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消えた転生王女
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一体どこにいったんだ?
城内をくまなく探したが、セシリアの姿はどこにもなかった。「隠して囲っていたので」執務を投げ出して、探しに行く訳にはいかない。
昨日は政務に追われて昼に彼女を可愛がることができなかった。だからたっぷり愛そうと夜に塔に訪ねた時、部屋の中はもぬけの殻だった。
セシリアの姿だけ忽然と消えていたのだ。
微かに感じる魔力の波動で魔法が使われたことはわかるが、戦闘系の魔法のみが得意なハインリッヒは探査系の魔法の属性がなく、それを辿ることはできない。
ガートランドの王族は魔法が使えない。この城から魔力をわずかに残すだけで消えるとは相当な使い手であることは確かだった。
何もできない小娘だと思って油断したか。何としてでも見つけ出して、再び私のものにしてやる!
影!今すぐにセシリアを探し出せ!
御意に。
隠密の命令を主に担うハインリッヒの12の影たちは、主人の命令を聞くために再び闇に消えていった。
◇ ◇ ◇
ダースト商会の御用聞きの少年に金貨を握らせて、城に入り込んだが、愛しい姫の姿はどこにも見つからなかった。
もちろん宮廷にはいないことを予想していたので、城に忍び込んでから、兵士になりすまして場内を探し回ったが、
地下牢にも、どこにもセシリアの姿はなかった。ハインリッヒがベッキーのいっていた宮廷から反対の方向に食事の盆を運んでいく様子を伺っていたが、その食事が運ばれている塔にも誰もいなかった。
セシリア様、どこにいるのですか?
塔の中は人が使用していた気配があった。そして、エリアスが間違えるはずかない愛しい娘の香りがほのかに漂っていた。
改めて王太子の様子を伺ってみたが、城の中を血眼で探し回った後、塔へ足を運ぶのを止めて、宮殿の執務室に籠りきりだ。
ということはハインリッヒが幽閉場所を変えたということではなく、他の者に連れ去られたというわけですね。
あと一歩でこの腕に捕まえられると思っていたのに、またふりだしに戻ってしまった。今度は何の手がかりもない。
ベッドメイクもされていない。部屋にわずかに残る魔導臭は多少魔法が使えるとはいえ、魔導師ではないエリアスには気付けるほど強い物ではなかった。
「ん?これは?」
塔の部屋の小さな机に小さくガートランドの言葉で、詩のタイトルが刻まれていた。
ガートランドの貴族なら誰でも知っているポピュラーなものだ。
月夜の晩、森の妖精に取り替えっこされた娘を青年が助けに来る内容で、古代ガートランド語で韻をふんでいる。
懐かしいですねえ。
これはセシリア様が彫ったのでしょうね。
この詩の意味をセシリアの説明したのはエリアス自身だ。
懐かしい情景が目に浮かんで来る。
でもなぜこれがここに?
詩のことが引っかかった。
セシリア様、必ず探し出しますからね。
今までセシリアに全てを捧げてきた。
エリアスの世界はセシリアなしでは成り立たないのだ。
エリアスは覚悟を新たにするとルーレシア城を後にした。
城内をくまなく探したが、セシリアの姿はどこにもなかった。「隠して囲っていたので」執務を投げ出して、探しに行く訳にはいかない。
昨日は政務に追われて昼に彼女を可愛がることができなかった。だからたっぷり愛そうと夜に塔に訪ねた時、部屋の中はもぬけの殻だった。
セシリアの姿だけ忽然と消えていたのだ。
微かに感じる魔力の波動で魔法が使われたことはわかるが、戦闘系の魔法のみが得意なハインリッヒは探査系の魔法の属性がなく、それを辿ることはできない。
ガートランドの王族は魔法が使えない。この城から魔力をわずかに残すだけで消えるとは相当な使い手であることは確かだった。
何もできない小娘だと思って油断したか。何としてでも見つけ出して、再び私のものにしてやる!
影!今すぐにセシリアを探し出せ!
御意に。
隠密の命令を主に担うハインリッヒの12の影たちは、主人の命令を聞くために再び闇に消えていった。
◇ ◇ ◇
ダースト商会の御用聞きの少年に金貨を握らせて、城に入り込んだが、愛しい姫の姿はどこにも見つからなかった。
もちろん宮廷にはいないことを予想していたので、城に忍び込んでから、兵士になりすまして場内を探し回ったが、
地下牢にも、どこにもセシリアの姿はなかった。ハインリッヒがベッキーのいっていた宮廷から反対の方向に食事の盆を運んでいく様子を伺っていたが、その食事が運ばれている塔にも誰もいなかった。
セシリア様、どこにいるのですか?
塔の中は人が使用していた気配があった。そして、エリアスが間違えるはずかない愛しい娘の香りがほのかに漂っていた。
改めて王太子の様子を伺ってみたが、城の中を血眼で探し回った後、塔へ足を運ぶのを止めて、宮殿の執務室に籠りきりだ。
ということはハインリッヒが幽閉場所を変えたということではなく、他の者に連れ去られたというわけですね。
あと一歩でこの腕に捕まえられると思っていたのに、またふりだしに戻ってしまった。今度は何の手がかりもない。
ベッドメイクもされていない。部屋にわずかに残る魔導臭は多少魔法が使えるとはいえ、魔導師ではないエリアスには気付けるほど強い物ではなかった。
「ん?これは?」
塔の部屋の小さな机に小さくガートランドの言葉で、詩のタイトルが刻まれていた。
ガートランドの貴族なら誰でも知っているポピュラーなものだ。
月夜の晩、森の妖精に取り替えっこされた娘を青年が助けに来る内容で、古代ガートランド語で韻をふんでいる。
懐かしいですねえ。
これはセシリア様が彫ったのでしょうね。
この詩の意味をセシリアの説明したのはエリアス自身だ。
懐かしい情景が目に浮かんで来る。
でもなぜこれがここに?
詩のことが引っかかった。
セシリア様、必ず探し出しますからね。
今までセシリアに全てを捧げてきた。
エリアスの世界はセシリアなしでは成り立たないのだ。
エリアスは覚悟を新たにするとルーレシア城を後にした。
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