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うさぎ座

あなたの精を奥宮に注いで、私は若返る②♥

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 ――この時間が永遠に続けばいいのに。二人でずっと寄り添えたらいいのに――

 数えきれないほど絶頂し昇天し続けたケルメスは、ぐったりと力を失っていた。

 ニハルが細い手首に繋がれていた蔓を剣で一太刀し、力無く倒れたケルメスを抱えて地面に敷いた白いローブの上にゆっくりと寝かせてあげた。
 
 無防備なケルメスの身体は、泥と汗と白濁液で全身が汚れていた。近くを流れる清流を染み込ませた布切れを搾り、ニハルは愛する人の身体をそっと拭う。
 気づけば、皺枯れていた筈のケルメスの身体が瑞々しく潤い、肌は白く弾力で溢れ始めていた。

「俺の精が効いてきたか……」

 拭いた所から輝き、滑らかで雪原のような素肌が現れてニハルの視線を釘付けにする。赤茶色だった髪も小さな束にしてこまめに拭えば、深紅に輝く美しい糸一本一本となって月明かりに照らされた。

「美しい……これが貴方の本来の姿だ……」

 再会した時とは打って変わって彫刻の様に美しく、白肌と紅く艶美に精錬された若い青年がニハルの前に横たわる。

 ケルメスは、別名『深紅の星クリムゾン・スター』と呼ばれている。人々を惑わす深い紅色の髪、そして濃く深く紅い守護星を持つ男に相応しい二つ名であろう。

 彼は本来の星ビト達とは身体の性質が違い、青い光を吸収してしまう特殊な細胞を持っていた。その為に髪や瞳が異常に紅い。そして何よりも他の星ビトと決定的に違うのは、下腹内部の奥宮に他人の精液を入れた時、その精が命の糧となって細胞が活性化し若返るというものだった。

 ケルメスは見た目こそニハルと同じかそれよりも少し若く見えるが、実際の年齢はニハルよりもずっと長く年老いている。
 
 ニハルが初めてケルメスを見たのは、子供の頃だった。その時からとても美しい男だと、ニハルはずっと心の隅で感じていた。
 それが、今ではこうして肌を重ね合うまでに成長している。
 つまり、ケルメスは何度も精を与えられて若返り、長い人生をずっと生きているのだった。

 しかし、身体が若返り、永い永い人生を送れるのは幸せな事か? と聞かれると、必ずしもそうではない。むしろその若返る身体というのが、ケルメスの長い人生で悲運を決定づける害の根源となってしまった。

 若返る身体、その細胞を取り込み、自身の寿命を伸ばそうとする者は少なくない。
 ケルメスは神の様な神秘的体質のせいで、数えきれないほど命を狙われ、恐怖と絶望の中で何度も九死に一生を得てきた。

 狙う者は一人ではない。どこかの国の色々なお偉い方が、ケルメスの身体と美しさとその内臓全てを欲し、我が物にしようと水面下で裏取引をしている。そのせいで自由浮遊惑星に乗り宇宙を飛び回る海賊たちに何度も誘拐され、その度に美しい身体は襲われて傷付けられた。

 両足の腱を切られ、声帯を取り除かれたのもこれが理由だ。逃げられないよう、叫び声を上げられないようにさせるのは、海賊ならば朝飯前の事だ。

 深紅の星と若返る身体を持つ者は他にもいる。ニハルの記憶では、全天オデュッセイア八十八ヶ国、何百兆も居る星ビトの中で、ケルメスと同じ体質の者は僅か九人しかいない。
 きっとその全員が命を狙われている事は容易に想像がつく。しかし、他の八人と違うのは、レプス国が圧倒的小国という事だった。
 
 大国ならば、深紅の星を持つ者の為に軍事を割く費用も人数も潤っているだろう。しかし二人が暮らすこの国では、それが出来ない。出来ないどころか、国の立場が弱いせいで海賊達に攻め込まれる事すらある。

 ニハルは刺客からケルメスを逃す為に今まで色んな策を練ってきた。
 だが、そのどれもが失敗に終わり、苦渋の決断で今この場所に閉じ込めて、ようやく安息の時を得ることが出来たのだ。
 今や王や世間の間では、ケルメスは行方不明として処理されている。

 だが執着深い海賊達は、守護星『深紅の星クリムゾン・スター』が健在だからと未だケルメスの身体を狙っている。いつまでこの地に潜んでいる事が出来るのか……彼は逃れられない宿命を恨まずにはいられない。

 絶頂に微睡まどろんでいたケルメスがふと見上げると、瞼を真っ赤に張らせたニハルの顔がこちらを見つめ、大剣をケルメスの胸に突き立てていた。

 ――――ッッ!? ニハル!?

 ケルメスは驚いて咄嗟に腕で後退さった。しかしニハルは容赦なく剣先を喉に突きつけ、苦々しい表情で語りかけた。

「……すまない、ケルメス……この国から逃げてくれ……」
 ――えっ!?

 身動きの出来ないケルメスが、愛する人の豹変に理解が追いつかず、ただ怯えて悲しそうに見つめる。
 だがニハル自身も苦しい表情でそうせざるを得ない理由を教えてくれた。

「王が海賊達に貴方を売ったのだ。この国の国土と国民をこれ以上傷つけない代わりに、深紅の星クリムゾン・スターを差し出すと。そして王は神剣を使ってこの吹雪を抑えつけ、その間に海賊達がこの雪山に入って貴方を見つけ出そうとしている」
 ――そ、そんな……!!
「貴方がここから逃げてくれないと、俺はこの場で貴方を殺さなければならない。だからどうか……!!」

 突き当てる剣の先がカタカタと震えている。
 ケルメスが見上げると、その先には瞳を潤ませ必死に感情を押さえつけようとしているニハルの鎮痛な顔があった。

 ――――二人で、二人で一緒に逃げよう? そうすれば心強いし、いつまでも一緒に暮らしていける!

 ケルメスは声の出ない喉をもどかしく感じながら、必死に身振り手振りで互いの間を交互に指差し、洞窟の奥の道を指し示した。
 この必死な手振りを、ニハルは理解してくれるだろうか。
 声の出ない事がこんなにも不便だと、今まで感じた事のない憤りがケルメスの中で渦巻いていた。

「――二人で国外に出ようと言うのか……」
 ――そう! 一緒に逃げて、遠くでひっそり二人だけで暮らそう?

 さすがは長年愛し合った恋人同士の以心伝心だ。声が出せないのは普通なら不便極まりないもののはずが、ケルメスがそこまで不自由を感じなかったのも、全てはニハルの理解と配慮の賜物だ。

 しかしケルメスの心をしっかり汲み取ったにも関わらず、ニハルの顔は冴えなかった。
   
「……それは出来ない。俺はこの国の騎士団長。つまり、王の次に民をまとめる重要な役職だ。その俺が民を捨てて貴方と駆け落ちすれば、それこそ国の根底が危うくなる。俺は民や国がどうなってもいいと思うほど、心が頑丈では無いんだ」

 ニハルらしい。ケルメスも、やはりそうだろうという眼差しで愛する人を見つめた。
 ニハルは昔から万人に優しく、困っている人が居ると見捨てられない性分だった。その優しさと芯の強さに惚れたというのもあるのだが。

「それに、俺は騎士団長として、この国に残ってやらなければいけない事がある……」

 そう言って丹精な青年の顔に影が落ちた。焦点の合わない視線で何か深刻な思いに耽る。

 ――やらなければいけない事?
「だから、奴らが来る前に貴方をここから逃さねば……!!」
 ――ま、待って!!

 華奢な肩を掴むニハルに、ケルメスは厚い胸板を両手で抑えて抵抗した。

「ケルメス!! 俺に殺されたいのか!?」
 ――そうじゃない! でも……!!

 ケルメスは必死に見つめ、言葉にならない声で懸命に訴えようとした。

「マタ、アエウ? イフカアタ、マタ、アエウ、オネ……」
「……また逢えるか、と言っているのか」

 ニハルの応えに、ケルメスは不安と嬉しさを織り交ぜた表情で力強くうなづいた。

「…………」
 ――――ニハル?

 ニハルの表情は険しい。そして緑の瞳の奥は、悲しみに打ちひしがれている。

「いや…………また逢えるさ。あぁ、きっと逢えるはずだ。だから海賊達の熱りが冷めるまで、国外でなんとか生きていてくれ」

 嘘だ。最初に一瞬だけ現れたニハルの本心をケルメスは見逃さなかった。
 なぜ? 自分と決別でもする覚悟なのだろうか。

 しかしそれも仕方ない事だ。彼は騎士団長。この小国において居なくてはならない存在だ。
 昔から彼は、大勢の国民に慕われてきた。いつも命からがら生きているこの自分とは住む世界が違いすぎる。それなら綺麗さっぱり別れた方が、彼の負担を無くせて良いのかも知れない。
 
「ケルメス、逃げるなら北の狩人オリオン国がいい。あそこは貴方と同じ深紅の星ビトがいる。貴方の辛さを理解して匿ってくれるかもしれない。それに大国だから海賊もその境界には入ってこれまい――っ!? ――ケルメス!?」

  ケルメスは飛び込むようにニハルの胸元に飛び付き、うずくまった。紅玉の瞳からボロボロと涙が溢れ出て、嗚咽で呼吸が乱れている。
 
「――――うぅッ! ――――っう、ぐすッ、――フグッ!」
「…………ケルメス……貴方を捨てたと思っていい。恨んでもいい。それでも、どうしても、貴方はこの先も末長く生きてくれ……」
「――ッ!! ハイシテ、イル!! イアモ、イアイモ! ハイシテイル!!」

 ケルメスが涙を流しながら睨み、声にならないのも厭わず訴え叫んだ。
 一度聞いただけでは彼が何を言っているのか分からない。しかし長年愛しい時間を共有してきたニハルには、その声を慣れ親しんで、ケルメスが何を言わんとしているのか充分理解できた。

「今も未来も、この俺を愛してくれる……のか」

 ニハルは俯き様にそう言葉を吐き捨てると溢れる想いに耐え切れず、泣き出しそうに身体を震わせて再びケルメスの上に覆い被さった。

「……これが俺からの最後の愛だ。愛した男の精を飲んで、いつまでも美しい貴方で居てくれ……」
「――――ッ!? ――――ァアアん!!」

 ケルメスの内股が大きく開かされ、濡れた蕾が露わになって固い塔が口付けをした。
 未だ熟れたままの蕾はズブズブとニハルの精留塔を飲み込み、体内に淡い電流が迸って思わず肢体が跳ね上がる。

「――――ァン、――ァァアア、――アゥン!! ――――ハァン!」
「ほら……ここの奥がいいんだろう? ほら、ほら……!!」
「……ハンッ! ――ァアン、――ァアン! ――ッハ、ッハ、ハァ!!」
「あぁ……奥宮が悦んでビクンビクン言っている……俺も気持ちいい……はぁ、出るっ!!」

 硬い切っ先が執拗にケルメスの弱い所ばかりを突いてくる。そのせいで細い腰が暴れてケルメスの身体に自由が利かなくなる。
 
 二人の声が上擦るのに比例して、ニハルの波打つ腰が速くなっていった。蜜壺の中では性感帯を容赦なくゴリュゴリュと扱き、ケルメスは頭を振り乱して絶頂にもがきながら啼き叫ぶ。
 
 今まで襲われた男達は、ケルメスの美しさと自分の欲求を満たすだけで、絶頂どころか苦痛ばかり感じていた。
 しかしニハルは違った。いつもケルメスの体温と表情を伺いながら、彼が悦ぶ場所ばかり突いて意識の高みへ飛ばしてくれた。

 今もそうだ。自分の欲求だけでなくしっかりケルメスの頬が火照るのを見届けている。

 これがニハルの優しさか、それとも、単に愛撫が上手かったというだけか。

 ニハルとは愛し合っていたと信じていたが、絶頂に誘われる嬉しさで愛に溺れていただけなのかもしれない。だからこそ、彼との関係を常に自分の都合よく解釈していただけなのかもしれない。

 ――どのみち殺されるなら、この場でニハルに殺された方が幸せなのでは……。

 身体を丸められ、その上から覆い被さるニハルに、ケルメスは逞しい首元を抱き締めて愛する人の耳元に唇を当てた。

「ハァハァッ、コオシテ……ヘッチョウト、ホウシニ、ハァハァ……コオシテ……」

 絶頂で汗だくになったケルメスが、額に細い紅髪を無造作に貼り付けさせてニハルを見つめる。

「ケルメス…………」

 その姿はとても艶美で美しい。赤らめた頬や首元が紅い髪と相まって妖艶さが増し、潤んだ瞳と汗で照る素肌を見ると、自分がこうさせたのだと余計に興奮が高まる。

「このまま殺して欲しいのか? ダメだ、生きて欲しいんだ! お願いだ!!」

 言い終えると同時にニハルの腰が一回一回強く重く、最奥の宮を打ちつけた。
 ニハルの太く逞しい精留塔が、ケルメスの腹の奥を容赦なく抉る。グリュグリュとヘソ下を精液でかき混ぜられているのが分かる。

 こんな奥まで届くのかとケルメスは嬉しくなった。快楽で全身の力を抜き取られ、代わりに塔を咥える蕾と下腹部がキュンキュン締め付けて悦ぶ。
 ――こんなに気持ちいいなら、もう、どうなってもいい。
 上半身をニハルの大きな身体に預け、背中が反って胸を突き出す。すると温かい大きな手がケルメスの背後に回り、持ち上げられたと思えば胸粒に熱い舌を充てがわれた。

「――――ァァァアア、ァァアアアン!!」

 腹の中をゴリゴリと愛されながら、胸粒を舌で転がされている。ジュウジュウと吸われ、歯で甘噛みをされてコリコリと弄ばれる。
 もう我慢できない! ケルメスの全身に電流が駆け巡って頭が飛びそうになる。

「ケルメス……自分で自分の塔を扱いて、なんて卑猥な姿だ」
 ――――ッ!!

 気付けば、ケルメスの右手は自身の硬い塔を握って上下に動かしていた。殆ど無意識でやっていた事だ。快楽欲しさに、自制すら忘れてしまっていた。

「……いいぞ。俺の為に本気で善がる姿を見せてくれ……」

 そう言って再びニハルの塔を最奥まで押し付けられ、再び尖った胸粒を吸われる。更にニハルの左手はもう一つの胸粒を指先で転がし、更なる絶頂を与えようとしてきた。
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