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ジェシカを励ましてあげるべきかと考えながら廊下を進んでいると、反対側から賑やかな女子生徒のグループが歩いて来た。すれ違う時、その中に笑顔のジェシカがいるのに気づいて思わず声をかけた。
「ジェシカ」
振り返ったジェシカは一瞬で笑顔を消して
「殿下、ご機嫌麗しゅう。畏れながら、今後私の事は家名でお呼びください」
と、礼を執る。
「あ、そうだな。失礼した。アンバー嬢」
「いいえ。それでは失礼いたします」
背を向けたジェシカが、思い付いたように振り返ってジェラルドに声を掛けた。
「ゴルディ様。週末の騎士団の公開練習に、お父様のゴルディ団長は参加予定でしょうか?」
「あ、ああ。参加するはずだ」
「ありがとうございます。失礼いたしました」
再びジェシカが背を向けると同時に、「キャーッ!」と女子生徒たちに歓声が上がった。
「参加されますのね! イケオジ枠ゲットですわ」
「知的な副団長とのツーショットが見られるといいですわね」
「やんちゃなキース様もいいですわよ」
どうやら騎士団推しの人達らしい。
「いいですわね。ジェシカ様は、婚約中は騎士の皆様に護衛していただいたのですよね」
なんか、思ってたのと違う方向で羨ましがられてる。
「全然良くありませんわ。反王室派を警戒して警護している所で、『ステキ! こっち向いて!』とか言うわけにいきませんでしょう? 彼らをベストアングルで見たくても、私が動くと護衛も動くというこのもどかしさ!」
「お気の毒に……」
同情されてる。思ってたのと違う方向に。
「ですから、いつも皆様がギャラリーに紛れて騎士の皆様を見るベストポジションにいるのを羨ましく思ってましたのよ」
「まあ!」
「見つかってましたのね」
きゃっきゃと笑い声が遠ざかって行く。
「……ジェシカは騎士団推しだったのか?」
「私は存じませんでした」
「え~? あんなに楽しそうなのに気づかないってある?」
何か腑に落ちないまま、ノーラと別れて学園内に用意されている王族執務室の鍵を開ける。
ここには、国王が承認した者しか入れない。
「執務室」と名が付いているが、執務するだけではなくクーデターなどが起こった時に学園にいる王族がここに籠城できるよう厳重な作りになっている避難所でもあるのだ。
控えの間を通り奥のドアを開けると、既に来ていた側近のマーク・カロンが席を立って近づいてきた。
「アレックス様、ジェシカ様の話を聞きましたか?」
「……騎士団推しの話か?」
噂になっているのかとうんざりして言ったら、
「いえ、アーチェリー部に入会したそうです」
と、返された。
「……は? アーチェリーなんて好きだったのか?」
「私は存じませんでした」
ジェラルドとこのやり取り、さっきもやったような。
「ジェシカ様はアーチェリーがお好きなようですが、才能はカケラも無いそうで、お試し体験入会で射った矢は見事に四方八方に飛んでいったとか」
「……そうだ。ジェシカの運動神経は壊滅的なんだ」
すべって転ぶ。走ってぶつかる。
一度顔から転んだ時は、侍女たちの悲鳴で衛兵が駆けつけて来た。
この事が皆にバレないよう、ダンス以外の運動は禁止してたんだった。
……そうか、もう王子の婚約者じゃないから、運動神経が無いと呆れられても笑われても構わないのか。
改めて二人の関係が無くなった事を実感した。
「ジェシカ」
振り返ったジェシカは一瞬で笑顔を消して
「殿下、ご機嫌麗しゅう。畏れながら、今後私の事は家名でお呼びください」
と、礼を執る。
「あ、そうだな。失礼した。アンバー嬢」
「いいえ。それでは失礼いたします」
背を向けたジェシカが、思い付いたように振り返ってジェラルドに声を掛けた。
「ゴルディ様。週末の騎士団の公開練習に、お父様のゴルディ団長は参加予定でしょうか?」
「あ、ああ。参加するはずだ」
「ありがとうございます。失礼いたしました」
再びジェシカが背を向けると同時に、「キャーッ!」と女子生徒たちに歓声が上がった。
「参加されますのね! イケオジ枠ゲットですわ」
「知的な副団長とのツーショットが見られるといいですわね」
「やんちゃなキース様もいいですわよ」
どうやら騎士団推しの人達らしい。
「いいですわね。ジェシカ様は、婚約中は騎士の皆様に護衛していただいたのですよね」
なんか、思ってたのと違う方向で羨ましがられてる。
「全然良くありませんわ。反王室派を警戒して警護している所で、『ステキ! こっち向いて!』とか言うわけにいきませんでしょう? 彼らをベストアングルで見たくても、私が動くと護衛も動くというこのもどかしさ!」
「お気の毒に……」
同情されてる。思ってたのと違う方向に。
「ですから、いつも皆様がギャラリーに紛れて騎士の皆様を見るベストポジションにいるのを羨ましく思ってましたのよ」
「まあ!」
「見つかってましたのね」
きゃっきゃと笑い声が遠ざかって行く。
「……ジェシカは騎士団推しだったのか?」
「私は存じませんでした」
「え~? あんなに楽しそうなのに気づかないってある?」
何か腑に落ちないまま、ノーラと別れて学園内に用意されている王族執務室の鍵を開ける。
ここには、国王が承認した者しか入れない。
「執務室」と名が付いているが、執務するだけではなくクーデターなどが起こった時に学園にいる王族がここに籠城できるよう厳重な作りになっている避難所でもあるのだ。
控えの間を通り奥のドアを開けると、既に来ていた側近のマーク・カロンが席を立って近づいてきた。
「アレックス様、ジェシカ様の話を聞きましたか?」
「……騎士団推しの話か?」
噂になっているのかとうんざりして言ったら、
「いえ、アーチェリー部に入会したそうです」
と、返された。
「……は? アーチェリーなんて好きだったのか?」
「私は存じませんでした」
ジェラルドとこのやり取り、さっきもやったような。
「ジェシカ様はアーチェリーがお好きなようですが、才能はカケラも無いそうで、お試し体験入会で射った矢は見事に四方八方に飛んでいったとか」
「……そうだ。ジェシカの運動神経は壊滅的なんだ」
すべって転ぶ。走ってぶつかる。
一度顔から転んだ時は、侍女たちの悲鳴で衛兵が駆けつけて来た。
この事が皆にバレないよう、ダンス以外の運動は禁止してたんだった。
……そうか、もう王子の婚約者じゃないから、運動神経が無いと呆れられても笑われても構わないのか。
改めて二人の関係が無くなった事を実感した。
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