29 / 72
5章 火星探査部への入部
29
しおりを挟む
まだ起きていない二人のことは心配でしたが、できるのなら校則は守りなさいという城山先生の言うことを聞いて、私は下校することにしました。
いつもより遅い下校時間。いつもより暗い帰路。
こんな時間に帰るなんて初めてかもしれません。ですが、不安はありません。最終下校時間付近になると、部活を終えた生徒たちで道は賑やかになります。生徒のほとんどが部活に所属しているのもあって、今までの帰路とは大違いです。ただ、友達の久遠と会えなかったのは残念でした。これだけ人がいるので見つからないのも仕方のないことなのかもしれません。
そんな残念な気持ちと新鮮な気持ちを抱きながら私は帰宅しました。
「ただいま」
玄関へと入ると、普段とは違ういい匂いが漂ってきます。時間も時間ですし、お腹が悲鳴を上げてしまいそうです。
「おかえり。今日は遅かったけど、どこか寄り道でもしてたの?」
「いや、部活で……」
「部活? ひーちゃん、部活には入ってないって……」
私は今まで部活には入っていませんでした。なので、母は私が隠し事をしていると邪推しているのでしょう。
「本当に部活なんだって。あっ、そうだ」
私としても勘違いされるのは嫌ですし、それに、城山先生から渡されたものも忘れてしまう前に渡しておく必要があります。
「これ。入部届けなんだけど、保護者の許可がいるの」
「本当に部活だったんだ。そっか。いいじゃない、部活。それで、何部?」
「その……火星探査部って言うんだけど……」
「え? な、何部だって?」
「だから……」
私だって、聞き覚えのない部活だとは思っていました。だから、少し恥ずかしい気持ちもあります。ただ、二度目を言わなかったのは恥ずかしい気持ちではなく、玄関のドアが開いたからでした。
「ただいま!」
少し掠れて疲れたこの声は、私の父親の声です。私はいつも帰ってくる時間が早かったので、父親が帰ってくるのが早いとちょっとした錯覚に陥りました。
「お父さん帰ってきたからご飯の準備しないと。その入部届のやつはお父さんに頼んでもらえない?」
「うん。分かった」
父親だって保護者に変わりありません。ご飯の前にちゃちゃっと保護者の許可をもらってしまいましょう。
「おん? 緋色、今日は珍しく制服なんだな」
「うん。今、帰ってきたところだから」
「こんな時間にか。珍しい」
母親も父親も私をなんだと思っているんでしょうか。私はもう高校生です。JKというものです。部活をしていなくても友達と一緒に遊んで帰ることだってあるはずです。
そのことについて問いただしたい気もしますが、今は入部届が先です。
いつもより遅い下校時間。いつもより暗い帰路。
こんな時間に帰るなんて初めてかもしれません。ですが、不安はありません。最終下校時間付近になると、部活を終えた生徒たちで道は賑やかになります。生徒のほとんどが部活に所属しているのもあって、今までの帰路とは大違いです。ただ、友達の久遠と会えなかったのは残念でした。これだけ人がいるので見つからないのも仕方のないことなのかもしれません。
そんな残念な気持ちと新鮮な気持ちを抱きながら私は帰宅しました。
「ただいま」
玄関へと入ると、普段とは違ういい匂いが漂ってきます。時間も時間ですし、お腹が悲鳴を上げてしまいそうです。
「おかえり。今日は遅かったけど、どこか寄り道でもしてたの?」
「いや、部活で……」
「部活? ひーちゃん、部活には入ってないって……」
私は今まで部活には入っていませんでした。なので、母は私が隠し事をしていると邪推しているのでしょう。
「本当に部活なんだって。あっ、そうだ」
私としても勘違いされるのは嫌ですし、それに、城山先生から渡されたものも忘れてしまう前に渡しておく必要があります。
「これ。入部届けなんだけど、保護者の許可がいるの」
「本当に部活だったんだ。そっか。いいじゃない、部活。それで、何部?」
「その……火星探査部って言うんだけど……」
「え? な、何部だって?」
「だから……」
私だって、聞き覚えのない部活だとは思っていました。だから、少し恥ずかしい気持ちもあります。ただ、二度目を言わなかったのは恥ずかしい気持ちではなく、玄関のドアが開いたからでした。
「ただいま!」
少し掠れて疲れたこの声は、私の父親の声です。私はいつも帰ってくる時間が早かったので、父親が帰ってくるのが早いとちょっとした錯覚に陥りました。
「お父さん帰ってきたからご飯の準備しないと。その入部届のやつはお父さんに頼んでもらえない?」
「うん。分かった」
父親だって保護者に変わりありません。ご飯の前にちゃちゃっと保護者の許可をもらってしまいましょう。
「おん? 緋色、今日は珍しく制服なんだな」
「うん。今、帰ってきたところだから」
「こんな時間にか。珍しい」
母親も父親も私をなんだと思っているんでしょうか。私はもう高校生です。JKというものです。部活をしていなくても友達と一緒に遊んで帰ることだってあるはずです。
そのことについて問いただしたい気もしますが、今は入部届が先です。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる