転生蒼竜チート無双記

れおさん

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6話 「高揚は血の雨とともに」

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 「さてと。セリア様直々の公認の上に、我らの悩みの種をあっさりと解決してくれたようだし、我々も自己紹介せねば非礼というものだな」

 「そうだな。簡単に自己紹介といくか」

 セリアの側近の二人がそう言うと改めて態度を改めて

 「私はクレマリー王国鎧甲兵士としてまとめる最高将軍を務めさせてもらっているメオンだ。槍の使い方ならだれにも負けない自信がある」

 うん。気持ちのいい挨拶してもらっているところ悪いが、二言目が怪しい。これってあとからすごい槍使いが出てきて闇落ちするんじゃないか?

 「む……。いかにも信用してないって目だな」

 「シュウ。そんな顔しなくても槍使いとして彼以上の人を私は見たことがありませんので」

 ティナが俺のフラグを回収する前にへし折っていった。まぁこういうプライド高そうな連中なら生半可な実力でこんな大口叩くわけはないわな。

 「ああ。よろしくお願いします」

 一応相手は騎士っぽいし、丁寧な言葉遣いをしておこう。何か最初から嫌な印象が付くと払拭するのがどこまでも難しいことは転生前の暗黒時代に散々勉強済みなんやで。

 「そんな堅苦しくしなくていい。むしろこちらが敬語で話さなきゃならんくらいの功績だしな。セリア様に認めてもらっている以上同じ立場として意見交換から戦闘技術なり色々助言を頼みたいな」

 将軍という最高位にまでたどり着いてもこの追及心。恐れ入るな。

 「俺が言えることなんてあるとは思えないがよろしく」

 メオンと一通りのあいさつを終えると今度は獣耳の獣人の女性?なのかただのコスプレ?なのか。その女性が自己紹介をすべく咳払いをして切り出した。

 「私はエルミーユ。見てのとおり普通の人間とは違う。まぁ君には抵抗ないだろう?その見た目だし」

 う。やっぱり普通の人間じゃないんだなぁ。いや今更空飛んだり国難招く敵殺しといて人間ですとか張り倒されそうやな。

 「そうだな……。よろしく」

 「?なぜにそんなに挨拶がぎこちないか分からないがまぁいい。ちなみに君は”変身”できるタイプか?」

 変身?どういうことだ?全く理解できず頭をひねっているとティナが補足してくれた。

 「あなたやエルミーユのような種族は変身して高い戦闘能力を発揮するタイプともともと人のように武器を構えて戦うタイプがありますが、まぁシュウは後者ですね」

 「そうか、私とは違うのだな。私は必要に応じてというか戦闘時、移動時のみ変身する。ちなみに白狼になれる。かなりエネルギー消耗するのでここでは変身しないがな」

 この世界は本当に色んな種族がいてあまり異種族に抵抗はないらしい。それよりも先ほどから出ている大陸や王国間でのいざこざの方が戦乱の火種になるらしい。
 まぁ、そんなことよりもだ。

 「なぁ……。なんかさ背中からすごいオーラ感じるけど……。俺らなんかあんまりスルーしちゃいけないものをスルーしてないか?」

 「ああ、そのようだな……」

 「しまったな。おい、ティナ。いつも通りフォロー入れてくれよ」

 「皆さんが話し盛り上がってる軸折るわけにはいかないじゃないですか!だいたいですねエルミーユは毎回毎回私にキラーパス出しすぎです!」

 「ねぇ、みんな何の話してるのー?」

 すっごくニコニコしながら玉座で話しかけてくるセリアだが……。笑顔が怖い。

 「い、いえ……自己紹介だけですよ!うん!」

 ティナ毎回こんなフォローばっかりやらされてたら老けるの早そうだ。

 「うんうん。私完全無視でみんなで盛り上がってくれたら全然いいんだよ?どうせ私は軽視されるんだからね!みんな本当はどうせ私のこと慕ってないしね!」

 あかん。完全にいじけとる。

 「いえ、逆です。みんなセリア様のことを慕っているからこそこの流れなんですよ!セリア様が寛大だからこそこのような我々が気が利かない愚かな者達でも優しくしてくださるセリア様についていくのです!」

 言い分苦しすぎだろ。もっとうまく言わないとさすがにセリアだって激おこなんじゃ……

 「ふ、ふぅん。な、なら許しちゃおうかなぁ」

 ちょっろ。めっちゃニマニマですぐご機嫌になったし。おい、ティナ。セリアの前で堂々とうまくやったーと言わんばかりのため息をついて落ち着くな。

 こんな雰囲気の内部情勢ってどうなんだろ。締まりがなさ過ぎなような気もするけど。と思っていたが。
 そんな思いはすぐに飛んで行ってしまった。

 「じゃあ、そろそろ協議を始めるね、いい?」

 『はい』

 セリアのその一言に三人が声をそろえて同意を示す。大事な話を始めるらしい。俺は離脱しないと国家の機密情報をどこぞの馬の骨にばれると都合悪いだろうな。
 ってかほんとこの国だけか知らんけどオンオフ激しいな。いいことだけどこんなに激しいと逆に疲れそうなもんだけど。

 「はい、シュウもそこに座って?」

 「はい?俺がこの集まりに入ったらダメでしょ。国家の秘密知って追われる身だけは嫌だね」

 「あなたは私が大丈夫って確信してるから参加してもいいの!」

 またよく分からない無茶苦茶を言う君主だ。正直言ってほか三人の目は_まぁ当然といった目をしている。明らかにいるべきではないだろうという判断。それが普通だからこういう雰囲気出される方がかえって落ち着くのにこの君主は。
 何を言っても座るようにと言い張るセリアに俺を含めて皆が折れ、俺が参加する協議が始まった。

 「今回の内容は一つだけですが、今一番この国で重要な問題です。なお、今回セリア様の公務においてリュリ様の要望や提案がされましたがこちらは改めてリュリ様の書類やこちらへの持ち込まざる負えない問題を整理していただいた後にまとめてということで」

 「なんだ、リュリの奴はまた難しいことを考えているのか。同じ女として頭の構造がどこまで違ったら私と差がこんなに出るのかね」

 やれやれとため息をつくエルミーユ。彼女はあまり頭で考えるといったことがどうも苦手らしい。

 「では今回は、エクラベル王国の問題ということかな今回は」

 そのメオンの言葉にティナは頷き、話をつづけた。

 「はい、それもありますし彼がいてくれた方が具体的内容が分かりそうですね」

 俺の方を見てきたが正直ぶった切ったという事実しかないんだけども。

 「では話を続けます。以前から私たちはエクラベル王国のバリケリオス竜騎兵部隊に襲撃され、破壊略奪行為がされてきました。しかし、リース様の研究によりボウガンの威力が飛躍的に上がってから街への襲撃はなくなりました。それ以降王国内の領土を破壊するという行為に変更されているというのが今までの認識でした」

 「うん、それは間違いないね」

 「ここでシュウにお尋ねします」

 「うん?」

 「あなたがバリケリオス竜騎兵を倒したのはどこでしたか?」

 「俺が倒した位置は北の山脈国境近くの森だ。なんかセリアの話によると猛毒の木の実がなる森な」

 その話をしたとたん思い出したように顔が青くして話し始めた。

 「そ、そうだ。シュウって普通にあのディッシュの実手に取って食べてたんだよ……」

 『え”!?』

 三人が同時に素っ頓狂な声を上げてやがて顔がセリアと同じように顔が青くなった。

 「なんで生きてるんですか……」

 「信じられん。死んでないどころか素手で触って手壊死してないのか!?毒で」

 「あんた私よりもやばいやつかもね。私ですらそんな自殺行為したことないんだけど、あんたもあたしと同じかそれくらいバカなわけ?」

 あの実そんなにやばかったのか。あの実に感謝してバリケリオス竜騎兵倒したとか言えないな、もはや。

 「ちなみに10個以上食ったけど」

 それを聞くと目の前に先祖霊かお化けが出たかのように三人が両手を合わせて拝み始めた。俺死んでないぞ!前に一回死んだけど。

 「まぁ、彼はあまりにも強い毒耐性があるようです。それはそれとしてあのディッシュの木の森のおかげでわが国に攻められないという天然の壁ができているので特に伐採もしてきませんでした。しかしその結果ですね_」

 「明らかに荒らすところを森に向け始めたな。ただ、あの木の実を少しでも傷つけたりするだけで猛毒の果汁が出るから普通の兵士じゃきついからやつら竜で焼き払いに来てるってことだな」

 「ご名答です。明らかに攻め込むための準備だと考えられます。街に攻めて来ないと思って私たちが油断しているときに着々と進める算段だったのではないかと思われます」

 「しかし、シュウのおかげで失敗というわけだね」

 「はい。ここからが本題です。もう彼らがシュウに打ち取られてからかなりの時間がたっています。明らかにおかしいという異変には気が付いていると思われます」

 「なるほど、新たなアクションがおきるということが考えられるということだな」

 そのメオンの言葉にティナは同意も否定もしなかった。

 「アクションが起きるというのは間違いありません。気になるのは考えられるではなく_」

 そのティナの言葉が終わる前にドアが勢いよく開いて一人の兵士が駆け込んできた。

 「報告します!北の山脈、エグラベル王国の国境から竜騎兵が確認されています。確認されるだけで少なくとも1000はいるとのことです!」

 「もうすでに起きているかの違いと言いかけたところにこのざまですよ。相手は予想以上にアクションが早いようですね。さすがに国の精鋭に異変と聞くとここまで迅速に動くのですね」

 「ティナ!作戦は!」

 「メオンとエルミーユは主要街道を兵を分けて守ってください。無理して追い打ちや戦いを挑む必要はありません。にらみ合うだけでいいです。私もあとから合流しますのでその後の指揮は私が取りますのでそれまではぶつかり合わないということでお願いします」

 『了解』

 二人はこの事態に驚くこともなく駆け出していく。それぞれの部隊を指揮して防衛に向かうようだ。

 「今回は彼らの捜索しかしないはず。彼らがもしやられたという事実があっても逆に士気が落ちて攻める気にはならないし、生存確認に失敗すれば無理にその場合も攻めてこないでしょう」

 「なら、今回はここにいる私たちは出なくていいということかな?」

 「いえ」

 ティナはこちらを向いた。ああ、そういうことか。まぁ、そうだろうな。

 「シュウ。私たちクレマリー王国には空を飛んで戦える精鋭がいません。これからのことを考えると少しでも数を減らしたいです。相手と当たってくれませんか?」

 「な、なにを言ってるのティナ!話によると相手は少なくとも1000以上はいるのよ!相手はバリケリオス竜騎兵じゃなくてもそれクラスや下位互換だとしても2体だけとは話が違うことくらいあなたならわかることでしょう!?」

 ものすごい形相でティナに詰め寄る。しかし、この反応は予想通りだったのか冷静に対応した。

 「それは承知のことです。でもあの数に襲われたら国は持ちません!ここは彼に再び助けてもらうしかありません」

 「ふざけないで!あなたが何を考えているか知ってる。だからこそ今回の作戦ばかりは認められない」

 「ティナ。了解だ。リースのもとに行ったあとすぐに出る。できるだけ数は減らす努力はする。あまり望めない結果になったらすまない」

 「シュウ……?何を言ってるの?明らかに数がおかしいじゃない!生きて戻れない!」

 必死に行くことを止めようとするあたり本当に誰にでも優しいのだろう。この様子を見れば誰だって彼女についていきたいだろうな。

 「俺は今さっき君の国のなかに受け入れてくれたただの一人の兵士であり、住民だ。しかも過去のことは何もわからない。そんな信用ならないやつをそんなにかくまってたら君の威厳にかかわることだ」

 「そんなことどうでもいい!いいから……」

 そんなやり取りを見てティナは顔を下に向けて表情が分からない。後悔?分かってもらえないもどかしさ?それともやっと不安材料を消せるといった安心感だろうか。

 「ティナ。お前のこの作戦とその作戦に至る俺の扱い方判断は何も間違っちゃいない。この君主はどうも正直者すぎるらしいな」

 「……」
 
  とり合えずティナには声をかけておいた。
  だが、ティナは何も言わない。俺は何も聞くことなくドアの方に向かった。

 「待って_!」

 彼女は俺にどうしてそんなにも固執するのだろうか。不思議でならんな。

 俺は街の上を飛んでリースのもとに行った。

 「どうも」

 「あ、大変なことになったね!どうしたの?」

 「相手の空にいる部隊叩けるだけ叩きます」

 その言葉にぎょっとしたようだが、すぐに考え直し

 「まぁ奴らつぶしてるからね!まぁ期待してるよ。ほい、剣は返しておくよ」

 と、リースが剣を差し出すが今回俺がリースのもとに寄ったはこれが理由ではない。

 「あ、剣はいいです」

 「ん?」

 「手持ちボウガンのテストしてるって言いましたよね?実戦でテストするので貸してもらえませんか?」

 「そういうことか。でも暴発の危険があるよ?いいの?」

 「そういうのもわかった方がいいでしょう。できれば実戦で」

 その言葉に頷くとボウガンを持ってきた。それを左手に持つとすぐに駆け出した。

 「そのボウガンは荷物になるようだったら捨ててもいいから。ちゃんと結果わからないとだめだから帰ってきてよね?」

 「了解です」

 自分の爪が長くて大剣もボウガンも持ちにくい。これにも慣れないといけないしな。転生させて貰った身として簡単には死ねない。ここを切り抜けられれば必ずあの三人の信頼を得られると確信してるからこそこのチャンスを逃すわけにはいかない。ここで力尽きるようならその程度だ。

 「よし、いくか」

 飛び立ち勢いよく空に舞い上がると北の高い山の方向に黒い点がたくさん動いめいている。面白い。なんかあいつらを倒してからともののいきなり何も怖くなくなった。果たしてこれは驕りなのだろうか。まぁどうだっていい。
 こんなにいきいきとみんなが幸せそうに生きている。俺の世界じゃそんなことはなかった。誰かが苦しくてつらい思いをしているなか誰かが幸せになる。そんな世界が当たり前でそんな世界しかない。誰もが幸せになれるところだなんて夢物語でしかないと思っていた。
 だけど、違った。少なくともこの街は。
 みんなを守るため誰もさぼることなく尽力する__
 不正を許さずみんなにチャンスがある__
 みんなが前を向いている__
 俺は死ぬ前に見た世界は自分の利益のためなら何でも踏み台にしている人間とその踏み台にされて悔しさと苦しさを味わっている人間の二極化した現実だった。
 そんな俺からしたらこんな理想郷が守れたらって思うと楽しくてたまらなくなってきた。

 猛スピードで相手のいる方向に向かって飛んでいく。飛ぶのもこんなに怖くなかったっけ。
 やがて俺の存在に気づき、相手の竜が雄たけびを上げる。そしてそれで気づいた竜にまたがる相手兵士も武器を構える。

 「さて、あの森荒らしてた石頭連中2体を倒したのがまぐれかどうかこれで分かるな」

 ボウガンは後で試してみるとしよう。まずは相手をとことん恐怖に落として士気を下げないとな。

 「そっちから来ないならこっちから行かせてもらうぜ」

 猛スピードで間合いを詰めて一人の竜騎兵にとびかかった。その時に発した相手の一言は____

 「あ、悪魔……?」

 その一言が名も分からぬ竜騎兵の最期の一言だった。
 逆光に照らされてシルエットのなかに煌めく竜の眼光。大剣を構え、自分のもとに一閃。
 そして血の雨が降った。

 「どうやらあの精鋭部隊とやらを倒した俺の実力はまぐれじゃないらしいな」

 自分の青い鱗に深紅の血が滴り流れ落ちた。
 そして次の相手に狙いを新たに定めなおすと俺は剣を構えて間合いを詰めた。
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