錬金術師の性奴隷 ──不老不死なのでハーレムを作って暇つぶしします──

火野 あかり

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新たな世界

第二章 第一話 移住

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「うーん、どこにすべきなんだろうな」

 城を転移させる。賢者の石がそれができると教えてくれた。だが適当な所に移動してしまっては元の木阿弥、場所は吟味しなければならない。そしてできることならば俺たちの立ち位置、それ自体をどうにかできると一番いいのだが……

「何かいい所はないか?」

 賢者の石に尋ねてみる。だが返答はない。あの時はたまたま、本当に奇跡のようなものだったんだろう。
 山の上、海の上、どこかの無人島、候補地自体はたくさんあるが、いっそのこと街の中というのもある。
 木を隠すなら森の中、そういう言葉があるが、実際どうなのだろう。
 魔術師や錬金術師のいない土地ならありかもしれない。

 まずは城を転移させることができるほどの土地、そして安全性。
 今のこの城は利便性の低さからとても安く俺が買い取ったものだ。普通の馬なら街に行くまでで二時間はかかるうえ、周りは山と荒野しかない。元の持ち主がなぜこんなところに建設したのか、その正気を疑うような場所だ。それでも俗世間から離れたかった俺にとっては最高の立地だったわけだが。

 転移の魔術。これはすごい便利だ。
 絶海の孤島などという非常に住みにくい場所でも、転移すればどこにでも行けるというわけだ。
 世界中どこにでも行けるなら、たとえ目立とうと何の問題もない。
 レームたちを連れて街に行くことも、いくら金を使おうとも、世界の裏側の国であれば関係ないようなものだ。

 今回の一件があったというのに自分の防犯意識の低さには驚くが、賢者の石を活用すればいくらでも対策はあった。というより、これからは多少リスクを加味して行動するのだ。普通の人間はそうしているのだから。

 一番いい方法は障壁魔術だ。見えない壁を創ることができ、物理的、魔術的な攻撃が防げる。さほど難しい魔術ではないが、聞いたことがない。もしかすると失われた魔術なのかもしれない。
 当然の如く注ぎ込んだ魔力量に比例した硬さを持ち、それはつまり誰にも破れないものを俺は作れるということだ。
 街に出る時はこれを張って行けば安全、ということだ。もっともそれはレームたちだけで十分だが。

 城に障壁を張り、いくつもの魔術感知をして、現地の下見に行く。これには一人だけで行く。もしかすると危険かもしれず、城の中は今世界中で一番安全な状態だからだ。

 まずは絶海の孤島、誰一人として住んでいない場所だ。
 地図上に存在するというだけで、漁すら行われず、殆ど未開の地と言える。

「ここは……すごいな」

 転移の魔術で島に転移する。膨大な魔力を消費しするため現存する魔術師は一人でこれを発動できないだろう。古代の魔術師が如何に強大であったかを感じる。何かの違いがあるのかもしれない。

 島は本当に何もなく、木も植物も、何も生えていない。
 見えるのは多少の岩場と砂浜だけ。観光に来るならばいいかもしれない。
 見渡す限り何もない。安全なのかはわからないが、植物が生えていないということは、ここは海の中に水没しているときがあるということだろう。
 そして何より小さい。城を転移させればほとんどが城になってしまう。

「ダメだな……」

 水没するということは城に浸水するということ。流石にダメだろう。
 対処自体は可能だろうが、そこまでの魅力を感じない。

「今度みんなで来てみようか。イチカとかすごい喜びそうだ」

 海水浴。俺はしたことがないため、泳げるのかもわからない。いざというときは魔術を使えば何とかなるだろうとは思う。なんとなく、自分は泳げない気がするのだ。

 地図にメモをしておく。一応息抜きの候補地にする。
 俺は決めていた。もうあのような怖い思いを二人にさせないと。
 そしてできる限りのことをすることにも決めた。我慢をさせない、幸せな暮らしを。

「次は……ここを見てみるか」

 次は同じような場所、ただ広さが違う。
 そこには植物も生えており、まさに島、といった様相だ。
 ただ遊んだりできるだろう砂浜はなく、切り立った岩が周囲を囲んでいる。
 天然の要塞、そんな見た目だ。

「ここは良いんじゃないか? ある程度整備すれば城も転移できるし」

 良さそう。そういう感想が湧く。ただ調べた感じ動物が結構いそうな環境だった。後からやってきてあれなんだが、それはすべて排除したい。城の周りにいるのは小動物が多いが、ここにいるのは地面に残った足跡から察するにそれなりに大きなものもいそうだった。草食であればいいが、恐らくは肉食獣だろう。ふんを見たところそのように判断できる。
 なるべくならレームとイチカが多少外に出て過ごせるような、そんな場所にしたいのだ。
 今のように引きこもりに付き合わせるのはよくない。俺自身もそれをやめたつもりなのだから。
 これからは外にも出て、人にも接触する機会を少しでも増やしていく。

 動物を殺すつもりはない。
 勿論、似たような環境を探し、すべて転移させるつもりだ。意味のない殺生はしない。
 食べるためであれば、それは自然の姿ではあるが、そうでないなら殺す必要なんてないのだ。
 幸いにして、この辺は似たような環境の島が多い。そこに転移させる分には人間にも迷惑は掛からないだろう。ここよりも大きな、似たような島はいくらでもある。


 島の整備は簡単に終わった。
 動物の転移も、木の伐採もすべてだ。木は木材としていくらでも使えるので、島の隅の方に一旦置いておく。
 魔術が使えないならば大変なのだろうが、この誰も見ていない場所ならばいくらでも使える。
 城を転移させる場所を作り終え、一旦城に戻る。

「レーム、イチカ。いい場所があったぞ」

「本当ですか? それはどのような?」

「島だ。誰も来ない場所だな。見つかったって誰も来やしない」

「ということでさっそく転移させる。ここはいつまで安全かわからないからな」

 転移の魔術という超高度な魔術でも、賢者の石を介せばなんてことない、初級レベルのものと変わらないほどあっさりと転移は終了する。

「すごい、これが海……」

 外に出て、レームとイチカは感動している様子だった。ちなみに俺も海を見るのは初めてだったため、少し気持ちはわかる。

「まぁここでは泳げはしないけどな。いい場所があったから今度そこで泳いでみよう」

「いいんですか!? 外に出ても?」

「ああ、これからは俺も含めて外にも行こう。まぁあまり人目につくところには行けないが。だがここは自由だ。ここの海は危ないから近づくなよ」

 そう、ここの海は危ない。明らかに深く、波も高い。決して泳いで遊ぶような環境ではない。
 それのおかげで人が近寄らないのだからそれはそれでいいのだが。

「ご主人様……まさかこんなにいい場所を与えて下さるとは……」

 レームはそう言って少し微笑む。やっぱりあの場所そのものは嫌だったんじゃないだろうかと思う。
 イチカは嬉しそうに腰に巻きついてくる。すっかり引っ込み思案は収まってきているように思える。

「まだまだ。これからはもっといい生活にするぞ。お前たちを幸せにしなければならないんだ、俺は」

 創造主の責任だ。
 俺の人生を変えてくれた二人のためにも、それにしっかりと答えなければ。

「一緒にいてくれるだけでも幸せなんですけれどね。でも、嬉しいです」

「わ、わたしも嬉しいです」

 しがみついたままのイチカは俺の背中辺りにぐりぐりと頭を押し付ける。
 なんというか小動物的というか、そんな愛らしさがある。

「とりあえず引っ越しは終了だな。あそこには長いこといたから少し名残惜しい気もするが、これからはここで過ごそう」
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