6 / 12
第一幕:露光される盤上
未露光の静寂と、詰みの前奏曲
しおりを挟む「……っ」
放課後の図書室。窓から差し込む冬の西陽は、埃の粒子を金色のノイズに変えて、私の机の上を踊らせている。
私の名は、橋本芽衣。将棋盤の上では数千手の未来を読み切る「王」であっても、この巨大な書棚に囲まれた静寂の中では、ただの150cmの、震える小動物に過ぎない。
私は、開いたノートの余白に、解法を導き出せない数式を並べていた。
数学、論理、確率。
私の世界を形作るはずのそれらが、今はひどく遠い。
なぜなら、数分前から私の隣の席に座り、無言で、けれど圧倒的な熱量を持って私を見つめている「ノイズ」の存在があるからだ。
「……ねえ、芽衣ちゃん。そこ、符号が逆じゃない?」
耳元で、湿り気を帯びた声がした。
心臓が、対局の秒読みで追い詰められた時よりも激しく、肋骨の裏側を叩く。
顔を上げずともわかる。オレンジブラウンのピクシーカット、そして首から下げられた重厚な一眼レフ。
写真部の執行官、前田千尋だ。
彼女は、私の返事も待たずに身を乗り出し、私のノートを覗き込んできた。
「えっ、あ……」
157cmの彼女が近づくたび、私の150cmの視界は彼女の影に塗りつぶされる。
彼女の肘が、私の細い腕に触れた。
熱い。
彼女のブラウス越しに、Cカップの肉感が、私のAAAカップの平坦な胸元に、かすかな圧迫感として伝わってくる。
女としての決定的な「厚み」の違い。
それは、この学園における強者と弱者の境界線を、残酷なほど鮮明に描き出していた。
「……見ないで。まだ、考え中なの」
絞り出した声は、自分でも驚くほど震えていた。
けれど、千尋は離れない。むしろ、彼女のレンズキャップが私のノートの端にカチリと当たり、無機質な硝子の視線――ファインダーではない、彼女自身の剥き出しの瞳が、私の横顔を至近距離で射抜く。
「芽衣ちゃん、心音、すごいよ? 盤面を読んでる時も、そんな風にドキドキしてるの?」
彼女の手が、机の上で私のノートの端を指先でなぞった。
その動きは、まるで獲物の毛並みを確かめる猟師のようだ。
私は知っている。彼女が今、私の「無防備」を、その脳内の暗室で現像し始めていることを。
私がここで数式を間違えたことも、ペンを握る指先が汗ばんでいることも、すべてが彼女にとっては「最高の一枚」への予兆なのだ。
「……やめて、千尋さん」
私はノートを抱きしめるようにして、自分の胸を隠した。
AAAカップの、起伏のない私の胸。
けれど、そこには今、彼女の視線という名の「光」が容赦なく降り注ぎ、私の処女の蕾を、狂おしいほどに疼かせている。
逃げなければならない。
この静寂が、シャッター音という名の「死刑宣告」に変わる前に。
けれど、私の足は、畳に根を張った駒のように、一歩も動くことができなかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
さくらと遥香(ショートストーリー)
youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。
その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。
※さくちゃん目線です。
※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。
※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。
※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

