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というかこの顔はもう二度と元の顔には戻らないのだろうか。人の記憶に残らないレベルの地味顔だったとはいえ、それなりに愛着はある。戻せるなら戻りたい。
「俺がキャラメイクした冒険者の顔ならまだ受け入れられたんだけどな。アルフォンスはない。ないわ~」
呟きながらずるずるとソファからずり下がっていく体。尻から落ちそうになる寸前で止まってぼんやりと窓から見える空を見つめる。
この顔、洗ったら元に戻ったりしないだろうか。メイク落とす感じで。
「あ……そういえば荷物」
メイクを落とすで思い出した。イビルボアに投げつけたキャリーバッグの中には元の世界に戻った後に必要になるものが諸々入っている。現金はともかく免許証やクレジットカードは再発行が面倒だからできるなら回収したい。メイク道具も、敏感肌な俺に一番合うやつを入れてたからそれも確保したいところだ。せっかく日々の手入れで手に入れたツルツルのお肌なんだから、ここでも基礎化粧品くらいは使い続けたい。
だがそのためには赤の森にまた入ることが必須。今の俺では荷物を探しに行って死ぬなんてことになりかねない。
「もっとお手軽に……アイテムボックスー!って言ったら荷物出て来ないかなー、ってそんなわけねぇか」
そう笑った瞬間ゴト、と何かが落ちる重い音がした。
「え……?」
すぐ近くで聞こえた物音に驚いて飛び起きる。キョロキョロと辺りを見回すと何と言うことでしょう、無くしたはずのキャリーバッグ(4万8千円)が俺の足元に転がっているではありませんか!
「えっ?!えっ?!何これ何これ怖いんだけど!」
呪物みたいに現れたキャリーバッグに叫び声をあげた俺はビビって全身をソファの上に避難させる。その間おそらく俺のキャリーバッグは動くことなく床の上で静かに止まっていた。
部屋の中を見回してみるが特に変わったところはない。部屋には変わらず俺一人だ。誰かが運んできたわけではなさそうだった。
「もしかして、アイテムボックス……?」
ちょんちょん、と足でキャリーバッグを突きながら口にする。色も形も大きさも、目印に貼ったステッカーも俺のものと同じだ。これは俺のキャリーバッグの可能性が高い。
冗談で言ったつもりだったが、俺と一緒に移動してきたこれが女神の不思議パワーを授かっているのかもしれない。なんてこった。
「あ、開けてみるか」
恐る恐るソファから降りてキャリーバッグの前に座る。ビクビクしながら開いてみたが、中に入っていたのは全部見覚えのある慣れ親しんだ物ばかりだった。
着替え、メイク道具、造形の応急処置グッズ。キャリーバッグの上に乗せていた手持ちの鞄も中に収納されていて、その中には財布やスマフォ、タブレットなどの貴重品がちゃんと入っていた。
ひとまず全部取り出してみて不審なものがないことに安堵する。
「なんかよくわからんけどラッキー。着替えよ」
ボロボロになった甲冑もどきは既に捨てたが下に着ていた服はそのままだ。破れてしまった服をいつまでも着ているわけにもいかないし、かなりタイトなので正直動きにくい。キャリーの中に詰めていた服に着替えることにした。
「ゆっくりしていいって言われたし、ついでに風呂使わせてもらおうかな」
ベルを鳴らして呼ぶ勇気が持てずに部屋の外に顔を出して、通りかかったメイドさんに風呂の使い方を聞く。
どうやら井戸から汲みあげた水と魔鉱石で温めた湯を溜めておく場所があり、そこから更に魔鉱石で汲み上げて入浴や洗面に使うようだ。蛇口をひねれば当たり前のようにお湯が出てきた。凄い。
「俺がキャラメイクした冒険者の顔ならまだ受け入れられたんだけどな。アルフォンスはない。ないわ~」
呟きながらずるずるとソファからずり下がっていく体。尻から落ちそうになる寸前で止まってぼんやりと窓から見える空を見つめる。
この顔、洗ったら元に戻ったりしないだろうか。メイク落とす感じで。
「あ……そういえば荷物」
メイクを落とすで思い出した。イビルボアに投げつけたキャリーバッグの中には元の世界に戻った後に必要になるものが諸々入っている。現金はともかく免許証やクレジットカードは再発行が面倒だからできるなら回収したい。メイク道具も、敏感肌な俺に一番合うやつを入れてたからそれも確保したいところだ。せっかく日々の手入れで手に入れたツルツルのお肌なんだから、ここでも基礎化粧品くらいは使い続けたい。
だがそのためには赤の森にまた入ることが必須。今の俺では荷物を探しに行って死ぬなんてことになりかねない。
「もっとお手軽に……アイテムボックスー!って言ったら荷物出て来ないかなー、ってそんなわけねぇか」
そう笑った瞬間ゴト、と何かが落ちる重い音がした。
「え……?」
すぐ近くで聞こえた物音に驚いて飛び起きる。キョロキョロと辺りを見回すと何と言うことでしょう、無くしたはずのキャリーバッグ(4万8千円)が俺の足元に転がっているではありませんか!
「えっ?!えっ?!何これ何これ怖いんだけど!」
呪物みたいに現れたキャリーバッグに叫び声をあげた俺はビビって全身をソファの上に避難させる。その間おそらく俺のキャリーバッグは動くことなく床の上で静かに止まっていた。
部屋の中を見回してみるが特に変わったところはない。部屋には変わらず俺一人だ。誰かが運んできたわけではなさそうだった。
「もしかして、アイテムボックス……?」
ちょんちょん、と足でキャリーバッグを突きながら口にする。色も形も大きさも、目印に貼ったステッカーも俺のものと同じだ。これは俺のキャリーバッグの可能性が高い。
冗談で言ったつもりだったが、俺と一緒に移動してきたこれが女神の不思議パワーを授かっているのかもしれない。なんてこった。
「あ、開けてみるか」
恐る恐るソファから降りてキャリーバッグの前に座る。ビクビクしながら開いてみたが、中に入っていたのは全部見覚えのある慣れ親しんだ物ばかりだった。
着替え、メイク道具、造形の応急処置グッズ。キャリーバッグの上に乗せていた手持ちの鞄も中に収納されていて、その中には財布やスマフォ、タブレットなどの貴重品がちゃんと入っていた。
ひとまず全部取り出してみて不審なものがないことに安堵する。
「なんかよくわからんけどラッキー。着替えよ」
ボロボロになった甲冑もどきは既に捨てたが下に着ていた服はそのままだ。破れてしまった服をいつまでも着ているわけにもいかないし、かなりタイトなので正直動きにくい。キャリーの中に詰めていた服に着替えることにした。
「ゆっくりしていいって言われたし、ついでに風呂使わせてもらおうかな」
ベルを鳴らして呼ぶ勇気が持てずに部屋の外に顔を出して、通りかかったメイドさんに風呂の使い方を聞く。
どうやら井戸から汲みあげた水と魔鉱石で温めた湯を溜めておく場所があり、そこから更に魔鉱石で汲み上げて入浴や洗面に使うようだ。蛇口をひねれば当たり前のようにお湯が出てきた。凄い。
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