オートマーズ

小森 輝

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5章 火星探査部への入部

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 まだ起きていない二人のことは心配でしたが、できるのなら校則は守りなさいという城山先生の言うことを聞いて、私は下校することにしました。
 いつもより遅い下校時間。いつもより暗い帰路。
 こんな時間に帰るなんて初めてかもしれません。ですが、不安はありません。最終下校時間付近になると、部活を終えた生徒たちで道は賑やかになります。生徒のほとんどが部活に所属しているのもあって、今までの帰路とは大違いです。ただ、友達の久遠と会えなかったのは残念でした。これだけ人がいるので見つからないのも仕方のないことなのかもしれません。
 そんな残念な気持ちと新鮮な気持ちを抱きながら私は帰宅しました。
「ただいま」
 玄関へと入ると、普段とは違ういい匂いが漂ってきます。時間も時間ですし、お腹が悲鳴を上げてしまいそうです。
「おかえり。今日は遅かったけど、どこか寄り道でもしてたの?」
「いや、部活で……」
「部活? ひーちゃん、部活には入ってないって……」
 私は今まで部活には入っていませんでした。なので、母は私が隠し事をしていると邪推しているのでしょう。
「本当に部活なんだって。あっ、そうだ」
 私としても勘違いされるのは嫌ですし、それに、城山先生から渡されたものも忘れてしまう前に渡しておく必要があります。
「これ。入部届けなんだけど、保護者の許可がいるの」
「本当に部活だったんだ。そっか。いいじゃない、部活。それで、何部?」
「その……火星探査部って言うんだけど……」
「え? な、何部だって?」
「だから……」
 私だって、聞き覚えのない部活だとは思っていました。だから、少し恥ずかしい気持ちもあります。ただ、二度目を言わなかったのは恥ずかしい気持ちではなく、玄関のドアが開いたからでした。
「ただいま!」
 少し掠れて疲れたこの声は、私の父親の声です。私はいつも帰ってくる時間が早かったので、父親が帰ってくるのが早いとちょっとした錯覚に陥りました。
「お父さん帰ってきたからご飯の準備しないと。その入部届のやつはお父さんに頼んでもらえない?」
「うん。分かった」
 父親だって保護者に変わりありません。ご飯の前にちゃちゃっと保護者の許可をもらってしまいましょう。
「おん? 緋色、今日は珍しく制服なんだな」
「うん。今、帰ってきたところだから」
「こんな時間にか。珍しい」
 母親も父親も私をなんだと思っているんでしょうか。私はもう高校生です。JKというものです。部活をしていなくても友達と一緒に遊んで帰ることだってあるはずです。
 そのことについて問いただしたい気もしますが、今は入部届が先です。
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