転生した俺YOEEEけど、何故か勇者やってます〜スキル習得が運ゲーガチャの鬼畜世界で俺はしぶとく生きていく〜

ゴシ

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第9話 外の世界は温かい

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 転送の門を抜け、スラ高原に到着する。
 降り立った高原は、どこまでも緑が続く広大な大地。
 そこらじゅうに生い茂るフカフカの草布団は気持ちよさそうで、すぐにでも寝転がりたいぐらいだった。
 高原と言われてたから、元いた世界の北海道の牧場とかをなんとなくイメージしてた。
 高原って寒いのかな、半袖短パンで大丈夫かって。
 でもここは予想以上に暖かく、吹いている風が気持ちい。
 ここがスラ高原か。すぅ~、はぁぁ~、外の空気ってこんなにいいもんなんだ。
 俺は何故か感動していた。
 草原など元の世界にも存在していたが、異世界の空気を吸ってる自分がここにいると思うと、何か感じるものがあった。

 これからLvを上げるために魔物と戦う。
 ファンタジー世界が今から待ってると思うと、なんだろ、心が踊ってしまう。
 さてと、これからどうしたらいいのかな?
 周りを見渡してみるが、あたり一面に見えるのは、高低差のある草が生えているだけで、魔物がいるとは思えないほど長閑のどかな場所である。
 ……こんなとこでLv上がる?
 まぁ、とりあえず魔物探してみるか。
 俺は草を掻き分けながら、魔物を探してみる。


◇◇◇◇◇


「い、いねーじゃーねーか!」

 転送されてから何時間経っただろうか。
 時計もないからよくわからないが、来た時と太陽の位置が明らかに違う。
 俺は草をき分け魔物を探していたが、歩けど歩けど1匹も見つからない。
 ただただ歩き続けた俺は、とうとう魔物より先に、ラック村らしき場所に到着してしまった。

「あれ、こんなとこに客とは珍しいな、よっ!」
「あ、村の方ですか。俺は、ってあれ?」

 村の入り口で後ろから声を掛けられたから、振り向いて挨拶をしようとするが、そこには誰の姿も無い。
 後ろじゃ無かったのかと思い、右、左、そしてまた後ろと首を回してみるが、やっぱり誰の姿も無い。

「誰かに話しかけられたと思ったんだけど」
「おう、俺が話しかけたぞ。おーい、上だよ上」

 上?と思いながら、顔を上げてみる。
 するとそこには、背中に小さな羽が左右で2枚ずつ生えた、光る小人が空を飛んでいた。

「ま、魔物か! 出たな!」

 俺はアスティーナ城で渡された短剣を構える。

「待て待て待て! 俺はリトルピクシーだぞ。戦うとかしないから、剣向けて来んなよ!」

 リトルピクシーと名乗る、その空飛ぶ魔物は攻撃の意思が無いと言ってくる。
 でも魔物は魔物。やらなければ村に危害を与えかねないと思い、剣先を向けたままにしていた。

 すると騒ぎを聞きつけてか、村の方から人がゾロゾロと出てくる。

「おーい、どした?」
「こっちに来ないでください!魔物がいるんです。危な……」
「助けてくれ。この兄ちゃんが剣向けてくるんだよ。俺を魔物とか言って」
「何?おい、みんな来てくれ!変なヤツが村に来たぞ!」

 俺が村人に危険だと伝えるのに対して、ピクシーは食い気味で助けてと叫ぶ。
 すると村人は一致団結し、リトルピクシーではなく、俺の方に一丸となって向かってくるのだ。

「ちょま、てあっ、うっ!?」

 村人は短剣を持つ俺にお構いなく襲い掛かってきて、複数人でのしかかってくる。
 人に剣を降るなどできるわけもなく、俺はただ、無抵抗に捕まってしまった。


◇◇◇◇◇


 村人に捕らえられた後、俺はラック村の住人であるジルの家でご飯を食べることになった。

「いやー、さっきは申し訳ないことをした。勇者なら勇者って早く言ってくれよ」
「いや。何も知らずに剣を抜いた俺も悪かった。申し訳ない」

 ジルは俺に謝ってくるが、俺も悪かったと思っているので謝り返した。
 捕らえられた後、俺は自分の身分を示すため、ステータスプレートを開いて勇者であると教えると、村人はすぐに解放してくれた。
 ステータスプレートを見せただけでそこまで信用されるとは想定して無かったが、とりあえず無事解放されたのは助かった。

「まさか勇者がうちの村に来るとは思ってもみなかったよ。ここ、魔族領からかなり遠いからな。で、何しにきたんだ?」
「俺は勇者なんだけど、今はまだLvが低いんだ。Lvを上げやすいからってことで、スラ高原に来たんだ」

 俺はジルに事情を説明する。転生の話、ウレールの危機について、俺が戦場に出るにはLvが足りないこと。
 そんなファンタジー話をジルはすんなりと信じてくれる。

「説明して受け入れてくれるのは嬉しいけど、そんなに信用できるか、普通?」

 アスティーナ城の時といい、今といい、そんなに勇者とは受け入れ易いものなのだろうか?ウレールに勇者はいないって話だったのに。

「ステータスプレート見たら勇者の加護にハートの加護だろ?悪いヤツとは思えんよ。勇者の加護ってのは詳しく知らないけど、ハートの加護ってのは聖女様とかが持ってるやつだろ?悪いヤツが持ってないだろ」
「俺がステータスの偽装してるとか」
「無理無理そんなの。ステータスプレートの内容を秘密にすることは出来ても、嘘の表示なんてできないよ。まぁ、ウレールに住んでる俺らでもステータスプレートは目安ぐらいで、何なのかはよくわかってないんだけどな、ガハハハハ」

 ジルは明るいのか、呑気なだけなのか、勇者とかハートの加護持ちなら悪いヤツではないだろうと言ってくれる。

「それに悪いヤツだとしてもお前、Lv1だろ?俺でも勝てそうだしな。あ、間違ってもヨヨ様に手を出したりすんなよ。そん時は俺が、こうしてやるからな!」

 ジルは持っていたパンをガツガツ食べる。
 そのちぎってちぎってされたパンが俺の想定なのだろう。
 それは怖いから、ヨヨには手を出さないとジルに約束しとく。
 でもそうだな。村人に手を挙げたところで、多分返り討ちに合うだろう。
 農民のジルでもLvは6。体力、攻撃力、防御力と全てが俺の上らしい。
 勇者が農民に負けるってのはどうなんだろ。

「まぁ、疑ってないとは言ったが、女神っていうのはそんなひどいんか?俺らよりウレールのこと詳しいだろうに、何も聞いてないんだな。勇者の話より、そっちの方が怪しいもんだ」

 ジルは女神に会ったのに何も知らないことの方が疑わしいようだ。
 それはそうだ。俺だってウレールのことを全部教えてもらった上で、勇者として戦うもんだと思っていたのだから。
 女神に会って何も聞かされて無いというのは、嘘と思われてもおかしくない。
 こんなとこでもアリスの雑さが足を引っ張るのかよ。

「明日はヨヨ様がスラ洞窟に連れて行ってくれるんだろ?朝早いんだからゆっくり休めよ。あ、そうだそうだ」

 ジルはパンをモグモグさせながら食卓を離れ、家を出て行った。
 しばらくして帰ってくると、手に持っていた1つの木のコップを目の前に置く。

「これな、俺の畑で取れた野菜と隣の家のヤツが作ってる牛乳を混ぜて作ったんだ。ウレールを救うために来てくれた勇者って言うならよ、頑張ってもらわないとな!」

 俺の目の前に置かれたコップに入っているのは、緑と白が綺麗に混ざった野菜のスムージー。
 野菜は正直苦手ではあるが、作ってくれた物を飲まないわけにはいかないと思い、そのスムージーを口に運ぶ。

「アスティーナの城にいたってんなら、そりゃいいもん食わしてもらってたんだよな。悪いな、こんなもんしか出せなくて。でもシエロには頑張って欲しいと思って俺ら……ってシエロ?」
「………温かい」

 ジルたちが作ってくれたスムージーは野菜と牛乳を煮込んで作ってくれたのだろう。
 湯気が目に見えるほどの温かい。

 城のご飯は確かに美味しかった。
 でもこのスムージーはジルたちの気持ちがこもった物。
 すごく美味しいとはお世辞にも言えないが、俺は心を打たれ、気づいたら涙していた。
 不味かったか?とジルは言ってくるが、そうではない。
 知らない世界の知らない土地で、初めて会う人に応援されるのがすごく嬉しかったんだ。
 自分でも涙するとは思ってなかったが、優しさのこもったこのスムージーは、俺にとって最高の物であった。

「ありがとうジル……俺、修行頑張るよ」

 魔族領から遠いラック村。
 俺が訪れた初めての村は、とても温かいところであった。

「今日はもう寝るよ。ご飯と飲み物ありがとうな。気持ち伝わったから。おやすみ、ジル」
「お、おう。ゆっくり休めよ」

 俺はジルが用意してくれた部屋に行き、ベットで横になる。

「ユウリ、俺……この世界、嫌いじゃ無いかもしれない」

 アリス、リュード、コロネが特殊だっただけで、本当はいい世界かもと思い、転送の間での発言を撤回。
 感動で目を赤くして眠る、冒険の1日目であった。
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