オートマーズ

小森 輝

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9章 次はその手を掴む

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 私は、城山先生に言われたとおり、おとなしくベッドで休んで、他の火星探査部の部員が帰ってくるのを待ちました。
 ベッドで休んでいる間も、不安や不甲斐なさと期待や高揚感が入り交じり、心が休まることはありませんでした。
 しかし、それも帰ってくるまでの間だけです。
 他の火星探査部の部員が帰ってきたようで、目を覚ますと城山先生が一人ずつ声をかけて体調のチェックをしていました。
 目を覚ました順番は火星へと行った時の順番と同じように、マリさん、大葉部長、彦君の順番で目を覚ましました。彦君の転送酔いはありますが、全員無事で安心しました。
 しかし、そんな私の感情とは比べものになりませんでした。
 彦君以外の二人の先輩は、私の姿を見た途端、泣いて喜んで、私を抱きしめてくれました。おかげで、胸の靄も晴れた気がします。
「全員無事に帰ってきて何よりだ。まずは、お茶でも飲んでゆっくり休めと言いたいんだが、そうもいかなくなった。目覚めてすぐで悪いんだが、今回の成果と今後の方針を決める話をしようと思う。全員、席についてくれ」
 城山先生の言葉で、全員がベッドから立ち上がり長机のところにある椅子へと移動しました。彦君は転送酔いのせいか、まだ少し辛そうです。しかし、それ以外の二人、マリさんと大葉部長の表情も沈んでいます。これは転送酔いのせいではないでしょう。
「まずは今回の成果だが、羽金から大体は聞いている。植物の回収は失敗したんだろ?」
「……はい。竜巻に飛ばされてしまって、それを掴もうとして緋色さんも飛ばされてしまいました」
 大葉部長が申し訳なさそうに城山先生へと報告します。しかし、悪いのは私です。無闇に体を起こしたから飛ばされてしまったのです。それなのに、みんなそれを自分のミスかのように悔いています。それは城山先生も一緒でした。
「あの植物は研究者が品種改良に苦心し、大金を使って地球から火星に送った物だ。ただ、今回はそれが原因で事故が起こってしまった。私が釘を刺しすぎたせいだ。すまない」
「いえ、私の力が至らなかったばかりに、緋色さんまで犠牲にしてしまいました。もっと、もっといい方法があったはずです」
 あのときああしていればという後悔が尽きないのでしょう。
 そんな大葉部長の姿が、自分の不甲斐なさを増長させ、胸が苦しくなります。
 そんな私たちの姿を見てか、城山先生は、らしくもなく、明るく切り出しました。
「とまあ、反省はここまでだ。もっといい方法なんてありはしない。なんたって、今回の結果は最前以上の最高だからな。まあ、話が胡散臭いのは仕方がないが」
 そう言って、城山先生は私を見ました。それはもう期待しているぞという眼差しで。
「羽金、これはお前から話せ」
「わ、私ですか?」
「お前の成果だ。お前に話す権利がある」
「わ、分かりました……」
 そう言われたからには仕方がありません。私直々にことのあらましを話すとしましょう。
「竜巻で飛ばされた先でですねぇ、私、火星人を見つけたんです!」
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