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第一章 ライラ・マリー編
第11話 唸れ!脳筋魔剣術!
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グウェンはここを通ったみたいだが、どうやら、体力温存のために魔物を倒すのを諦めたらしい。
それかすでに怪我をしていたのか。
解らない。
今まで狭かった通路がつながっていたのは広い空間で、中央に大きな魔物がいる。
背中や腕に矢が刺さり、傷を負っているが、それほど深くはない。
体中毛だらけで、猿みたいな顔をしているが、腕が四本見える。
魔物の向こうに開いた扉があって、そこから先に進めそうだった。
「ひっ」
とライラが悲鳴を上げた瞬間、背後の扉だけが閉まる。
どうも先にしか進めない仕様らしい。
ライラは音に驚いてがっつりと首にしがみついてくる。
ぐえ。
「離しやがれ!」
「で、でもあれ! 逃げましょう! あんなのパーティで……ううん、もっと何人も冒険者が集まってようやく勝てる相手でしょう! 逃げないと! 逃げないとって……ぎゃあ! 扉閉まってる! 死ぬう!」
うるせえ。
無理矢理引き剥がしたのにまだ腕にしがみついてくる。
「アタシを囮に使うつもりですね! そのために連れてきたんだ! 守るとか言って嘘だったんだ! うわあ! 騙されたあ!」
「おい! そこまで鬼畜じゃねえよ。防御魔法かけてやるから隅の方でじっとしてろ!」
ライラを引きずり隅に連れて行くと彼女を覆うようにドーム型の魔法をかけてやる。
かつて俺が【荒れ地】で外に放り出されたときに真っ先に使った魔法で、なんだかんだこれがあれば平気だった。
「動くなよ」
ドームの中でライラはこくこくと頷く。
ったくよお。
騒がなけりゃもっと簡単に処理できたかもしれないのに完全に目を覚ましちまったじゃねえか。
四本腕の猿は立ち上がり、「モオオオ」と叫んだ。
牛かよお前。
猿か牛かどっちかにしろ欲張りだな。
剣を抜く。
俺の剣はそれほ高価なものじゃない。
切れ味だってよくない。
手入れなんてしたことがない。
それでもこの相手を倒すのにまったく問題はない。
構える。
師匠が俺に教えてくれたのは魔法だけではない。
剣術だって一応は教えてくれた。
そして、それを同時に使う、魔剣術も。
剣に魔力を纏わせて、様々な効力を発揮する術式。
師匠は魔剣術の使い手だった。
と言って、あの人はどこか脳筋なところがあって、
「魔剣術とは結局いかに身体強化をするかなんだ。どれだけ剣の切れ味が悪かろうが、木刀だろうが、思い切りぶつければ切れるだろ」
と言う頭のおかしな魔剣術だった。
バカ。
脳筋。
だから、俺はこれを脳筋魔剣術と呼んでいる。
ただ、身体能力に対して剣が弱ければ意味がない。
剣に纏わせた魔力は剣を保護し強度を高めるためのもので、一応、切れ味だってよくしてくれる、と信じている。
俺だってもっとスタイリッシュな魔法が使いたかったよ!
でも師匠はアホだったし、これしか教えてくれなかったんだよ!
四本腕牛猿が腕の一つを振る。
巨体にしては速い。
そして腕が長い。
いつの間にか俺の身体は敵の間合いに入っていて、手が迫ってくる。
踏み込む。
猿の手が背後の地面をえぐる音。
俺は腕の下のわずかな隙間にもぐり混んでくるっと体を反転させて、肘を切り落とす。
肘から先が勢いに任せて飛んでいき、ライラのそばの壁にぶつかった。
ライラの悲鳴。
血の雨に当たりたくないので俺は傘の魔法を使う。
ここら辺も酸の雨が降る荒れ地では必須の魔法。
四本腕牛猿は今度は「ワオオオン」と悲鳴を上げてよろける。
腹の中で犬飼ってんのかお前。
腕はあと四本あるけれど全てを処理するつもりはない。
よろけた隙を見計らって接近し、奴の膝を踏み台にして首の近くまで飛ぶ。
剣の柄をぐっと握りしめて魔力を注ぐ。
魔力でできた刀身が伸びる。
スパン。
首を切り落とすと、岩石みたいな頭が地面に落ちる前に体は崩れ、ボトボトとドロップアイテムが落ちてくる。
犬も牛も出てこなかった。
ちょっと残念。
「おい、終わったぞ」
ライラのそばに近づいて防御魔法を解除してやる。
彼女は呆然と四本腕牛犬猿のいた方向を見て、
「え……え……?」
「終わったっての」
彼女の視線が上向いて、俺を見上げる。
「何です今の……、魔法?」
「脳筋魔剣術」
「のうき…………は?」
「いいんだよ名前なんか。魔剣術だよ魔剣術。剣に魔法を纏わせて、なんかこう…………うまいことやる剣術のこと」
うまいことって……。
ちゃんとした説明ができない。
師匠に説明されたこともないから感覚的な話しかできない。
「あんなの見たことありません……。あんな巨大な魔物を一人で……」
「まあな、俺もこれやってる奴、師匠以外に見たことねえから、多分頭のおかしな方法なんだと思うわ」
ライラの手を取って立ち上がらせようとしたが、
「あ、あの、立てなくなりました」
どうやら彼女は驚きすぎて腰が抜けてしまったらしく立ち上がれない。
仕方ねえなあ。
「置いていくかあ」
「連れてってください! 嘘つき!」
「冗談だよ」
ライラを背負って、先に進む。
それかすでに怪我をしていたのか。
解らない。
今まで狭かった通路がつながっていたのは広い空間で、中央に大きな魔物がいる。
背中や腕に矢が刺さり、傷を負っているが、それほど深くはない。
体中毛だらけで、猿みたいな顔をしているが、腕が四本見える。
魔物の向こうに開いた扉があって、そこから先に進めそうだった。
「ひっ」
とライラが悲鳴を上げた瞬間、背後の扉だけが閉まる。
どうも先にしか進めない仕様らしい。
ライラは音に驚いてがっつりと首にしがみついてくる。
ぐえ。
「離しやがれ!」
「で、でもあれ! 逃げましょう! あんなのパーティで……ううん、もっと何人も冒険者が集まってようやく勝てる相手でしょう! 逃げないと! 逃げないとって……ぎゃあ! 扉閉まってる! 死ぬう!」
うるせえ。
無理矢理引き剥がしたのにまだ腕にしがみついてくる。
「アタシを囮に使うつもりですね! そのために連れてきたんだ! 守るとか言って嘘だったんだ! うわあ! 騙されたあ!」
「おい! そこまで鬼畜じゃねえよ。防御魔法かけてやるから隅の方でじっとしてろ!」
ライラを引きずり隅に連れて行くと彼女を覆うようにドーム型の魔法をかけてやる。
かつて俺が【荒れ地】で外に放り出されたときに真っ先に使った魔法で、なんだかんだこれがあれば平気だった。
「動くなよ」
ドームの中でライラはこくこくと頷く。
ったくよお。
騒がなけりゃもっと簡単に処理できたかもしれないのに完全に目を覚ましちまったじゃねえか。
四本腕の猿は立ち上がり、「モオオオ」と叫んだ。
牛かよお前。
猿か牛かどっちかにしろ欲張りだな。
剣を抜く。
俺の剣はそれほ高価なものじゃない。
切れ味だってよくない。
手入れなんてしたことがない。
それでもこの相手を倒すのにまったく問題はない。
構える。
師匠が俺に教えてくれたのは魔法だけではない。
剣術だって一応は教えてくれた。
そして、それを同時に使う、魔剣術も。
剣に魔力を纏わせて、様々な効力を発揮する術式。
師匠は魔剣術の使い手だった。
と言って、あの人はどこか脳筋なところがあって、
「魔剣術とは結局いかに身体強化をするかなんだ。どれだけ剣の切れ味が悪かろうが、木刀だろうが、思い切りぶつければ切れるだろ」
と言う頭のおかしな魔剣術だった。
バカ。
脳筋。
だから、俺はこれを脳筋魔剣術と呼んでいる。
ただ、身体能力に対して剣が弱ければ意味がない。
剣に纏わせた魔力は剣を保護し強度を高めるためのもので、一応、切れ味だってよくしてくれる、と信じている。
俺だってもっとスタイリッシュな魔法が使いたかったよ!
でも師匠はアホだったし、これしか教えてくれなかったんだよ!
四本腕牛猿が腕の一つを振る。
巨体にしては速い。
そして腕が長い。
いつの間にか俺の身体は敵の間合いに入っていて、手が迫ってくる。
踏み込む。
猿の手が背後の地面をえぐる音。
俺は腕の下のわずかな隙間にもぐり混んでくるっと体を反転させて、肘を切り落とす。
肘から先が勢いに任せて飛んでいき、ライラのそばの壁にぶつかった。
ライラの悲鳴。
血の雨に当たりたくないので俺は傘の魔法を使う。
ここら辺も酸の雨が降る荒れ地では必須の魔法。
四本腕牛猿は今度は「ワオオオン」と悲鳴を上げてよろける。
腹の中で犬飼ってんのかお前。
腕はあと四本あるけれど全てを処理するつもりはない。
よろけた隙を見計らって接近し、奴の膝を踏み台にして首の近くまで飛ぶ。
剣の柄をぐっと握りしめて魔力を注ぐ。
魔力でできた刀身が伸びる。
スパン。
首を切り落とすと、岩石みたいな頭が地面に落ちる前に体は崩れ、ボトボトとドロップアイテムが落ちてくる。
犬も牛も出てこなかった。
ちょっと残念。
「おい、終わったぞ」
ライラのそばに近づいて防御魔法を解除してやる。
彼女は呆然と四本腕牛犬猿のいた方向を見て、
「え……え……?」
「終わったっての」
彼女の視線が上向いて、俺を見上げる。
「何です今の……、魔法?」
「脳筋魔剣術」
「のうき…………は?」
「いいんだよ名前なんか。魔剣術だよ魔剣術。剣に魔法を纏わせて、なんかこう…………うまいことやる剣術のこと」
うまいことって……。
ちゃんとした説明ができない。
師匠に説明されたこともないから感覚的な話しかできない。
「あんなの見たことありません……。あんな巨大な魔物を一人で……」
「まあな、俺もこれやってる奴、師匠以外に見たことねえから、多分頭のおかしな方法なんだと思うわ」
ライラの手を取って立ち上がらせようとしたが、
「あ、あの、立てなくなりました」
どうやら彼女は驚きすぎて腰が抜けてしまったらしく立ち上がれない。
仕方ねえなあ。
「置いていくかあ」
「連れてってください! 嘘つき!」
「冗談だよ」
ライラを背負って、先に進む。
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