殿下、真実の愛を見つけられたのはお互い様ですわ!吸血鬼の私は番いを見つけましたので全力で堕としにかかりますから悪しからず

蓮恭

文字の大きさ
20 / 40

20. お茶をいかがですか?


 シャトレ商会が派遣する林業従事者も伯爵領に到着するには数日間かかるとのことで、それまでは伯爵邸の庭にある花や畑の作物の世話をアドリエンヌと邸の使用人で行っていた。

「アドリエンヌ様、そのように重い肥料袋を持たずとも宜しいのですよ!私が持ちますから!」

 華奢なアドリエンヌが三十キロもある肥料袋を軽々持ち上げたから邸の使用人たちは目を見開いて驚いた。

「大丈夫ですわ。私はこう見えてとても力持ちなんですのよ。」
「へえー……。アドリエンヌ様、すごいですね!」

 使用人たちは気の良い伯爵に似てか皆穏やかな者たちばかりで、アドリエンヌはすぐに馴染むことができた。

「畑を耕すことも楽しいですわね。さあ、フワフワの土になるのですよー。」

 土を鍬で耕しながら堆肥や腐葉土を混ぜ込んでいくアドリエンヌは、また土に話しかけていた。

「アドリエンヌ嬢はいつも何かしらに話しかけているんですね。」
「アレックス様!お仕事はひと段落されたのですか?」

 領地に帰ればアレックスは伯爵の補佐として領地の管理を行っていた。

「今は息抜きの時間です。窓から何やら植物に話しかけるアドリエンヌ嬢が見えたので、休憩するように伝えに来ました。朝からずっと畑仕事をしているでしょう?」
「まあ、そうですけれど。疲れたりしていませんわ。私、体力には自信がありますのよ。」

 そう言ってアドリエンヌは自分の二の腕をポンポンと叩いて筋肉を強調したが、見た目は人間の令嬢と変わらなかった。

「そうだとしてもですよ。見た目はただの令嬢でしかないです。良ければお茶でもご一緒にいかがですか?」
「ローズヒップティーですか?私あれが大好物になりましたのよ。」
「そうですね。そうしましょう。」

 アレックスは、何とかアドリエンヌに休憩させようとお茶に誘うことに成功した。
 茶葉が高価だからと作り始めた自家製のローズヒップティーを好きだというアドリエンヌに、アレックスは穏やかに微笑んで応えた。


 せっかくだからと庭園のガゼボでお茶をすることになった。
 作られた庭ではなく自然な雰囲気の庭を眺めながら、アレックスはアドリエンヌの為にローズヒップティーを注いだ。

「やっぱりローズヒップティーはさっぱりとして美味しいですわね。これはこの領地では皆さん飲まれているのですか?」

 カップを傾けながらホウッと息を吐いたアドリエンヌは、アレックスに質問した。

「そうですね。この領地ではイヌバラがたくさん咲いているので、ローズヒップは身近なものです。」
「成る程。それでアレックス様も伯爵家の方々もお肌がツルツルで色白なのですわね。」

 そう言って、アドリエンヌはアレックスの頬に手を伸ばした。
 アレックスはビクンと一瞬肩を竦めたがそのままじっとしている。

「僕の肌とローズヒップティーが関係あるのですか?」

 照れ隠しのようにアレックスがアドリエンヌに問うた。

「私調べてみましたら、ローズヒップには様々な効能があるようですの。例えばお肌が綺麗になったり、便秘解消や病気になりにくくなったりですとか。」
「へえ……。知りませんでした。昔からこの領地で多く採れる物だったので疑問にも思いませんでしたし。」
「ですから、アレックス様のお肌も綺麗なのですわ。」

 アドリエンヌはうっとりと恍惚とした顔でアレックスを見つめている。
 その手はこの気温の高い季節にしてはやはりひんやりとしているが、心地が良いのかアレックスはじっとしていた。

「貴女も、ローズヒップティーを飲み始めてえらく美しくなりましたよ。」

 突然の褒め言葉に、アドリエンヌは動揺して頬にやっていた手を引っ込めた。

「……なんて、言ってみただけです。」

 アレックスが続けた言葉にアドリエンヌは赤い唇を尖らせて抗議した。

「ひどいですわ。褒めてくださったのかと喜んでしまったではありませんか。」

 アドリエンヌが子供っぽい怒り方をしたので、アレックスはフッと笑いを零した。
感想 5

あなたにおすすめの小説

番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!? 貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。 愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

私は平民、あなたは公女〜入れ替わりは食事だけの約束ですが!

みこと。
恋愛
平民の少女コニーはある日、筆頭公爵家に連れてこられた。 魔法で眠らされた公女・エヴァマリーの身体に入り、公女の代わりに食事をして欲しい。でなければ意識のない公女が、衰弱して餓死してしまう、と。 稀有なことに、コニーとエヴァマリーの魂の形は同じで、魔道具を使えば互いの身体を行き来出来るのだと言う。 「公女様の代わりに、ご飯を食べるだけのお仕事」 権力者相手に断れず、コニーはエヴァマリーの身体に入るが、やがてその他学習や、彼女の婚約者とのデートも命じられ……。 そんな中、本物の公女がコニーの身体で目覚めた。評判の悪女だった公女は、"使い捨ての平民"だからと、コニーの身体で悪さを始める。 公女と平民の入れ替わり物語、全7話、いっきに完結予定です。お楽しみください。 ※「小説家になろう」でも掲載しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

阿里
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。