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クリーチャーの『装備魔法』化
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クチュ、クチュと艶かしい音と、ため息のような喘ぎ声。自分がこんなにも甘い声を出して、女性とまぐわっている現状が、修也にはまだ現実の事と思えないでいる。
「一度自分の姿を見てみるかの? 今の主殿がどれだけ色香が強く、艶かしいかを……♡♡♡」
巫女であるヒマリが唱えた呪文は、宙に浮く鏡を出現させた。修也は、鏡面の向こうに居る今の自分を捉えてしまう。小柄な体躯に、潤んだ目元。顔を火照らせて、アソコをぐちゃぐちゃに濡らしている。――こんなエッチな姿が、自分のものだなんて。
―――――
地下室を探索し終わり、今後の方針について話し合う。『世界を渡り歩く呪文』の術式が書かれた本は見つかったが、暗号化の魔法鍵が掛けられ、解読不能の紋様しか読めない。ヴァイス国の騎士団員であったルーネッタは提案する。
「私の騎士団本部に向かいましょうか。そこに魔法鍵の解除を担当してる方も居ますし」
『世界を渡り歩く呪文』の魔術書を手に入れ、修也たちは地下牢を後にする。
地下室から図書館、地上を数分歩いて。たどり着いたのは、堅牢さを誇示しているかのような石造りの巨大な建物。各所から砲台と砲手が顔を覗かせていて、門までは跳橋だけが通路。城の周りに水の張った堀まである、完璧な城だった。ルーネッタが合図を送ると、上がっていた跳橋が少しずつ傾いてくる。
「えぇ……何ここ……」
「私が務めている騎士団の詰所ですね。国が軍備に財源を割いた結果、お金が余ってしまって。ただの1拠点に過ぎないココだけ城みたいな建物ができちゃったんです」
軍事的な運用を考えていたのも納得で、城壁の随所には小さな穴が空いている。銃や矢、投石、魔法などを射出する穴だろう。ゴトン、と跳橋が降りきって鎖の動きが止まる。跳橋の向こうで兵士が合図をすると、ルーネッタが歩みだした。修也も一瞬遅れてついてゆく。彼女が修也に耳打ちした。
「身辺確認されると思いますけど、私の方で誘導しますから」
「お、おう」
橋を渡り切ると、正門の傍に2人の甲冑騎士が背の丈ほどもある槍を交差させて警備をしている。ルーネッタとは面識があるようで3人で話し始めた。
「外の見回りは終わりなのか、ルーネッタ?」
「いえ……『怪物騒ぎ』の現場にいた人間です。被害状況の報告に協力してくれるそうです」
「あぁ、昨日もまた『出た』もんな……分かった」
彼らが城門への道を開け、ルーネッタは修也を手招きする。小さく礼をして小走り気味に、修也はルーネッタの背を追う。建物の奥までやや歩いて、修也は質問した。
「『怪物騒ぎ』って何?」
「御主人様には、きちんと話しておかないといけませんね。最近この国では、怪物が出現するんです。その種類も様々ですが、ちょうど『私』が呼び出されたのと同じ、異世界の住人です」
ルーネッタの内側に入り込んだ怪物、それを呼び出したのは修也だ。だが、他の怪物が出現しているというのは初耳だった。異世界の存在を呼ぶ事ができる召喚儀式なら可能だろうが――
「召喚儀式を扱えるのは卓越した魔導士だけなのです。異世界の住人をこの世界に繋ぎ留めておくだけで相当な魔力が必要で、それだけの魔法を扱えばどれだけ上位の魔術師でも痕跡を残してしまいます。ただ、最近は痕跡が見当たらないのに怪物が出現する事例がいくつも見られていて」
召喚儀式による魔物出現の線は無い、というのが騎士団の見立てであった。
「怪物を撃退するために騎士団も見回りを強化するようになったんです。ただ出現する魔物は騎士団員が集合して戦えば倒せる程度のモノが大半ですが」
「俺には……その魔力とかは無いと思うんだが」
「この世界の住人は多かれ少なかれ、魔力を保持しています。ですが御主人は逆に魔力を全く持っていない。それなのに、召喚儀式を行うことができる。修也様以外に同じような方法で異世界の住人を召喚できる人物が居るとすれば、今までの怪物騒動の原因がはっきりします」
その辺はさして重要な話でも無いのですけどね、とルーネッタは付け加える。確かに、修也達の目的は手元にある『世界を渡り歩く呪文』の封印を解除することだ。城中をどう歩けば良いかは分からないので、そこはルーネッタについてゆく事にした。
――――――――
「……悪い、今どこに向かってるんだ?」
「王宮から出向されている魔導士の書斎に向かってます。すみません、私も迷いそうになるので無口になっちゃいました」
「騎士団の中にも魔導士が居るんだな……いや、戦術に組み込まれる以上当然か」
「召喚儀式による戦争が基本的なヴァイス国の戦術になったので、騎士団を統率する人は術式を執り行える高位の魔術師だけになったんです」
城内の奥深く、窓も減って陽の光も当たらない程暗くなってきた。灰色の壁に所々備え付けられているロウソクが、炎をゆらゆらと揺らして辺りを照らす。辿り着いた部屋への入口は木製のドアだったが、その表面には複雑怪奇な紋様や、解読できない文字がドア全体にびっしりと描かれており、オカルトじみた不気味さがあった。
「大丈夫なのか……? 中に入った瞬間呪い殺されたりとかしない……?」
「私は一度会った事がありますが……悪辣な罠を張るタイプの方では無いですよ」
おそるおそるドアを開き、2人で入る。埃っぽいニオイが漂い、室内に置いてあるランタンが机だけを照らしていて、他は闇に覆われている。書斎で作業をしていた何者かが立ち上がり、こちらを見た。
「――おや、貴方は」
「失礼します! 警備部隊のルーネッタと申します」
「――中身が人間ではない――何者――」
感情の一切籠らない、平坦な口調で。部屋の主は淡々と、ルーネッタの正体を見破る。絶句するルーネッタと修也をよそに、モノクルを掛けた彼女は修也を指差した。
「『支配』しているのはキミか――だが君は魔力を持たない――どうやって支配を――」
「ど……どうしてそこまでっ……!?」
「いきなりで悪いがボクは君の力が欲しい――君もボクの力が欲しいのだろう――」
途切れ途切れに素早く話す彼女の口調に修也は慣れなかったが、暗い部屋にようやく目が慣れてきて、相手の姿を確認することが出来た。ロウソクが、彼女が掛けているモノクル眼鏡を照らす。褐色の髪の下で、彼女の黄色い瞳はただ静かに修也を見据えるのみだった。純白のローブと青いマントを静かに揺らし、少しだけ互いに距離を詰める。背丈は大人としても小さいが、それを感じさせない不思議な存在感がある。
「内容によるけど、力を貸せば良いのか?」
「いや――ボクは君の力がそのまま欲しい――だから君を倒して奪い取らなければならない――逆にこちらが負ければ全面的に協力する――」
一切の怒気も迫力も感じさせぬまま、『そうしなければならない』といった風に彼女は修也にそう告げる。これには修也も、疑念を覚えた。
「待て……! 何で勝負しなければならない!?」
「君は――召喚儀式を完全には把握していないのか――召喚術士同士の戦いは必ず同数でなければならない――ボクはある1人を狙っている、その人も召喚術士だ――」
「共同戦線は、張れないって事か」
「そして術士が強くなるには――他の術士を倒し召喚札を奪う必要がある――君もそうしてきたはず」
地下室でヒマリを打ち破った時に、彼女の持っていたカードが自分のデッキに入ったことを修也は思い出す。あれと同じように、修也が負ければ自分のデッキを失うのだろう。コツリ、コツリと歩みを進めながら、彼女は修也に近づいた。
「ボクも手段を選ぶ余裕が無い――君に闘う理由が無くても、ボクは君を倒す理由がある――君の力を奪うため」
「ごめんなさい、御主人様……まさかこんな事になるなんて……!」
「大丈夫だ、戦う用意をしよう。一度デッキに戻ってくれ」
修也は冷静を装い、ルーネッタをデッキに収納する。連続で召喚術士と戦う事になるとは思っていなかったが、今はヒマリから手にしたカードが有る。以前とは違う戦い方も出来るはずだ、と手甲の召喚器を掲げた。
「王宮魔術師、【カタリナ・フォン・アブト】――その力、貰い受ける――召喚――」
「……召喚ッ!」
深い闇が支配する部屋で、2つの光がぶつかり合う。
――
魔導士という肩書に違わず、カタリナは呪文系のカードを多く使う。そして厄介な事に、カタリナが呪文を使う度に、次の呪文は強化されてゆく。序盤こそ修也は優勢を保ち敵の防御を破壊していたものの、徐々に押されてゆく。
「呪文・発動――――破壊する暴風」
【破壊する暴風:白・呪文】
『クリーチャー1体を破壊する。捨札にある呪文が__5/10/15__枚以上なら、さらにクリーチャーを体破壊する。』
「これ、は……!」
修也の右手に装備された手甲型召喚器が、相手の呪文を解析する。開始時からカタリナは、呪文詠唱に重きを置いたデッキ構造だった。徐々に強化される呪文を主軸としたデッキ展開。壁となるクリーチャーを失った修也に、カタリナの攻撃が突き刺さる。
「ボクの手元にあるクリーチャーで――3回直接攻撃――こちらの行動は終わり――」
「ッ……!!」
魔導で操作された鋼鉄兵群が、鋼の拳を振るう。その重い一撃が修也に届く寸前で、半透明の防壁が展開された。しかし、2撃目を受け止めた瞬間にシールドに大きくヒビが。そして3回目の攻撃がぶつかった瞬間、バリアは砕け散って空中に薄く溶けてゆく。
<生命維持装甲が破壊されました.次の攻撃を受けるとあなたの敗北です.>
絶体絶命の状況に追い込まれ、しかし修也は。シールドの破壊によって手元に来たカードを掴んで、反撃に転ずる。
「発動……<最期の賭け>!」
【最期の賭け(Last Fortune)】
『ターンの終了時もう一度自分のターンを行う。そのターン終了後、あなたは敗北する。』
「なんと――――そんな、魔法が――――」
「そして召喚……『狐巫女ヒマリ』!」
「御主人、どうやら苦戦しておるようじゃの? 安心せい……儂に敵うものなど居らぬ事を証明してやろう!」
【狐巫女ヒマリ:緑・神属性】
『このクリーチャーの召喚時、属性:緑を持つクリーチャーを山札の上から3体特殊召喚する。その後山札をシャッフルする。召喚したターン、このクリーチャーと同時に召喚したクリーチャーは行動できない。』
ヒマリの使用していたデッキの特徴は異常なほどに早い展開速度。クリーチャーを一掃されても、即座に盤面の不利を覆すことが出来る。そして、召喚直後に行動できなくても、1ターンの優位が有れば。
「もう1回目の俺のターン……全員で攻撃!」
序盤で割れ欠けていたカタリナのシールドは2回目の攻撃で砕け散った。そして、3体目のクリーチャーの攻撃が彼女の身体に突き刺さる。ゴブリンのようだが、その手元には何やらナイフのようなものがあった。
【皮剥ぎゴブリン】
『このクリーチャーの攻撃によって破壊された対象は、クリーチャーのコントローラーが使用可能な装備魔法として扱う。』
その効果を修也は理解できなかったものの。ゴブリンの刃がカタリナの身体を突き刺し、彼女は力なく倒れこむ。
「がッ――くっ――勝て――なかった――か――」
「…………おい!? 何が起こってる!?」
だが。ヒマリを倒した時とは違い、カタリナの身体には異変が起こっていた。苦しそうに呻いた彼女はしゃがみ込み、しかし、彼女の脚は潰れた風船のように萎んでいる。普通の人間に起こって良い変化ではない。慌てた修也はカタリナの方に駆け寄った。
「大丈夫か!? これってどうすれば……!?」
「いや――好都合だ――これでボクは君の『所有物』になる――好きに使えばいい――」
「そう言われても…………そうだ、お前が狙っていた召喚術士って誰の事なんだ?」
気になった。既に相当な強さを持つ彼女が、手段を選ばずして狙っていた召喚術士。それが一体何者だったのか。少し俯いたカタリナは、やはり感情など籠っていないかのように告げる。
「――『メリッサ・ファルメール』。この国の王女にして、ヴァイス国軍最強の召喚術士――だが、今の彼女は『あの子本人じゃない』――――」
「王女が……別の人間じゃと!?」
今度はヒマリが驚く番だった。彼女にとっては、この国、ひいては王女はヒマリの母国であるグリューン国を滅ぼした怨敵。それが何者かに操られていたというのは、聞き捨て成らない事であった。
「数年前から。――各国に宣戦布告する直前から。あの子は何者かに操られている――怪物騒ぎも――王宮主導の事件だ――」
徐々に萎みゆくカタリナの表情が、僅かに変わる。一度も感情を露にしなかった彼女が、涙ぐむかのような表情をして。
「都合のいい頼みをするようだが――どうかメリッサを元に―――あの子を、止めてくれ―――――」
それを最後に、彼女の最後の息が止まる。くしゃくしゃに潰れてしまった顔をクタリと横たわらせて、彼女の身体は石の床に倒れこんだ。
◆
「……はぁっ……結局本題に進む前に終わってしまった……」
本来ここに来たのは、『世界を渡り歩く呪文』の解読のためだった。それを解読してくれる魔導士を倒してしまってはどうにもならない。肩を落とした修也だったが、ヒマリは不思議そうな顔で修也に尋ねる。
「ソイツを使えば良いのではないかの? もう御主人様の『所有物』なのじゃから」
「……ん?」
ヒマリは、脱ぎ捨てられた服のようになっている『カタリナだったもの』を指さす。以前召喚儀式でヒマリを倒した時は、こんな風にはならなかった。最後に攻撃した『皮剥ぎゴブリン』の攻撃によるものだろうか。カタリナの着ていた服を取り除いて、ヒマリは潰れ切ったカタリナの身体を軽く摘まむ。
「恐らくカタリナとやらが制限しているようじゃが……主殿だけが『装備できる』ようじゃ」
「装備……いやサイズとか合わないし、この人の服着てどうするんだ?」
カタリナの来ていた白色のローブに触れて修也は疑問を呈する。そもそも、体格からして着れるようなものではないだろう。そう言おうとした時、思わぬ返答がヒマリから返ってきた。
「装備できるのはそっちではないぞよ? 『カタリナ本体』の方じゃ」
「………………ん?」
ヒマリの手にある『魔導士カタリナだったもの』。人間の肉体とは思えないほど薄く、表面にシワができている。乱暴に脱ぎ捨てられた衣服のように、のっぺりと伸びているソレを、修也はおそるおそる掴んで観察する。ちょうど『皮剥ぎゴブリン』の攻撃が当たった場所、腹部に切り裂かれたかのような跡がある。しかし、血の跡は無い。
「装備……装備ってどういう……?」
「そのまま、ソレに頭を通せば良いのじゃ。毎日服を着るのと同じ感覚じゃよ」
修也は、一瞬理解が遅れる。ヒマリが意図することを把握した瞬間、絶句するしかなかった。
「…………えぇぇ……元々人間だったものを装備するのか……」
『皮剥ぎゴブリン』によって出来上がった『皮』を見てもヒマリは特に驚いた様子もない。彼女の国では珍しい事では無いのだろう。しかし、自分の身を守るためとはいえ、人間を倒してしまいこのような姿になってしまったことに若干の抵抗感が浮かぶ。――――だが。これまでしてきた事とそう変わるだろうか。
「う、むぅ……分かった、このまま何もしなかったら埒が明かない。着てみる」
手触りは、本当に肌を触っているかのようにスベスベしている。『生地』の裏側も同じようだ。腹に開いた穴を、少し怯えつつも開いてみたが、何もなかった。有るはずの骨も内臓も、何もない。眼があった場所は空洞になっていた。改めて、『この世界』で自分の常識は通用しないのだということを痛感する。
「こっちが前だから、こうやって……」
穴の部分を広げて、フードを被るようにして頭の部分を入れる。一瞬だけ、内側に人肌の暖かみを感じた。カタリナの頭の部分に、自分の首を突っ込ませて。
「これで外が見え――――なっ!?」
驚いたのは、自分の声色に対して。修也自身の低い声ではなく、対峙していたカタリナの高いウィスパーボイスになっていたから。カタリナの体格は修也よりも明らかに小さいが、頭の部分はまるで「自分自身の物」であるかのようにピッタリはまり、皮になったカタリナを着込んでいるという感覚すらない。
「『皮』になった者のチカラ、肉体をもそのまま奪うことができる。これがグリューン国の深部で開発されていた『皮化』の技術じゃ」
「内部工作にはうってつけの魔法だな……」
「その予定だったんじゃが、『召喚儀式』には敵味方の判別能力もあったから、実際の戦闘ではおろか、街に侵入することすら敵わなかったのじゃよ」
腕も、男である修也の方が長く多少ながら筋肉もあったはず。しかし、腕を通したあとの『修也』の両腕は少し短く、しなやかな感じがある。手も小さい――だが、サイズが合わないはずの手のひらでも全く圧迫感なく動かすことができる。
脚の長さも、明らかに修也とカタリナとでは違う。右足を入れながらも入るだろうかと一瞬疑問に思った。しかし、そんな心配を他所にカタリナの皮は伸びる事もなく、その足先を地面に付けた。片足だけ短い状態になり、体勢を崩して修也は座り込んでしまう。
「わわっ!?」
「あっ、そうじゃった! 脚の部分は着る時にどうしても左右が『ズレる』から座って着た方が良かったのじゃ!」
「先に言ってよ……」
文句を言うも、カタリナの声で発せられると可愛らしい様にしか聞こえない。――それを自分が発しているというのだから、不思議な感覚だ。もう片方の左足もぐいと皮の内側に入れ、修也の体が全部カタリナの皮の内側に入り込んだ瞬間。腹に開いていた大きな穴がスッと閉じる。
「えっ!?」
(ふむ――『ボク』を着ることが――出来たようだね)
「何ッ……!? 皮になってもまだ意識があるじゃとっ……!」
カタリナの皮を全て着込んだ瞬間、彼女の『声』が聞こえた。声が耳に届いた様ではなく、音の発生源がどこか不明で、傍にいたヒマリにもその声が聞こえている。通常の音ではない、魔術的な方法での伝音。
(安心して――君たちに危害を加えるつもりはない――先程までとは違ってね)
「それをどう信用しろと言うのじゃ……!」
(君たちがボクよりも――召喚術士として優れている事が分かった――だから、ボクの力を全て君に委ねた方が――『彼女を討てる』可能性が高い)
そこでようやく、ヒマリはある事に気が付く。
「御主人……そやつの記憶、引き出すことはできるかの?」
「皮を着たら、そんな事が出来るのか?」
(君は魔力を持たないのか――その関係でボクの魔力と彼が結びつかない――だから記憶が読めないのだと思う)
『カタリナの皮』が急に閉じてしまったので慌てた修也だが、改めて自分の体を確認すると。視線を下に向ければ、胸元の膨らみが見える。そして、裸のようになってしまったカタリナの体には、当然修也が持っていた男の象徴は無く、代わりに女性器が存在するという事実。石造りの部屋の中では、ほんの少し肌寒さを感じる。
「分からないな……俺たちの事を襲った理由も、今になって協力するって言う理由も」
(全部説明するのは――骨が折れる――ボクの『記憶が読めるように』なれば良い――グリューンの神よ、彼に『心併せの儀』を行えば良い――)
「え…………あぁ、そうすれば確かに可能かのぅ……」
ヒマリには、カタリナが告げたことが何か分かるらしい。しかし、彼女はやや困ったような表情をしていた。修也には何のことかさっぱりだったので、質問する。
「何のことを……?」
「あー……その、じゃな。精神を、この女と同調させる方法なのじゃが……主殿の感覚とカタリナの感覚を共有させて同じ感情を引き起こせば、『同じになれる』という原理で……それにはより強烈な肉体への感覚が必要になる」
「強烈な肉体への感覚を、って……痛みとか?」
「いや……それはむしろ拒絶反応を生みかねん。だからこそ必要なのは――」
裸になったままの自分に、そっとヒマリが近寄る。そのまま、彼女が両手を開いて抱き着く。ふわりとした香りが鼻腔をくすぐり、背筋にこそばゆい感覚が走る。
「一番簡単な方法は、やはり性感を与えて絶頂させることかのぅ……元の意識と『皮』の意識が同一化するぐらいに」
「ぇ……いや待って、本人の意識が有る中でそれをやるの……?」
(ボクは――抵抗は無い――君たちが好きにすればいい)
「う、うぅむ……主殿と交わるのには万々歳じゃが、ガワが見知らぬ小娘ともなると少々やりづらいのぅ……」
地下室では積極的に絡んでいたヒマリが、少し気恥ずかしそうにしているのが少し可愛らしく思える。しかし、カタリナの皮を着こんだ影響で、今の修也とヒマリの背丈はほとんど同じ。顔と顔同士が近づき、吐息が混ざりあう。
「ど……どう、すれば良いかな……」
「う、むぅ……恥ずかしながら、妾はおなごを悦ばせる方法をあまり知らぬ……自分自身の身体ですら、あまりそういった事もしておらんかったからのぅ……」
「俺も……女性の感覚なんて分からなかったから……」
お互い困ったような表情になり、少しして軽い笑いが起きる。どっちもシた事の無いような初心者同士、手探りでやるしかない。おずおずと、相手の身体に手を伸ばしてそれぞれの乳房に触れる。巫女服の上から触れるヒマリのおっぱいは温かく、心臓の鼓動も伝わってくる。同時に『自分のおっぱい』が触られる感覚。おずおずとした手つきで、彼女もおっぱいの感覚に慣れていないようで、ヒマリは少し驚いたような表情をしていた。
「お、おぉ……この娘、妾より小ぶりなモノだと思っていたが、予想以上に柔らかいのぅ……」
「ちょ……っ♡ ヒマリ、そんなに揉ま、ないでっ……♡♡」
(なる、ほどっ――♡♡)
面白い玩具を与えられた子供のように、ヒマリは目を輝かせて乳房を何度も揉みしだく。時々強く揉まれるのが不思議と心地よく、弱い刺激はもどかしさを助長させる。負けじと、カタリナもヒマリの前をはだけさせ、その美乳に両手を添えゆっくりと触る。
「ん……♡ はぁぅっ……♡♡ あるじどのっ……♡♡ もっと、つよくっ……♡♡♡」
「あ……♡♡ っはぁっ……♡♡ こんな、かんじかな……♡♡♡」
両手でオッパイを揉む愉しみから、徐々に『揉まれる』事の悦びに身体が慣れつつある。時々ビクンと身体が震えつつ、相手の身体を弄り合う。甘い吐息が2人の間で混ざり合い、情欲にどんどんと火が付く。優しく触れ、時々強く抓る。相手が求めていることが、自然と分かる。自分が求めている物でもあるから。
「あ゛っ♡♡♡ いまのっ……♡♡ よかったっ……♡♡ ねぇ、ヒマリ……♡♡ キスしても……♡♡♡」
「んう゛っ♡♡♡ わ……♡♡ わらわはっ……♡♡ かまわんぞっ……♡♡」
快楽に蕩け、火照っているヒマリの表情。愛らしさと色気の、本来混ざらない2つが一緒くたになったような顔。思わずカタリナの口から飛び出た言葉を、ヒマリは即座に受け止める。両者の体躯が更に近づき、乳房どうしで触れ合うぐらいになって、口づけを交わす。
「んちゅっ……♡♡ じゅるっ……♡♡♡ はぁっ……♡♡♡♡ むむぅっ……♡♡♡」
「ぁふっ……♡♡♡ じゅぅぅっ……♡♡ ふぅっ……♡♡ れろぉっ……♡♡♡」
唇だけ、では済まなかった。どちらともなく舌を入れるフレンチキスは、一瞬慣れない為に舌同士がぶつかり合ったものの、徐々に互いの奥深くまで味わおうとする動きに変わる。ヒマリの顔がすぐ近くにあり、あどけなさを残す彼女がこんなにも色香に酔うのか、と思いたくなるほど魅惑的な表情をしていた。
「だんだん……♡♡♡ 下の方も、熱っぽくなってきたのぅ……♡♡♡♡」
興奮で早くなっていた鼓動は、お互いの身体を熱くする。今のカタリナには、その昂ぶりを示す雄の象徴が存在しない。それなのに、何故か下腹部に己の血液が集中するかのような感覚がある。一体どこに、そんな感覚器が有るのだろうか。
「ついさっき……♡♡ ツムギに教えてもらったからのぅ……♡♡♡ 拙い動きじゃが、許しておくれ……♡♡♡」
「ぁう゛ぅっ♡♡♡♡ そ、そこっ……♡♡♡♡ こんなに、きもちいいのっ……♡♡♡♡♡」
(これ――は――♡♡♡ 不思議な――感じが――♡♡♡♡)
ヒマリの指先が、カタリナの陰核をツンと撫でる。その刹那、あらゆる感覚が吹き飛ぶかのような衝撃が伝わった。自分の肉棒を扱いた時の感覚に近いが、それよりもずっと強烈な快楽。一瞬、それが性感であることすら理解が追いつかなかった程に。
「ほぅ……♡♡♡ そんなに良かったかの……♡♡♡♡ あるじどのが、もっーとよがっている姿、見たいのぅ♡♡♡♡」
「なぁ゛っ♡♡♡♡♡ な゛んどもっ♡♡♡♡♡♡ しゃわらない゛でぇっ♡♡♡♡♡♡♡」
(――っ゛♡♡♡♡ ――う゛ぅっ♡♡♡♡♡)
一撃で様相が崩れたカタリナを見て、ヒマリは悪戯っぽく笑う。そしてそのまま、女性器への刺激をどんどんと強めていった。ただ指先で弄るだけ、それだけなのに。暴風の様な快楽に何度も晒され、カタリナは腰砕けになる。もう、立っているのもままならない程に。ぺたん、と床に座り込んで、荒い呼吸と共にビクビクと身体を震わせるほかない。
「あ゛っ♡♡♡♡ あ゛う゛ぅっ……♡♡♡♡♡ う゛ぅ゛ぅっ……♡♡♡♡ 急に、やめてよっ……♡♡♡♡♡」
(――すご――かった――♡♡♡♡♡)
「…………今のあるじどの、すっごく可愛い」
ヒマリの目の色が変わる。本来は『支配する側』だったヒマリの嗜虐心に火が付き、『自分の主人を悦ばせる』という名目の元に『もっと淫らな姿を見たい』という欲求を抑えようとしなくなる。地下室で自分が弄ばれた時の感覚を思い出し、カタリナのワレメに沿って舌で舐める。
「じゅるぅっ♡♡♡ じゅぷぅっ♡♡♡♡ れろぉっ♡♡♡♡♡」
「ひゃめ゛っ♡♡♡♡♡ あ゛あ゛ぁっ♡♡♡♡♡ や゛め゛っ♡♡♡♡♡♡ ひイ゛っ♡♡♡♡♡♡」
ザラッとした舌の感覚と、舌先でチロチロとくすぐられる攻撃。そして時々、舌先がワレメをこじ開けんと侵入する。カタリナは思うように動くことすらできない。ただ快楽に喘ぎ声を漏らす、それだけで精一杯。呼吸が上手くできないし、身体が勝手に動く。苦しいはずなのに、どうしてかヒマリの攻めを止める事が出来ない。この甘美な拷問を、もっと味わいたい。無意識的に、そんな思いが浮かぶ。
「……はぁーっ♡♡♡」
「い゛っ♡♡♡♡ ――――ぁ゛っ♡♡♡ ぁぅぅ……♡♡」
トドメとばかりに、ヒマリはカタリナの秘部に熱い息を被せる。ただの吐息、しかし敏感になっていた彼女の身体はそれにすら反応し、一瞬の絶頂と共にじんわりと愛液を漏らし始める。
「主殿が乱れるのを見てるとっ……♡♡♡ 妾も、気持良くなりたいのぅ……♡♡♡♡」
既に湿りかけていた下着を脱ぎ捨てて、自分の陰部を露わにしたヒマリ。そのまま、お互いの気持ち良い所を重ねあう。貝合わせの状態で、秘部と秘部とを触れさせ擦り合わせる。水っぽく、相手の体温が直に伝わって。もどかしく、じれったい。だけどわずかに気持ちいい。
「ぁ……♡♡ ぅぅっ……♡♡♡ んくぅっ……♡♡♡」
「ふっ……♡♡ ぅっ……♡♡ はぁぁっ……♡♡♡♡」
クチュ、クチュと艶かしい音と、ため息のような喘ぎ声。自分がこんなにも甘い声を出して、女性とまぐわっている現状が、修也にはまだ現実の事と思えないでいる。
「一度自分の姿を見てみるかの? 今の主殿がどれだけ色香が強く、艶かしいかを……♡♡♡」
巫女であるヒマリが唱えた呪文は、宙に浮く鏡を出現させた。カタリナは、鏡面の向こうに居る自分を捉えてしまう。小柄な体躯に、潤んだ目元。顔を火照らせて、アソコをぐちゃぐちゃに濡らしている。――こんなエッチな姿が、自分のものだなんて。
「このまま、ずっと交わっていたい気持ちも有るがのぅ……♡♡ 『心併せの儀』の本番は、これからなのじゃ♡♡」
ヒマリがカタリナのへその下辺りを軽く撫で、何か呪文を唱える。すると、元々の修也に備わっていた男根の感覚が、何故か 今の自分の身体からも伝わる。ドクン、ドクンと脈打ち放出したいと疼きをため込んでいる。下腹部に残っていたその感覚が、段々と怒張する勢いを強めて、快楽と共に溢れ出してくる。
「あ゛っ♡♡♡♡ な゛んでっ♡♡♡♡♡ このかんじ、がぁっ♡♡♡♡♡♡」
「――おおっ♡♡」
(これ……は――興味深いな――)
思わぬ絶頂に修也が自分の股間を確認すると、カタリナの身体の膣から、何故か男の象徴であるはずのペニスが現われていた。さっきまでは無かったその器官は、しかし普段修也が扱っているモノでもある。触れた感触も、触れられた感触も、間違いなく自分の物。ヒマリはシュウヤの逸物を眺めて、甘い声で囁く。
「のう、あるじどのぉ……♡♡♡♡ ワラワも、気持ちよくなって良いかのぅ……♡♡♡♡♡♡」
「それって、どういう……う゛っ♡♡♡♡」
修也が返答するのを待たずに。ヒマリはカタリナの身体に跨る様になり、突如カタリナのワレメに現れた肉棒を迷うことなく自分の膣口で呑み込む。既に愛液で塗れていたヒマリの膣壁は彼女の主君を招き入れんとばかりに、一気に受け入れた。その衝撃は、修也の方にもダイレクトに伝わる。
「あ゛ぅ゛っ♡♡♡♡♡ やはり……っ♡♡♡ 主殿のモノはっ♡♡♡♡ 妾のカラダにぴったりじゃのうっ♡♡♡♡♡」
「ふう゛ぅ゛ぅっ♡♡♡ 急にっ♡♡♡ そんなことするなよっ♡♡♡♡♡ 腟内の感覚がっ♡♡♡♡」
カタリナの皮の内側から現れた肉棒は、彼女のワレメから生えている。ペニスが動こうものなら、カタリナの腟内で擦れてまた性感を引き起こすのだ。じゅぷ、じゅぷと二人が混ざり合えば、狂気的な程の快楽が、二人分同時に修也を襲う。
(そうか――これが男の官能――しかも同時にボクのもっ――♡♡)
「だめっ♡♡♡♡ ひまりぃ゛っ♡♡♡♡♡ もうむりい゛ぃっ♡♡♡♡♡ お゛かしぐなるっ♡♡♡♡♡」
「ふふっ♡♡♡ まだまだ止めれぬぞぉっ♡♡♡♡ 『自分がわからなくなる』まで感じなければ、なぁっ♡♡♡♡♡ んゔっ♡♡♡」
腰を軽く持ち上げ、ストンと落とす。鋭敏になっている2人、あるいは3人の官能を満たすには十分過ぎるほどであった。抵抗しようとカタリナも身じろぎするが、それすらヒマリの支配欲を却って滾らせるのみ。却ってひねる様な動きで、余計に腟内が擦れる。
ひたすらカタリナを愛撫するヒマリの心に、相反した考えがよぎる。――こんなにも可愛らしく、庇護欲が唆られる様な人が、御主人様で良かったと。この人を守り、そして滅茶苦茶にできるのは私だけなのだと。
「ほらっ♡♡♡♡ 妾のおマンコはぁ゛っ♡♡♡ 気持ちよかろう゛っ♡♡♡♡♡」
「だっ……♡♡♡ もうむ゛り゛っ♡♡♡♡ ぉ゛かじぐなるっ♡♡♡♡♡」
(はぁ゛っ――♡♡♡♡ これはっ――♡♡♡♡ 凄まじい――♡♡♡♡♡)
ずちゅり、ずちゅり。肉欲に突き動かされたヒマリの動きは、カタリナの身体を味わい尽くさんと、何度も、何度も激しくプレスした。悦楽に押しつぶされる、そんな錯覚すら浮かぶ。
「思いっきり、妾のナカに射精してっ♡♡♡♡ 雌としてもイクのじゃっ♡♡♡♡♡」
「ん゛お゛ぉ゛ぉ゛っ♡♡♡♡♡ も゛う゛っ♡♡♡♡♡♡ がまん゛っできなあ゛っ♡♡♡♡」
(――コレが♡♡♡♡ 射精の――快楽っ゛♡♡♡♡ それに゛ぃ゛っ♡♡♡♡ ボクのもっ゛♡♡♡♡)
修也の逸物がヒマリの膣壁に触れ、わずかに力が戻るのと同時に、カタリナの膣内には肉棒の刺激が伝わる。ヒマリを犯しているのに、彼女に犯されているかのような状態。限界は、もうすぐだった。
「――ぁ゛っ♡♡♡♡♡♡ ぁお゛ぉ゛ぉ゛っ゛♡♡♡♡♡♡♡♡ お゛ほぉ゛ぉ゛っ♡♡♡♡♡♡♡♡」
「ぁはぁっ♡♡♡♡ きたきたきたぁっ♡♡♡♡♡ あるじどののぉっ♡♡♡♡♡♡」
(ボク――がっ♡♡♡♡ 彼に――混ざってっ♡♡♡♡)
さながら獣のように叫びながら、カタリナは激しく絶頂して。ペニスから吐精するのと共に、それが生えている蜜壺からも潮を吹く。修也からの熱を受け取ったヒマリは、歓喜に打ち震えた。
「ぁ゛…………♡♡♡♡♡♡ ぁぅ゛……♡♡♡♡♡♡♡」
(っ――♡♡♡♡♡ はぅ゛ぅっ――♡♡♡♡♡)
「――まだ、じゃ♡♡ もっと、もっとぉ……♡♡♡♡♡」
緩慢な動きで、しかしヒマリは再びクチュ、クチュと腰を振る。カタリナは、最早抵抗する気力もない。ただ、甘美な毒を味わい続ける事しか出来なかった。
◆
幾度もの絶頂の余波が、ようやく収まって。呼吸を落ち着かせながら修也はヒマリに告げる。
「―――――記憶、読めるようになった」
「本当か、主殿!」
カタリナは優れた魔導士である他、僅かに先の未来を予見する異能が有る。しかし未来視はかなり断片的な情報しか判明せず、今日ここに修也達が来ること、修也たちの力を扱えば王女に対抗する力を得る事が出来る事は予見が出来ていたものの、修也と戦って勝つかどうかは『視ることが出来なかった』ようだ。
「……じゃが、一体どうして。優れた魔導士であるお主ですら、王女の洗脳を解けないというのか?」
「―――――ああ、そうか。成程」
『カタリナの記憶』を読んで、修也も納得がいく。
「今の王女様……いや。王宮の主要人物の多くが。召喚儀式によって操られて、『誰かのデッキとして操作されている』。召喚儀式の支配能力で、ヴァイス国が丸ごと乗っ取られている。同じように操られることを危惧して、カタリナは脱出したんだ。自力で洗脳を解くことも出来ないのだから、一度逃げるしかない」
ヴァイス国が各国への支配を開始したのも、街に怪物が出現するようになったのも。カタリナの見立てでは、王宮を操る『何者か』が原因。そして、元の世界に戻るための方法もソコにある。
(直接動くことは難しいけど――助言はする。目的こそ違うけど――キミとは協力できる。『世界を渡り歩く呪文』を唱える事が出来るのはごく一部の人間――特異な魔力を持つ王宮の者だけだ―――キミは呪文のため、ボクは王女のため――交換条件としては悪くないだろう)
「向かうしか、無いようだな」
「……そうじゃな。ワシもその黒幕とやらを見なければ気が済まぬ」
そしてさらに、カタリナは告げる。
(ボクが君を襲った理由――どちらかが勝つかして――召喚儀式のデッキを『巨大な1デッキ』にしようとした理由――ボクの机の上にある、魔導書がソレだ)
「……これ、か?」
蒼色の分厚い魔導書を修也が手に取ると、それは4枚のカードに変わる。どれも同じ効果だったが、衝撃的なものだった。
「とんでもないカード……」
(――ボクの『切札』。あの子を――あの子を操る者を倒すための――ボクが編み出した唯一の方法)
「一度自分の姿を見てみるかの? 今の主殿がどれだけ色香が強く、艶かしいかを……♡♡♡」
巫女であるヒマリが唱えた呪文は、宙に浮く鏡を出現させた。修也は、鏡面の向こうに居る今の自分を捉えてしまう。小柄な体躯に、潤んだ目元。顔を火照らせて、アソコをぐちゃぐちゃに濡らしている。――こんなエッチな姿が、自分のものだなんて。
―――――
地下室を探索し終わり、今後の方針について話し合う。『世界を渡り歩く呪文』の術式が書かれた本は見つかったが、暗号化の魔法鍵が掛けられ、解読不能の紋様しか読めない。ヴァイス国の騎士団員であったルーネッタは提案する。
「私の騎士団本部に向かいましょうか。そこに魔法鍵の解除を担当してる方も居ますし」
『世界を渡り歩く呪文』の魔術書を手に入れ、修也たちは地下牢を後にする。
地下室から図書館、地上を数分歩いて。たどり着いたのは、堅牢さを誇示しているかのような石造りの巨大な建物。各所から砲台と砲手が顔を覗かせていて、門までは跳橋だけが通路。城の周りに水の張った堀まである、完璧な城だった。ルーネッタが合図を送ると、上がっていた跳橋が少しずつ傾いてくる。
「えぇ……何ここ……」
「私が務めている騎士団の詰所ですね。国が軍備に財源を割いた結果、お金が余ってしまって。ただの1拠点に過ぎないココだけ城みたいな建物ができちゃったんです」
軍事的な運用を考えていたのも納得で、城壁の随所には小さな穴が空いている。銃や矢、投石、魔法などを射出する穴だろう。ゴトン、と跳橋が降りきって鎖の動きが止まる。跳橋の向こうで兵士が合図をすると、ルーネッタが歩みだした。修也も一瞬遅れてついてゆく。彼女が修也に耳打ちした。
「身辺確認されると思いますけど、私の方で誘導しますから」
「お、おう」
橋を渡り切ると、正門の傍に2人の甲冑騎士が背の丈ほどもある槍を交差させて警備をしている。ルーネッタとは面識があるようで3人で話し始めた。
「外の見回りは終わりなのか、ルーネッタ?」
「いえ……『怪物騒ぎ』の現場にいた人間です。被害状況の報告に協力してくれるそうです」
「あぁ、昨日もまた『出た』もんな……分かった」
彼らが城門への道を開け、ルーネッタは修也を手招きする。小さく礼をして小走り気味に、修也はルーネッタの背を追う。建物の奥までやや歩いて、修也は質問した。
「『怪物騒ぎ』って何?」
「御主人様には、きちんと話しておかないといけませんね。最近この国では、怪物が出現するんです。その種類も様々ですが、ちょうど『私』が呼び出されたのと同じ、異世界の住人です」
ルーネッタの内側に入り込んだ怪物、それを呼び出したのは修也だ。だが、他の怪物が出現しているというのは初耳だった。異世界の存在を呼ぶ事ができる召喚儀式なら可能だろうが――
「召喚儀式を扱えるのは卓越した魔導士だけなのです。異世界の住人をこの世界に繋ぎ留めておくだけで相当な魔力が必要で、それだけの魔法を扱えばどれだけ上位の魔術師でも痕跡を残してしまいます。ただ、最近は痕跡が見当たらないのに怪物が出現する事例がいくつも見られていて」
召喚儀式による魔物出現の線は無い、というのが騎士団の見立てであった。
「怪物を撃退するために騎士団も見回りを強化するようになったんです。ただ出現する魔物は騎士団員が集合して戦えば倒せる程度のモノが大半ですが」
「俺には……その魔力とかは無いと思うんだが」
「この世界の住人は多かれ少なかれ、魔力を保持しています。ですが御主人は逆に魔力を全く持っていない。それなのに、召喚儀式を行うことができる。修也様以外に同じような方法で異世界の住人を召喚できる人物が居るとすれば、今までの怪物騒動の原因がはっきりします」
その辺はさして重要な話でも無いのですけどね、とルーネッタは付け加える。確かに、修也達の目的は手元にある『世界を渡り歩く呪文』の封印を解除することだ。城中をどう歩けば良いかは分からないので、そこはルーネッタについてゆく事にした。
――――――――
「……悪い、今どこに向かってるんだ?」
「王宮から出向されている魔導士の書斎に向かってます。すみません、私も迷いそうになるので無口になっちゃいました」
「騎士団の中にも魔導士が居るんだな……いや、戦術に組み込まれる以上当然か」
「召喚儀式による戦争が基本的なヴァイス国の戦術になったので、騎士団を統率する人は術式を執り行える高位の魔術師だけになったんです」
城内の奥深く、窓も減って陽の光も当たらない程暗くなってきた。灰色の壁に所々備え付けられているロウソクが、炎をゆらゆらと揺らして辺りを照らす。辿り着いた部屋への入口は木製のドアだったが、その表面には複雑怪奇な紋様や、解読できない文字がドア全体にびっしりと描かれており、オカルトじみた不気味さがあった。
「大丈夫なのか……? 中に入った瞬間呪い殺されたりとかしない……?」
「私は一度会った事がありますが……悪辣な罠を張るタイプの方では無いですよ」
おそるおそるドアを開き、2人で入る。埃っぽいニオイが漂い、室内に置いてあるランタンが机だけを照らしていて、他は闇に覆われている。書斎で作業をしていた何者かが立ち上がり、こちらを見た。
「――おや、貴方は」
「失礼します! 警備部隊のルーネッタと申します」
「――中身が人間ではない――何者――」
感情の一切籠らない、平坦な口調で。部屋の主は淡々と、ルーネッタの正体を見破る。絶句するルーネッタと修也をよそに、モノクルを掛けた彼女は修也を指差した。
「『支配』しているのはキミか――だが君は魔力を持たない――どうやって支配を――」
「ど……どうしてそこまでっ……!?」
「いきなりで悪いがボクは君の力が欲しい――君もボクの力が欲しいのだろう――」
途切れ途切れに素早く話す彼女の口調に修也は慣れなかったが、暗い部屋にようやく目が慣れてきて、相手の姿を確認することが出来た。ロウソクが、彼女が掛けているモノクル眼鏡を照らす。褐色の髪の下で、彼女の黄色い瞳はただ静かに修也を見据えるのみだった。純白のローブと青いマントを静かに揺らし、少しだけ互いに距離を詰める。背丈は大人としても小さいが、それを感じさせない不思議な存在感がある。
「内容によるけど、力を貸せば良いのか?」
「いや――ボクは君の力がそのまま欲しい――だから君を倒して奪い取らなければならない――逆にこちらが負ければ全面的に協力する――」
一切の怒気も迫力も感じさせぬまま、『そうしなければならない』といった風に彼女は修也にそう告げる。これには修也も、疑念を覚えた。
「待て……! 何で勝負しなければならない!?」
「君は――召喚儀式を完全には把握していないのか――召喚術士同士の戦いは必ず同数でなければならない――ボクはある1人を狙っている、その人も召喚術士だ――」
「共同戦線は、張れないって事か」
「そして術士が強くなるには――他の術士を倒し召喚札を奪う必要がある――君もそうしてきたはず」
地下室でヒマリを打ち破った時に、彼女の持っていたカードが自分のデッキに入ったことを修也は思い出す。あれと同じように、修也が負ければ自分のデッキを失うのだろう。コツリ、コツリと歩みを進めながら、彼女は修也に近づいた。
「ボクも手段を選ぶ余裕が無い――君に闘う理由が無くても、ボクは君を倒す理由がある――君の力を奪うため」
「ごめんなさい、御主人様……まさかこんな事になるなんて……!」
「大丈夫だ、戦う用意をしよう。一度デッキに戻ってくれ」
修也は冷静を装い、ルーネッタをデッキに収納する。連続で召喚術士と戦う事になるとは思っていなかったが、今はヒマリから手にしたカードが有る。以前とは違う戦い方も出来るはずだ、と手甲の召喚器を掲げた。
「王宮魔術師、【カタリナ・フォン・アブト】――その力、貰い受ける――召喚――」
「……召喚ッ!」
深い闇が支配する部屋で、2つの光がぶつかり合う。
――
魔導士という肩書に違わず、カタリナは呪文系のカードを多く使う。そして厄介な事に、カタリナが呪文を使う度に、次の呪文は強化されてゆく。序盤こそ修也は優勢を保ち敵の防御を破壊していたものの、徐々に押されてゆく。
「呪文・発動――――破壊する暴風」
【破壊する暴風:白・呪文】
『クリーチャー1体を破壊する。捨札にある呪文が__5/10/15__枚以上なら、さらにクリーチャーを体破壊する。』
「これ、は……!」
修也の右手に装備された手甲型召喚器が、相手の呪文を解析する。開始時からカタリナは、呪文詠唱に重きを置いたデッキ構造だった。徐々に強化される呪文を主軸としたデッキ展開。壁となるクリーチャーを失った修也に、カタリナの攻撃が突き刺さる。
「ボクの手元にあるクリーチャーで――3回直接攻撃――こちらの行動は終わり――」
「ッ……!!」
魔導で操作された鋼鉄兵群が、鋼の拳を振るう。その重い一撃が修也に届く寸前で、半透明の防壁が展開された。しかし、2撃目を受け止めた瞬間にシールドに大きくヒビが。そして3回目の攻撃がぶつかった瞬間、バリアは砕け散って空中に薄く溶けてゆく。
<生命維持装甲が破壊されました.次の攻撃を受けるとあなたの敗北です.>
絶体絶命の状況に追い込まれ、しかし修也は。シールドの破壊によって手元に来たカードを掴んで、反撃に転ずる。
「発動……<最期の賭け>!」
【最期の賭け(Last Fortune)】
『ターンの終了時もう一度自分のターンを行う。そのターン終了後、あなたは敗北する。』
「なんと――――そんな、魔法が――――」
「そして召喚……『狐巫女ヒマリ』!」
「御主人、どうやら苦戦しておるようじゃの? 安心せい……儂に敵うものなど居らぬ事を証明してやろう!」
【狐巫女ヒマリ:緑・神属性】
『このクリーチャーの召喚時、属性:緑を持つクリーチャーを山札の上から3体特殊召喚する。その後山札をシャッフルする。召喚したターン、このクリーチャーと同時に召喚したクリーチャーは行動できない。』
ヒマリの使用していたデッキの特徴は異常なほどに早い展開速度。クリーチャーを一掃されても、即座に盤面の不利を覆すことが出来る。そして、召喚直後に行動できなくても、1ターンの優位が有れば。
「もう1回目の俺のターン……全員で攻撃!」
序盤で割れ欠けていたカタリナのシールドは2回目の攻撃で砕け散った。そして、3体目のクリーチャーの攻撃が彼女の身体に突き刺さる。ゴブリンのようだが、その手元には何やらナイフのようなものがあった。
【皮剥ぎゴブリン】
『このクリーチャーの攻撃によって破壊された対象は、クリーチャーのコントローラーが使用可能な装備魔法として扱う。』
その効果を修也は理解できなかったものの。ゴブリンの刃がカタリナの身体を突き刺し、彼女は力なく倒れこむ。
「がッ――くっ――勝て――なかった――か――」
「…………おい!? 何が起こってる!?」
だが。ヒマリを倒した時とは違い、カタリナの身体には異変が起こっていた。苦しそうに呻いた彼女はしゃがみ込み、しかし、彼女の脚は潰れた風船のように萎んでいる。普通の人間に起こって良い変化ではない。慌てた修也はカタリナの方に駆け寄った。
「大丈夫か!? これってどうすれば……!?」
「いや――好都合だ――これでボクは君の『所有物』になる――好きに使えばいい――」
「そう言われても…………そうだ、お前が狙っていた召喚術士って誰の事なんだ?」
気になった。既に相当な強さを持つ彼女が、手段を選ばずして狙っていた召喚術士。それが一体何者だったのか。少し俯いたカタリナは、やはり感情など籠っていないかのように告げる。
「――『メリッサ・ファルメール』。この国の王女にして、ヴァイス国軍最強の召喚術士――だが、今の彼女は『あの子本人じゃない』――――」
「王女が……別の人間じゃと!?」
今度はヒマリが驚く番だった。彼女にとっては、この国、ひいては王女はヒマリの母国であるグリューン国を滅ぼした怨敵。それが何者かに操られていたというのは、聞き捨て成らない事であった。
「数年前から。――各国に宣戦布告する直前から。あの子は何者かに操られている――怪物騒ぎも――王宮主導の事件だ――」
徐々に萎みゆくカタリナの表情が、僅かに変わる。一度も感情を露にしなかった彼女が、涙ぐむかのような表情をして。
「都合のいい頼みをするようだが――どうかメリッサを元に―――あの子を、止めてくれ―――――」
それを最後に、彼女の最後の息が止まる。くしゃくしゃに潰れてしまった顔をクタリと横たわらせて、彼女の身体は石の床に倒れこんだ。
◆
「……はぁっ……結局本題に進む前に終わってしまった……」
本来ここに来たのは、『世界を渡り歩く呪文』の解読のためだった。それを解読してくれる魔導士を倒してしまってはどうにもならない。肩を落とした修也だったが、ヒマリは不思議そうな顔で修也に尋ねる。
「ソイツを使えば良いのではないかの? もう御主人様の『所有物』なのじゃから」
「……ん?」
ヒマリは、脱ぎ捨てられた服のようになっている『カタリナだったもの』を指さす。以前召喚儀式でヒマリを倒した時は、こんな風にはならなかった。最後に攻撃した『皮剥ぎゴブリン』の攻撃によるものだろうか。カタリナの着ていた服を取り除いて、ヒマリは潰れ切ったカタリナの身体を軽く摘まむ。
「恐らくカタリナとやらが制限しているようじゃが……主殿だけが『装備できる』ようじゃ」
「装備……いやサイズとか合わないし、この人の服着てどうするんだ?」
カタリナの来ていた白色のローブに触れて修也は疑問を呈する。そもそも、体格からして着れるようなものではないだろう。そう言おうとした時、思わぬ返答がヒマリから返ってきた。
「装備できるのはそっちではないぞよ? 『カタリナ本体』の方じゃ」
「………………ん?」
ヒマリの手にある『魔導士カタリナだったもの』。人間の肉体とは思えないほど薄く、表面にシワができている。乱暴に脱ぎ捨てられた衣服のように、のっぺりと伸びているソレを、修也はおそるおそる掴んで観察する。ちょうど『皮剥ぎゴブリン』の攻撃が当たった場所、腹部に切り裂かれたかのような跡がある。しかし、血の跡は無い。
「装備……装備ってどういう……?」
「そのまま、ソレに頭を通せば良いのじゃ。毎日服を着るのと同じ感覚じゃよ」
修也は、一瞬理解が遅れる。ヒマリが意図することを把握した瞬間、絶句するしかなかった。
「…………えぇぇ……元々人間だったものを装備するのか……」
『皮剥ぎゴブリン』によって出来上がった『皮』を見てもヒマリは特に驚いた様子もない。彼女の国では珍しい事では無いのだろう。しかし、自分の身を守るためとはいえ、人間を倒してしまいこのような姿になってしまったことに若干の抵抗感が浮かぶ。――――だが。これまでしてきた事とそう変わるだろうか。
「う、むぅ……分かった、このまま何もしなかったら埒が明かない。着てみる」
手触りは、本当に肌を触っているかのようにスベスベしている。『生地』の裏側も同じようだ。腹に開いた穴を、少し怯えつつも開いてみたが、何もなかった。有るはずの骨も内臓も、何もない。眼があった場所は空洞になっていた。改めて、『この世界』で自分の常識は通用しないのだということを痛感する。
「こっちが前だから、こうやって……」
穴の部分を広げて、フードを被るようにして頭の部分を入れる。一瞬だけ、内側に人肌の暖かみを感じた。カタリナの頭の部分に、自分の首を突っ込ませて。
「これで外が見え――――なっ!?」
驚いたのは、自分の声色に対して。修也自身の低い声ではなく、対峙していたカタリナの高いウィスパーボイスになっていたから。カタリナの体格は修也よりも明らかに小さいが、頭の部分はまるで「自分自身の物」であるかのようにピッタリはまり、皮になったカタリナを着込んでいるという感覚すらない。
「『皮』になった者のチカラ、肉体をもそのまま奪うことができる。これがグリューン国の深部で開発されていた『皮化』の技術じゃ」
「内部工作にはうってつけの魔法だな……」
「その予定だったんじゃが、『召喚儀式』には敵味方の判別能力もあったから、実際の戦闘ではおろか、街に侵入することすら敵わなかったのじゃよ」
腕も、男である修也の方が長く多少ながら筋肉もあったはず。しかし、腕を通したあとの『修也』の両腕は少し短く、しなやかな感じがある。手も小さい――だが、サイズが合わないはずの手のひらでも全く圧迫感なく動かすことができる。
脚の長さも、明らかに修也とカタリナとでは違う。右足を入れながらも入るだろうかと一瞬疑問に思った。しかし、そんな心配を他所にカタリナの皮は伸びる事もなく、その足先を地面に付けた。片足だけ短い状態になり、体勢を崩して修也は座り込んでしまう。
「わわっ!?」
「あっ、そうじゃった! 脚の部分は着る時にどうしても左右が『ズレる』から座って着た方が良かったのじゃ!」
「先に言ってよ……」
文句を言うも、カタリナの声で発せられると可愛らしい様にしか聞こえない。――それを自分が発しているというのだから、不思議な感覚だ。もう片方の左足もぐいと皮の内側に入れ、修也の体が全部カタリナの皮の内側に入り込んだ瞬間。腹に開いていた大きな穴がスッと閉じる。
「えっ!?」
(ふむ――『ボク』を着ることが――出来たようだね)
「何ッ……!? 皮になってもまだ意識があるじゃとっ……!」
カタリナの皮を全て着込んだ瞬間、彼女の『声』が聞こえた。声が耳に届いた様ではなく、音の発生源がどこか不明で、傍にいたヒマリにもその声が聞こえている。通常の音ではない、魔術的な方法での伝音。
(安心して――君たちに危害を加えるつもりはない――先程までとは違ってね)
「それをどう信用しろと言うのじゃ……!」
(君たちがボクよりも――召喚術士として優れている事が分かった――だから、ボクの力を全て君に委ねた方が――『彼女を討てる』可能性が高い)
そこでようやく、ヒマリはある事に気が付く。
「御主人……そやつの記憶、引き出すことはできるかの?」
「皮を着たら、そんな事が出来るのか?」
(君は魔力を持たないのか――その関係でボクの魔力と彼が結びつかない――だから記憶が読めないのだと思う)
『カタリナの皮』が急に閉じてしまったので慌てた修也だが、改めて自分の体を確認すると。視線を下に向ければ、胸元の膨らみが見える。そして、裸のようになってしまったカタリナの体には、当然修也が持っていた男の象徴は無く、代わりに女性器が存在するという事実。石造りの部屋の中では、ほんの少し肌寒さを感じる。
「分からないな……俺たちの事を襲った理由も、今になって協力するって言う理由も」
(全部説明するのは――骨が折れる――ボクの『記憶が読めるように』なれば良い――グリューンの神よ、彼に『心併せの儀』を行えば良い――)
「え…………あぁ、そうすれば確かに可能かのぅ……」
ヒマリには、カタリナが告げたことが何か分かるらしい。しかし、彼女はやや困ったような表情をしていた。修也には何のことかさっぱりだったので、質問する。
「何のことを……?」
「あー……その、じゃな。精神を、この女と同調させる方法なのじゃが……主殿の感覚とカタリナの感覚を共有させて同じ感情を引き起こせば、『同じになれる』という原理で……それにはより強烈な肉体への感覚が必要になる」
「強烈な肉体への感覚を、って……痛みとか?」
「いや……それはむしろ拒絶反応を生みかねん。だからこそ必要なのは――」
裸になったままの自分に、そっとヒマリが近寄る。そのまま、彼女が両手を開いて抱き着く。ふわりとした香りが鼻腔をくすぐり、背筋にこそばゆい感覚が走る。
「一番簡単な方法は、やはり性感を与えて絶頂させることかのぅ……元の意識と『皮』の意識が同一化するぐらいに」
「ぇ……いや待って、本人の意識が有る中でそれをやるの……?」
(ボクは――抵抗は無い――君たちが好きにすればいい)
「う、うぅむ……主殿と交わるのには万々歳じゃが、ガワが見知らぬ小娘ともなると少々やりづらいのぅ……」
地下室では積極的に絡んでいたヒマリが、少し気恥ずかしそうにしているのが少し可愛らしく思える。しかし、カタリナの皮を着こんだ影響で、今の修也とヒマリの背丈はほとんど同じ。顔と顔同士が近づき、吐息が混ざりあう。
「ど……どう、すれば良いかな……」
「う、むぅ……恥ずかしながら、妾はおなごを悦ばせる方法をあまり知らぬ……自分自身の身体ですら、あまりそういった事もしておらんかったからのぅ……」
「俺も……女性の感覚なんて分からなかったから……」
お互い困ったような表情になり、少しして軽い笑いが起きる。どっちもシた事の無いような初心者同士、手探りでやるしかない。おずおずと、相手の身体に手を伸ばしてそれぞれの乳房に触れる。巫女服の上から触れるヒマリのおっぱいは温かく、心臓の鼓動も伝わってくる。同時に『自分のおっぱい』が触られる感覚。おずおずとした手つきで、彼女もおっぱいの感覚に慣れていないようで、ヒマリは少し驚いたような表情をしていた。
「お、おぉ……この娘、妾より小ぶりなモノだと思っていたが、予想以上に柔らかいのぅ……」
「ちょ……っ♡ ヒマリ、そんなに揉ま、ないでっ……♡♡」
(なる、ほどっ――♡♡)
面白い玩具を与えられた子供のように、ヒマリは目を輝かせて乳房を何度も揉みしだく。時々強く揉まれるのが不思議と心地よく、弱い刺激はもどかしさを助長させる。負けじと、カタリナもヒマリの前をはだけさせ、その美乳に両手を添えゆっくりと触る。
「ん……♡ はぁぅっ……♡♡ あるじどのっ……♡♡ もっと、つよくっ……♡♡♡」
「あ……♡♡ っはぁっ……♡♡ こんな、かんじかな……♡♡♡」
両手でオッパイを揉む愉しみから、徐々に『揉まれる』事の悦びに身体が慣れつつある。時々ビクンと身体が震えつつ、相手の身体を弄り合う。甘い吐息が2人の間で混ざり合い、情欲にどんどんと火が付く。優しく触れ、時々強く抓る。相手が求めていることが、自然と分かる。自分が求めている物でもあるから。
「あ゛っ♡♡♡ いまのっ……♡♡ よかったっ……♡♡ ねぇ、ヒマリ……♡♡ キスしても……♡♡♡」
「んう゛っ♡♡♡ わ……♡♡ わらわはっ……♡♡ かまわんぞっ……♡♡」
快楽に蕩け、火照っているヒマリの表情。愛らしさと色気の、本来混ざらない2つが一緒くたになったような顔。思わずカタリナの口から飛び出た言葉を、ヒマリは即座に受け止める。両者の体躯が更に近づき、乳房どうしで触れ合うぐらいになって、口づけを交わす。
「んちゅっ……♡♡ じゅるっ……♡♡♡ はぁっ……♡♡♡♡ むむぅっ……♡♡♡」
「ぁふっ……♡♡♡ じゅぅぅっ……♡♡ ふぅっ……♡♡ れろぉっ……♡♡♡」
唇だけ、では済まなかった。どちらともなく舌を入れるフレンチキスは、一瞬慣れない為に舌同士がぶつかり合ったものの、徐々に互いの奥深くまで味わおうとする動きに変わる。ヒマリの顔がすぐ近くにあり、あどけなさを残す彼女がこんなにも色香に酔うのか、と思いたくなるほど魅惑的な表情をしていた。
「だんだん……♡♡♡ 下の方も、熱っぽくなってきたのぅ……♡♡♡♡」
興奮で早くなっていた鼓動は、お互いの身体を熱くする。今のカタリナには、その昂ぶりを示す雄の象徴が存在しない。それなのに、何故か下腹部に己の血液が集中するかのような感覚がある。一体どこに、そんな感覚器が有るのだろうか。
「ついさっき……♡♡ ツムギに教えてもらったからのぅ……♡♡♡ 拙い動きじゃが、許しておくれ……♡♡♡」
「ぁう゛ぅっ♡♡♡♡ そ、そこっ……♡♡♡♡ こんなに、きもちいいのっ……♡♡♡♡♡」
(これ――は――♡♡♡ 不思議な――感じが――♡♡♡♡)
ヒマリの指先が、カタリナの陰核をツンと撫でる。その刹那、あらゆる感覚が吹き飛ぶかのような衝撃が伝わった。自分の肉棒を扱いた時の感覚に近いが、それよりもずっと強烈な快楽。一瞬、それが性感であることすら理解が追いつかなかった程に。
「ほぅ……♡♡♡ そんなに良かったかの……♡♡♡♡ あるじどのが、もっーとよがっている姿、見たいのぅ♡♡♡♡」
「なぁ゛っ♡♡♡♡♡ な゛んどもっ♡♡♡♡♡♡ しゃわらない゛でぇっ♡♡♡♡♡♡♡」
(――っ゛♡♡♡♡ ――う゛ぅっ♡♡♡♡♡)
一撃で様相が崩れたカタリナを見て、ヒマリは悪戯っぽく笑う。そしてそのまま、女性器への刺激をどんどんと強めていった。ただ指先で弄るだけ、それだけなのに。暴風の様な快楽に何度も晒され、カタリナは腰砕けになる。もう、立っているのもままならない程に。ぺたん、と床に座り込んで、荒い呼吸と共にビクビクと身体を震わせるほかない。
「あ゛っ♡♡♡♡ あ゛う゛ぅっ……♡♡♡♡♡ う゛ぅ゛ぅっ……♡♡♡♡ 急に、やめてよっ……♡♡♡♡♡」
(――すご――かった――♡♡♡♡♡)
「…………今のあるじどの、すっごく可愛い」
ヒマリの目の色が変わる。本来は『支配する側』だったヒマリの嗜虐心に火が付き、『自分の主人を悦ばせる』という名目の元に『もっと淫らな姿を見たい』という欲求を抑えようとしなくなる。地下室で自分が弄ばれた時の感覚を思い出し、カタリナのワレメに沿って舌で舐める。
「じゅるぅっ♡♡♡ じゅぷぅっ♡♡♡♡ れろぉっ♡♡♡♡♡」
「ひゃめ゛っ♡♡♡♡♡ あ゛あ゛ぁっ♡♡♡♡♡ や゛め゛っ♡♡♡♡♡♡ ひイ゛っ♡♡♡♡♡♡」
ザラッとした舌の感覚と、舌先でチロチロとくすぐられる攻撃。そして時々、舌先がワレメをこじ開けんと侵入する。カタリナは思うように動くことすらできない。ただ快楽に喘ぎ声を漏らす、それだけで精一杯。呼吸が上手くできないし、身体が勝手に動く。苦しいはずなのに、どうしてかヒマリの攻めを止める事が出来ない。この甘美な拷問を、もっと味わいたい。無意識的に、そんな思いが浮かぶ。
「……はぁーっ♡♡♡」
「い゛っ♡♡♡♡ ――――ぁ゛っ♡♡♡ ぁぅぅ……♡♡」
トドメとばかりに、ヒマリはカタリナの秘部に熱い息を被せる。ただの吐息、しかし敏感になっていた彼女の身体はそれにすら反応し、一瞬の絶頂と共にじんわりと愛液を漏らし始める。
「主殿が乱れるのを見てるとっ……♡♡♡ 妾も、気持良くなりたいのぅ……♡♡♡♡」
既に湿りかけていた下着を脱ぎ捨てて、自分の陰部を露わにしたヒマリ。そのまま、お互いの気持ち良い所を重ねあう。貝合わせの状態で、秘部と秘部とを触れさせ擦り合わせる。水っぽく、相手の体温が直に伝わって。もどかしく、じれったい。だけどわずかに気持ちいい。
「ぁ……♡♡ ぅぅっ……♡♡♡ んくぅっ……♡♡♡」
「ふっ……♡♡ ぅっ……♡♡ はぁぁっ……♡♡♡♡」
クチュ、クチュと艶かしい音と、ため息のような喘ぎ声。自分がこんなにも甘い声を出して、女性とまぐわっている現状が、修也にはまだ現実の事と思えないでいる。
「一度自分の姿を見てみるかの? 今の主殿がどれだけ色香が強く、艶かしいかを……♡♡♡」
巫女であるヒマリが唱えた呪文は、宙に浮く鏡を出現させた。カタリナは、鏡面の向こうに居る自分を捉えてしまう。小柄な体躯に、潤んだ目元。顔を火照らせて、アソコをぐちゃぐちゃに濡らしている。――こんなエッチな姿が、自分のものだなんて。
「このまま、ずっと交わっていたい気持ちも有るがのぅ……♡♡ 『心併せの儀』の本番は、これからなのじゃ♡♡」
ヒマリがカタリナのへその下辺りを軽く撫で、何か呪文を唱える。すると、元々の修也に備わっていた男根の感覚が、何故か 今の自分の身体からも伝わる。ドクン、ドクンと脈打ち放出したいと疼きをため込んでいる。下腹部に残っていたその感覚が、段々と怒張する勢いを強めて、快楽と共に溢れ出してくる。
「あ゛っ♡♡♡♡ な゛んでっ♡♡♡♡♡ このかんじ、がぁっ♡♡♡♡♡♡」
「――おおっ♡♡」
(これ……は――興味深いな――)
思わぬ絶頂に修也が自分の股間を確認すると、カタリナの身体の膣から、何故か男の象徴であるはずのペニスが現われていた。さっきまでは無かったその器官は、しかし普段修也が扱っているモノでもある。触れた感触も、触れられた感触も、間違いなく自分の物。ヒマリはシュウヤの逸物を眺めて、甘い声で囁く。
「のう、あるじどのぉ……♡♡♡♡ ワラワも、気持ちよくなって良いかのぅ……♡♡♡♡♡♡」
「それって、どういう……う゛っ♡♡♡♡」
修也が返答するのを待たずに。ヒマリはカタリナの身体に跨る様になり、突如カタリナのワレメに現れた肉棒を迷うことなく自分の膣口で呑み込む。既に愛液で塗れていたヒマリの膣壁は彼女の主君を招き入れんとばかりに、一気に受け入れた。その衝撃は、修也の方にもダイレクトに伝わる。
「あ゛ぅ゛っ♡♡♡♡♡ やはり……っ♡♡♡ 主殿のモノはっ♡♡♡♡ 妾のカラダにぴったりじゃのうっ♡♡♡♡♡」
「ふう゛ぅ゛ぅっ♡♡♡ 急にっ♡♡♡ そんなことするなよっ♡♡♡♡♡ 腟内の感覚がっ♡♡♡♡」
カタリナの皮の内側から現れた肉棒は、彼女のワレメから生えている。ペニスが動こうものなら、カタリナの腟内で擦れてまた性感を引き起こすのだ。じゅぷ、じゅぷと二人が混ざり合えば、狂気的な程の快楽が、二人分同時に修也を襲う。
(そうか――これが男の官能――しかも同時にボクのもっ――♡♡)
「だめっ♡♡♡♡ ひまりぃ゛っ♡♡♡♡♡ もうむりい゛ぃっ♡♡♡♡♡ お゛かしぐなるっ♡♡♡♡♡」
「ふふっ♡♡♡ まだまだ止めれぬぞぉっ♡♡♡♡ 『自分がわからなくなる』まで感じなければ、なぁっ♡♡♡♡♡ んゔっ♡♡♡」
腰を軽く持ち上げ、ストンと落とす。鋭敏になっている2人、あるいは3人の官能を満たすには十分過ぎるほどであった。抵抗しようとカタリナも身じろぎするが、それすらヒマリの支配欲を却って滾らせるのみ。却ってひねる様な動きで、余計に腟内が擦れる。
ひたすらカタリナを愛撫するヒマリの心に、相反した考えがよぎる。――こんなにも可愛らしく、庇護欲が唆られる様な人が、御主人様で良かったと。この人を守り、そして滅茶苦茶にできるのは私だけなのだと。
「ほらっ♡♡♡♡ 妾のおマンコはぁ゛っ♡♡♡ 気持ちよかろう゛っ♡♡♡♡♡」
「だっ……♡♡♡ もうむ゛り゛っ♡♡♡♡ ぉ゛かじぐなるっ♡♡♡♡♡」
(はぁ゛っ――♡♡♡♡ これはっ――♡♡♡♡ 凄まじい――♡♡♡♡♡)
ずちゅり、ずちゅり。肉欲に突き動かされたヒマリの動きは、カタリナの身体を味わい尽くさんと、何度も、何度も激しくプレスした。悦楽に押しつぶされる、そんな錯覚すら浮かぶ。
「思いっきり、妾のナカに射精してっ♡♡♡♡ 雌としてもイクのじゃっ♡♡♡♡♡」
「ん゛お゛ぉ゛ぉ゛っ♡♡♡♡♡ も゛う゛っ♡♡♡♡♡♡ がまん゛っできなあ゛っ♡♡♡♡」
(――コレが♡♡♡♡ 射精の――快楽っ゛♡♡♡♡ それに゛ぃ゛っ♡♡♡♡ ボクのもっ゛♡♡♡♡)
修也の逸物がヒマリの膣壁に触れ、わずかに力が戻るのと同時に、カタリナの膣内には肉棒の刺激が伝わる。ヒマリを犯しているのに、彼女に犯されているかのような状態。限界は、もうすぐだった。
「――ぁ゛っ♡♡♡♡♡♡ ぁお゛ぉ゛ぉ゛っ゛♡♡♡♡♡♡♡♡ お゛ほぉ゛ぉ゛っ♡♡♡♡♡♡♡♡」
「ぁはぁっ♡♡♡♡ きたきたきたぁっ♡♡♡♡♡ あるじどののぉっ♡♡♡♡♡♡」
(ボク――がっ♡♡♡♡ 彼に――混ざってっ♡♡♡♡)
さながら獣のように叫びながら、カタリナは激しく絶頂して。ペニスから吐精するのと共に、それが生えている蜜壺からも潮を吹く。修也からの熱を受け取ったヒマリは、歓喜に打ち震えた。
「ぁ゛…………♡♡♡♡♡♡ ぁぅ゛……♡♡♡♡♡♡♡」
(っ――♡♡♡♡♡ はぅ゛ぅっ――♡♡♡♡♡)
「――まだ、じゃ♡♡ もっと、もっとぉ……♡♡♡♡♡」
緩慢な動きで、しかしヒマリは再びクチュ、クチュと腰を振る。カタリナは、最早抵抗する気力もない。ただ、甘美な毒を味わい続ける事しか出来なかった。
◆
幾度もの絶頂の余波が、ようやく収まって。呼吸を落ち着かせながら修也はヒマリに告げる。
「―――――記憶、読めるようになった」
「本当か、主殿!」
カタリナは優れた魔導士である他、僅かに先の未来を予見する異能が有る。しかし未来視はかなり断片的な情報しか判明せず、今日ここに修也達が来ること、修也たちの力を扱えば王女に対抗する力を得る事が出来る事は予見が出来ていたものの、修也と戦って勝つかどうかは『視ることが出来なかった』ようだ。
「……じゃが、一体どうして。優れた魔導士であるお主ですら、王女の洗脳を解けないというのか?」
「―――――ああ、そうか。成程」
『カタリナの記憶』を読んで、修也も納得がいく。
「今の王女様……いや。王宮の主要人物の多くが。召喚儀式によって操られて、『誰かのデッキとして操作されている』。召喚儀式の支配能力で、ヴァイス国が丸ごと乗っ取られている。同じように操られることを危惧して、カタリナは脱出したんだ。自力で洗脳を解くことも出来ないのだから、一度逃げるしかない」
ヴァイス国が各国への支配を開始したのも、街に怪物が出現するようになったのも。カタリナの見立てでは、王宮を操る『何者か』が原因。そして、元の世界に戻るための方法もソコにある。
(直接動くことは難しいけど――助言はする。目的こそ違うけど――キミとは協力できる。『世界を渡り歩く呪文』を唱える事が出来るのはごく一部の人間――特異な魔力を持つ王宮の者だけだ―――キミは呪文のため、ボクは王女のため――交換条件としては悪くないだろう)
「向かうしか、無いようだな」
「……そうじゃな。ワシもその黒幕とやらを見なければ気が済まぬ」
そしてさらに、カタリナは告げる。
(ボクが君を襲った理由――どちらかが勝つかして――召喚儀式のデッキを『巨大な1デッキ』にしようとした理由――ボクの机の上にある、魔導書がソレだ)
「……これ、か?」
蒼色の分厚い魔導書を修也が手に取ると、それは4枚のカードに変わる。どれも同じ効果だったが、衝撃的なものだった。
「とんでもないカード……」
(――ボクの『切札』。あの子を――あの子を操る者を倒すための――ボクが編み出した唯一の方法)
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