ホライズン 〜影の魔導士〜

かげな

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魔道帝国学院 入学⑤ 新入生歓迎会 下

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 緑の寮では魔道具に関するクイズが出され、正解すると魔道具を使って作られたジュースを貰った。その後は技術科の図書室、本舎にある広間、普通科の図書室、白の寮で魔道符の付与体験をして、武闘場に向かった。

 武闘場に着くと、ドルトフリートが入り口の近くに立っていた。

「へーヴェルとカンタニエールのペアか。早かったな、5番目だ。」

 カードを貸してくれと言われ、ミゲルはスタンプカードをドルトフリートに手渡した。軽く目を通すと、ドルトフリートは『先生確認』の枠に人差し指を置いてスタンプを押した。返されたカードには『No.5』と書かれていた。
 ドルトフリートは懐から紙を取り出すと、5の番号の隣にエミリアンヌとミゲルの名前を書いた。

「じゃああと30分位で皆集まって来るだろうから、好きな席に座って待っててくれ。使うも使わないも自由だが、これは今日の歓迎会用に上級生達が作っていた問題が纏められているものだ。暇つぶしにでも使ってくれ。」

 ドルトフリートにお礼を言って、二人は武闘場に入った。中は大きな円の形をした土地と、それを囲むように並び、後ろにかけて位置が高くなっていく客席が何百個もあった。
 8人の生徒が既にペアで固まってチラホラとまばらに座っている。

「凄いね、これだけ大きければ学院内の6学年の生徒全員と保護者が観戦出来るのも納得だね。」

「これより大きい大陸中の人が入れるって言う魔道帝国武闘場がどうして称えられているのか分かったよ。工事費用が馬鹿にならない。」

 エミリアンヌとミゲルは移動が楽そうな隅の方の席を選び座った。まだ会って初日だが、互いに持つ話は興味深く、二人は何十分も生徒が全員集まるまで話を弾ませた。


「お静かに。全員揃ったようですので、新入生歓迎会の結果発表を致しますわ。」

 透き通った声が武闘場に響き、大勢集まっていた新入生や、武闘場の後ろの方に待機している上級生は静まった。
 声の主は武闘場の中心に立つ長い金髪を括った生真面目そうな女性である。

「結果発表をする前に自己紹介をしますわね。わたくしはノーラ・ゼントクス・ウィンストン。ウィンストン先生とお呼び下さいまし。副学院長をしていますわ。学院長は明後日の入学式でご挨拶下さいます。
 今日の新入生歓迎会は2、3年生が貴方達新入生が早く学院に馴染めるようにと行ってくれたものです。精度が高かったでしょう?貴方達も努力すれば来年、再来年には今日の歓迎会で見た技術が使えるようになるということですわ。頑張って下さいまし。」

 気品溢れる話し方をするノーラは、目を輝かせる新入生にクスリと微笑んだ。

「今日は長話をするつもりはありませんわ。堅苦しい話は明後日の入学式で十分ですものね。私の話はここまでにして、結果発表をいたしますわね。」

 くるりと指先で上品に円を空中に描くと、ノーラの描いた円から光が溢れ出し、弧を描くように生徒一人一人に向かって飛んで行く。飛んできたのは小さな紙と、小さな穴の空いたバッジのようなものだった。円状で、銀色をしており、裏には『新入生歓迎会5位』と彫られている。

「今手元にある紙にはここに辿り着いた順位や、各地点でのクイズなどの出し物の結果の順位ですわ。これは成績には入りませんので、順位が低くても憂慮する必要はありませんわ。ただ、これを元に自分は何が得意か、何に興味があるのかを考えてみると良いですわね。
 この学院は実力主義だけれど、取った授業でどれだけ成績が悪かろうとそれだけで人を評価する人は居ませんわ。評価は授業内で取った賞や書いた論文、大会を元に行いますの。良い結果を元に評価されると言うことですわ。
 学びたい分野があっても上手く成績が伸びない事があるでしょう?そんな時に同時に得意分野で結果を出せば良いという事ですわ。利用できるものは利用して自分の学習環境を整える、これも貴方達が学ぶべき事。
 何をしたいか、その為には何が必要か。錬金術を学びたくて、その材料を採りに行く為に武術を会得し、その楽しさに気付いて冒険者になった人もいます。一度考えてみて、せめてこの一年時だけでも興味のあるいくつかの分野を学んでみて下さいな。きっかけは何でも良い。それが貴方達の未来を変えることもあるのですから。」

 成る程、その為にスタンプを集める時に出し物も行ったのか。納得がいったエミリアンヌは楽しませる為だけの高クオリティじゃなかったんだなぁと呟き、隣に座るミゲルはコクコクと頷いて同調した。

「この中で最初にこの武闘場に辿り着いた60人には丸いバッジも渡しましたわ。これは大事に持って、寮が決まった時に渡される紐に通すのですよ。今回の特典は食堂で10食分にサイドメニューを一つ無料でつけられる物ですわ。これからは成績優秀者、大会優勝者などにもこのような特典をお渡ししますので、今回貰えなかった方はその機会に貰えるように頑張ると良いですわね。」

 武闘場の所々から歓声が聞こえた。エミリアンヌとミゲルも嬉しそうである。エミリアンヌはバッジを失くさないようにとハンカチで包んでポケットにしまった。

「それでは新入生歓迎会の話はここまでにして、寮の説明に入りますわね。この学院には白の寮、緑の寮、赤の寮、そして黒の寮の四つの寮がありますわ。
 白の寮には魔導符付与や錬金術、緑の寮には魔道具作りや魔具のメンテナンス、赤の寮には剣術、魔術それぞれの訓練、黒の寮には戦闘や大規模実験に耐えられる設備が整っていますわ。必然的に白の寮には魔導付与師と錬金術師、緑の寮には魔道具師、赤の寮には剣士と魔術士、そして黒の寮には魔導士や研究者、研究者は第四学年から居ますわね、が多くなりますが、必ずその通りに入寮する必要はありませんわ。
 魔道具のメンテナンスの方法をもう学んでいる為、授業を受ける必要は無いが日常的ににメンテナンスをしたい為わざわざ毎日赤の寮から緑の寮にまで行って設備を借りに行きたくないという魔術士が緑の寮に入寮することはよくありますし、技士だけれど授業時間以外は武術に費やしたい人が赤や黒の寮に入寮することもありますもの。
 この後は一人一人上級生に案内して貰いますので、詳しくは上級生に聞いたり、相談してみると良いですわね。」

 それではここまでに致しますわ、と言ってノーラは手を二回叩いた。
 待機していた上級生は新入生の案内をして教室に荷物を取りに行かせると、一人一人希望する寮へ連れて行った。
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