転生蒼竜チート無双記

れおさん

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21話 「動き出した天才学者」

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 「おはようございます。シュウ」
 
 ここ最近ティナが起こしに来てくれるようになった。
 いつも控えめに俺の体を揺らして優しく起こしてくれる。
 正直言ってうれしいことなのだが、寝起きのテンションが悪いことは自分自身でよく分かっている上でどうしても治せないことなので、彼女にきつく当たってしまいそうで怖かったのだが……。
 この意識が朝の俺の意識を変えるようになった。
 きつく当たってはという意識と起きて目お開けたとこにティナの顔が飛び込んできて毎回色んな意味でドキドキして寝起きからそこそこ血圧が上がるようになったらしい。
 このたった2、3日ティナが起こしてくれるようになっただけで大分変わった。どれくらい変わったかというとエルミーユの朝のテンションが直らない前に俺がいつも通りのテンションになるくらい変わった。

 「おい、エルミーユ。シュウの寝起きが改善されはじめたぞ。お前が一番朝駄目なやつに逆戻りしたぞ」

 「……あっそ」

 「なるほど。俺こんな感じになってたのか」

 テンションがどん底のエルミーユのそっけない返事と不機嫌な顔を見て俺は自分で改めて意識して直していかないといけないなと思い直した。

 「そそ、ほんとあんな感じ。エルミーユはまだあのラインで収まってるけどたまにシュウは殺意も沸いてるときあるよ?ほら数日前に私がひたすら謝ったときとか」

 「うん、セリアが大声出したときだな。正直すまんかった」

 ぶうっと膨れっ面でそうセリアにちくりと言われて申し訳なくなって素直に謝ったら何かニヤニヤしながらこんな提案をしてきた。

 「じゃ、じゃあ!ほんとに悪いと思ってるなら私もティナみたいにシュウのところまで起こしに行きたい!」

 その提案に

 『いやいや』

 と手を振りながら俺とティナは同時に拒否をした。

 「シュウを起こすのは私専用の役割ですので……」

 「お前のテンションで起こされたら本当にいつか殺しそうだからやめとくわ。ティナがいつも優しく根気よく、静かに起こしてくれるからありがたく起こしてもらってるけどセリアはね……」

 想像したらもうゆっさゆっさ体を大きく揺らしてきたり、俺の体に乗ってきたり、なべやフライパンでカンカン鳴らしながら来そうなんだが……。

 「ごめん……。私じゃ嫌だよね……」

 あ、本気で凹んでる。
 俺は本気でかなり落ち込んでしまったセリアを慌てて取り繕った。

 「ティナが習慣としてやってくれてるしな……。だからさ、お前とも俺と何か二人やるルーティーンでも作るか?」

 「うん!ヤるほうなら毎日でも!」

 「うん。少しでもかわいそうとか思った俺の感情を返せ」

 とはいえ、セリアの俺と何かかわる機会を作ろうとしてくれていることには素直に感謝しよう。二人だけになって話せることもあればまたお互いの信頼関係にもつながるしな。

 「そうだな……。朝の散歩とかにするか?街の見回りだとみんな集まってきて落ちつかなだろうしな」

 「いいの?いちいち時間作るのめんどうだし、申し訳ない気もするけど……」

 「俺は構わんよ。ただ朝のテンションが完璧に戻ってからな」

 「うん!」

 うれしそうにガッツポーズするセリア。そこまで喜んでくれたらうれしいもんだな。
 しかし、今度は___

 「むーーーーー」

 今度膨れっ面になったのはティナ。朝起こす権利は持っているとはいえあまり朝テンションの低い俺とはあまり会話もないのでもっと話す機会がほしいのに。

 「う……。分かった分かった!俺の空いてる時間で1人のときは適当にいつでも来ていいから!」

 そんな俺の様子をメオンといつの間にかすっかりテンションの戻っているエルミーユが二人そろって嫌な笑顔でこっちを見ている。
 そして一言。

 『がんばって☆』

 その二人が同時に親指をぐっと立ててbのポーズをするタイミングも完璧で今日一番いらっときたのは言うまでもない。

 朝からかわいい二人に振り回されたと思ったら、今度は

 「あ、シュウ様。こちらでしたか」

 「ん。何かありました?」

 1人の兵士が俺の部屋に丁寧に礼をしてから入ってきた。

 「リース様が打ち合わせをしたいから大至急引きずってでも連れて来いというのことですが……申し訳ありませんがご足労願えますか?」

 申し訳なさそうに言う兵士さんの姿から大体想像はつく。
 たぶん打ち合わせとか言っているが、打ち合わせと言う成分は2~3割ほど。予想ではまたしばらく会いに行っていないからなぜ会いにこないんだとチクチクと文句を言われるに決まっているのだ。

 「すみません……すぐ行きます。お手数おかけして申し訳ないです」

 竜がこんなことを言うとも思っていなかったのか少し驚いた表情もしながらもキレのいい敬礼をするとまた丁寧に一礼して部屋から出て行った。

 そして___。
 いつもの工場内にて。

 「なーんでこないかなぁ!?」

 「すみません……色々とリラックスしてて部屋に引きこもってました」

 「ったく私達は休みなく働いてるのにちょっとはねぎらおうという気はないのかしら!?」

 「返す言葉もございません……」

 そう怒りながらも表情が明らかに緩んできている。そんなリースの様子を見てこちらにももっと定期的に訪れなければ思う次第だった。

 「まぁ、このあたりにしてと。まぁ先日あなたに聞かされたヴィルシスの保護魔法をぶっ壊す策を練ったわ」

 「え、もう?」

 「ええ、でもその策の実現のためにはあなたがじきじきに動かなくちゃいけない。他の重臣のみなさんも戦闘能力や適応性はあっても今のところ実行出来そうなのはあなただけね」

 そういいながらリースの出してきたものは先日も先頭で使ったボウガンだった。

 「???これでちまちま撃って耐久度減らせと?」

 そう俺が怪訝そうに聞くとちっちと指を振りながら説明を始めた。

 「これは対奴用の決戦兵器であの鎧潰し専用よ」

 「ほう、更に説明よろしく」

 「うん。このボウガン自動で矢が一気に5本セットされる。矢は見ての通り小さい。だけどそれはボウガンの弦の強さでカバーしたの」

 実際に矢の入った筒から自動的に矢が飛び出て弦に自動的にかけられている。
 
 「でこれが何であなたしか使えないかというと、今回5本の矢を相当な威力として撃つにはかなりの反動が来るような仕組みになっててあなたしかバランス取れないと思う」

 「なるほど」

 「全部で矢は50~100本次の決戦までには準備しておくからそのつもりでよろしく」

 「おけ」

 その矢を見ると前まで使っていた矢とは大きく違っていた。もちろん一気に複数セットできるように小さくはなっているが……それだけではない。

 「これは……」

 「気がついた?あなたならなぜこの矢がこうなっているか。ヴィルシスのためにあの短剣を提案する頭があるなら理解してもらえそうなものなんだけれども」

 そうリースに言われて少し俺は考えてみる。先日は俺がヴィルシスの鎧について話したとき、リースがいっていたことも踏まえて……
 その瞬間俺ははっとした。そして笑顔でこう言った。

 「じゃあ、奴に向けて狙いは特に定めず適当に撃つわ!」

 その俺の発言にリースもにやりとして

 「そう、てきトーに撃ちなさい!」

 このリースの考え付いたこの何気ないボウガンだと思っていたものはとんでもない発想だった。
 それは俺の負担を大きく減らしつつ、ヴィルシスの鎧に大きくダメージを与えて突破口を開く大きな武器にリースは変えてしまった。
 この天才学者の考える発想がティナを、この国を大きく救うことになるかもしれない。
 いや、必ず救うだろう。

 改めて誇らしげに薄い胸を張るリースがとてもすごい人物だと分かった。彼女の研究者としてのプライドと意地がここまで画期的なものを生み出してしまった。
 彼女は本当に自分の研究で完璧に魔法に打ち勝つつもりだ。
 これを活かさなきゃ俺はリースに顔向けが出来ない。
 絶対に活かしてやろう。
 その思いをこめて俺はウインクとともにリースに向けてぐっとbポーズをして彼女の研究成果をたたえた。
 それを見て改めて格好をつけて俺に力強くbポーズを返した。
 
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