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中編
満足げな殿下に何か言うべきかと口を開こうとしたら、目の前に旋風が起こり、次の瞬間、そこには黒髪黒瞳の大柄な美丈夫が黒いマントをたなびかせて立ってました。
「スカーレット。迎えに来た」
「ルア様。もう約束の時間ですか?」
「ああ。皆が待っている。スカーレットのご家族も」
「まあ、お待たせしてはいけませんね。それでは皆様、これにて失礼い」
「そいつは誰だ!」
空気を読め、殿下。
「スカーレットの夫だ」
ルア様も売られた喧嘩を買わないで。ああっ、皆の目が「このまま帰らせ無い!」と言ってる!
「……殿下、こちらはお隣の魔族国の国王のルア様です。私たち、これから結婚しますの」
会場中にざわめきが起こる。
ルア様が言うには、「国王と言っても魔族は独立独歩でな。私は人間で言う『管理人』みたいなもので、別に偉くは無いんだ」だそうですけど。
ってか、隣の国の国王の顔も覚えて無いの? 殿下!
「…魔、魔族国の国王と言えば、妃が何人もいるではないか!」
何でそう中途半端な知識は有るの……。
「殿下、『妃が何人も』ではなく、『何度も結婚した』の間違いですわ。ルア様は魔族。見た目は二十代ですが、実年齢は227歳です。結婚の一度や二度や三度あって当然です」
そして全て円満に離縁してますよ!
「お前は、私の妃の座を狙いながら、他の男にも粉をかけていたと言うのか!」
「殿下の妃の座なんて、狙った事ありません! 私は八年前からルア様一筋ですわ!」
「八年も私を裏切ってたのか!」
なんでそうなる!
「スカーレット。何なんだ? この愚かな男は」
「この国の第一王子ですわ……」
「ああ、今回の生贄か」
それ言っちゃ駄目ーーー!
私の反応に、「冗談では無い」と気付いたようだ。
「な…何をふざけている。生贄になるのはスカーレットだろう。この毒婦が!」
さすがに殿下の顔が引き攣ってるが、人を罵るのは忘れない。
「スカーレットが毒婦? お前は本当に愚かだな。八年前から何も変わって無い」
あー、もう言うしかないか。
「殿下。『八年前』と聞いて何か思い出しませんか?」
「?」
うん、忘れてますわね。そうだろうと思ってました。
「私たちは十歳でした。皆で離宮に行った時、殿下が『黒くてキラキラするデーモンラビットの毛皮が欲しい』と言い出して、側近三人と離宮を抜け出して魔境の森に入ったもののデーモンラビットの群れに襲われそうになり、殿下たちを探しに来た私をデーモンラビットの中に突き飛ばして自分たちは逃げたのが、八年前です」
会場が静まり返る。
「その時、私を助けてくれたのがルア様だったのです。殿下は謝罪にも来なかったので、私がどうやって助かったのか知らなかったのでしょう」
殿下たちはやっと思い出したようだ。気まずそうだが、今更だ。
「ルア様に助けられて、そのまま転移で王宮に送ってもらった血塗れ傷だらけの私を見て、国王陛下は殿下たちを見限ったのです。人を犠牲にして自分が助かろうとする者なら、他の人のために犠牲にされても自業自得と……。八年前から、殿下たちはいずれ来る噴火のために生かされていたのですわ」
それでも、成長して変わるかもしれないと期待していた陛下の親心は無駄に終わりましたわね。今頃、婚約破棄をやらかした報告が行ってるでしょう。
「間もなく、人身御供となる人が公示されるでしょう」
「ただ、八年の間に側近の一人が、あまりの殿下の身勝手さに離れてしまいまして、四人の予定が三人になってしまいましたの」
離れた所にいた元側近がへたり込んだのが見えた。隣に、多分婚約者が寄り添ってる。目が覚めて良かったですわね。
「けれど、その代わりに殿下と添い遂げるお覚悟のアリサ様がいらっしゃる。なんて素晴らしい真実の愛!」
三人より四人の方が魔力が大きくなって、噴火も抑えられます。今回は歴史に残る軽被害で済むかもしれませんわ。
アリサ様が真っ青です。自分が言った事ですのに。
撤回は出来ませんわ。と言うより、させませんわよ、我が身が生贄になりたく無い全貴族が。
「それでは皆様、ごきげんよう」
すっかり静かになった殿下たちを置いて、私たちは今度こそ会場から去った。
「スカーレット。迎えに来た」
「ルア様。もう約束の時間ですか?」
「ああ。皆が待っている。スカーレットのご家族も」
「まあ、お待たせしてはいけませんね。それでは皆様、これにて失礼い」
「そいつは誰だ!」
空気を読め、殿下。
「スカーレットの夫だ」
ルア様も売られた喧嘩を買わないで。ああっ、皆の目が「このまま帰らせ無い!」と言ってる!
「……殿下、こちらはお隣の魔族国の国王のルア様です。私たち、これから結婚しますの」
会場中にざわめきが起こる。
ルア様が言うには、「国王と言っても魔族は独立独歩でな。私は人間で言う『管理人』みたいなもので、別に偉くは無いんだ」だそうですけど。
ってか、隣の国の国王の顔も覚えて無いの? 殿下!
「…魔、魔族国の国王と言えば、妃が何人もいるではないか!」
何でそう中途半端な知識は有るの……。
「殿下、『妃が何人も』ではなく、『何度も結婚した』の間違いですわ。ルア様は魔族。見た目は二十代ですが、実年齢は227歳です。結婚の一度や二度や三度あって当然です」
そして全て円満に離縁してますよ!
「お前は、私の妃の座を狙いながら、他の男にも粉をかけていたと言うのか!」
「殿下の妃の座なんて、狙った事ありません! 私は八年前からルア様一筋ですわ!」
「八年も私を裏切ってたのか!」
なんでそうなる!
「スカーレット。何なんだ? この愚かな男は」
「この国の第一王子ですわ……」
「ああ、今回の生贄か」
それ言っちゃ駄目ーーー!
私の反応に、「冗談では無い」と気付いたようだ。
「な…何をふざけている。生贄になるのはスカーレットだろう。この毒婦が!」
さすがに殿下の顔が引き攣ってるが、人を罵るのは忘れない。
「スカーレットが毒婦? お前は本当に愚かだな。八年前から何も変わって無い」
あー、もう言うしかないか。
「殿下。『八年前』と聞いて何か思い出しませんか?」
「?」
うん、忘れてますわね。そうだろうと思ってました。
「私たちは十歳でした。皆で離宮に行った時、殿下が『黒くてキラキラするデーモンラビットの毛皮が欲しい』と言い出して、側近三人と離宮を抜け出して魔境の森に入ったもののデーモンラビットの群れに襲われそうになり、殿下たちを探しに来た私をデーモンラビットの中に突き飛ばして自分たちは逃げたのが、八年前です」
会場が静まり返る。
「その時、私を助けてくれたのがルア様だったのです。殿下は謝罪にも来なかったので、私がどうやって助かったのか知らなかったのでしょう」
殿下たちはやっと思い出したようだ。気まずそうだが、今更だ。
「ルア様に助けられて、そのまま転移で王宮に送ってもらった血塗れ傷だらけの私を見て、国王陛下は殿下たちを見限ったのです。人を犠牲にして自分が助かろうとする者なら、他の人のために犠牲にされても自業自得と……。八年前から、殿下たちはいずれ来る噴火のために生かされていたのですわ」
それでも、成長して変わるかもしれないと期待していた陛下の親心は無駄に終わりましたわね。今頃、婚約破棄をやらかした報告が行ってるでしょう。
「間もなく、人身御供となる人が公示されるでしょう」
「ただ、八年の間に側近の一人が、あまりの殿下の身勝手さに離れてしまいまして、四人の予定が三人になってしまいましたの」
離れた所にいた元側近がへたり込んだのが見えた。隣に、多分婚約者が寄り添ってる。目が覚めて良かったですわね。
「けれど、その代わりに殿下と添い遂げるお覚悟のアリサ様がいらっしゃる。なんて素晴らしい真実の愛!」
三人より四人の方が魔力が大きくなって、噴火も抑えられます。今回は歴史に残る軽被害で済むかもしれませんわ。
アリサ様が真っ青です。自分が言った事ですのに。
撤回は出来ませんわ。と言うより、させませんわよ、我が身が生贄になりたく無い全貴族が。
「それでは皆様、ごきげんよう」
すっかり静かになった殿下たちを置いて、私たちは今度こそ会場から去った。
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