オートマーズ

小森 輝

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6章 火星探査部全員集合

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 そうやって悩んでいる時間が長かったせいでしょうか。突然、後ろから声をかけられました。
「緋色さん? ドアの前で立ち止まって、どうしたんですか? もしかして、気分が悪いんですか?」
 その声は、大葉部長です。今日も肌の艶もよく、美人さんです。しかし、今はそんな大葉部長に見とれている場合ではありません。
「いえ、そう言うわけでは……」
「そうですか? なら、早く部室に入りましょう。ここで話していたら他のみなさんの迷惑ですから」
「あっ……今は……」
 私の制止も虚しく、大葉部長は部室のドアを開けてしまいました。
「あれ? マリちゃん、もう来ていたんですね」
 部室へと入った大葉部長は、特別、驚いている様はありません。それに、どうやら中で変な声を出していた女性とも知り合いのようです。
 それなら安心だと部室の中へ入ったのですが、そこには衝撃的な光景が広がっていました。
「今日は新入りもいるって聞いたからバスケ部の練習を早めに切り上げてきたんだよ」
 そう言うマリという女性の上に、彦君が馬乗りになっていました。もっと簡単に言うと、男性が女性の上に馬乗りで跨がっているのです。
 この状況にあたふたせずにはいられない私ですが、大葉部長は相変わらず平静を保っています。まさか、この不純異性交遊の場を黙認しているというのでしょうか。
 そんな私の考えは、もちろん邪推でした。
「そこにいるのが、もしかして新人ちゃんの緋色ちゃん? って、ちょっと鷲斗、いつまで乗ってんのよ。早くどきなさいよ。マッサージはもういいっての」
 不純異性交遊ではなく、ただのマッサージでした。彦君がマリという女性の上に跨がって腰や肩を揉んでいるだけだったのです。何もおかしなことは……いやいや、マッサージをさせるからといっても思春期真っ盛りの男子高校生に跨がらせるなんて、無防備がすぎます。
「やれっていったのはそっちだろ……」
 そう言いながら、彦君は不服そうに女性の上から退きました。その様子が、女性から退きたくなかったように見えて、何か釈然としません。しかし、今は彦君にかまっている時間はないので、この疑問は後で追求することにしましょう。先ほどまで彦君に跨がられていた女が起きあがって私の目の前まで来ています。
「私の名前は獅子舞真里奈(ししまい まりな)。火星探査部の2年生。つまり、君たちの先輩ね。よろしく」
「獅子舞さん……あぁ!」
 昨日や一昨日の部活には来ていなかった2年生部員の名前です。獅子舞という名前とバスケ部に行っているということで、勝手に男性だと思っていました。しかし、獅子の名に恥じない活発な雰囲気は感じ取れます。
「獅子舞はやめてよ。可愛くないし。気軽にマリって呼んでいいから。私も緋色って呼ばせてもらうね」
「えっ……じゃあ、その……マリさん」
「うん! よろしく!」
 握手する手も力強いですし、振るスピードも早いです。体育会系の乗りは苦手なのですが、どことなく久遠に似ていてすぐに打ち解けそうで安心しました。
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