錬金術師の性奴隷 ──不老不死なのでハーレムを作って暇つぶしします──

火野 あかり

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新たな世界

第二話 二人酒と新たな扉

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「ご、ご主人様、私も妹が欲しいです……」

 新居、といっても中身はそのままだが、移住した日の夜の食事でイチカがそう言った。
 いつものように三人でテーブルを囲んでいた。俺の正面には二人がいる形だ。
 イチカの椅子は高さを作り直してあるので、レームと並んでいるような状態である。
 レームは全く知らなかったようで、目を丸くして笑顔のような口の形のまま、食事を口に運ぶ動きも完全に停止している。
 その表情は初めて見るもので、心底驚いている様子だった。
 俺自身スープを噴き出しそうなほど驚く。

 イチカはというと、申し訳なさげではあるものの、芯がある目をしている。

「ど、どうして急に? 何かあったのか?」

 そんな兆候はなかったのだ。本当に唐突だった。

「……一緒に遊んでくれる、と、友達が欲しいです」

 それを聞いてなんとなくわかった。イチカは寂しいのだ。全くもって俺の分身と言える。
 イチカはいつも一人で部屋にいて、時折俺の方やレームの所に行っているが年齢もあって遊びが合わないのだ。遊ぶものはたくさん持っているが、それで一人で遊んでいるのが嫌なんだろうと思った。
 確かに、レームは家事全般をしっかりしているし、実際イチカの手伝いはいらないのだろう。そうなると手持無沙汰というか要するに暇になるのだ。そこでレームが気を使って遊んでいてもいい、といったところで、俺は楽しませることが苦手だ。つまり俺はイチカの遊び相手としては不適格と判断されているのだ。

 どうやらレームもわかったようで、こっちに向けアイコンタクトをする。

「でもなんで妹なんだ?」

「……お姉さまの妹が私、だから私も妹が欲しいです」

 張り合っているのだろうか、嫉妬のようだった。
 可愛いとは思うが、実際これ以上子供は増やせない。どちらかというともう少し年上、魔術など防衛対策の出来るくらいの年齢が望ましい。それでいてイチカをかまってやれるような、そんな年齢。
 レームにはある程度の魔術を教えている。これはイチカができる前のことだ。術式も簡単なものを与えているし、俺の情報がベースだけあって、ある程度は魔術が使えるのだ。

「イチカ、悪いが妹はダメだ。お姉さま、というよりお姉ちゃん、という年齢なら大丈夫だが……」

「そ、それでもいいです。一緒に遊んでくれるなら……」

「レームの意見も聞こう。レームがいいなら構わん」

 丸投げではない。実際レームが嫌なら俺は作らない。
 レームの負担になるのであればこれ以上は必要ないのだ。

「いいのではないでしょうか? 私は賛成ですよ。姉妹はたくさんいても城にはまだ空き部屋がありますし、実際イチカが寂しそうにしているのはなんとなくわかっておりました」

「そ、そうなのか? まぁ一応フラスコもあるし、創るのはできるんだが……」

 まさか唯一残した巨大フラスコにもう出番が来るなど予想外だった。
 実際の所賢者の石さえあればある程度実験器具の代用は効いてしまう。
 ただせっかく決別というか、そういうことをしたばかりなのだ。なんというか、少々恥ずかしい。
 あの時流した涙はどこへ行った、と実験器具に魂があるなら言われてしまいそうだ。

「じゃ、じゃあお願いします! お姉ちゃん欲しいです!」

 イチカは嬉しそうだった。こう見ると年相応の子供だ。
 お姉ちゃんを創るという、普通ならばあり得ない状況ではあるが、それができてしまうのも錬金術。なんというか業が深いというのはこういうことを言うのだろうか。

「まぁ、いいか……」

 今度は従順だけにする。淫乱は入れないつもりだ。
 本来はレームだけのつもりだったのだから。レームが言わなかったら、今もきっと二人だけだったろう。 個人的にはそれでも構わなかったが、イチカも一緒に過ごすようになって、毎日が少し楽しくなってきているのを感じる。
 今度もそうなればいいな、と小さく祈りをささげる。無神論者ではあるものの、俺はいくつもの奇跡を感じている。このような状態でいれること自体が本来奇跡なのだ。
 死の淵で夢も奇跡も叶えてくれたのだ。本当ならば敬虔な宗教家になったっておかしくないほどだ。


 食事が終わり、完全な夜になる。
 島での最初の夜は少しだけ感慨深い。
 波の音が響き、潮風は少し塩辛い。

「こういう景色も悪くないものだな」

 俺たち三人は外に出て、月を眺めている。
 城から持ち出した椅子に腰掛け、簡易な机を置いた。上にはまだ何もない。
 さっき整備した時の木材を使って小さな屋根を造ろうと思った。きっと外で食事をしたくなる日が来そうだったからだ。家畜を飼うのもいいかもしれない。牛に乗っているイチカを想像して少し微笑んでしまう。

 これが鏡花水月というものなのか、海に映る月が幻想的だった。
 揺らめいて、時折消えてしまうような、そんな儚さを美しいと思った先人の気持ちがよくわかる。

「綺麗ですね……」

 レームもうっとりとした表情だ。それは美しく、正直レームの方がきれいなんじゃないかと思うほどだった。イチカは眠そうにしており、まだこういうものの良さを理解できる年ではないのだと思わせる。

「イチカ、寝ていてもいいんだぞ?」

「だ、大丈夫です。平気です。眠くないです」

 と眠そうな声で言う。実際目を開けているのが精いっぱいに見える。

「レーム、たまには酒でも飲んでみないか。引っ越し祝い、というやつだな」

「良いですね。この前買ったものを持ってきましょう」

 俺は酒を飲むことが殆どない。飲めないわけではないが、今までは理由があまりなかった。一人で飲むものではないとなんとなく思っていて、自分には縁遠い飲み物に思えた。
 ちなみに、どれだけ飲もうとエリクサーを飲めば一瞬で酔いが醒めるはずだ。アルコールは毒素でもあるため万能薬であるエリクサーはきっとそれをかき消すはずである。

 レームがすぐに戻ってきた。
 手にはこの前買ってみた果実酒とつまみを持っている。
 つまみといっても畑で取れた果物を乾燥させたものだ。保存食として作ってあるのだ。普段はもっぱらイチカのおやつになっている。

 イチカは耐えきれなかったようで、いつの間にか寝てしまっている。机に倒れこみ突っ伏すような形だ。
 風邪をひくんじゃないかと思い、俺が羽織っていた毛布も重ねてかける。

「気が利くな。流石はレーム」

「あらあら。褒めても何も出ませんよ」

 グラスに少し注ぎ、そこに魔術で氷を作って入れる。
 そして一度はやって見たかった、乾杯をする。知識があっても今までは物理的にできなかったのだ。一人でやってもむなしいものである。

「乾杯」

 カツンとグラスがぶつかり、中の氷と酒が小さく揺れる。

「思ったより強い酒だな、これ」

 喉にカーッとしたものが流れ込む。食道から胃に熱いものが流れているのがわかる。これは強い酒に良くあることだ。

「う、うふふ」

 レームが笑い始める。

「どうした? 大丈夫か?」

 レームは酒を飲んだことがない。だからどうなるのか、俺も知らないのだ。賢者の石であってもそこまでは分からない。

「うふふふっ! 楽しくなってきました!」

 ああ、わかった。レームは笑い上戸というやつだ。
 これは新しい扉を開いてしまったかもしれない。
 体の構造は近いため、酒も平気かと思ったが、レームは俺よりもだいぶ弱そうだった。なにせ一口でこれだ。俺はそこそこ強い方ではないかと思われる。

「ご主人様ぁ! もっと飲みましょう、ね? これを飲むとすごい楽しくなりますよ!」

「い、いや、まだ残ってるから大丈夫だ……」

 そこでレームが俺の分も自分の分も一気に飲み干す。

「ちょ、ダメだって! そんなに飲んだら────」

 ドサッ。レームはそのまま崩れ落ちる。

「足が、ふふっ、足が変です、ふふふっ!」

 早くも足に来ている。これはまずい、非常にまずい。
 レームは酒乱らしい。俺はエリクサーを用意する。一応いつも持ち歩いており、今が完全に使い時だった。

「レーム、これを飲め、治るから!」

「いーやーでーすー! 口移しじゃなきゃいーやー!」

 子供のような口調で、地面でいやいやと体をくねらせる。
 普段は澄ましたというか冷静なレームがイチカよりもわがままを言うとは。酒の力というものの恐ろしさを知る。これは人生台無しにする人もいるよな……と。

「わかった、わかったから」

「ちゅーう、ちゅうしてください!」

 起き上がる気のなさそうなレームを持ち上げ、椅子に座らせる。
 その間もずっとうわ言のようにキスをせがみ続けていた。
 自分の口にエリクサーを含み、口をすぼめているようなレームに与える。

「……冷静になったか?」

 レームは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。恐らくはエリクサーがアルコールを吹き飛ばしたのだろう。

「あ、あの、申し訳ありません……その、みっともないところをお見せして……」

「いや、ああいうのも俺は嫌いじゃない。というか……可愛かったぞ」

 さらに顔を赤くしている。月明りに照らされ、真っ白な肌が真っ赤なのがはっきりわかる。アルコールが抜けている以上これはきっと血流だけの力だ。

「あれは本心というか、あれが素だったりするのか……?」

「いえ、こっちの方が素なのですが……イチカがしているような甘え方もしてみたいというか、そういうのは考えておりました」

 恥ずかしそうにもじもじとしているレームは非常にかわいく思える。いつもは俺が甘える方だったが、甘えられるのもいいものだった。

「……レーム、これからもたまに飲んでみるか。また見たい」

「私はちょっと恥ずかしさが強いというか、すごく恥ずかしいです……」

 新たな扉を開いてしまい、明日からの毎日が少し楽しみになってきた。
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