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四十三話 「セグエンテ到着」
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精霊龍リベルタスが従魔になり更には自分の恩恵が使役者ではなく究極使役者だったと知らされたアッシュ
二つの衝撃的な事実は中々飲み込めるものまではなかったが、幸いセグエンテに到着するまで時間はあった
過程はどうであれ憧れのドラゴンが従魔になってくれたというのは紛れもない事実
ようやくその実感が湧いてきたアッシュは喜びが溢れ出し声を大にして叫びたかったが、依頼の最中ということもあり必死にその感情を抑え込もうとした
だが完全には抑えることができず、移動中は終始顔が緩んでしまっていた
『アッシュ君凄い顔になってるよ。気持ちは分かるけど・・・』
『ごめん、でも自分じゃどうにもできなくて』
相当気持ち悪い顔になっていたのかアレッサは若干引き気味だった
そこへ今までクウの頭の上で大人しく寝てくれていたリベルタスがやってくる
『なぁ、いい加減オイラの名前決まったか主|《あるじ》?』
『ちょっと待って下さい・・・って主?僕の事?』
『そうだよ、従魔になったんだからオイラの主だろ?こいつもそう言ってたぜ。な?』
リベルタスはクウの方を指差してそう言い放った
クウが何かを喋っている様子はこちらでは分からなかったが、しかしクウはリベルタスの言葉に肯定の動きを示した
『クウと会話することができるんですか?』
『そりゃあ魔物同士だし。といってもオイラとこのスライムの知能が高いからできるってだけでそこら辺にいる雑魚い魔物じゃい意思疎通はできないけどな』
『ということは・・・クウもそのうち喋れたりするようになるんですかね』
『絶対とは言えないが成長していけばその可能性は高いと思うぜ』
クウが成長しいつか直接話すことができればどれだけ嬉しいだろうか
コミュニケーションも円滑になれば非常に有難い
そんな未来を思い描いているとリベルタスが痺れを切らして髪を引っ張ってくる
『そんなことより名前は決まったのかよ~!もう待ちくたびれたぞ~!』
『いたたた!髪の毛引っ張らないで下さい!えーっとじゃあ・・・ベルって名前はどうですか?』
リベルタスという名から取ってベル
それがリベルタスにはいい加減に思えたのかいまいちな反応だった
勿論そんな適当につけたわけではない。アッシュはちゃんとその名にした理由も告げた
『ベル・・・鐘には幸せを呼び込むという平和の象徴的な意味もあるんですよ』
『うん、幸運を運ぶドラゴンか・・・悪くないな。よし、これからオイラの名前はベルだ。あともうオイラの主なんだからその畏まった喋り方やめろよな。お前達もだぞ』
『そうですか・・・いや、分かったよベル。じゃあ改めて紹介するけどアレッサとクウだよ。これからよろしく』
『よろしくねベルちゃん』
『ちゃん・・・?まぁいっか。よろしくな』
こうしてリベルタス改めベルは正式にアッシュ達の仲間に加わった
名づけが終わると途端にベルの体が光りだす
それはこれまでクウに起こっていた現象と同じものだった
『へぇ~、名づけされるとこんな感じになるのか。なんだか変な感じだな』
『いや名前つけただけで普通はこんな風にはならないんだけどね』
もしかしたらこれもマスターテイマーの恩恵によるものだったのだろうか
まだこの恩恵には自分の知らない力が隠されているかもしれないし色々と調べる必要がありそうだ
そう考えていたその日の夜、アッシュ達はいつものように交代で見張りを行っているとアッシュの体に違和感が起こった
『うぐっ、なんだ・・・これ・・・おぇっ!』
突然腹の奥底から得体の知れないものが込み上げてくるような感覚がアッシュを襲う
それがあまりにも不快で思わず吐いてしまった
アレッサ達は見張りで外にいたので気づかれることはなかったが、交代の時間になってもその不快感は続いてその日は一睡もできなかった
それから数日間、アッシュは謎の不快感に悩まされながらもなんとかセグエンテに到着した
幸いベルがいたお陰で魔物達に一度も襲われる事はなかった
認識阻害を施していても野生の勘というものが働いたのだろう
『ここがセグエンテの町かぁ。煙が上がってる場所は全部鍛冶屋なのかな』
『そ、そうかもね』
『アッシュ君大丈夫?ここ最近顔色が悪いけど・・・』
『だ、大丈夫大丈夫』
数日間ずっと同じ症状に悩まされ続けたこともあり多少は慣れて吐くことはなくなったが、まだ謎の不快感は続いていた
セグエンテの町は流石鍛冶師の町を言われるだけあって町の至る所から煙が上がっていた
町に入り依頼完了のサインをもらうとそこで一週間以上に渡った護衛依頼は終了となった
『色々あったが無事に辿り着いてよかったよ。世話になったな』
『こちらこそ、いい体験をさせてもらいました』
依頼人とはそこで別れ、まずはこれからお世話になる冒険者組合へ挨拶と依頼達成の報酬を受け取りに行くことにした
セグエンテの町は道を歩いているだけでそこら中から鉄を打つ音が聞こえてきて少し覗いてみたい気持ちもあったが、アッシュ達はそれよりもある問題に直面していた
『うぅ・・・騒ぎにならないといいんだけど』
『なんの話だ?』
『ベルの事だよ、前にも言ったけどドラゴンが町中を飛んでいたら騒ぎになっちゃうの。けど冒険者組合は冒険者を管理する立場だから何かあった時の為にも組合には従魔のこととかちゃんと報告しないといけないんだ。だからベル、頼むから大人しくしててね』
『主はオイラの事をなんだと思ってるんだ。何もされなきゃ大人しくしてるさ』
つまり何かあったらその限りではないということだろうか・・・
これから起こることを想像すると気が重くなったが、いずれは明かさなくてはいけないので面倒事は早めに済ませようと組合所に足を運んだ
二つの衝撃的な事実は中々飲み込めるものまではなかったが、幸いセグエンテに到着するまで時間はあった
過程はどうであれ憧れのドラゴンが従魔になってくれたというのは紛れもない事実
ようやくその実感が湧いてきたアッシュは喜びが溢れ出し声を大にして叫びたかったが、依頼の最中ということもあり必死にその感情を抑え込もうとした
だが完全には抑えることができず、移動中は終始顔が緩んでしまっていた
『アッシュ君凄い顔になってるよ。気持ちは分かるけど・・・』
『ごめん、でも自分じゃどうにもできなくて』
相当気持ち悪い顔になっていたのかアレッサは若干引き気味だった
そこへ今までクウの頭の上で大人しく寝てくれていたリベルタスがやってくる
『なぁ、いい加減オイラの名前決まったか主|《あるじ》?』
『ちょっと待って下さい・・・って主?僕の事?』
『そうだよ、従魔になったんだからオイラの主だろ?こいつもそう言ってたぜ。な?』
リベルタスはクウの方を指差してそう言い放った
クウが何かを喋っている様子はこちらでは分からなかったが、しかしクウはリベルタスの言葉に肯定の動きを示した
『クウと会話することができるんですか?』
『そりゃあ魔物同士だし。といってもオイラとこのスライムの知能が高いからできるってだけでそこら辺にいる雑魚い魔物じゃい意思疎通はできないけどな』
『ということは・・・クウもそのうち喋れたりするようになるんですかね』
『絶対とは言えないが成長していけばその可能性は高いと思うぜ』
クウが成長しいつか直接話すことができればどれだけ嬉しいだろうか
コミュニケーションも円滑になれば非常に有難い
そんな未来を思い描いているとリベルタスが痺れを切らして髪を引っ張ってくる
『そんなことより名前は決まったのかよ~!もう待ちくたびれたぞ~!』
『いたたた!髪の毛引っ張らないで下さい!えーっとじゃあ・・・ベルって名前はどうですか?』
リベルタスという名から取ってベル
それがリベルタスにはいい加減に思えたのかいまいちな反応だった
勿論そんな適当につけたわけではない。アッシュはちゃんとその名にした理由も告げた
『ベル・・・鐘には幸せを呼び込むという平和の象徴的な意味もあるんですよ』
『うん、幸運を運ぶドラゴンか・・・悪くないな。よし、これからオイラの名前はベルだ。あともうオイラの主なんだからその畏まった喋り方やめろよな。お前達もだぞ』
『そうですか・・・いや、分かったよベル。じゃあ改めて紹介するけどアレッサとクウだよ。これからよろしく』
『よろしくねベルちゃん』
『ちゃん・・・?まぁいっか。よろしくな』
こうしてリベルタス改めベルは正式にアッシュ達の仲間に加わった
名づけが終わると途端にベルの体が光りだす
それはこれまでクウに起こっていた現象と同じものだった
『へぇ~、名づけされるとこんな感じになるのか。なんだか変な感じだな』
『いや名前つけただけで普通はこんな風にはならないんだけどね』
もしかしたらこれもマスターテイマーの恩恵によるものだったのだろうか
まだこの恩恵には自分の知らない力が隠されているかもしれないし色々と調べる必要がありそうだ
そう考えていたその日の夜、アッシュ達はいつものように交代で見張りを行っているとアッシュの体に違和感が起こった
『うぐっ、なんだ・・・これ・・・おぇっ!』
突然腹の奥底から得体の知れないものが込み上げてくるような感覚がアッシュを襲う
それがあまりにも不快で思わず吐いてしまった
アレッサ達は見張りで外にいたので気づかれることはなかったが、交代の時間になってもその不快感は続いてその日は一睡もできなかった
それから数日間、アッシュは謎の不快感に悩まされながらもなんとかセグエンテに到着した
幸いベルがいたお陰で魔物達に一度も襲われる事はなかった
認識阻害を施していても野生の勘というものが働いたのだろう
『ここがセグエンテの町かぁ。煙が上がってる場所は全部鍛冶屋なのかな』
『そ、そうかもね』
『アッシュ君大丈夫?ここ最近顔色が悪いけど・・・』
『だ、大丈夫大丈夫』
数日間ずっと同じ症状に悩まされ続けたこともあり多少は慣れて吐くことはなくなったが、まだ謎の不快感は続いていた
セグエンテの町は流石鍛冶師の町を言われるだけあって町の至る所から煙が上がっていた
町に入り依頼完了のサインをもらうとそこで一週間以上に渡った護衛依頼は終了となった
『色々あったが無事に辿り着いてよかったよ。世話になったな』
『こちらこそ、いい体験をさせてもらいました』
依頼人とはそこで別れ、まずはこれからお世話になる冒険者組合へ挨拶と依頼達成の報酬を受け取りに行くことにした
セグエンテの町は道を歩いているだけでそこら中から鉄を打つ音が聞こえてきて少し覗いてみたい気持ちもあったが、アッシュ達はそれよりもある問題に直面していた
『うぅ・・・騒ぎにならないといいんだけど』
『なんの話だ?』
『ベルの事だよ、前にも言ったけどドラゴンが町中を飛んでいたら騒ぎになっちゃうの。けど冒険者組合は冒険者を管理する立場だから何かあった時の為にも組合には従魔のこととかちゃんと報告しないといけないんだ。だからベル、頼むから大人しくしててね』
『主はオイラの事をなんだと思ってるんだ。何もされなきゃ大人しくしてるさ』
つまり何かあったらその限りではないということだろうか・・・
これから起こることを想像すると気が重くなったが、いずれは明かさなくてはいけないので面倒事は早めに済ませようと組合所に足を運んだ
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