41 / 41
第39話 言い訳考え中
しおりを挟む
ギルドで冒険者の招集がかかったのはそれから二日後のことだった。
すでにネフィラは冒険者登録をして、数日で成果を上げてダンジョンに潜れるようになっていたし、レイたちも仮面の英雄としてではあるが活躍を繰り返していた。
まあ、レイ本人は逃げ惑っていただけなのだけど。
その日、招集した冒険者たちの前でギルドマスターは言った。
「【月と太陽の塔】に【聖女】と聖騎士たちが向かったが帰ってこない。元々あのダンジョンは危険度が増していたが……おそらく何かあったんだろう」
それを聞いて冒険者たちはざわめいたが、レイは一人顔を青くしていた。
(え、【聖女】と聖騎士が来てたの? しかも帰ってこないの? ヤバいじゃん! 教会が来ちゃう! 調べられたら僕たちが魔族だってバレちゃうんじゃないの!?)
一瞬にして磔餓死が迫ったと感じてレイは頭を抱えた。ヤバいまずい。レイはそもそもこの招集に参加するつもりなどなかった。ただ、何か危険が迫ってそうだな、情報くらい聞きに行くか、くらいの気持ちでこの場に参加していた。なのにこれだ。
(教会がきて僕が領主の家系だって気づいたら、「なんで対処しなかったんだ」って騒がれる。と言うか真っ先に僕が魔族だって疑われる。絶対そうだ。きっと「魔族だから部下を集めて、ダンジョンになにかよからぬ罠を仕掛け、【聖女】たちをおびき寄せた」とか言われるんだ! 僕なにもしてないのに!!)
相変わらずの論理の飛躍でそんなことを思ったレイだったが、この時点で実際に『零落』はダンジョンでフルールたちをとらえているので、その考えはあながち間違っていない。レイ自身が疑われるという部分を除けば。
そんなふうに、レイは話を聞いていなかったが、ギルドマスターは続けて、
「おそらく危険な状況にあるだろう。聖騎士たちは……まあ……そこそこの手練れだったのだろうが、四人だったし、それに【聖女】を連れていたからな。これだけ冒険者がいれば問題ないだろうが、くれぐれも注意するように。最悪の場合、モンスタースタンピートまで考えて行動しろ」
ギルドマスターがそう言ったのには訳があった。【月と太陽の塔】はダンジョンにしては珍しくその名の通り塔で、雲を突き抜けて十五階層まで登る建築物である。その周辺でなぜかモンスターの脅威度が増していて、レイたちがオークやら蛇のモンスターやらを討伐したのもこの辺だった。
「詳しく調べてみると、【月と太陽の塔】の周りに大量のモンスターの死体が散乱していた。おそらく上階から落ちてきたのだろう。それを食った周辺のモンスターが巨大化して、ダンジョン周囲の脅威度が増していたらしい」
塔の上階から落ちてくる。それだけ聞けば、そこまでたどりついた冒険者が暴れ回ってモンスターを塔から突き落とした、というのも考えられるが、それにしては数が多すぎた。
「考えられる可能性は二つだ。一つ、モンスターが上階で溢れている。二つ、凶暴化したモンスターが、暴れている。どちらにせよ、危険度は高い」
実際に上階にいるのはもっとヤバい奴だけれど、ギルドマスターや一介の冒険者、さらに言えば、レイたちですらそんなことなど知るよしもない。
と言うか、レイに関しては相変わらずの被害妄想爆発中なので、
(そうだ! 僕はちゃんと参加して隅の方にいよう! そうすればアリバイ工作みたいな感じで、「僕は領主の家系だけどちゃんと参加してました。だから魔族じゃありません! 関係ありません!」って言い訳ができる! これで疑われずに済むぞ!)
とか考えていた。
すでにネフィラは冒険者登録をして、数日で成果を上げてダンジョンに潜れるようになっていたし、レイたちも仮面の英雄としてではあるが活躍を繰り返していた。
まあ、レイ本人は逃げ惑っていただけなのだけど。
その日、招集した冒険者たちの前でギルドマスターは言った。
「【月と太陽の塔】に【聖女】と聖騎士たちが向かったが帰ってこない。元々あのダンジョンは危険度が増していたが……おそらく何かあったんだろう」
それを聞いて冒険者たちはざわめいたが、レイは一人顔を青くしていた。
(え、【聖女】と聖騎士が来てたの? しかも帰ってこないの? ヤバいじゃん! 教会が来ちゃう! 調べられたら僕たちが魔族だってバレちゃうんじゃないの!?)
一瞬にして磔餓死が迫ったと感じてレイは頭を抱えた。ヤバいまずい。レイはそもそもこの招集に参加するつもりなどなかった。ただ、何か危険が迫ってそうだな、情報くらい聞きに行くか、くらいの気持ちでこの場に参加していた。なのにこれだ。
(教会がきて僕が領主の家系だって気づいたら、「なんで対処しなかったんだ」って騒がれる。と言うか真っ先に僕が魔族だって疑われる。絶対そうだ。きっと「魔族だから部下を集めて、ダンジョンになにかよからぬ罠を仕掛け、【聖女】たちをおびき寄せた」とか言われるんだ! 僕なにもしてないのに!!)
相変わらずの論理の飛躍でそんなことを思ったレイだったが、この時点で実際に『零落』はダンジョンでフルールたちをとらえているので、その考えはあながち間違っていない。レイ自身が疑われるという部分を除けば。
そんなふうに、レイは話を聞いていなかったが、ギルドマスターは続けて、
「おそらく危険な状況にあるだろう。聖騎士たちは……まあ……そこそこの手練れだったのだろうが、四人だったし、それに【聖女】を連れていたからな。これだけ冒険者がいれば問題ないだろうが、くれぐれも注意するように。最悪の場合、モンスタースタンピートまで考えて行動しろ」
ギルドマスターがそう言ったのには訳があった。【月と太陽の塔】はダンジョンにしては珍しくその名の通り塔で、雲を突き抜けて十五階層まで登る建築物である。その周辺でなぜかモンスターの脅威度が増していて、レイたちがオークやら蛇のモンスターやらを討伐したのもこの辺だった。
「詳しく調べてみると、【月と太陽の塔】の周りに大量のモンスターの死体が散乱していた。おそらく上階から落ちてきたのだろう。それを食った周辺のモンスターが巨大化して、ダンジョン周囲の脅威度が増していたらしい」
塔の上階から落ちてくる。それだけ聞けば、そこまでたどりついた冒険者が暴れ回ってモンスターを塔から突き落とした、というのも考えられるが、それにしては数が多すぎた。
「考えられる可能性は二つだ。一つ、モンスターが上階で溢れている。二つ、凶暴化したモンスターが、暴れている。どちらにせよ、危険度は高い」
実際に上階にいるのはもっとヤバい奴だけれど、ギルドマスターや一介の冒険者、さらに言えば、レイたちですらそんなことなど知るよしもない。
と言うか、レイに関しては相変わらずの被害妄想爆発中なので、
(そうだ! 僕はちゃんと参加して隅の方にいよう! そうすればアリバイ工作みたいな感じで、「僕は領主の家系だけどちゃんと参加してました。だから魔族じゃありません! 関係ありません!」って言い訳ができる! これで疑われずに済むぞ!)
とか考えていた。
49
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
今までで1番好き!
クソおもろい
地の文で作者が主人公を馬鹿にしている(例、ばーか)場面が最高です。
自分の強さを勘違いしているストーリーはよく見かけますが、作者にもからかわれている主人公はなかなかいないなと思います。これは期待ですね。
感想ありがとうございます!
これをやるのは初めての試みだったので、楽しんでいただけて嬉しいです!
いひょうをつく展開に感動です。
感想ありがとうございます!
今回それを目標にしていたので達成できていたようで嬉しいです。