【短編】美形魔王の重過ぎる溺愛 R18

蓮恭

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中編

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 私室に戻ったファブリスは、やたらと重いマントをバサリと外して毛足の長い絨毯の敷かれた床へと無造作に放り投げた。そしてレザー張りの豪奢な三人掛けソファーに倒れ込む。

「ファブリス様、今日もお疲れ様でした」

 床に広がる重たいマントを拾いながら、サーシャが穏やかな声音で告げる。その表情は先程ベノムの前で見せたような妖艶なものではなく、可憐な印象すら感じる愛らしいものだった。

「サーシャ、あの狸ジジイ……殺してもいいか?」
「ダメですよ。第一魔界と第二魔界の事までファブリス様が統治しないとならなくなったら面倒でしょう? 第三魔界の事ですら面倒だとおっしゃっているのに」
「だが、俺に自分の息の掛かった女をあてがおうとしてくる事が我慢ならない。それも、サーシャの目の前で、だ」

 サーシャはソファーに腰掛けて、無表情ながら不機嫌な様子のファブリスに膝枕をしてやる。漆黒の長い髪を撫でながら幼い子をあやすように言い聞かせた。

「私は気にしません。だって、ファブリス様は私の事を心から愛してらっしゃるでしょう。ですから、ベノムが何と言おうと傷ついたりしませんよ」
「……お前も、俺の事を愛していると言う癖に何故伴侶となってはくれぬのだ」
「私は人間とサキュバスの間に生まれた半端者だからですよ。魔界を統治する貴方の伴侶には相応しくありません」

 魔王ファブリスが目を閉じて無防備な姿を晒せるのはサーシャの前だけ。ファブリスが魔王になる前に出逢った二人の関係を知らぬ周囲は、サーシャの事をファブリスに擦り寄る小賢しい淫魔だと陰口を叩く。それにいかるファブリスを宥めるのがサーシャの常だった。

「関係ない。そんな理由でサーシャが伴侶にならぬなら、魔王など辞める」
「それはダメです。魔界の秩序を守るには、ファブリス様の絶対的な力が必要なんですから。私は貴方の愛人あいじんとしてずっとお側に居させていただきます」

 この話は今まで何度も二人の間で繰り広げられてきたものであった。その度にサーシャは「自分は愛人として側に控える」と言って譲らない。

「今日の勇者は転生者だったとか。あのように手応えなく殺して良かったのか?」

 魔王を倒しにやってくる勇者は数多くいるが、今日の勇者はサーシャが手加減しなくて良いと言うので 従った。普段ならば、多少は戦いらしくしてやるのだが。

「はい。あのスズキタクヤという男、勇者とは名ばかりの極悪人なのです。世にも珍しい転生者だという事を笠に着て、この世界の女たちを無理矢理陵辱し尽くしていたのですから」
「それならば致し方ないか」
「嫌がる女を力で従わせようなどと、最低です」

 サーシャは淫らなサキュバスだからという理由で、これまで魔界の者たちに何度も襲われそうになった事がある。確かにサキュバスの中にはそれを愉しむ者も居るが、サーシャはファブリス以外とそのような事をするのは絶対に嫌だった。今までファブリスがサーシャに害をなそうとする者をことごとく屠ってきたから実害は無かったが。

「それより、先程から魔力が溢れ出てきてますよ。お辛いでしょう?」
「今日は大して魔力を使わなかったからか昂りが自制出来ぬ。多少酷くしても許せよ」

 膝枕から起き上がったファブリスは、軽々とサーシャを横抱きにして寝台の方へと足を進める。抱かれたサーシャはファブリスの着る上衣のボタンを外しつつ鍛えられた胸元を露わにしていく。

「ファブリス様、愛する貴方から与えられる苦痛ならば私にとっては幸福以外の何物でもありません。大丈夫です」

 そう言って華奢な手を厚い胸板に添わせて頬を寄せる。まるで魔族の心臓である核の存在を確かめるようなサーシャの仕草に、ファブリスは緩く笑みを浮かべた。普段感情を表に出さないファブリスのそのような顔を見られるのはサーシャだけなのだ。

「サーシャ……」
「ん……っ、ファブリスさま……ぁ」

 広々とした寝台にサーシャを横たえると、ファブリスはその瑞々しい果実のような唇を奪った。熱い吐息すら逃さぬように、段々と深まる接吻は二人にとって大切な儀式だった。
 その儀式を終えるとファブリスは上衣を床に脱ぎ捨てる。普段からサーシャ以外に無頓着な魔王は、すぐに服を床に脱ぎ捨てる癖があった。仰向けで寝転がるサーシャは、そんなファブリスを見つめながら自分の服も脱ごうとボタンに手をかける。

「もう待てない」
「あ……っ、やんっ」

 下衣だけになったファブリスが、寝台の上にサーシャに跨ると愛おしそうに耳たぶをむ。同時に大きく開いた服の胸元に手を掛けると、勢いよくビリビリと引き裂いた。
 そこからふるりとまろび出た豊かな双丘を揉みしだきつつ、サーシャの首筋や鎖骨に所有印を刻みつけてゆく。

「はあ……んッ、ふ……ぁ」
「サーシャ、お前は俺の唯一だ」
「ファブ……リス……さまぁ……。すき……」

 それを聞いてフッとファブリスが笑った際に首筋にかかった吐息すら、サーシャには快感で甘い喘ぎが絶えず漏れる。
 そんなサーシャを見て満足げに口元を緩めたファブリスは、その長い指で双丘の頂きにある薄桃色の突起をギュッと摘んだ。

「あぁ……んッ、や……、痛ぁ……い」
「痛いと言いつつもこんなに固くしているのは、お前が気持ち良いからだろう」
「ん、ふぅ……ん、そうです……ぅ」
「こうするのも好きか?」

 聞くと同時にやわやわと揉みしだいたり爪先で弾いたりして弄び、その突起にファブリスが唇を寄せたらばより一層サーシャは高い嬌声を上げた。

「ひっ……あぁ……んッ」

 ファブリスが固くした突起を舐め、口に含んで舌で転がすその光景を見ながら、サーシャは赤い瞳から生理的な涙を零した。そしてファブリスに口付けを強請ると、溶けてお互いの境目を無くすように深く舌と舌とを絡ませて甘い唾液を交換する。

「お口で……して差し上げたい……」
「ではここで四つん這いになれ」
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