ホライズン 〜影の魔導士〜

かげな

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魔道帝国学院 入学⑥ 買い物 下

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 ボードを寮に届ける様に店員にお願いして、エミリアンヌとミゲルは店を出た。

「飛行用魔道具、買わなくて良かったの?」

「まあね。あの店には僕の魔力と相性が良いのが無かったから、とりあえずは家族にボードを送って貰って、それを授業で使うことにするよ。」

「その方が良いのかもね。相性の合わない物に命は預けられないから。でも、あんなに沢山あったのに良いの無かったんだ?」

「使えるものはあったんだけど、なんかしっくり来なかったんだよ。エミリアンヌは直ぐに決まってたね?」

「運命を感じたの。」

 戯ける様に言い、エミリアンヌはコロコロと笑った。

「じゃあ、魔道具店に行こうか。」

「そうだね。」

 魔道具店は商店街の中程にあった。周りの店の2、3倍くらいの大きさである。

「どのコーナーを見に行く?私は工房用道具を揃えたいんだよね。」

「僕は魔法杖と、魔法紙とかかな。下手に質の悪い物を買うよりかは学院で買った方が安全かと思ってまだ買ってないんだ。」

「魔法紙やインクは良し悪しが分からないなら、絶対に学院で買うべきだろうね。でも魔法杖は冒険者ギルドで買うのも楽しいかも。」

「楽しい?」

「そう。冒険者ギルドに魔道具を売る冒険者って普通に冒険をしてても儲かるから魔道具作りは完全なる趣味なの。だから、杖を持つと頭上に天使の輪が出来たり、毒性の魔法の補助に全振りしてたりと遊び心満載なの。
 でも、その中でも転移魔法とか蘇生魔法の全振りとか使い手によっては最高に相性が良い物もあるんだよ。」

「傀儡術の補助もあるかな?」

「行ってみないと分かんないけど、あるかも知れないね。
 ちゃんとした店で打ってる魔法杖はバランスが良いから万能なんだけど、冒険者は命かけてる割に遊び心が強くて、バランスが良い杖はあんまり使って無いの。魔法杖を選ぶコツは、特性じゃなくて本能だよ。
 ビビッと来たものがあれば買って、無かったら無理して買わない。こう言う信条を持ってる人達は何故か選んだ杖との相性がとんでもなく良くて、結果的に万能系を使う軍人よりも生存率が高いんだよね。」

 軍人達って結構真面目に相性を考えてるのに、って感じで面白いよね。と言ってエミリアンヌはマントの下から一振りのダガーを取り出した。真っ黒な鞘に収められている。

「私は魔法杖を2本持ってるんだけど、こっちは仲間と連携する時によく使ってる方。枝に念入りに保護魔法をかけて、周りにダガーを作ったの。投げる使い方はあまりしないけど、接近戦ではよく使うよ。
 杖の形をしてなくて面白いでしょ?」

「じゃあ他にも不思議な形をしているものが?」

「そうだねぇ。私は櫛や槍、盾とかも見た事あるな。あとはペンの軸に、栞かな?」

「へぇ。」

 工房用道具と文房具は違う階にあったので、1時間後に一階で会うという事で二人は別々に行動することにした。
 工房用道具は3階にあった。エミリアンヌは魔加工用工房机をいくつか見て、机に置く魔法陣が取り換えられるタイプの物を選んだ。(魔加工をする魔道具作り、錬金術、魔導付与などはそれぞれ机に置く魔法陣が違うのである)他には薬草などの植物を保存する為のものと、実験中の魔道具の暴走を防ぐ為の保管棚を一つずつ選んだ。
 魔加工用工房机は金貨一枚、保管棚はそれぞれ銀貨30枚ずつした。学生にとっては手痛い出費だが、自分で稼いだ金なので罪悪感は勿論ない。必要なものなので必要経費とも言える。これでも普通に買うよりは安いのだ。

 品物を寮に送って貰うようにお願いしてエミリアンヌは待ち合わせていた一階に向かった。まだ10分前だが、このまま3階に居てはついいらない物までも買ってしまいそうである。

 エミリアンヌは一階にあるソファでミゲルを待った。一階では補助魔道具を売っている。ピアスやネックレスにもなる補助魔道具はお洒落としても楽しめるので人気だ。因みに魔法杖との違いは魔法樹を使っているのか、物を作ってそれに付与をしているのか、という点である。

 暫く待っているとミゲルが降りてきて、魔道具店を出るとお昼の時間になっていたので、寮に戻る事にした。
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