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しかしそれも私の勘違いだったのだとすぐに知る時が来た。

数か月間、変わらない日を過ごし、宮島君のことを煌大と呼び捨てにするほど仲良くなった頃、会社の飲み会が行われ、そこにはバイトでも長く働いていた煌大も参加することになった。

滅多に行われない飲み会に加え、女子社員から人気のある煌大は、飲み会の席で多くの女性が煌大の周りを囲っている。

「宮島くーん、飲んでるー?」
「お姉さんと一緒に飲もうよー」
「私と一緒に二次会行かない?」

多少私から席は離れていたのだが、女性たちのピンク色の声が耳を突く程うるさい。
私は煌大も大変だなと目を向けると、何も動じていないような表情だが、微かに目が下を向き、疲れているように見えた。

あぁ…無理しちゃって…

私は少し助けるために立ち上がると、煌大の周りに群がる女性陣を押しのけ、無理矢理煌大の横に座った。

「ちょっと!佐山さん!」

私が押しのけたことで色んな女たちが私を睨み、気に入らないような顔をしているが、特に迷惑そうに顔を歪めたのは、煌大の隣に座っていた悠木さんだ。

「宮島君ばかりに群がってないで、色んな人と交流を取りなさい。ここは合コンでも何でもないんだから」

私は持ってきたビールをどんっと勢いよく目の前に置くと、ギロっと悠木さんを睨む。
元々私には強く出られない悠木さんは、ビクッと体を揺らすと、ぐっと唇を噛んで、何を言うわけでもなく席を移動し始めた。
それに続いて他の女性陣も移動し始める。

「ありがとうございます」

持っていたビールをぐっと飲むと、小さな声で煌大が言う。

「煌大、あんたがはっきり言わないと女たちは調子乗るんだからちゃんと言いなさいよ」

「めんどくさいんですよね」

「あのさぁ…女に興味ないのは分かるけど、もっと勉強しな。世の女共はあんたみたいなイケメン子犬系男子が大好きなんだから。そのうち襲われるよ」

あははと笑いながらまたビールを口に含み、冗談交じりで言うと煌大は黙ってしまった。
言い過ぎたかと思い、ちらっと煌大に目を向けると、横目でこちらを見ている。
その目が何かを求めているような、いつも私を見る目とは違うせいか、少し心臓が跳ねた。

「リノさんもですか?」

「へ?」

「リノさんも僕みたいなの好きなんですか?」

何を言い出すんだ。
私はそんな目をして何を言い出すのかと思っていたが、あまりにも馬鹿なことを言うので鼻で笑うと、目の前の皿だを小皿によそい、煌大の前に置いた。

「そんなわけないでしょ。ほら、どうせ女共に押されてまともに食べてないんでしょ。食べなさい」

にかっと笑い、煌大に言うと煌大も私から目を離し、サラダに箸をつけはじめた。
まるで餌付けしているような気分だが、もう私の中で煌大は弟的存在なので、可愛い弟を愛でているような気分だ。
それからはただ煌大の横で他愛もない話をして酒を交わしていたのだが、そろそろお開きという時に珍しく煌大がダウンしてしまった。

「佐山さん、宮島君の面倒頼むね」

お開き後、私の横でフラフラしている煌大を見た課長が言う。
いや、置いて行かないでよという気持ちになるも、課長が私に言うのも分かる気はする。
フラフラでまともに立てない煌大を狙う他の女性陣の獣のような目が向けられているため、煌大の貞操を守るためには私が適していると思ったのだろう。

私は大きく溜息をつくと、煌大の家を知らないが故、仕方なく自分の家に連れ帰ることにした。
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