監禁された私には、時空の監視者の愛情は伝わらない

茂栖 もす

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◆◇第一幕◇◆ 時空の監視者の愛情は伝わらない 

♪あなたへの贈り物②

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 ルークは私に、バルドゥールとの関係についてはゆっくり考えれば良いと言ってくれた。そして、それを邪魔する奴がいたら排除してくれるとも。

 でも、一番私の邪魔をしているのは、実はバルドゥールだったりもする。ルークにそれを言ったら、今、私を悩まし続ける彼のことを窘めてくれるのだろうか。いや、多分これは例外と言ってくるだろう。間違いなく。

 そんなことを考えていたけれど、くちゅっという水の滴る音がして、私の思考は途切れてしまった。

「あっ………ん…………はぁ、ああっ」

 バルドゥールが私の秘部の指を入れたのだ。でも、その太い指を深く沈めることはしない。入口付近を何度も抜き差しするだけ。そしてそうすれば、くちゅっという音が、ぴちゃぴちゃという音に変っていく。

「ああ、ここだと良く見えるな」

 むず痒いような、焦らされるようなそんな感じがして、思わず腰が動いてしまった途端、バルドゥールがそんなことを呟いた。

「見ないで…………お願い…………んっんー」

 肘をついて身を起こそうとすれば、バルドゥールは一気に指を奥に沈め、一番敏感な部分を抉るように刺激する。まるで、起き上がろうとした私を阻止するかのように。

 そして、与えられる刺激で仰け反らすように再びベッドに沈めば、バルドゥールは静かに指を抜き、浅い部分だけを刺激する。今日は、ずっとそれの繰り返し。だから私は一度も達していない。

「バルドゥールさん…………どうして?」

 そんなことを口にする自分はどうかしているというのはわかっている。でも、そう口に出さずにはいられなかった。

 だって、バルドゥールは、わざと焦らしているのだ。私のどこをどう刺激すれば、達することができるか熟知しているはずなのに、今日に限ってぎりぎりのところで刺激をやめてしまう。

 私は何か彼を怒らすようなことをしてしまったのだろうか。それとも、何か別の意味があるのだろうか。

 ちゃんと考えなければいけない。そう、いけないのはわかるけれど、中途半端な刺激が続いて、私はまともに考えることなどできる状態ではない。

「どうして欲しい?言ってみろ」

 不意にバルドゥールは立ち上がったかと思ったら、私に覆い被さり、そんなことを聞いて来た。いつの間に服を脱いだのだろう。私を覆う褐色の肌は微かに汗ばんでいる。良かった、私の身体だけ熱を孕んでいるわけではなかった。

 でも、どうして欲しいかなんて、もちろんそんなこと────。

「………………言えません」

 という言葉を口にする他なかった。当たり前だ。私達は恋人同士じゃない。この世界で生きて行く力を分け与えてもらうという名目で抱かれているのだ。自分から求めるなんて間違っている。

 なのに、バルドゥールはすっと目を細めて、こう言った。

「なら、今日はずっとこのままだな」
「そんなっ」

 残酷とも言えるバルドゥールの言葉に、思わず彼に向かって手を伸ばす。伸ばした手を、バルドゥールは当然のように掴み、指を絡ます。けれど、それ以上は何もしない。降り注ぐ金色の瞳は、じっと私の言葉をまっているかのよう。

「苦しいんです…………とても…………はぁ」
「だから、俺にどうして欲しい?」

 更に問うてくるバルドゥールに、苛立ちすら覚えてしまう。無言で首を横に振る私に、バルドゥールは今度は私の胸へと手を伸ばす。

「いや………いや……です。んっ、そんなこと言わせないで…………あっ、んっ」

 胸の頂きを口に含まれ、先端を彼の熱い舌先で転がされれば、更に体の疼きが増す。

「言え、言ってくれ…………アカリ」

 まるでバルドゥールが焦らされているかのように、苦しそうな口調だった。でも、この根競べは私の負けだった。

「いつものように…………お願い………バルドゥールさん………して」

 恥も外聞もかなぐり捨てて、そう懇願すれば、バルドゥールは満足そうに笑みを浮かべた。でも『やっとか』と小さく呟いた。

「ああ、お前が望むなら幾らでも、そうしてやる」
 
 その言葉は少し離れた、私の足元から聞こえてきた。そして、バルドゥールは私が求めるものを与えてくれた。
 
 太い指が2本、卑猥な音を立てて私の中へ埋め込まれていく。そして、その指は的確に私の敏感な部分を刺激して、あっという間に私を快楽の先へと導いた。

 しかもその後、続けざまに、バルドゥールの舌が私の花芯を刺激する。ゆっくりと円を描いたかと思えば、上下に舌先を擦り付ける。予測できない動きに私はあられもない声を上げながら、私は再び絶頂を迎えてしまった。

「こうして欲しかったんだろう?俺の手で何度でも達してくれ」

 まるで睦言のような甘く残忍な言葉が私の耳朶に響く。そして、その言葉はそのまま私の身体に直接届くこととなった。

 それから何度も絶頂を迎えたのだろう。気付けば私は掛布を抱き込んで、荒い息を繰り返していた。

「アカリ」

 私の名を呼ぶバルドゥールを無視して、掛布に顔を押し付けて小さく首を振る。途端に、小さくベッドが揺れて、バルドゥールが掛布ごと私を抱きしめた。

「そんなに嫌…………だったか?」

 掛布をもぎ取り、私の頬に手を添えながら、バルドゥールは少し困った口調で私に問いかける。ゆるゆると視線を彼に向ければ、声音と同じ表情を浮かべていた。
 
「恥ずかしいことばかり聞いてくるバルドゥールさんは………い、意地悪です」

 嫌と言えばきっとバルドゥールは傷付くだろう。だから意地悪という言葉に変えて伝えてみる。そうすれば、バルドゥールは何故か嬉しそうに笑った。

「意地悪な俺は嫌いか?」
「え?」
「どうなんだアカリ?それとも、身体に聞いた方が良いか?」

 最後の問いかけは、ぞくりとするほど甘い含みを持ったものだった。

 ずっと焦らされたと思ったら、いきなり何度も絶頂を迎えた私の秘部は、太ももまで濡らしてしまっている。そこにバルドゥールは再び手を伸ばしたのだ。

 そしてゆっくり指を入れる。最初は1本だけを最奥まで埋める。でもすぐに引き抜くと、今度は2本の指をゆっくり埋めて、わざと卑猥な音を立てるように、くちゅくちゅとかき混ぜるように動かした。

「嫌いじゃないです………………あっ、ああっ、んっ…………んんっ」

 耐え切れずバルドゥールの質問に答えたのと、絶頂を迎えたのはほぼ同時だった。

「…………私、ちゃんと答えたのに……」
「だが、ちょっと遅かったな」

 そっと指を引き抜くバルドゥール向かって、喘ぐようにそう言えば、彼からは悪びれもしないそんな言葉が返ってきた。今日のバルドゥールは本当にいつもと違う。

 そんなバルドゥールを思わずジト目で睨んだ私に、今度は彼から優しい口付けが降ってきた。
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