レイヴン・ヴィランは陰で生きたい~低レアキャラ達を仲間にしたはずなのに、絶望を回避してたらいつのまにか最強に育ってた、目立つな~

嵐山紙切

文字の大きさ
29 / 41

第27話 もう僕が人間界に追放される話が広まっている!

しおりを挟む
「人間界に行くって話は聞いたわ! あたしもそろそろ行かないと『先祖返り』が起きちゃうからついてってあげる。ふふん。療養中のネフィラの代わりよ、代わり。感謝しなさい!」


 と、キャット家を訪問するやいなやノヴァがそういった。事件から一週間くらいしか経ってないのに元気な奴である。


 対してレイは元気じゃない。


(もう僕が人間界に追放される話が広まっている! いや、キャット家には迷惑をかけたんだから当然か。ちゃんと罰を受けてるってメイドちゃんあたりが報告したんだろうな)


 ドラゴンに襲われた一件で、最後のシナリオを変え適当なことをしたと思っているレイである――実際にレイがした適当なことはもっといろいろあるけれど。


 もっとちゃんと怒られろ。

 
 と言って、無駄に結果を出してしまっている上に誰もが勘違いしているので、キャット家からは感謝されている――それすら皮肉だと思っているレイだけど。


 嫌みを言われてるんだと思っている。


「まさか、ドラゴンを追い返すなんて!」
 と言われれば、
「セットを壊しやがって」
 と言われていると思ったし、


「ノヴァを救うためにわざと捕まって、危険に身をさらすなんて!」
 と言われれば、
「お前が不甲斐ないからノヴァがダルトンに捕まるシーンで、ナイフを首に押し当てなきゃいけないような危険な目に遭っただろうが」
 と言われていると思った。


(お仕置きされるかも。椅子に縛られて殴られるんだきっと)

 
 そう思っていたから、なぜノヴァがついてくるのかが解らない。


「怒ってないの?」

「は? 何を怒ることがあるのよ?」

「(演技とは言え)危険な目に遭わせたし」

「でも助けてくれたじゃない。まあ、そのあとのはちょっとイラッてしたけど……あなた本当にやるときしかやらない奴よね」

「……すいません」


 ノヴァの言う「あれ」とは、レイが彼女を背負わなかったことであり、口論したことだったけれど、レイはもちろんシナリオを変えたことだと思っている。


(でも思った以上に怒ってないな。嫌われ者の僕がこんなことしたらお仕置きされてもおかしくないのに。なんでぇ? イラッてしたって言ってるから演技はもうしてないはずなのに)


 レイは首を傾げたけれど、隅でこっそりスローライフを送るために手を貸してくれるというのなら、裏切られるまでは手伝ってもらおうと思った。


「えっとそれで……ネフィラの代わりって話だけど……と言うか、ネフィラのこと知ってたんだ」

「あったり前じゃない。スパイダー家とキャット家は本家と分家の関係だし、それに、同い年なのよ? 交流くらいあるわ。幼なじみってところね」

「ふうん」


(じゃあ、ネフィラの被虐趣味も知ってるのかな? あ、ネフィラの代わりってそういうこと? ネフィラの代わりに虐めればいいのかな?)


 違う。
 やめろ。


 相手は王族だぞ。


 レイが危ないことを考えていることなど知らず、ノヴァは胸を張って、


「今回はおかしな薬を使われちゃったから活躍できなかったけど、いつものあたしはモンスターに噛まれても平気なのよ!」

「それは……知ってるけど……」


(つまり、モンスターに虐めさせれば良いってこと? ゴブリンの巣に置いてこようかな)


 評議会以上の絶望に突き落とそうとするんじゃない。

 
 いろんなところでずれている。


 とは言え、レイは大真面目なので、


「じゃあ、人間界でダンジョンに潜ろうか」

「え! いいの!? やったあ! あたしずっとダンジョン探検したかったの! お父様がダメだって言うから『調教の森』で我慢してたけど、レイヴンと一緒なら大丈夫よね!」


 ノヴァは顔を輝かせて喜んだ。


 この子もゲームでは上位を争うくらいには人気なキャラクターなので、その笑顔は容易く恋に落ちる類いのかわいらしさがあったけれど、レイには響かない。


(ああ、やっぱり合ってたんだ。モンスターをけしかけて僕は逃げよう)


 最悪かよ。


 こんな奴に助けられたのが運の尽きというか、ノヴァはそもそも運がない。ダルトンに裏切られて絶望に落とされたことからそれはよくわかる。


 不憫ふびん


 ギャンブルの類いはしない方が良い。


 そんな、自分に運がないことにまだ気づいていないノヴァは、


「そうと決まれば準備しなきゃ! ダンジョンって言ったら冒険者登録よね! 装備だってたくさん買わないと! あ! どんな子をパーティにしたらいいかしら!?」


 ノヴァがきゃっきゃっと喜ぶ一方で、レイは少し考えて、


(スローライフのためには冒険者登録も必須だろうから今のうちにやっておいて損はないし、それに、モノを売って生活するのに商人ギルドにも登録しておこうかな)


 とゲーム知識を洗い出していた――あんまり覚えていないけれど。


「ねえ、聞いてるの?」

「ああ、うん。聞いてる。人間界に色々持って行かないとね」

「何言ってるの? 人間界にモノは持って行けないでしょ? そんなことあたしだって知ってるわ」


(そうだっけ――ああ、そうだった)


 魔界と人間界を隔てる【漆黒の霧】は基本的に物体を通さない――レイたちは【女王】の加護があるから通り抜けられるけれど。


(ってことは向こうで金を稼がないと、最初から食い扶持すらないってことか。うわ、きっつ!)


 と、ヴィラン家の金を最初から当てにしていないレイである。もちろん、キャット家の金も当てにしていない。


 十日で一割の利率で返せとか言われたら死ぬから。


(お金は借りない。自分のことは自分でなんとかする――僕モンスター倒せないけど。ダンジョンとかで植物を採取してお金にしよう。そうしよう)


 レイはそう考えて頷いた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...