オメガ殿下と大罪人

ジャム

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生まれ変わった大罪人

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次の日

コンコン

朝から扉を叩く音がした

「は~い」

『・・・』

(ん?気のせい?)

コンコン

またノックされる
僕は不思議に思いながら扉を開ける
そこには白銀の毛並みに鉄の鎧を身に着けた白熊獣人がいた

「???」

見覚えのない獣人・・・
新兵・・・かな?

白熊「・・・おはようございます」

「おはよう。誰?」

白熊「・・・ロト・ブルルクです」

「え・・・」

ロト「・・・」

「え~~~!?」

昨日とは別人だった
白熊獣人であることは知っていたが、ここまで白い毛並みだとは思わなかった
ところどころ汚れていたし、それに、なんか、イケメンだし

「え・・・は・・・え?」

ロト「殿下?どうされましたか?」

「本当にロト?」

ロト「はい」

「なんか別人だね」

ロト「そうでございますか?」

「うん」

ロト「何年かぶりにお風呂に入りましたから」

「そうなんだ。で、なにか用?」

ロト「いえ、朝のご挨拶に伺いました」

「わざわざ?」

ロト「はい」

「わざわざ来なくても会ったときでいいのに」

ロト「私は殿下にこの命をお預けいたしました。殿下に付き従うのが私の務めです」

「そ、そうなんだ」

ロト「・・・お着替えを」

「ん?」

ロト「お着替えを・・・してください。そのような恰好では目のやり場に困ります」

「っ!」

僕は慌てて扉を閉めた
寝巻姿で対応するなんて・・・それも、かなりきわどい恰好・・・
この方が寝やすいっていう理由なんだけど
さすがにこの格好では・・・ね・・・
僕は着替えを済ませて扉を開けた
ロトはずっと扉の前で待っていた

「待ってたの?」

ロト「殿下のご命令がありませんでしたので」

「そう・・・」

僕は部屋を出て謁見の間に向かった
そこにはいつも父上がいる

父上「これはこれは。遅い起床でございますな!」

「べ、別に遅くないじゃん!」

父上「そうだな。9時は遅くはないな。早くもないが!」

「もう・・・ゴホン!おはようございます。陛下」

父上「おはよう。殿下」

「ところで、約束は守っていただけますよね?」

父上「城下町に行く許可か?」

「はい」

父上「うむ・・・もう少し様子を見たいんだが」

「なんの?」

父上「・・・」

父上は無言でロトを見つめる

ロト「・・・なにか?」

家臣「無礼者!このお方になんて口の利き方を!!」

父上「まぁよい。ロト。お主の忠義が本物か偽物か証明してくれぬか?」

ロト「・・・証明、でございますか?」

父上「ああ。父親として信用ならない者を息子の傍に置いておきたくはない」

「父上!僕が選んだ者を疑うんですか!」

父上「ハルト。この者は大罪人。お前を殺そうとしたやつだ。そんな奴をすぐに信じろって言うのは無理があるというものだ」

「・・・」

ロト「・・・どのように証明をすればよろしいでしょうか?」

父上「この後、訓練場に向かってもらいたい」

ロト「・・・かしこまりました」

父上「お主の忠義、見せてもらう」

そしてロトは訓練場に連れていかれた

「父上、なにをするつもりですか?」

父上「・・・気になるなら見に行ってみなさい」

「・・・わかりました」

僕は訓練場に向かった
そこでは屈強と言われている兵士たちがたくさんいた
そしてロトは一対一の模擬戦をするらしい

隊長「陛下からお許しはいただいている!両者、手加減なしで始めよ!」

そういうとカンっと鈍い音がなった
その瞬間、兵士がロトに模擬刀を振りかざした
ロトはそれを後ろに下がって避けた

ブンッブンッ

兵士は何度もロトに切りかかる
ロトは表情一つ変えずに兵士の攻撃をすべて避ける

兵士「避けているだけじゃ勝てねぇぞ!」

ロト「・・・」

ロトは攻撃をしない
なにを言われようと攻撃をしない

(なんで攻撃しないんだろう・・・)

僕は遠目からロトの様子を見ていたがなぜ攻撃をしないのかわからなかった

兵士「はぁ、はぁ、攻撃して来いよ!」

ロト「・・・」

兵士「大罪人が!殿下のお傍にいるなんて・・・」

ロト「・・・」

兵士「なんとかいえよ!」

ロト「俺は殿下にこの身を捧げた身。殿下をお守りするためならまだしも、お前らのおもちゃになるために戦うつもりはない」

兵士「ほう・・・相当自信があるみたいだな」

そういうと兵士は手で炎を作り出した

ロト「・・・」

兵士「お前はまだ魔法は使えないだろう?魔力の継承をされてないんだからな!」

そういうと炎をロト目掛けて投げた
ロトはそれを避けた
兵士は何度も炎を投げたがそれをすべて避けられた
ほかの兵士が

兵士「何やってんだよ!さっさと当てろよ!」

とヤジを入れる

兵士「はぁ、はぁ、くそっ!」

更に炎の勢いは強くなるがそれを軽々と避けるロト

兵士「ああっ!俺もやるぜ!」

兵士「俺も!」

と次々と兵士たちがロトを取り囲む

ロト「・・・」

兵士「行くぞ!!」

そういうと全員が炎を作り出しロト目掛けて投げた

ブシュゥゥゥゥ~

炎はロトに当たる少し前らへんで消えた

ロト「!?」

兵士『!?』

「多勢に無勢・・・関心しないな」

僕が水の魔法を使い炎を消したのだ

兵士「で、殿下!」

「そんなに大勢で・・・これは訓練?それともいじめ?」

兵士「それは・・・」

「大勢との戦闘の訓練?」

兵士「そ、そうなんです!」

「じゃあ・・・」

と言い僕はロトの傍に飛び降りた

「敵に助っ人が現れるのも予想しているよね?」

兵士「!?」

ロト「殿下!お下がりください!危険です!」

「お前が僕に指図するなんて・・・偉くなったね?」

ロト「・・・失礼しました」

「ロト。お前はなぜ戦わないの?」

ロト「私は殿下に命を捧げました。殿下の命令ではない限り勝手なことは・・・」

「お前はそれでいいんだ?」

ロト「私は殿下のためだけに存在します。殿下のおかげで存在することが許されているのです」

「その僕が選んだお前がそんなんじゃ僕が恥をかくんだけど?」

ロト「?」

「なにを言われても感情的にならないのは凄いと思う。でも、こんな大人数にやられっぱなしって言うのは違うと思うんだよね?それに・・・」

僕は人差し指を構える

「僕の選んだ兵士が舐められるのは気に食わない!」

ロト「!!」

「ハルト・レムリックとして命じる!勝て!勝って僕に恥をかかすな!」

ロト「・・・了解しました」

そういうとロトは模擬刀を構えた

兵士「!?」

「一人で勝てる?」

ロト「朝飯前でございます」

「じゃあ、任せるよ」

そういうとロトは兵士たちに突っ込んで行った
そして兵士たちを次々と倒していく
僕もまさかここまで強いとは思わなかった
兵士の攻撃を確実に避け、攻撃を加えていく
後ろからの攻撃も避けている
まるで後ろにも目があるかのように・・・

隊長「そこまで!」

ロト「・・・」

兵士たちは一人残らず倒れている

「ロト・・・強かったんだ・・・」

ロト「いえ、私は強くなんてありません」

「・・・まぁいいか。ロト、行くよ」

ロト「はっ」

そして僕は父上のところに向かった

父上「おお!どうだったかな?」

「知ってるでしょう?」

父上「聞いてはいる」

「それに・・・僕の行動を予測してたでしょう?」

父上「どうかな?」

「はぁ・・・」

父上「まぁよいではないか!これでロトの忠義は証明された」

「証明になるの?これが?」

父上「この王国でも手練れの兵士数名を一人で倒したのだ。証明になるだろう」

「どこが・・・」

父上「どんなやつよりも強い奴がお前の命を今も奪っていない」

「・・・なるほど」

父上「理解してくれたか?」

「まぁ・・・でも、ロトが戦わなかったらどうしてたの?」

父上「いや、戦わないわけがない」

「どうして言い切れるの?」

父上「お前が絶対に加勢したからな」

「加勢しなかったらどうしてたの?」

父上「いや、お前は加勢した。間違いなく」

「・・・」

父上「ロト」

ロト「はい」

父上「ハルトへの忠義は証明された。ご苦労であった」

ロトは無言で頭を軽く下げた

家臣「陛下からお言葉。もっと嬉しそうにしたらどうだ!」

ロト「身に余る光栄だとは思います。ですが、嬉しくはありません」

父上「ほう・・・どうしてだ?」

ロト「私は殿下のためだけに存在します。殿下の道具に過ぎません。お褒めの言葉など必要ありません」

父上「フッハハハ!」

家臣「陛下?」

「父上?」

父上「ロトよ。お主は変わり者だな!」

ロト「・・・」

父上「ハルトが選んだ相手だ。私も信頼しよう。でも・・・」

と言い真剣・・・いや、怖い顔になって

父上「もし息子を裏切ることがあればこの現王アカトシ・レムリックが許さん!」

ロト「!?」

「!?」

僕でも見たことのない顔だった
さすがのロトも顔色が変わった

父上「ゆめゆめ、そのことを忘れるでないぞ」

そういうと父上はどこかへ行ってしまった
僕は初めて見る父上の怖い顔に腰が抜けた

ロト「殿下!」

それをロトが支えてくれた

「あ、ありがとう・・・初めて見た・・・」

ロト「お部屋でお休みになられてはいかがですか?」

「大丈夫・・・いや、部屋に行こうか」

そういい立とうとしたが足に力が入らない
ロトは僕を抱きかかえた

「!?ロト!?」

ロト「お部屋までお送りします」

そういうと僕を抱えて僕の部屋に向かった
その間、僕はロトの毛並みに身体を預けていた

(モフモフ・・・暖かい・・・それに・・・ロトの匂い・・・)

ちょっと獣の匂いがするがそれとは違う匂いがする
多分その匂いがロトの匂いなんだろう
そして僕は自室に着いた
ロトは僕をベッドに寝かせる

ロト「しばらくお休みになられればよくなります」

「うん・・・ありがとう」

ロト「お礼など私なんかにはもったいないです」

そういうと扉に向かって行った

ロト「御用がありましたらお呼びください。外に居ますので」

「待って・・・」

ロトは僕の声に立ち止まる

「ここに居て・・・」

ロト「・・・それがお望みならば」

そういうとロトはベッドの傍に来て立っていた

「・・・」

ロト「・・・」

「・・・ロトのこと教えて」

ロト「私の過去はもうありません」

「・・・教えて」

ロト「・・・私は幼少のころ両親に捨てられました」

「なんで?」

ロト「私がアルビノだからです」

「???」

ロト「獣人の中には稀にアルビノ個体が生まれることがあります。私がそうです」

「アルビノ・・・ロトはアルビノだったんだ・・・」

ロト「はい。よく白熊と間違われますが・・・」

「・・・」

ロト「そして私は拾われました」

「・・・」

ロト「そのあと様々な戦闘訓練を受けました。まさか殺しのための訓練だとは思いませんでしたが」

「・・・」

ロト「あとは殿下の知っての通りです」

「・・・ありがとう。話してくれて」

ロト「いえ、お礼などいりません」

「・・・」

ロト「・・・」

「行こうか」

ロト「どちらへ?」

「城下町」

ロト「よろしいのですか?」

「父上に許可をもらってからだけどね」

そういうと僕は父上のいるであろう謁見の間に向かった・・・
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