図書室の暗室(スタジオ)へようこそ ~将棋部部長・芽衣の屈辱現像日誌~

藍原みらい

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第一幕:露光される盤上

未露光の静寂と、詰みの前奏曲

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「……っ」
放課後の図書室。窓から差し込む冬の西陽は、埃の粒子を金色のノイズに変えて、私の机の上を踊らせている。
私の名は、橋本芽衣。将棋盤の上では数千手の未来を読み切る「王」であっても、この巨大な書棚に囲まれた静寂の中では、ただの150cmの、震える小動物に過ぎない。
私は、開いたノートの余白に、解法を導き出せない数式を並べていた。
数学、論理、確率。
私の世界を形作るはずのそれらが、今はひどく遠い。
なぜなら、数分前から私の隣の席に座り、無言で、けれど圧倒的な熱量を持って私を見つめている「ノイズ」の存在があるからだ。
「……ねえ、芽衣ちゃん。そこ、符号が逆じゃない?」
耳元で、湿り気を帯びた声がした。

心臓が、対局の秒読みで追い詰められた時よりも激しく、肋骨の裏側を叩く。
顔を上げずともわかる。オレンジブラウンのピクシーカット、そして首から下げられた重厚な一眼レフ。
写真部の執行官、前田千尋だ。
彼女は、私の返事も待たずに身を乗り出し、私のノートを覗き込んできた。
「えっ、あ……」
157cmの彼女が近づくたび、私の150cmの視界は彼女の影に塗りつぶされる。
彼女の肘が、私の細い腕に触れた。
熱い。
彼女のブラウス越しに、Cカップの肉感が、私のAAAカップの平坦な胸元に、かすかな圧迫感として伝わってくる。
女としての決定的な「厚み」の違い。
それは、この学園における強者と弱者の境界線を、残酷なほど鮮明に描き出していた。
「……見ないで。まだ、考え中なの」
絞り出した声は、自分でも驚くほど震えていた。
けれど、千尋は離れない。むしろ、彼女のレンズキャップが私のノートの端にカチリと当たり、無機質な硝子の視線――ファインダーではない、彼女自身の剥き出しの瞳が、私の横顔を至近距離で射抜く。
「芽衣ちゃん、心音、すごいよ? 盤面を読んでる時も、そんな風にドキドキしてるの?」
彼女の手が、机の上で私のノートの端を指先でなぞった。
その動きは、まるで獲物の毛並みを確かめる猟師のようだ。
私は知っている。彼女が今、私の「無防備」を、その脳内の暗室で現像し始めていることを。
私がここで数式を間違えたことも、ペンを握る指先が汗ばんでいることも、すべてが彼女にとっては「最高の一枚」への予兆なのだ。
「……やめて、千尋さん」
私はノートを抱きしめるようにして、自分の胸を隠した。
AAAカップの、起伏のない私の胸。
けれど、そこには今、彼女の視線という名の「光」が容赦なく降り注ぎ、私の処女の蕾を、狂おしいほどに疼かせている。
逃げなければならない。
この静寂が、シャッター音という名の「死刑宣告」に変わる前に。
けれど、私の足は、畳に根を張った駒のように、一歩も動くことができなかった。
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