初恋の終わりは

あんど もあ

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「ねえ殿下。ジェシカ様の話を聞きましたか?」
「アーチェリーの事か?」
「違います。ラーメン愛好会を作ったんです」
「はあ?」

 翌日の放課後、私は昨日と同じようなやり取りを今度はノーラとしていた。
 後ろに付いているジェラルドも驚いている。

「ジェシカはラーメンが好きだったのか?」
「私は存じませんでした」
 このやり取り、もう何回目だ。

「ラーメンって、あれだろう。平民が二本の棒で挟んで食べるヌードル」
 ナイフもフォークも使わぬ食事など、貴族にはあり得ない。
「今、貴族にもラーメンファンがいるんですよ。と言っても、ほとんど下位貴族の男性ですが」
「ジェシカは男に交ざってラーメンを食べる会を作ったという事か?」
「いえ、ジェシカ様がラーメン好きな男子生徒たちと盛り上がっていたら密かにラーメンに興味があった女子たちが参加を希望しまして、なら愛好会を作って皆で行きましょう、ってなりました」
「ラーメンに……、貴族令息令嬢が……」
「ちなみにあたしも会員です!」


 王族執務室へ行くと、マークはもうラーメン愛好会の事を知っていた。
「既に学園から校外活動の許可を取ったそうですよ。人数が増えたから、手分けして王都中のラーメン屋をまわって『貴族がハマったラーメン屋ガイドブック』を発行して経済の活性化を目指すそうです」
「話が大きい……」

 それに比べて私は……。
 私は、ジェラルドとマークに昨日父上から言われた事を言った。
「結婚相手がいない? まさか……」
「いっそ、『私は国と結婚した』と独身を貫く覚悟なら王太子になれるのでは?」
 そんなの嫌だ!



 薄暗くなった頃、王族執務室を出て王族用馬車停めへ行こうとした私はいきなり後ろから現れた男に首にナイフを突きつけられた。反王室派だ。
 ジェラルドを見ると、同じく現れた男に背中にナイフか何かを押し付けられているようだ。

 学園内という事で油断した。馬車まで行けば護衛がいるのに。

 そう思った時、飛んで来た矢が男の左腕を掠めた。
 男が反射的に右腕で左腕を押さえた隙に、男の足を払う。男がナイフを放り出して尻餅をついた所をその腹に体重をかけた足を振り下ろし、地面に男を縫い留めた。
 その間にジェラルドの方もかたがついたようだ。うずくまった男の右腕を後ろに捻り上げている。

 右手で男を押さえながら、ジェラルドは左手で警笛を出して思いっ切り吹く。
 緊急の音が遠くまで響き渡った。

 これで安心、と思った私たちに近づいて来たのは、アーチェリーの胸当てをして弓を持ったジェシカだった。
 矢で男の左腕を射ったのは、彼女だった。

 ジェラルドの吹いた警笛の音が聞こえた馬車の護衛騎士と学園の警備兵たちが駆け付ける。
 後は彼らに任せて、私たちとジェシカは王族執務室に戻って城から護衛が来るのを待つ事にした。
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