転生蒼竜チート無双記

れおさん

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5話 「優秀な彼女の俺に語りかけることは」

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 次ね、商業施設も一緒に確認しておきたいんだけどティナいい?」

 「あ、はい!その方が助かりますね」

 着々と仕事をこなすところは君主らしいセリア。はたしてリースのようにちょっとくせのある人たちがいるのだろうか。
 工業地域を抜けるとお店が増えてきた。色んなところに様々なお店があるのだが、本格的な商業地域に入ったようで隙間なく並んでいる。
 正直こんなに店があっても需要の方が少ないのではと心配してしまうのだが、どこの店にもたくさん人がいて繁盛している。この反響ぶりなら商業レベルも高いのは頷けるのだが……。

 「いくらなんでも人が多いな。どっからこんなに人がいるの?」

 「まぁ、何も知らなければ疑問だよねぇ」

 「この街には地下等にも住む場所がたくさん存在します。日に当たるのがあまり好きでない種族もいますからねぇ」

 見た目以上にこの街は器用な作りになっているらしい。どこまでも色んな種族に快適に過ごしやすい街作りができているらしい。

 「なお、街の外れには森がありましてそこの大木の中に居住空間を作るという企画も進行中です」

 「単純にすげぇわ」

 「ま、みんなに快適でいてもらうことがよりこの街をよりよくしていくんだよねぇ。人がいないと発展しないからね」

 そんな話をしているとより大きな建物の前についた。
 その建物に入るとみんなが忙しそうに書き物をしたり書類に目を通したりしている。

 「ごくろうさま、リュリたん」

 「あ、お疲れ様です。セリア様。ちょうど報告したいこともありましたのでご挨拶に向かおうと思っておりましたところご足労いただきありがとうございます」

 眼鏡をかけた身長の低めの女性。目の前の机には彼女の姿が見えないほどの書類が積まれているが、きれいに項目ごとにまとめられており、彼女の仕事の効率の良さが伺える。

 「見たらわかるいかにも仕事ができるキャリアウーマンやな」

 「ありがとうございます。それが一番の褒め言葉です」

 俺のそんな感想一言も聞き逃さず華麗な営業スマイルをいただいた。

 「で、報告って何かな?」

 「はい。今月の不正商売、詐欺行為等をこの街全体を取り締まったところ、合計231件の不正行為が大小の規模問わず見られました。これまで通り大規模で行った者や団体は街から永久追放という形でよろしいですか?」

 なかなか手厳しい意見だな。ここまでティナならともあれ、セリアならそこまでしなさそうなもんだが、果たして認めるのだろうか。

 「うん。その追放基準は被害の金額や、被害者の数とかいろいろ照らし合わせてリュリたんの判断に任せるよ。専門家に任せる方がいいからね。いつも通り手をかけさせて申し訳ないけどちゃんと的確な数値やデータ出力した書類提出お願いね」

 「はい、もちろんです!そこは抜かりなく。小規模には警告と不正で着手したお金+売上金の40%を回収するということにさせていただきます。その場合、明確なデータを持って相手と交渉しますがどうしても受け入れられないとなると裁判や罪をさらに重くする判断を問うことになるかもしれませんがその時はよろしくお願いいたします」

 「おっけい。そこは任せてくれていいよ。ティナと要相談で決めていくからちょっとでもこじれたらすぐに持ってきてね」

 「恐れ入ります」

 何これ。さっきまでと同一人物?めちゃくちゃ聡明な君主やん。あとそれよりも意外だったのは

 「セリアの奴結構容赦ないな。誰にでも優しいと思っていたけど」

 その言葉にフッと笑みを浮かべてティナが誇らしげに言った。

 「そこがセリア様のすごいところ。これが民がついてくる要因だということはあなたもお分かりなのでは?」

 「だな」

 その話を聞いていたのか、セリアも話に加わってきた。その時の目はいつもの目よりも良い意味で鋭くとても頼もしい目だ。

 「私はね、誰にだって優しい。それは私が自分自身ではっきりと言える。でもね、私のところで楽しく過ごしたり、私のために頑張ってくれる人が困るようなことをする相手がいるなら悪魔にだって死神にだってなる自信あるよ」

 こいつは紛れもない優秀な君主だということでよさそうだ。人望があって優秀。それだけではない。自分の優れた才能に驕らず、なんでも自分でやるのではなく人を信頼してよりよい才能を持つものを見つけていく。それが内政のティナ、技術のリース、商業のリュリというところか。

 「あとこれは提案なのですが」

 リュリは話がひと段落したところで再びセリアに話を切り出した。

 「うん?」

 「この街の商業地域より活性化を狙うためにはさらなるステップアップが必要です。しかし、人の集まりやすい主要なところは以前から取引をしている方たちがいるため、新規様がなかなか経営が厳しいとみられます」

 「ああ、立地条件って大事だもんね……。せっかくいい商品扱っても見てもらえなきゃ買ってもらえないもんね」

 「はい、そこでこの中心管理センターの今の私たちの働いている場所を縮小させられそうなので空いたところでバザーをしてみたいのですが」

 「ほほー」

 リュリの提案としてはこうだ。それぞれ各店舗の自慢の看板商品を一つずつ提出してもらい、希望金額を聞いてこの中心の管理センターの一角を使って並べてみようという考えだ。そうすれば普段知らなかった店の商品の内容なども知れるということだ。

 「さすがとしか言いようのない提案だね。あと一角使うのはいいけど、動きにくい職場もあれだからここも拡大工事の予算出しとくね」

 「うう……こんなにも理想としていたお言葉がいただけて感謝しきれません」

 「セリアって技術にも商業にも結構知識あるのか?」

 その俺の質問にティナは困り顔になりながらこう言った。

 「どうでしょうか。少なくとも私がいる間セリア様がこういう関連に携わっていたということは聞いたことがありませんがね。センスだとしたら末恐ろしいです」

 予算の出すところが的確すぎてティナの口をほぼ出すことはないらしい。無駄遣いに終わった予算は今までないらしく、何かの利益を必ずもたらしているらしい。

 そして一通り話も終わって円滑に話が進んでいることは俺にもよくわかった。お互いに分かってほしいところの要点がきっちりと通っているからこそのこの流れだろう。

 「じゃあ、お城に戻ろうか」

 セリアは管理センターを出て、そう俺に言った。

 「いやぁ、すごい奴だったんだなお前」

 「惚れてもいいよ?」

 「うん、調子乗りそうだしやめとくわ」

 その一言にぶうっとふくれっ面になるあたり年相応の反応をする普通の少女なんだが。その様子を横目で見ながら色んな憶測や疑問が俺の中にさらに浮かぶことにはなった。

 ・多分バリケリオス竜騎兵はこの街の発展具合に関係しているのではないか。
 。なぜ彼女はここまで様々なことに精通しているのか。ティナはセンスかもと言ったがそんな一言で解決できそうな問題ではない。

 「んー?そんなにじろじろ見られると照れちゃうなぁ」

 「なぁティナ。こいつ褒めたりするとダメなタイプなのでは?」

 「正直ちょっと性格とかが抜けているようなところ以外欠点がなくてですね……。何をやってもすごいんですよね……」

 天才とアホって雰囲気似てるって感じ今までの経験からして確かにある。なんか色んな意味で雰囲気違うというか。でもこいつから抜けている性格はしゃべりからは出ているが……。

 「そんな目しないでよぉ。……距離だけは取らないでね。寂しいから」

 初めてセリアの表情が曇ったところを見た。でもそれは抜かりなくティナが街の周りの様子を観察しているときであったため、俺以外に気が付くものは誰もいなかった。

 メイン商業地域を抜けて城への大きな通りを歩く。もちろん街の住民もいるが軽装の兵士から重装の兵士が多くみられるようになった。勲章をつけている者も多く、将軍指揮官クラスといったところか。
 それらしきものに会うたびに呼び止められ、笑顔で手を振る彼女。まだまだ大人とは言い切れない彼女にはなかなか重い公務だと思うが彼女は疲れ一つ見せることはない。
 そして王城にはいると規律の整った鎧兵士たちが槍などの各々の武器を持ち、並んで出迎えられた。そしてその奥にさらに大きく派手な模様の入った将軍らしき者と王城には見つかぬ露出度の高い服を着た女性がいる。

 『おかえりなさいませ、セリア様』

 「うん」

 近くに歩み寄ってみると鎧をきた将軍は男でもう一人は獣耳のようなものをつけているか生えているのか。じろじろ見るのもあれなのであまり見ないようにしたため判断ができなかった。

 「セリア様、そちらの者は?」

 「彼はシュウ。すごいことをやってくれました。あのバリケリオス竜騎兵二体を一人で相手してドラゴンの頭を真っ二つにするという完勝だったの」

 その言葉に二人はあからさまに驚きの様子を表した。

 「それは本当なのですか?彼のウソなのでは!?」

 「ううん。この目で見たから。間違いないよ」

 その言葉を聞いてあからさまにこちらを見てくる。落ち着かないな。

 「信じられん……」

 「ああ、リースの技術発展に賭けるしかないと思っていたのにな」

 そんな話をしながら王座の間まで歩いていく。やがて大きな扉にたどり着いた。側近の二人がそのドアをゆっくりと開けるとやがて玉座が開いた。
 そしてセリアが歩いていき、その玉座に座ると側近の三人が彼女の左右につくようにして立つと改めて彼女はコホンと咳払いをして弾けるような笑みでこう言った。

 「ようこそ、シュウ。クレマリー王国の君主セリアがあなたを心より受け入れます。どうか私のもとにいてください」

 俺はどうやら聴覚が格段に良くなったらしい。最後のどうか私のもとにという言葉がひどく重く聞こえたのを錯覚だとはどうしても思えなかった。
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