英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 1

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「よって、このXの値は±7になります」
 誰も口を開いていないというのに、未だに、この7という数字を書くだけで、周りから嘲る声が聞こえてくる気がする。
 これは心の問題なのだが、排除することは難しい。原因は私の名前にあるのだから。
 私の名前は橋本奈那(はしもとなな)。7月7日生まれのラッキーセブンということで奈那と名付けられた。
 親からは幸運の子として育てられたのだが、同級生からはよく笑われたものだ。
 そんな学校生活を送っていたものだから、私の運は生まれたときに全て使い果たしてしまったのだと思っていたのだが、思いがけないところで運が巡ってきた。
 それは、私が大学生活最後の一年のことだ。
 そのころの私は、就職活動で悩んでいた。
 高校教師を目指していた私だが、異動がある公立校から異動がない私立校に目移りしていた。正直に言って、職場は家から近い方がいいし、異動の度に引っ越しをするのはあまり好きではない。一カ所の場所で「ここで一生頑張っていくぞ」と思えるような職場という意味では私立校の方が魅力的だった。
 そんな中、募集が舞い込んできたのが、英華(えいか)女学院高等学校という私立高校だった。一人暮らしをしているアパートから近かったのも理由の一つだが、何より、待遇がすさまじくよかった。もちろん、待遇に比例して採用倍率も跳ね上がると予想できたのだが、受かればラッキー程度の気持ちで試験や面接を受けた結果、まさかの採用。
 生まれてから一度も幸運に恵まれなかった私が、二十歳を超えた頃にやっと女神は微笑んでくれた。
 おかげで、今、私は数学教師として生徒たちの前に立っているというわけだ。
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