2 / 3
中編
しおりを挟む
一方、陰で
「あいつ、性格が変わって扱いやすくなったなー」
と笑っている側近たち。
「何か命じられても、『それ、本当にやらないといけない事ですか?』って言えば諦めるし」
「圧強めにして向かうとチョロいよな」
笑い声がドアの向こうから漏れてくる。
廊下でそれを聞いても
「私が不甲斐ないばかりに…」
と、怒るどころか自分を責めるテミス様。
そんな彼をフォローしつつ、解呪方法を探る日々だった。
* * * * * * * * * *
「まったく、あいつは何を言ってるんだ! 婚約ならとっくに解消してるだろうが!」
お兄様が、憤懣やるかたない表情でパーティー会場を後にする。
そう、呪いが解けてテミス様との婚約は解消されたので、私はパートナーをお兄様にお願いして卒業パーティーに参加していたのだ。
「私との婚約が、人生の恥だからでしょう……」
それを聞いてますます怒り狂うお兄様と反対に、私は冷静だった。
テミス様は……、きっと、呪いの渦中でも意識があったのだろう。不本意な婚約をする不甲斐ない自分を、カトリーナ様から逃げ回る気の弱い自分を、そんな自分を侮って馬鹿にしている周りを、ずっと見ていたのだろう。
怒りを爆発させたような婚約破棄を見て、私は確信を持った。
既に婚約解消されている私でもこの扱いなら、今ごろフォーグロード公爵家の使用人たちは、側近たちはどうなっているのだろう……。
何より、カトリーナ様が婚約者となっても公爵夫人と合うとは思えないのだが……。いや、公爵夫人と渡り合えるのは、カトリーナ様くらいか? まあ、「二度と私の前に姿を見せるな!」と言われたのだ。もう会う事も無いのだから、考えないようにしよう。
* * * * * * * * * *
刻々と学園の卒業が近づいて来るのに、解呪の方法はいくら調べてもわからなかった。私が調べられる事など、公爵家ではとっくに調べているはず。
そもそも、呪われてから私の所に来るまで二ヶ月かかっている。その間に出来る事はやり尽くしたのだろう。
つまりは、「どうやって解呪するか」ではなく、「どうやって私のスキルを発動させるか」なのだ。
「卒業パーティーのドレスを贈らせて欲しい」
と、テミス様に言われて絶望的な気持ちになった。タイムリミットが近づいてくる……。
「お、オーダーは駄目ですからね! 既製品にしてくださいね」
「ユリアナさんはいつも遠慮深いな。皆、欲しい物をはっきり言うのに」
それはカモにされてるって言うんですよ……。あなたからプレゼントをもらった人で、あなたの誕生日にプレゼントをくれた人がいますか?、と言ったら面倒な事になりそうなので言えないけど。
テミス様には、はっきり言った方が親切なのだろうとは思う。カフェやレストランのオーダーでさえ延々と悩む人だ。はっきりと、高価な一点物を「これが欲しい」と指定した方が無駄に時間をかけずに済む。
でも、仮初の婚約者のためにお金を使わせたくないと思ってしまうのだ。
なので、私の誕生日の前には、二人であれこれ相談して妥協案で決まった物をプレゼントしてもらっていた。
だが、「妥当な物」というのは難しいのだ。「手ごろな値段で、一般的なプレゼントに好適」という物は、微妙な色違いや素材違いなどやたらと種類が多い。結局テミス様は悩みに悩む事になる。
そんなわけで、ドレスはパーティーの一か月前に私とテミス様(&護衛二人)でお店に行って、さくっと選んだ。
ドレスをアロンズ家に届けてもらうように手配し近くのカフェの個室に入っても、テミス様は
「やはりもっとレースを使ったあちらの方が…。いや、それより…」
と、悩み続けてる。
「私は、あのドレスで嬉しいですわ。テミス様は気に入りませんの?」
「いえ! とてもお似合いでした!」
「ならば、問題ないではありませんか」
「そうですね!」
……私もテミス様の扱いが上手くなった。
お茶を飲んで落ち着いた頃、テミス様はポケットから小さなビロードの箱を取り出した。
「これは、ドレスの他に私から。あっ、本当に小さな物なので、良かったら」
と、私に向けて箱を開けてくれると、中には小さなルビーの付いた指輪。
……小さい。確かに小さいが、こんな真っ赤なルビーが安いわけ無いでしょう! サイズが小さい事で私をごまかせると思ったの?
「あいつ、性格が変わって扱いやすくなったなー」
と笑っている側近たち。
「何か命じられても、『それ、本当にやらないといけない事ですか?』って言えば諦めるし」
「圧強めにして向かうとチョロいよな」
笑い声がドアの向こうから漏れてくる。
廊下でそれを聞いても
「私が不甲斐ないばかりに…」
と、怒るどころか自分を責めるテミス様。
そんな彼をフォローしつつ、解呪方法を探る日々だった。
* * * * * * * * * *
「まったく、あいつは何を言ってるんだ! 婚約ならとっくに解消してるだろうが!」
お兄様が、憤懣やるかたない表情でパーティー会場を後にする。
そう、呪いが解けてテミス様との婚約は解消されたので、私はパートナーをお兄様にお願いして卒業パーティーに参加していたのだ。
「私との婚約が、人生の恥だからでしょう……」
それを聞いてますます怒り狂うお兄様と反対に、私は冷静だった。
テミス様は……、きっと、呪いの渦中でも意識があったのだろう。不本意な婚約をする不甲斐ない自分を、カトリーナ様から逃げ回る気の弱い自分を、そんな自分を侮って馬鹿にしている周りを、ずっと見ていたのだろう。
怒りを爆発させたような婚約破棄を見て、私は確信を持った。
既に婚約解消されている私でもこの扱いなら、今ごろフォーグロード公爵家の使用人たちは、側近たちはどうなっているのだろう……。
何より、カトリーナ様が婚約者となっても公爵夫人と合うとは思えないのだが……。いや、公爵夫人と渡り合えるのは、カトリーナ様くらいか? まあ、「二度と私の前に姿を見せるな!」と言われたのだ。もう会う事も無いのだから、考えないようにしよう。
* * * * * * * * * *
刻々と学園の卒業が近づいて来るのに、解呪の方法はいくら調べてもわからなかった。私が調べられる事など、公爵家ではとっくに調べているはず。
そもそも、呪われてから私の所に来るまで二ヶ月かかっている。その間に出来る事はやり尽くしたのだろう。
つまりは、「どうやって解呪するか」ではなく、「どうやって私のスキルを発動させるか」なのだ。
「卒業パーティーのドレスを贈らせて欲しい」
と、テミス様に言われて絶望的な気持ちになった。タイムリミットが近づいてくる……。
「お、オーダーは駄目ですからね! 既製品にしてくださいね」
「ユリアナさんはいつも遠慮深いな。皆、欲しい物をはっきり言うのに」
それはカモにされてるって言うんですよ……。あなたからプレゼントをもらった人で、あなたの誕生日にプレゼントをくれた人がいますか?、と言ったら面倒な事になりそうなので言えないけど。
テミス様には、はっきり言った方が親切なのだろうとは思う。カフェやレストランのオーダーでさえ延々と悩む人だ。はっきりと、高価な一点物を「これが欲しい」と指定した方が無駄に時間をかけずに済む。
でも、仮初の婚約者のためにお金を使わせたくないと思ってしまうのだ。
なので、私の誕生日の前には、二人であれこれ相談して妥協案で決まった物をプレゼントしてもらっていた。
だが、「妥当な物」というのは難しいのだ。「手ごろな値段で、一般的なプレゼントに好適」という物は、微妙な色違いや素材違いなどやたらと種類が多い。結局テミス様は悩みに悩む事になる。
そんなわけで、ドレスはパーティーの一か月前に私とテミス様(&護衛二人)でお店に行って、さくっと選んだ。
ドレスをアロンズ家に届けてもらうように手配し近くのカフェの個室に入っても、テミス様は
「やはりもっとレースを使ったあちらの方が…。いや、それより…」
と、悩み続けてる。
「私は、あのドレスで嬉しいですわ。テミス様は気に入りませんの?」
「いえ! とてもお似合いでした!」
「ならば、問題ないではありませんか」
「そうですね!」
……私もテミス様の扱いが上手くなった。
お茶を飲んで落ち着いた頃、テミス様はポケットから小さなビロードの箱を取り出した。
「これは、ドレスの他に私から。あっ、本当に小さな物なので、良かったら」
と、私に向けて箱を開けてくれると、中には小さなルビーの付いた指輪。
……小さい。確かに小さいが、こんな真っ赤なルビーが安いわけ無いでしょう! サイズが小さい事で私をごまかせると思ったの?
52
あなたにおすすめの小説
よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて
碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。
美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。
第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます
碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」
そんな夫と
「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」
そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。
嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる