ティルナノーグの扉

Erie

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星見の宴2

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「リナ、あちらに食べ物がありますから、少し何か口にした方がいいですよ?」

挨拶参りが終わって、柔らかに笑う若葉の瞳の妖精王が囁く。

耳元で美形に囁かれるのは心臓に悪いんですけど!

「ありがとうございます」

「この宴にはヒト以外にもきていますが、あなたたちが楽しめるような食事をたくさん用意していますから、食べてくださいね?」

「はい」

「一通り顔見せも終わりましたから、あとは、リラックスして宴を楽しみましょう」

リナは頷いて、マナナンの示す、たくさんの美味しそうな食事が盛り付けられているテーブルのコーナーに向かう。

宴の食事だけあって、指でつまめるようなものが多かったが、鳥の唐揚げやクラブケーキ、サラダ、ミニキルシュ、綺麗にクレープのようなものに包まれた魚介類、生牡蠣など、見ていて楽しい。

わあーすごい!

見たことのないような食べ物もあったが、どんな食べ物なのかな?っていう興味が湧いて、1つずつ全部試すことにした。

「わー、これ、美味しい!」

宴は社交が主な趣旨なので、会話を楽しんだり、ダンスをしたりする貴族や王族がほとんどで、リナのように食べ物のコーナーにいるのは子供達ぐらいしかいなかった。

まっ、いっか!

お腹を満たすことは大切よね?周りの目を気にしないことにして、リナは食べることに集中した。

さすが、お金持ちのパーティだけあって、オードブルの飾り付けもおしゃれだわー。

「お前は、そういうものが好きなのか?」

ひたすら異世界の料理を楽しんでいたリナの隣に、いつの間にかアルフォンソ王子が立っていた。

「王子」

「あまりヒトの食べるものを食すことはないが、私もひとつ試してみるかな?」

リナの皿から鳥の唐揚げのようなものを摘んで口に入れる。

「なかなかいけるな」

リナの驚いた顔を見て、

「んっ?なんだ?」

と問いかける。

「挨拶は終わったのですか?」

「ああ。別に全ての者と話す必要もないしな」

「魔族の人たちも妖精みたいに光から栄養を取るのですか?」

「我らはヒトの生気を吸って栄養を得る」

アルフォンソは固まったリナを見て、笑い出した。

「冗談だ。我らは自然や土地の気から栄養を得ている。我らの世界には太陽はなく、月のみなのでな、光から養分を撮る機会はあまりないのだ。安心したか?」

「はい」

「我らはヒトより魔力があり、200年あまり長生きするだけで、ヒトとそれほど違いはない」

「私の世界では全然違う感じですけどね」

「お前の世界にも魔族がいるのか?」

「実際にはいませんけど、お話の中に出てくるのはかなり怖い存在ですね。世界征服したりとか」

「そんなことをしても、あとが大変なだけだ。1つの国だけでも治めるのは大変なのに世界規模なら、余計仕事が増える。お前の世界の魔族は頭が悪いな。人生楽しんだ者が勝ちだろう?」

「いや、実際に存在してないんで、あれですけど。でもそういわれてみればその通りですね」

「政だけで生が終わってしまったら、生きている意味がない」

「ええ」

リナは人外の存在だけあって身震いするほどの美貌の王子との共通の会話を探そうとしたが、会話が続かない。

だから食べることでごまかすことにした。

「美味しいか?」

「はい」

「私の城にもヒトの好みがわかる料理人を雇ってやろう。だから嫁に来い!」

いや、私、あなたのことよく知りませんし、好きでもない相手の嫁入りとか無理なんですけど!

「あのっ、マナナンとは長いお付き合いなんですか?」

「ああ、元から妖精国と我らの世界は近しい関係にあったのだ。ヒトよりもずっとな。魔族と妖精の血が交じり合う者たくさん存在した。だが、異世界から勇者や聖女が現れるようになって、ゆっくりと変わっていった」

「異世界からの使者はこちらのヒト族の所によく召喚されると聞きましたが?」

「そうだ。それがほとんどだが、たまにお前のように妖精国に召還される者もいた。妖精国に一番初めに召喚された歌姫が、魔族の者と恋仲になり、召喚した妖精王と争うことになったのだ。それ以来、自由に行き来できるように作られた門も破壊され、ヒト族との関係も絡んで、疎遠になっていった。関係自体は悪くないのだが、な」

「それは残念ですね」

「私の妹も妖精の血を色濃く残す存在だったのだがな」

一瞬、アルフォンソの瞳が悲しげな色に変わったが、すぐに意志の強い紫の瞳がリナを射抜いた。

「お前は、魔族を嫌いか?」

「この世界に来て、初めて会ったのが、あなたです。私の世界には魔族はいませんから、好きか嫌いかといわれてもよくわかりません。でも、エトワールの王子よりは好きですよ?」

「当然。フランソワなどと一緒にされてもな。なら、そのうち私の虜になるさ」

魔族の王を呼びに来たお付きの者に目を向けると、

「では、またな」

といい残して、王族同士の談笑の輪に再び入っていった。







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