山神様に捧げられました

ジャム

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本編

再会

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「さっぱりした~」

僕はお風呂からあがり身体を拭いていた

山神「ただいま」

「おかえりなさい!なんの話をしてたんですか?」

山神「・・・」

「山神様?」

山神様は深刻そうな顔をしていた

山神「・・・ちょっと大切な話があるから・・・浴衣を着たら座って」

「は、はい」

僕は急いで浴衣に着替え椅子に座った

山神「・・・」

「・・・お話って・・・?」

山神「・・・お前の村の村長は・・・覚えているよな?」

「え?はい。覚えてますが・・・」

山神「その村長が・・・危ないらしい・・・」

「危ない?」

山神「・・・死にそうってことだ」

「え!?」

あの人が・・・?
凄く元気そうだったのに・・・

山神「お歳だったからな。寿命だろう」

「・・・」

山神「・・・」

僕たちにしばらく無言が続いた
山神様は僕の隣に来て抱きしめてくれた

「・・・会うことは・・・できませんか?」

山神「・・・」

「・・・最後なら・・・お別れを言いたいです」

山神「・・・わかった」

そういい僕たちは家を出た
しばらく山を下り、村に着いた頃には周りは真っ暗になっていた

山神「ちょっと力を使うぞ。痛くないから心配するな」

そういい僕に手をかざした

山神「これでいいだろう」

僕は自分を見たが特に変わったところはない

山神「今、術を掛けた」

「術?」

山神「ああ。村長以外には見えない術だ」

「そんなことできるんですね」

山神「ああ。ほら。行くぞ」

「え、山神様のお姿は?」

山神「俺は大丈夫。行くぞ」

そういい村に入った
村長の家の前にはたくさんの人が行ったり来たりしていた

「あそこが村長さんの家です」

山神「みたいだな」

そして僕達はその家に向かって歩いた

村人「今夜あたりが山場らしい・・・」

村人「みたいね・・・」

村人「次の村長は誰になるんだ?」

村人「ちょっと!不謹慎よ!」

村人「でも、俺たちの今後に関わってくることだ」

村人「まぁ・・・でも、今はその話はやめよう」

村人「・・・やっぱり・・・呪い?」

村人「またその話か・・・」

村人「だって・・・あの子を生贄にしてから具合悪そうにしてたじゃない」

村人「呪いなんて・・・あるはずがない・・・」

村人「そ、そうよね・・・」

「・・・」

呪ってやりたいとは思っていた
でも、僕は呪ってない
今は山神様との生活が楽しすぎて恨みなんて忘れてしまった
いや、忘れることにしたのだ

「っ!?」

その時村人が僕の方に駆けてきて身体をすり抜けた

「びっくりっ!?」

言葉を発しようとしたとき山神様に口を塞がれた

村人「なにか言ったか?」

村人「ん?なにも言ってないけど?」

村人「嫌だわ・・・ここにいるのかしら・・・」

山神様が耳元で

山神「姿は見えないし触れることもできないが声は聞こえてしまうんだ。だからあまりしゃべるな」

僕は頷いた
そして村人たちをすり抜けながら村長の家に入った

「・・・」

村長は布団に寝ていて苦しそうにしている
僕は村長の枕元に座った

村長「・・・迎えか・・・」

村人「はい?迎え・・・ですか?」

「・・・」

村長は僕を見つめる

村長「一人にしてくれ・・・」

村人「・・・わかりました」

そして村人は家を出て行った
僕も出て行こうとしたとき

村長「ハルト・・・待ちなさい」

「・・・はい」

僕は呼び止められて村長の近くに座った

村長「わざわざお迎えに来てくれたのかい?」

「・・・」

村長「・・・すまなかったね・・・助けてやれなくて・・・」

「・・・」

村長「ほかにも・・・色々・・・悪い事をした」

「知ってます。お供え物と言っていたけれど・・・嘘なんですよね?」

村長「ああ・・・本当にすまない・・・」

「・・・」

村長「わしは地獄行きじゃろう・・・若者の命を犠牲にして生き残ろうなんて・・・ゴホッ!ゴホッ!」

山神「ん?」

山神様は村長の背中に手をかざした

山神「・・・肺か・・・」

「肺?」

山神「ああ。肺に重い病を持っているみたいだ。これは・・・完治は難しいだろうな」

「・・・」

村長「???誰かいるのかい?」

そうか・・・
大丈夫って言うのは誰にも見えないってことか・・・
だからみんなの中を通っても気づかれなかったんだ・・・

村長「お主はもうそちらの住人なんじゃな・・・」

「・・・いえ」

村長「わしの周りにはたくさんの怨霊でもいるのかのう?ホッホッホッ」

「・・・」

村長「ゴホッ!ゴホッ!・・・これも天命・・・すべては天の導きよのう」

「そう・・・ですね」

村長「お主は・・・そちらでは幸せに暮らしておるかい?」

「死んではいません。僕は・・・生きてます」

村長「ホッホッホッ。死んでまで気を使わなくてもいいんじゃよ。ほれ。お主に触れることもできないではないか」

そういい僕の頬に触ろうとするがすり抜けた

村長「お主は優しい子じゃのう・・・本当に・・・申し訳ない・・・」

「仕方ないですよ。僕は・・・厄介者だったんですから・・・」

村長「それでも、子供が一人で生きていけるわけがない。大人であるわしらが手を差し伸べ、助けてあげるべきじゃった・・・」

「じゃあ・・・なんで・・・助けてくれなかったんですか?」

村長「助けてあげたかった・・・じゃが、出来なかった・・・」

「なんで・・・な、んで・・・」

僕は涙を流した
恨みなんて忘れるべきだと思っていた
でも、心の底から恨みがあふれてくる

村長「大を生かすために小を殺す・・・わしは・・・お主を犠牲にして村を守ろうとしたのじゃ」

「僕一人が犠牲になったところで・・・何も変わらないですよ・・・」

村長「そうじゃな・・・」

「・・・」

村長「じゃが、考えを変えるつもりはない。弁解もしない。じゃがな・・・」

「?」

村長「今のお主は・・・とても幸せそうに見える・・・この村に居た頃よりな」

「・・・そうですね。僕は・・・今、すごく幸せです」

村長「そうかい。一つ聞いてもよいか?」

「なんですか?」

村長「山神様にはお会いになったかのう?」

「はい」

村長「そうかい。どんなお方だったかのう?」

僕は山神様をみた

山神「???」

「・・・とても素敵な方ですよ。優しくて、強くて、逞しくて・・・いつも気にかけてくれて傍にいてくれます」

村長「・・・なるほど・・・わしは勘違いをしてたんじゃな・・・」

「???」

村長「『生贄』だと思っておったが、『嫁』だったんじゃな」

「・・・はい」

村長「今は山で暮らしておるのか?」

「はい」

村長「そうかい・・・山神様・・・おられますか?」

山神「・・・ああ」

村長「これは・・・」

村長は山神様を見ていた

山神「なんだ?」

村長「いえ、失礼いたしました。こんな老い先短い老人の願いを一つ聞いてはもらえないでしょうか」

山神「言ってみろ」

村長「どうか・・・ハルトを幸せにしてあげてください」

「え・・・」

村長「私は地獄行きで構いません。でも、どうか・・・どうか・・・ハルトだけでも・・・幸せにしてあげてください・・・」

そういい深々と頭を下げた

山神「ああ。それは約束しよう」

村長「ありがとうございます・・・」

そして村長は布団に寝っ転がった

村長「ゴホッ!ゴホッ!・・・もう行きなさい」

「でも・・・」

村長「お主の居場所はここではなかろう?」

「・・・」

村長「恨むなとは言わない。恨まれて当然じゃ。じゃが、お主には幸せになってもらいたいんじゃよ。わしの・・・大切な孫なのだから」

「え!?」

山神「!?」

村長「今まで隠していてすまない・・・」

「・・・」

山神「お前は孫を生贄にしたと?」

村長「はい。その通りでございます」

山神「なぜ、そんなことを?」

村長「・・・」

山神「言えないか・・・」

村長「申し訳ありません・・・」

「村長・・・」

村長「さぁ・・・行きなさい。山神様と居るべき場所へ・・・」

「・・・」

村人「村長?誰かいるんですか?」

その時入口から村人が入ってきた

村長「いや・・・ちょっとハルトとお話をしておったんじゃよ」

村人「え・・・ハルトと?」

村長「ああ」

村人「お迎え・・・ですか?」

村長「いや。ハルトはそんな子じゃない」

村人「そうですか・・・」

村長「さぁ・・・もう・・・行きなさい・・・」

「は、い・・・今まで・・・ありがとうございました・・・」

村長「元気でな・・・」

村人「!?ハルトの声!?」

僕は驚いている村人の隣を通り抜け外に出た

山神「大丈夫か?」

「・・・」

僕は山神様にしがみ付いた
泣きたいけど声は周りに聞こえてしまう・・・だから我慢していた

山神「・・・行こう」

そういい僕を抱きかかえると山に向かって歩いた
後ろでは村人たちが

村人「ハルトの幽霊が村長の家に!!」

村人「嫌!!呪われる!!」

村人「どうするんだよ!?」

と、騒いでいた
しばらく歩き村も見えなくなったころ

山神「もういいぞ。ここなら声は聞こえないだろう」

それを聞き僕は大声を出して泣いた
もう恨みの感情じゃない
ただ、悲しかったのだ
きっと、僕を生贄にしなくてはならない程の理由があったのだろう・・・

「うぅ・・・おじいちゃん・・・」

山神「・・・」

山神様は無言で僕を抱え背中をさすりながら家に向かって歩いた
その道中、僕は泣き疲れて寝てしまった・・・


~山神視点~
「・・・」

俺は泣き疲れて眠っているハルトを抱えながら家路についていた

「・・・」

きっと、あの人間・・・
村長は知っていたのだろう
俺が「生贄」ではなく「嫁」を欲しているということを
だから、ハルトを選んだのかもしれない
これは俺の勝手な推測だ
だが、あの謝りや言葉に偽りは感じなかった
きっと孫として愛していたのだろう
厳しくしたのも、自分が死んだ後も一人で生きていけるようにと思ってのことかもしれない
真実はわからない
でも、そんな気がする

村長『どうか・・・ハルトを幸せにしてあげてください』

「もちろん。絶対に幸せにして見せる」

俺は村長の願いを聞き届ける
それしか・・・してやれないのだから・・・
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