歌舞伎町のかさぶたホームレス

ゆずまる

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17.営業部の滝沢課長

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「あれ?もしかしてカツキ?」
「……はい?」

咄嗟に友人を装って肩を叩いてみたが、振り返って顔を拝んだ瞬間すぐさま確信した。

この人絶対カツキさんじゃない。

俺に似てる似てない以前に、年齢が離れすぎている。声を掛けた相手は、三十代前半くらいの若い青年だった。

「あ、ごめ~ん人違いだった!」
「そっすか……」

突然馴れ馴れしく声を掛けてきた怪しい中年に、エセカツキさんは若干引き気味だった。エセカツキさんは俺の方なんだけどね!
……それはさておき。
人違いだったとはいえ、ここで易々と引き下がる訳にはいかない。少しでも情報を得ないと、苦労してここまで来た意味がなくなってしまう。
どうにか彼らからカツキさんについての話を聞けないかと、すぐにでも俺から距離をとろうとする二人を必死で引き留めた。

「あ、待って待って!君らさ、ここの会社の社員さんだよね?カツキって男知ってる?俺のダチなんだけどさぁ」
「カツキ?フルネームで言って貰わないと分かんないっすね」
「えっ?えーっとぉ……名字?なんだったっけ……?忘れちった」                                                                                      

言われてみればそうだ。同じ職場といえど、社員の下の名前だけ出されたところですぐに分かる人の方が稀だろう。
そもそも彼らの所属する部署すら分からないし、下手に名前だけ出すのは悪手だったかもしれない。

「う~ん、たまたまこっち遊びに来たついでに顔見たかったんだけどな~」
「へぇ、そすか」

二人組は面倒臭そうに腕時計をチラチラ眺めながら返事をしていた。貴重な昼休憩をよくわからないおじさんに奪われてさぞかしイラついていることだろう。
彼らには申し訳無いけど俺にとっては死活問題なんだから、もうちょっとだけ付き合っておくれ。

「人づてに最近若い嫁さんもらったって聞いたもんだから話したかったんだけどなぁ~」

思い切ってジロちゃんから聞いた情報を出してみた。これで何のリアクションも返ってこないなら素直に諦めて帰るしかない。

すると若い嫁さん、という単語にピンと来たのか、エセカツキさんの隣にいた青年が思い出したかのように呟いた。

「なぁ、もしかして滝沢課長のことじゃね?営業の」
「あぁ~そうかもな。そういや結婚式で奥さんに挨拶した時課長のこと『カツキさん』って呼んでたような……」

来た……!カツキさんの情報!!

「そうそうっ滝沢!滝沢カツキ!!」
「うぉっびっくりした」

滝沢カツキ、営業部の滝沢カツキさん!
彼は実在したんだ!しかも課長ときたら年齢も俺と近いだろうし、彼こそがジロちゃんの初恋相手であるカツキさんで間違いない!

興奮からマスク越しにフガフガと荒い息遣いをしながら前のめりになる俺に気圧されたのか、彼らは顔を引きつらせながら後ずさっていった。

「滝沢課長なら新人の付き添いで取引先と会食中らしいんでしばらく帰らないと思いますよ。じゃ、俺らはこれで」
「そっかぁ!わざわざありがとね~!」

二人組はこれ以上関わりたくないのか、早口にそう答えるとそそくさと去っていった。こんな怪しさ満点のおじさんに貴重な時間を割いてくれてありがとう。そして有益な情報をありがとう。君達のことは一生忘れないよ。

本物にお会いすることこそ叶わなかったが、大きな情報を手に入れることができた。
カツキさんが実在すること、やはり既婚者であること。
そして信頼できなかったジロちゃんの話は全てが妄想ではないということ。
これだけでも大きな収穫だ。それさえわかれば精査する必要があるとはいえ、ジロちゃんの口から情報を集めることもできる。ようやく解放される糸口が見えてきた。

本当はカツキさんが戻ってくるまで居座りたかったが、いい加減通報されかねないので今日のところは撤退することに決めた。
ようし、後はジロちゃんが帰ってくる前に今日のことがバレないよう部屋に戻って、もっかい部屋の探索でもしてみるか。

それにしてもあの二人、前に何処かで会ったような……。
まぁいいや。それより探索だ!





「なんだったんだろうな、さっきのヤバいおっさん」
「な。格好もなんか変だったし、滝沢課長の知り合いには見えなかったけど」
「後で三木にも話しとくか。アイツおっさんマニアだしこういう話題食い付きそうじゃね?」
「ははっ!そうだった、アイツこの前の飲み会でべろべろに酔っ払ってホームレスのおっさんに絡んでたもんなぁ!」
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