あの日の君は...

海音²

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7.~過去~菜穂海と花火

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俺達は人気の無い神社まで歩いてきてた

花火大会の会場から少し離れてて、少し高台にあるため見晴らしがいいのだが、なにせみんな屋台とか行くのでこの辺にはあまり人がいないのだ

それに夜の神社って暗いしなんか不気味だしね

とりあえず俺達は神社の石段に腰掛け花火が上がるまで色んな話をした

小説の話とか今日の事とか他愛も無い事ばかり...
菜穂海さんはケラケラ笑ったり色んな表情をしていた
俺は時間が経つにつれて落ち着かず内心ソワソワしてた
花火が終わったら告白するそう決めてたからだ

そう思ってたら不意に菜穂海さんが

「ねぇ慶太君」
「どうしたの?」
「私ね....実は━━━━」

ピューッ...ドーン!

俺は菜穂海さんが何を言ったのか聞き取る前に花火の音によって遮られた

「うゎー!綺麗!」
「ねぇ菜穂海さんさっきなんて言ったの?」
「んー?なんでもないよ...」

こちらを見てそう言った菜穂海さんはまた花火に顔を向けた

俺はその横顔から目が離せずただただ菜穂海さんを見つめてた

少し寂しげな表情が見え隠れさせ、それでも花火の輝きに目を輝かせ花火が映った綺麗な瞳には輝いてるのか潤んでるのか俺にははっきりとは分からなかった

ただそこには今まで見た事がなかった
儚くも輝く俺の知らない菜穂海さんが居た

花火も終わりあたりはまた静寂に包まれた
俺ははやる気持ちを落ち着かせ声をかけた

「花火綺麗だったね」
「うんすごく綺麗だった」
「良かったら来年も一緒に...みたいな」
「来年...」
「あ...あの菜穂海さん」
「なにかな?」
「俺...菜穂海さんの事「その前に」す....え?」

俺の初告白は突然遮られた

「私慶太君に伝えなきゃいけないことがあるの」
「伝えないといけないこと?」
「うん...あのね...」

そう言って菜穂海さんは一呼吸置いて俺の顔を真剣に見たそして...

「私の事好きにならないで」

突然の事で俺の頭は菜穂海さんの言葉の意味を理解できなかった

「え?な...なんで?」
「それは...」
「ふざけるなよ!」

俺は菜穂海さんの話を聞き終わる前に叫んでいた

「なんだよそれ!俺の気持ちも知らないでなんで今言うんだよ!!」
「慶太君話を聞いて欲しいの」
「何も聞きたくない!」

俺はそう言って走り出した。怒りと辛さで頭の中がグチャグチャになっていたからだ

なんで好きになるなっていいながらあんなに泣きそうな顔してんだよ!訳分かんね!

俺はそのまま家に帰ってベットに潜った

その後始業式まで俺は菜穂海さんに連絡もせずただただ部屋にこもって過ごした

始業式の日教室に行くが菜穂海さんは一向に投稿することは無かった
そのままHRが始まり先生から転校したことを伝えられた
理由は家庭の事情との事だった
 俺はそれを聞いた時やっと菜穂海さんがあの時言った言葉の意味を理解した

菜穂海さんは俺と付き合ってもすぐ遠くに行くから俺に釘を刺すつもりであんなことを言ったんだ...

俺は休憩時間に慌てて携帯で菜穂海さんにメールを送った。しかし....メールは送れず返ってきた...もちろん電話もかけたが使われてなかった...

俺は凄く後悔した。あの時ちゃんと話を聞いてたらもしそれでも好きだとちゃんと伝えれてたら...もしかしたらなにか変わったかもしれない..

後悔あとに立たずって言葉があるけどまさにそうだった...

 もう二度と会うことは無いかもしれない
ただそれだけで俺は涙が止まらなかった...

それから何日が過ぎた

俺は始業式の次の日から学校を休んでいた
とても学校に行く気がおきなかったのだ...

そんな時一通の手紙が届いた
菜穂海さんからだ
『拝啓、慶太君
まずは謝らせてください。
あの日貴方を傷付けてしまった事携帯も解約して連絡も取れなくなったこと本当にごめんなさい。
私の両親が離婚する事になって夏休みが終わったらお母さんと一緒におばあちゃんの家に行く事になってたの
私も聞いたのはあの花火大会の日の朝で泣きながら嫌だと訴えたんだけどもう決まった事だからと聞いて貰えなかったの...
それならと慶太君と最後に花火大会だけは行きたいってお願いしたら、お母さん達も申し訳なさそうに色々手伝ってくれたのそれで浴衣とか色々お洒落してたんだ...
あの日の事は私の大切な思い出だよ♪
今更だけど私は慶太君が好きでした
いつも本を読んでるだけだった私に声をかけてくれて、同じ小説が好きでそして色んな話を沢山して、たぶんその時にはもう好きになってた
花火大会を誘ってくれた時も凄く嬉しかったし
私が男の人達に話しかけられてた時も助けてくれてしかも...名前で呼んでくれて凄く男らしく思えてまた好きになった
もしこんな事が無ければ私達付き合えてたのかな?
なんて叶わない夢を想ったりして....
もう...会えないと思うから...さようなら慶太君元気でね。』

手紙から溢れる菜穂海さんの気持ちに俺は泣き叫んだ
暫く泣き続けて落ち着いた俺は手紙を書くことにした
彼女に伝えたい事そして俺の想いを全て乗せて彼女にたった数文字に込めて...

『来年も彼処で待ってる』

彼女と過ごす夏はもう来ないかもしれない
一緒に花火を見る事も無いかもしれない
それでも、もしまた会えるなら...
そう願い俺はポストに投函した
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