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2章 アルバイト開始
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昨日、クリスの執務室にいきなり現れたジェード殿下とニコライさんに嫌な予感はしていた。
何か新しい仕事を割り当てられるのではないかと、身構える。前回の外交案件は、なかなか大変だった。隣国の来賓が入国する1週間前に資料を纏めろと、いきなり命じてくるものだから、泊りがけでアンに会えない日々を過ごした。そのお陰で、資料を纏めるコツは掴んだ気がする。
今回はジェード殿下だけじゃなくてニコライさんがいるから何の案件を持ち込んで来たのか気になってしまう。どうせ、ろくなものではないだろうが。
それにしても何で、この人までここにいるんだ。内心で溜息を吐き出す。
クリスはニコライさんが苦手なのか「執務中ですので、お帰りください」と言い放つ。
先程まで、休憩をしていた奴がよく言うなと思っていたが、そこは既に見抜かれているようだ。
「殿下もそう言わない下さいよ。折角、兄君であるジェードが弟の様子を見にきたのだから。それに、ケイくん。厄介なのが来たとか思ったでしょ。表情には出ていないけれど、空気に現れているよ。まだまだ青いな」
「おい」
「でも、そういうところ好きだな。初々しいって言うのかな?でも、もう近衛に任命されて何年経ったのかな。クリストファー殿下が外交時に君を同伴させたときに、どのように思われるか考えた方がいい」
ジェード殿下が制止しようとするけれど、その言葉を遮ってまで話を続けることが出来るのは、この場ではニコライさんしかいない。
「ニコライ。少し、黙れ」
「僕の主はご機嫌斜めだな。でも、君の主もそれは同じか」
やれやれと肩を竦めながら、ジェード殿下に主導権を返す。この場に自分がいないかのように振舞おうとする。その身代わりに感心してしまう。
「クリス。明日から始まる舞台は知っているな」
「ええ、クリッブス劇場の花の妖精ですよね。それがどうしました?」
困惑した表情のクリスが一瞬だけ、俺を見てくる。合っているよな?と、助けを求められても困る。
何の舞台をするなど、俺が知っているわけもない。というか、興味がない。
「公演初日に王族が招待されているのは知っているな」
「毎年、ひとり出向くことになっていますので。今年は兄上が行くのは存じていますが」
「俺の代わりにお前が行け」
突然、何を言い出しているのだ。明日の話なのに、何故いまここで急変更をしようとするのだ。
「そ、それはどういうことですか」
クリスが狼狽えるのもわかる。クリスが行くのは来期だと決まっていた。それをこの方は覆そうとしているからだ。しかも、あのどうしようもない恋愛物を急に明日観て来いとは、心の準備が出来るはずもない。
「それは、ジェードが言いにくいから言うとね。ちょっと、ユーゴ君に意地悪しちゃったから合わせる顔がないんだよ。だから、代わりに行ってくれると嬉しいかなって」
どういうことだ?ユーゴに意地悪って…いつもしているではないかと思っているが、あれは可愛がっているとも言える。本人は、すごく嫌がっているが。
「ですが、明日ケイは非番で護衛が他の者です」
「なら、他の者を付ければいい。お前の護衛は彼以外にいないのか」
「そ、それは…」
クリスの悪い癖だ。外出する際に、何故か俺を指名する。それでは、他の者に示しがつかない。
実力だと言えばいいが、俺とクリスが親しい学友であることを知らない者はいない。それに、嫉妬する者さえいる。
ただ、この癖だけはどうしても治さなくてはいけない。俺を含め、あまり近しい者に依存するのはよくない結果を招く。
「ケイくん以外にも優秀な者は多いでしょ。贔屓はよくないよ。まあ、急には無理だと思うからケイくんには、その舞台の券を2枚あげるよ。いま、有力な婚約者候補のジェーン嬢でも誘って行けば、きっと彼女も喜ぶでしょ。それに、休暇は大事だからね」
ニコライさんの意見は最もだが、何故ジェーン嬢が有力な婚約者候補なのだ。というか、何故彼女が婚約者候補に挙がっていることを、この人は知っているんだ。
何か新しい仕事を割り当てられるのではないかと、身構える。前回の外交案件は、なかなか大変だった。隣国の来賓が入国する1週間前に資料を纏めろと、いきなり命じてくるものだから、泊りがけでアンに会えない日々を過ごした。そのお陰で、資料を纏めるコツは掴んだ気がする。
今回はジェード殿下だけじゃなくてニコライさんがいるから何の案件を持ち込んで来たのか気になってしまう。どうせ、ろくなものではないだろうが。
それにしても何で、この人までここにいるんだ。内心で溜息を吐き出す。
クリスはニコライさんが苦手なのか「執務中ですので、お帰りください」と言い放つ。
先程まで、休憩をしていた奴がよく言うなと思っていたが、そこは既に見抜かれているようだ。
「殿下もそう言わない下さいよ。折角、兄君であるジェードが弟の様子を見にきたのだから。それに、ケイくん。厄介なのが来たとか思ったでしょ。表情には出ていないけれど、空気に現れているよ。まだまだ青いな」
「おい」
「でも、そういうところ好きだな。初々しいって言うのかな?でも、もう近衛に任命されて何年経ったのかな。クリストファー殿下が外交時に君を同伴させたときに、どのように思われるか考えた方がいい」
ジェード殿下が制止しようとするけれど、その言葉を遮ってまで話を続けることが出来るのは、この場ではニコライさんしかいない。
「ニコライ。少し、黙れ」
「僕の主はご機嫌斜めだな。でも、君の主もそれは同じか」
やれやれと肩を竦めながら、ジェード殿下に主導権を返す。この場に自分がいないかのように振舞おうとする。その身代わりに感心してしまう。
「クリス。明日から始まる舞台は知っているな」
「ええ、クリッブス劇場の花の妖精ですよね。それがどうしました?」
困惑した表情のクリスが一瞬だけ、俺を見てくる。合っているよな?と、助けを求められても困る。
何の舞台をするなど、俺が知っているわけもない。というか、興味がない。
「公演初日に王族が招待されているのは知っているな」
「毎年、ひとり出向くことになっていますので。今年は兄上が行くのは存じていますが」
「俺の代わりにお前が行け」
突然、何を言い出しているのだ。明日の話なのに、何故いまここで急変更をしようとするのだ。
「そ、それはどういうことですか」
クリスが狼狽えるのもわかる。クリスが行くのは来期だと決まっていた。それをこの方は覆そうとしているからだ。しかも、あのどうしようもない恋愛物を急に明日観て来いとは、心の準備が出来るはずもない。
「それは、ジェードが言いにくいから言うとね。ちょっと、ユーゴ君に意地悪しちゃったから合わせる顔がないんだよ。だから、代わりに行ってくれると嬉しいかなって」
どういうことだ?ユーゴに意地悪って…いつもしているではないかと思っているが、あれは可愛がっているとも言える。本人は、すごく嫌がっているが。
「ですが、明日ケイは非番で護衛が他の者です」
「なら、他の者を付ければいい。お前の護衛は彼以外にいないのか」
「そ、それは…」
クリスの悪い癖だ。外出する際に、何故か俺を指名する。それでは、他の者に示しがつかない。
実力だと言えばいいが、俺とクリスが親しい学友であることを知らない者はいない。それに、嫉妬する者さえいる。
ただ、この癖だけはどうしても治さなくてはいけない。俺を含め、あまり近しい者に依存するのはよくない結果を招く。
「ケイくん以外にも優秀な者は多いでしょ。贔屓はよくないよ。まあ、急には無理だと思うからケイくんには、その舞台の券を2枚あげるよ。いま、有力な婚約者候補のジェーン嬢でも誘って行けば、きっと彼女も喜ぶでしょ。それに、休暇は大事だからね」
ニコライさんの意見は最もだが、何故ジェーン嬢が有力な婚約者候補なのだ。というか、何故彼女が婚約者候補に挙がっていることを、この人は知っているんだ。
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