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第2話 不器用な保護
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「では、本日より二人は“恋人同士”として行動せよ」
国王の言葉で会議が締まった瞬間、
私の胃はきゅっと縮まった。
恋人同士って……ここ異世界だよね?
法律とか風習とかあるよね?
ていうか私、さっきまで帰宅中だったよ?
「来い」
レオンが短く言い、私の手首をつまむ。
手首!?もっと優しい持ち方あったよね!?
「ちょ、ちょっと! 腕取るなら、こう……手とか……!」
思わず口から出た。
でも、レオンはぴたりと動きを止め、私を見る。
無表情で、氷のような目。
その視線が落ち着いてるのになぜか刺さる。
「……手。そういうものなのか?」
「そういう……もの……ですけど……」
言ってから気づいた。
あれ、なんか、照れてない?私。
レオンはほんの一瞬だけ視線を逸らすと、そっと私の手を取った。
指先が触れた瞬間、胸の奥がびくっと跳ねた。
え、ちょっと、この人……見た目より手があったかい……。
「……これで問題ないか」
「うん……」
「力は入れていない。痛むか?」
「や、優しすぎるくらい……」
レオンの横顔はずっと淡々としてるのに、
なんかドキドキが止まらない。
氷みたいな外見なのに、
触れたらあったかいとか反則では?
◆
城内を案内するレオンの後ろを歩く
……いや、手を繋いで歩く。
これ、どう考えてもカップルムーブなんだけど、
呼吸の仕方が分からない。
「この回廊は来客が多い。歩幅を合わせろ。離れるな」
「……はい」
「階段は踏み外すな。肩に手を置け」
「えっ、さすがにそれは……恥ずかしい……」
「転倒すれば怪我をする」
「……はい……」
妙に“保護マニュアルが細かい”んだけど。
これ絶対、恋人役以前にレオンが過保護気質なんじゃない?
「レオン、お前……付き合って何日目の恋人に対してもそんな指示すんのか?」
聞き慣れた声が横から飛んできた。
見ると、柔らかい茶髪の青年騎士が腕を組んでいた。
「あ、レオンさんの仲間の……」
「ユリウスだ。よろしくな、召喚嬢」
ユリウスさんは苦笑している。
「レオンはな、守るって決めた相手には
過保護すぎるくらい過保護だ。
悪気はないが、距離感バグってる」
「……バグってる!?」
「事実だろう?」
ユリウスは肩をすくめた。
レオンはちょっとだけ眉を寄せたが否定はしない。
「……必要なことだ」
「“必要”の基準が世間とズレてんだよ、お前は」
二人のやり取りを見て、私は気づく。
わりと、周囲もレオンの過保護体質は公認らしい。
「でも、まあ安心しろ。
レオンが恋人役を引き受けた以上、
お前の安全は保証されたようなもんだ。
氷の王国で一番強いからな。……あと、情が深い」
「情……」
その言葉に、胸が少しだけ熱くなった。
だってレオン、あんなに無表情なのに?
ユリウスはひらひらと手を振って去っていく。
レオンは私に横目を向ける。
「……変なことを言われたら気にするな」
「変ではなかったけど……。
私を守るために、そんなに気を張らなくても……」
「張る必要がある」
レオンの言葉は即答だった。
「召喚者は魔物の反応を引き寄せやすい。
危険が多い。君は俺の“恋人役”だ。離れる理由はない」
その“離れる理由はない”って言い方、ちょっと怖い。
でも胸がまた跳ねた。
◆
部屋に案内され、一息ついた。
そこは一応“恋人役”として滞在するための部屋。
いや、同じ部屋じゃないだけマシだけど……。
「夕刻には式典のリハーサルがある。
服装は任せるが……寒いだろう。これを着ておけ」
レオンは自分のマントを私の肩にかけた。
「え、でも、レオンのだよね? 大丈夫?」
「君が凍えたら困る」
「……困る?」
「任務に支障が出る」
……任務。
はい、そうですよね。
それ以上の意味なんて期待しちゃだめ……。
でも、マント重い。あたたかい。なにこれ落ち着く……。
「レオンって、こういうのよくするの?」
「しない」
即答。
「……そうなんだ」
「俺は他人に触れない。必要もない。だが……君は例外だ」
ぐっ……これ、ずるい。
声は冷静なのに、意味があったかすぎる。
「例外って……なんで……」
「理由は……分からん」
そこで初めて、レオンが少しだけ言葉を探した。
あの完璧マシーンみたいな氷騎士が、言い淀むとか……。
「だが、君が予想外の動きをするからかもしれない」
「予想外?」
「普通、召喚された者は恐慌状態だ。
だが君は……よく喋り、よく動き
……目の前の状況に素直に驚く」
「いや、それ普通じゃ——」
「……悪くない」
いま、ものすごく小さな声で言ったよね!?
聞き逃さないよ!?
「は、はい?」
「何でもない」
いや、絶対なんでもなくない。
無表情で言うから余計に心臓にくるんだよ、この人……。
◆
夕刻。
城の広間でリハーサルが始まった。
広い。天井高い。絵画も彫刻も豪華。
場違い感に押しつぶされそう。
「こ、こういう場所苦手かも……」
「安心しろ。俺が隣にいる」
そう言ってレオンは自然に手を取ってくれる。
その指が強くも弱くもなく、ぴったり馴染む。
「恋人役なのだから、これくらいは当然だ」
「……うん」
「歩幅を合わせろ。肩を寄せろ。……そうだ」
レオンは私の腰に手を添えた。
うわ、きた、距離近い……!
「ちょ、ちょっとレオン!? これ近すぎ……!」
「寒いと震えるだろう。倒れられると困る」
またそれ。
倒れられると困る=過保護の言い訳。
でも、腰に添えられた手の熱がじわじわ広がって、
まともに息ができない。
「……レオン、顔が近い……」
「他の者に、君が怯えていると知られたくない」
「怯えて……るの、分かる?」
「分かる」
食い気味だった。
ちょっと嬉しそうにすら聞こえたのは、私の気のせい?
「……君は表情にすぐ出る」
「そ……そんなこと……」
「俺の隣にいる限り、怖がらなくていい」
腰に添えられた手が、少し強くなる。
距離が、また縮まる。
この状況、客観的に見たら完全に恋人のそれで——。
でも問題は、これは全部“演技の練習”ってこと。
演技なのに、なんでこんなに胸が苦しいの?
◆
リハーサルが終わる頃、レオンがふと視線を横に滑らせた。
「ユリウスが見ている。自然に歩け」
「えっ……!」
見ると、ユリウスさんが腕を組んでにやにやしていた。
「お前ら、距離近いな~!」
「仕事だ」
レオンは冷ややかに返した。
「はいはい、仕事ね。でもまあ……悪くない絵面じゃん?」
ユリウスさんは私に小声で言う。
「レオンはああ見えて情が深い。気をつけなよ。
あいつ、一度懐いたら離さないタイプだ」
心臓がまた跳ねた。
レオンがすぐそばで低く言う。
「……うるさい」
でも、彼の耳がほんのり赤い気がしたのは、
たぶん雪の反射のせい……だよね?
◆
部屋に戻る途中、静かな廊下でレオンがふいに足を止めた。
「今日の動き……悪くなかった」
「ほ、褒められた……?」
「恋人としての距離も……自然だった」
「う、うん……ありがとう……?」
レオンの視線が少しだけ柔らかかった気がした。
「だが——」
「だが?」
彼は私の手を握り直す。
「君はまだ、俺から離れやすい」
「え……」
「明日からはもっと気を付けろ。
……離す気はないが、念のためだ」
その言い方、心臓に悪い。
でも、少しだけ嬉しいと思ってしまった自分がいる。
——こうして、レオンの不器用な過保護と共に、
“期間限定の恋人役”としての本格的な日々が始まった。
国王の言葉で会議が締まった瞬間、
私の胃はきゅっと縮まった。
恋人同士って……ここ異世界だよね?
法律とか風習とかあるよね?
ていうか私、さっきまで帰宅中だったよ?
「来い」
レオンが短く言い、私の手首をつまむ。
手首!?もっと優しい持ち方あったよね!?
「ちょ、ちょっと! 腕取るなら、こう……手とか……!」
思わず口から出た。
でも、レオンはぴたりと動きを止め、私を見る。
無表情で、氷のような目。
その視線が落ち着いてるのになぜか刺さる。
「……手。そういうものなのか?」
「そういう……もの……ですけど……」
言ってから気づいた。
あれ、なんか、照れてない?私。
レオンはほんの一瞬だけ視線を逸らすと、そっと私の手を取った。
指先が触れた瞬間、胸の奥がびくっと跳ねた。
え、ちょっと、この人……見た目より手があったかい……。
「……これで問題ないか」
「うん……」
「力は入れていない。痛むか?」
「や、優しすぎるくらい……」
レオンの横顔はずっと淡々としてるのに、
なんかドキドキが止まらない。
氷みたいな外見なのに、
触れたらあったかいとか反則では?
◆
城内を案内するレオンの後ろを歩く
……いや、手を繋いで歩く。
これ、どう考えてもカップルムーブなんだけど、
呼吸の仕方が分からない。
「この回廊は来客が多い。歩幅を合わせろ。離れるな」
「……はい」
「階段は踏み外すな。肩に手を置け」
「えっ、さすがにそれは……恥ずかしい……」
「転倒すれば怪我をする」
「……はい……」
妙に“保護マニュアルが細かい”んだけど。
これ絶対、恋人役以前にレオンが過保護気質なんじゃない?
「レオン、お前……付き合って何日目の恋人に対してもそんな指示すんのか?」
聞き慣れた声が横から飛んできた。
見ると、柔らかい茶髪の青年騎士が腕を組んでいた。
「あ、レオンさんの仲間の……」
「ユリウスだ。よろしくな、召喚嬢」
ユリウスさんは苦笑している。
「レオンはな、守るって決めた相手には
過保護すぎるくらい過保護だ。
悪気はないが、距離感バグってる」
「……バグってる!?」
「事実だろう?」
ユリウスは肩をすくめた。
レオンはちょっとだけ眉を寄せたが否定はしない。
「……必要なことだ」
「“必要”の基準が世間とズレてんだよ、お前は」
二人のやり取りを見て、私は気づく。
わりと、周囲もレオンの過保護体質は公認らしい。
「でも、まあ安心しろ。
レオンが恋人役を引き受けた以上、
お前の安全は保証されたようなもんだ。
氷の王国で一番強いからな。……あと、情が深い」
「情……」
その言葉に、胸が少しだけ熱くなった。
だってレオン、あんなに無表情なのに?
ユリウスはひらひらと手を振って去っていく。
レオンは私に横目を向ける。
「……変なことを言われたら気にするな」
「変ではなかったけど……。
私を守るために、そんなに気を張らなくても……」
「張る必要がある」
レオンの言葉は即答だった。
「召喚者は魔物の反応を引き寄せやすい。
危険が多い。君は俺の“恋人役”だ。離れる理由はない」
その“離れる理由はない”って言い方、ちょっと怖い。
でも胸がまた跳ねた。
◆
部屋に案内され、一息ついた。
そこは一応“恋人役”として滞在するための部屋。
いや、同じ部屋じゃないだけマシだけど……。
「夕刻には式典のリハーサルがある。
服装は任せるが……寒いだろう。これを着ておけ」
レオンは自分のマントを私の肩にかけた。
「え、でも、レオンのだよね? 大丈夫?」
「君が凍えたら困る」
「……困る?」
「任務に支障が出る」
……任務。
はい、そうですよね。
それ以上の意味なんて期待しちゃだめ……。
でも、マント重い。あたたかい。なにこれ落ち着く……。
「レオンって、こういうのよくするの?」
「しない」
即答。
「……そうなんだ」
「俺は他人に触れない。必要もない。だが……君は例外だ」
ぐっ……これ、ずるい。
声は冷静なのに、意味があったかすぎる。
「例外って……なんで……」
「理由は……分からん」
そこで初めて、レオンが少しだけ言葉を探した。
あの完璧マシーンみたいな氷騎士が、言い淀むとか……。
「だが、君が予想外の動きをするからかもしれない」
「予想外?」
「普通、召喚された者は恐慌状態だ。
だが君は……よく喋り、よく動き
……目の前の状況に素直に驚く」
「いや、それ普通じゃ——」
「……悪くない」
いま、ものすごく小さな声で言ったよね!?
聞き逃さないよ!?
「は、はい?」
「何でもない」
いや、絶対なんでもなくない。
無表情で言うから余計に心臓にくるんだよ、この人……。
◆
夕刻。
城の広間でリハーサルが始まった。
広い。天井高い。絵画も彫刻も豪華。
場違い感に押しつぶされそう。
「こ、こういう場所苦手かも……」
「安心しろ。俺が隣にいる」
そう言ってレオンは自然に手を取ってくれる。
その指が強くも弱くもなく、ぴったり馴染む。
「恋人役なのだから、これくらいは当然だ」
「……うん」
「歩幅を合わせろ。肩を寄せろ。……そうだ」
レオンは私の腰に手を添えた。
うわ、きた、距離近い……!
「ちょ、ちょっとレオン!? これ近すぎ……!」
「寒いと震えるだろう。倒れられると困る」
またそれ。
倒れられると困る=過保護の言い訳。
でも、腰に添えられた手の熱がじわじわ広がって、
まともに息ができない。
「……レオン、顔が近い……」
「他の者に、君が怯えていると知られたくない」
「怯えて……るの、分かる?」
「分かる」
食い気味だった。
ちょっと嬉しそうにすら聞こえたのは、私の気のせい?
「……君は表情にすぐ出る」
「そ……そんなこと……」
「俺の隣にいる限り、怖がらなくていい」
腰に添えられた手が、少し強くなる。
距離が、また縮まる。
この状況、客観的に見たら完全に恋人のそれで——。
でも問題は、これは全部“演技の練習”ってこと。
演技なのに、なんでこんなに胸が苦しいの?
◆
リハーサルが終わる頃、レオンがふと視線を横に滑らせた。
「ユリウスが見ている。自然に歩け」
「えっ……!」
見ると、ユリウスさんが腕を組んでにやにやしていた。
「お前ら、距離近いな~!」
「仕事だ」
レオンは冷ややかに返した。
「はいはい、仕事ね。でもまあ……悪くない絵面じゃん?」
ユリウスさんは私に小声で言う。
「レオンはああ見えて情が深い。気をつけなよ。
あいつ、一度懐いたら離さないタイプだ」
心臓がまた跳ねた。
レオンがすぐそばで低く言う。
「……うるさい」
でも、彼の耳がほんのり赤い気がしたのは、
たぶん雪の反射のせい……だよね?
◆
部屋に戻る途中、静かな廊下でレオンがふいに足を止めた。
「今日の動き……悪くなかった」
「ほ、褒められた……?」
「恋人としての距離も……自然だった」
「う、うん……ありがとう……?」
レオンの視線が少しだけ柔らかかった気がした。
「だが——」
「だが?」
彼は私の手を握り直す。
「君はまだ、俺から離れやすい」
「え……」
「明日からはもっと気を付けろ。
……離す気はないが、念のためだ」
その言い方、心臓に悪い。
でも、少しだけ嬉しいと思ってしまった自分がいる。
——こうして、レオンの不器用な過保護と共に、
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