだから笑ってしまう。
「おまえは、人を不愉快にするために存在するのか?」
「そうではないよ。むしろ、君たちを導くくらいの大きな存在でいるつもりだよ」
手に持っていた隣国に関する書類をジェードに見えるように差し出す。
こう見えてもきちんと書類には目を通しているのだから。
「この国で、彼奴はやっていけると思うか」
「それは、無理でしょ。この国に隠してオリヴィア嬢に嫁いでもらった方が、この国にとっても向こうにとってもいいかな」
「侯爵家は何と言うだろうか」
わかりきっているだろうに。別に王妃様の出自がハミルトン家であって何代前の王族の血を引いているのかはわからない。王家と血の繋がりが近い公爵家には、姫がいない。それなのに、隣国と数代前に交わした約束―――血の交わりを深くする。すなわち、強固な関係を築いていく上には、王族同士の婚姻が必要ということだ。
いま、姫として君臨するシルビア王女では隣国ではうまくいかないだろう。それも、陛下が唯一の女児として甘やかした結果だ。
いまになって、そんなことで頭を悩ませる事態になるとは。
「シルビアにもアンジュ嬢のような可愛らしさがあればな」
「無理でしょ。あの方は、あなたたちに近づきたい。そう思っていられる。そのため、ユーゴくんを求めている。いえ、実の兄に恋をしているとでもいいましょうか」
「そのような、世迷言が聞きたくない」
本当に不愉快そうな顔をする。そもそも、シルビア王女はジェードのこと苦手としているから恋などしない。
それでも、ジェードに似たユーゴくんには恋心を持っている。あのふたりは幼馴染という枠にはめればしれまでだが、その枠からユーゴくんが抜け出したことからシルビア王女の執着がはじまった。彼女からしたら、自身の遊び相手を盗まれたように感じたのだろう。
「アンジュちゃんの心が壊れなければいいね」
所詮、他人だから何でも言える。でも、彼女がカロリーナの友人だ。
だから、出来るだけ彼らの支援はするつもりだ。彼らで遊ぼうとする僕の主君が楽しそうにしていても。
ここに来る途中に廊下でデートに誘っているところを見掛けた。彼が彼女を、この城内で連れ込む場所といえばここだと思って、書類確認のためにやって来たのはいいけど、ふらりと消えた主君を見つけ出せたのは、いい収穫だ。
嫌そうな顔をすると思って、入室していくが機嫌がよさそうな顔をしていた。
「ここから、そんなに離れていない廊下でユーゴくんとアンジュちゃんを見たんだけどね。ジェードちょっと意地悪しすぎじゃない?」
この部屋から追い出した帳本人は、ソファーで寛ぎ、まだ湯気が出ている紅茶を楽しんでいる。そろそろ、温くなりそうだが。
皆、僕のことを敵に回したくないと言うが、にこにこしている此奴が1番胡散臭いというか、敵に回したくない男だ。
態度に出さないように、いろいろと此奴は掌握術を学んだと思う。まだ、完成していないだろうが、大抵の奴らは騙せるだろう。
先程までユーゴが座っていただろうイスに掛けながら、持ち出してきた書類に目を通し出す。
「ここでするなら、執務室でしろ」
「執務室でもいいんだけど、グレンを弄って遊んでたら怒られちゃってね」
「わかっていてやるな。彼奴が不憫で仕方がない」
「僕からすれば、ユーゴくんが不憫で仕方がないな」
そろそろ、冷めたであろう紅茶を含みなが眉をひそめるジェードをじーっと見つめてみる。
視線に気づいたのか、更に皺を寄せるものだから笑ってしまう。
「おまえは、人を不愉快にするために存在するのか?」
「そうではないよ。むしろ、君たちを導くくらいの大きな存在でいるつもりだよ」
手に持っていた隣国に関する書類をジェードに見えるように差し出す。
こう見えてもきちんと書類には目を通しているのだから。
「この国で、彼奴はやっていけると思うか」
「それは、無理でしょ。この国に隠してオリヴィア嬢に嫁いでもらった方が、この国にとっても向こうにとってもいいかな」
「侯爵家は何と言うだろうか」
わかりきっているだろうに。別に王妃様の出自がハミルトン家であって何代前の王族の血を引いているのかはわからない。王家と血の繋がりが近い公爵家には、姫がいない。それなのに、隣国と数代前に交わした約束―――血の交わりを深くする。すなわち、強固な関係を築いていく上には、王族同士の婚姻が必要ということだ。
いま、姫として君臨するシルビア王女では隣国ではうまくいかないだろう。それも、陛下が唯一の女児として甘やかした結果だ。
いまになって、そんなことで頭を悩ませる事態になるとは。
「シルビアにもアンジュ嬢のような可愛らしさがあればな」
「無理でしょ。あの方は、あなたたちに近づきたい。そう思っていられる。そのため、ユーゴくんを求めている。いえ、実の兄に恋をしているとでもいいましょうか」
「そのような、世迷言が聞きたくない」
本当に不愉快そうな顔をする。そもそも、シルビア王女はジェードのこと苦手としているから恋などしない。
それでも、ジェードに似たユーゴくんには恋心を持っている。あのふたりは幼馴染という枠にはめればしれまでだが、その枠からユーゴくんが抜け出したことからシルビア王女の執着がはじまった。彼女からしたら、自身の遊び相手を盗まれたように感じたのだろう。
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