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よくある昔話
俺の名前はネロ。25歳のオメガ男性。
ネロという名前は祖父が付けてくれた。家業を起こしたひいひい爺さんの名前を貰ったもので、祖父は俺が商人として成功するようにと願ってくれたのだと思う。
俺は生まれも育ちも平民だけど、そう願って生を受けた時はそこら辺の男爵家より裕福な商家の長男だった。欲しいものは与えられ、家族に愛されて何不自由なく暮らしていたのだ。
それが変わったのは祖父が亡くなって、父の代に変わってからだ。
父は頭の硬い人だった。正直商売人には向いてなくて人付き合いも下手。その頑固さで貴族の反感を買って経営が傾くほどの締め付けを食らった。その上友人だと思っていた人間に裏切られ、莫大な借金を背負わされた父は絶望して首を吊ったのだ。
借金まみれで残された母は裏切った友人に店の権利と共に無理矢理連れて行かれた。そいつは昔から母のことが好きだったらしい。
でも、そいつは父の血を引いた俺はいらなかった。母には養子先を探したと嘘を吐いて引き離し、実際は娼館に売られた。俺はまだ12歳の何も知らない子供だったし、そこそこ整った顔にバース性がオメガだとわかったばかりだったから高く売れたのだろう。
「いい生活をしたければ教養を身に付けろ。ここではより頭のいい奴が上に行ける。オメガに胡座をかく奴は生き残れない。肝に銘じておけ」
連れてこられた初日に言われたのがこの言葉。
俺の運が良かったのは売られた先が高級娼館だったことだ。主に貴族を相手にするため十分な教養が必要で、教育係が良しとしなければホールに立つことも許されない。できなければもっと格下の娼館に払い下げられるので、それを恐れた俺は必死で勉強した。
貴族が相手でも無礼ではない振る舞いを身に付け、話題に付いていくためあらゆるジャンルの基礎知識を叩き込み最新情報も漏れなく収集。歌やダンス、楽器の練習をして、床の中での奉仕の仕方も習得した。
15歳で初めての発情期が来て、よくわからないうちに初めての行為は終わっていた。それで水揚げが終わったことになっていて、発情期が明けたら客を取るようになった。
「ここは綺麗な地獄よ。上っ面だけ綺麗に着飾って、中身はクソ。ここから出るには金持ちの貴族の馴染みになって身請けしてもらうしかない。年期明けで放り出されたってこんな生活しかしてこなかったオメガのアタシらに普通の生活なんてできっこないんだからね」
そう言っていたのは俺の姐さん。ブルネットのふわふわの癖毛がチャームポイントの笑顔がかわいい人だった。彼女は子爵家の次男に気に入られ、番になって出て行った。ここを出ていく日の姐さんの晴れやかな顔が忘れられない。
「俺も番が欲しい。俺だけの人を見つけて、こんな生活さっさとおさらばしたいよ」
うちは貴族相手が基本。妊娠や番事故の危険性がある発情期は客を取らない。ま、金積めばできるんだけどね。どっちにしろ毎日違う人間相手に媚と体を売って一銭も自分のものにならない金を稼ぐ日々は同じだ。全く嫌になる。
1回目は広いホールで俺以外の男娼も含めた何人かで芸を披露して会話と酒を楽しむだけ。2回目は2人で酒と食事を。3回目以降でようやく床入りになる。売れれば多少の選り好みや床入りまでの引き伸ばしは許された。それでもこの10年で数え切れないくらいの人と関係を持ったのは事実だ。
でも、それでも。いつか俺だけがいいと言ってくれる人が現れるかもしれない。魂まで繋がる番を持って、こんな苦しみなんかない穏やかな生活を送りたい。姐さんのように笑いたい。
それなのに。
「僕たちみたいな人間と番になろうなんて奴はロクな奴じゃないよ。番になったって後できっと捨てられる。現実見な?ネロ。貴族にとっては僕たちなんて都合のいい穴と変わらないんだ。夢見るだけ無駄だよ」
「そうかな……そうかも」
あんなに幸せそうだった姐さんが貧民街で見つかった。子爵家次男の本妻に存在が知られて、姐さんは捨てられたらしい。心も体もボロボロでいつ死んでもおかしくない姿だったと。
心の支えだった姐さんの幸せがまやかしだったと聞いて、俺の心は折れる寸前だった。
「夢見るだけ無駄、か。本当にそうかもね。手垢だらけのオメガなんて、誰が欲しがるんだって」
もう嫌だ。疲れた。いつまで続くの?絶望にも似た気持ちで日々を過ごす中、その時はやってきた。
「ネロちゃん、今日は私の大事なお客人を招待したんだ。君なら大丈夫だと思うけど、粗相のないようにどうか頼むよ」
「勿論です。誠心誠意努めさせていただきますのでご安心ください」
ルキーノと出会ったのは5年前。常連の子爵が接待目的で連れてきたのがきっかけだった。
ネロという名前は祖父が付けてくれた。家業を起こしたひいひい爺さんの名前を貰ったもので、祖父は俺が商人として成功するようにと願ってくれたのだと思う。
俺は生まれも育ちも平民だけど、そう願って生を受けた時はそこら辺の男爵家より裕福な商家の長男だった。欲しいものは与えられ、家族に愛されて何不自由なく暮らしていたのだ。
それが変わったのは祖父が亡くなって、父の代に変わってからだ。
父は頭の硬い人だった。正直商売人には向いてなくて人付き合いも下手。その頑固さで貴族の反感を買って経営が傾くほどの締め付けを食らった。その上友人だと思っていた人間に裏切られ、莫大な借金を背負わされた父は絶望して首を吊ったのだ。
借金まみれで残された母は裏切った友人に店の権利と共に無理矢理連れて行かれた。そいつは昔から母のことが好きだったらしい。
でも、そいつは父の血を引いた俺はいらなかった。母には養子先を探したと嘘を吐いて引き離し、実際は娼館に売られた。俺はまだ12歳の何も知らない子供だったし、そこそこ整った顔にバース性がオメガだとわかったばかりだったから高く売れたのだろう。
「いい生活をしたければ教養を身に付けろ。ここではより頭のいい奴が上に行ける。オメガに胡座をかく奴は生き残れない。肝に銘じておけ」
連れてこられた初日に言われたのがこの言葉。
俺の運が良かったのは売られた先が高級娼館だったことだ。主に貴族を相手にするため十分な教養が必要で、教育係が良しとしなければホールに立つことも許されない。できなければもっと格下の娼館に払い下げられるので、それを恐れた俺は必死で勉強した。
貴族が相手でも無礼ではない振る舞いを身に付け、話題に付いていくためあらゆるジャンルの基礎知識を叩き込み最新情報も漏れなく収集。歌やダンス、楽器の練習をして、床の中での奉仕の仕方も習得した。
15歳で初めての発情期が来て、よくわからないうちに初めての行為は終わっていた。それで水揚げが終わったことになっていて、発情期が明けたら客を取るようになった。
「ここは綺麗な地獄よ。上っ面だけ綺麗に着飾って、中身はクソ。ここから出るには金持ちの貴族の馴染みになって身請けしてもらうしかない。年期明けで放り出されたってこんな生活しかしてこなかったオメガのアタシらに普通の生活なんてできっこないんだからね」
そう言っていたのは俺の姐さん。ブルネットのふわふわの癖毛がチャームポイントの笑顔がかわいい人だった。彼女は子爵家の次男に気に入られ、番になって出て行った。ここを出ていく日の姐さんの晴れやかな顔が忘れられない。
「俺も番が欲しい。俺だけの人を見つけて、こんな生活さっさとおさらばしたいよ」
うちは貴族相手が基本。妊娠や番事故の危険性がある発情期は客を取らない。ま、金積めばできるんだけどね。どっちにしろ毎日違う人間相手に媚と体を売って一銭も自分のものにならない金を稼ぐ日々は同じだ。全く嫌になる。
1回目は広いホールで俺以外の男娼も含めた何人かで芸を披露して会話と酒を楽しむだけ。2回目は2人で酒と食事を。3回目以降でようやく床入りになる。売れれば多少の選り好みや床入りまでの引き伸ばしは許された。それでもこの10年で数え切れないくらいの人と関係を持ったのは事実だ。
でも、それでも。いつか俺だけがいいと言ってくれる人が現れるかもしれない。魂まで繋がる番を持って、こんな苦しみなんかない穏やかな生活を送りたい。姐さんのように笑いたい。
それなのに。
「僕たちみたいな人間と番になろうなんて奴はロクな奴じゃないよ。番になったって後できっと捨てられる。現実見な?ネロ。貴族にとっては僕たちなんて都合のいい穴と変わらないんだ。夢見るだけ無駄だよ」
「そうかな……そうかも」
あんなに幸せそうだった姐さんが貧民街で見つかった。子爵家次男の本妻に存在が知られて、姐さんは捨てられたらしい。心も体もボロボロでいつ死んでもおかしくない姿だったと。
心の支えだった姐さんの幸せがまやかしだったと聞いて、俺の心は折れる寸前だった。
「夢見るだけ無駄、か。本当にそうかもね。手垢だらけのオメガなんて、誰が欲しがるんだって」
もう嫌だ。疲れた。いつまで続くの?絶望にも似た気持ちで日々を過ごす中、その時はやってきた。
「ネロちゃん、今日は私の大事なお客人を招待したんだ。君なら大丈夫だと思うけど、粗相のないようにどうか頼むよ」
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