オメガ殿下と大罪人

ジャム

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想いの濁流

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部屋に戻ってきた僕たち

ロト「・・・」

「・・・」

ロトは怒っている・・・?みたいだ
当たり前だよね

「ロ、ロト?」

ロト「はい」

「傷・・・手当しよう?」

ロト「・・・はい」

僕は治療魔法を使った
ロトのケガはみるみる治っていく

「・・・はい。治ったよ」

ロト「ありがとうございます」

「・・・なんで敬語なの?」

ロト「・・・」

ロトは答えなかった

ロト「・・・だよ」

「え?」

ロトは小声で何かを言った

ロト「なんであんなことしたんだよ・・・」

「それは・・・」

僕は答えようとしたが・・・

ロト「ふざけるなよ!!勝手なことするな!!」

ロトは声を荒げ僕の言葉を遮った

「・・・ごめん」

ロト「謝って済むと思うな!!」

「・・・」

ロトの怒りは収まらない
ロトの怒号がしばらく部屋に響いていた

ロト「はぁはぁ・・・うぅ・・・」

ロトはいきなり膝をつき泣き崩れた

ロト「ふざけるな・・・勝手に俺の記憶をいじるな・・・」

「ごめん・・・ごめんね。でも・・・」

ロト「聞きたくない!!お前の言い訳なんて・・・聞きたくない・・・」

ロトは大粒の涙を流している

「ロト・・・」

僕はロトを抱きしめた
ロトは僕を強く抱きしめてきた

ロト「ふざけるな・・・ふざけるなよ・・・」

「ごめん・・・ごめん・・・」

何度謝っても許されないかもしれない

「ロト・・・聞いて?」

ロト「うぅ・・・うっ・・・」

「ロトが僕の記憶を持ってるときっと苦しむことになる。だから消したの」

ロト「苦しむ・・・?」

「きっとそうなる。ロトが苦しむのは嫌だから。だから消したの。それが正しいとは思ってない。でも、後悔はしてない」

ロト「・・・」

「だから、お願い。記憶を消させて?そして生きてほしい。僕からの最後のお願い」

ロト「・・・」

ロトは俯き考えているみたいだ

ロト「断る」

「・・・だよね!」

答えはわかってた
だからもう強要はできない
それに記憶を消す魔法は一人に一回しか使えないし

ロト「俺はお前を忘れるつもりはない。例え苦しむことになろうと」

「・・・わかった。じゃあもうしない」

ロト「・・・償え」

「え?」

ロト「俺にこんなことしたんだ。それを償え」

ロトは・・・
一応、殿下なんだけど・・・
まぁ・・・いいか

「どんな償いをすればいい?」

ロト「・・・」

ロトは考えている

ロト「・・・この戦いが終わったら俺の子供を産んでほしい」

「・・・え?」

ロト「ダメか?」

ロトは真っすぐに僕の目を見てくる
その目は真剣だった
僕が返事をしようとしたとき

ロト「まぁ、断る権利はないけどな!!」

ロトは笑いながら言った

「・・・もう」

その笑顔にこっちもつい笑顔になってしまう

ロト「・・・でも、よかった・・・。間に合って・・・」

ロトは僕を抱きしめてきた

ロト「もし間に合わなかったら・・・俺は・・・自分を許せなかったと思う」

「・・・そう・・・なんだ」

ロト「俺はお前を守ると誓った。その誓いを破るのは・・・」

「大丈夫だよ。イシュリット国王も僕を殺すつもりはなかったと思うし」

国王からは殺す意思を感じなかった
むしろ、手足を無くそうと生かす感じがした

ロト「・・・そろそろ休もう」

「そうだね。また戦争が始まるし・・・」

婚姻はなくなった
また戦争が始まる
また多くの命が失われる

「・・・我慢するべきだったかな?」

ロト「ん?」

「あの時、刃を向けずに見て見ぬふりをしてればよかったかな?」

ロト「お前はあの子を犠牲にできるのか?」

「・・・」

できない
僕にとってはあの子含め全員大切な存在なのだから

ロト「お前は後悔してるのか?」

「してないよ!」

ロト「ならそれが答えだ。お前は間違ったことはしてない」

そういい僕の頭を撫でてくる

ロト「お前は正しいことをしたんだ。だから胸を張れ。な?」

「・・・うん!」

そして僕たちはベッドに入り一緒に寝た

ロト「・・・」

俺は寝れずにいた

ハルト「ZZZ」

ハルトは寝息を立てて寝ている

正直、ハルトがあの少女を守ってイシュリット国王に歯向かうとは思わなかった
一人の犠牲で大勢が救われる
俺ならきっと見捨てていた
でも、ハルトは違った
一人の命であろうと見捨てない
救える命は救う

「お前は王に相応しい存在だよ」

寝ているハルトの耳元で囁く
今だから言えるが、ハルトに命を救われたときは「お人よしのお坊ちゃん」と思った
大罪人の命すらも救おうとする愚かな皇太子だ・・・と
でも、ハルトは愚かな皇太子じゃない
立派な皇太子だ
民の幸せを祈り、守り、未来に繋いでいる
誰もがハルトに信頼を置いているのもうなずける

俺はハルトの頭を撫で続けた

ハルト「フフッ」

「嬉しそうな顔してるな。そんなに嬉しいのか?」

俺の問いかけにハルトは答えなかった
そして・・・
俺もハルトの寝顔を見ていたら眠くなって眠ってしまった・・・
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