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9章 次はその手を掴む
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私の言葉を初めて聞いた部員のみんなは、目を見開き驚いています。
「火星人って、そんなわけ……」
私に反論しようと立ち上がった彦君ですが、転送酔いがまだ治ってないようで、すぐに椅子へと沈んでいきました。それでも、彦君は反論を諦めたわけではないようです
「いるわけないだろ。どれだけ探してると思うんだ。そんな運良く見つけれるわけがない。どこかで頭でも打ったんじゃないのか?」
「失礼な。この目でちゃんと見ました」
「目って、オートマーズでだろ。その目じゃない」
彦君には、ちゃんと突っ込まれてしまいました。転送酔いで辛いというのにずいぶんと余裕のようです。少し意地悪がしたくなります。
「そんな嫉妬されもねぇ。見たものは見たんだし」
そんな私たち1年生の喧嘩に大葉部長が入ってきました。ただし、私の援護にではなく彦君の援護にです。
「緋色さん、冗談とかではなく、本当に見たんですか?」
「はい! 間違いありません!」
「では、何かコンタクトはとりましたか?」
「コンタクト、ですか?」
大葉部長が言っているのは、もちろんコンタクトレンズのコンタクトではありません。火星人とのファーストコンタクトはうまくいったのかを聞いているのです。
「たすけてって言ってました」
城山先生と同じ場所に食いついてきたのは、まだ調子がよくない彦君でした。
「言ってましたって、なんでお前に分かるんだよ」
「……日本語だったし」
「日本語って……。やっぱり頭打っておかしくなったんだろ」
今度も失礼なと怒りたいところではあったのですが、実際、火星人と邂逅したとき、オートマーズは停止寸前のボロボロでした。頭を打つどころか腕まで千切れていたのです。何かしらの不具合が起きて幻覚や幻聴のようなことが起きていた可能性もあります。それを私は否定できません。
黙り込んでしまった私を見かねてか、城山先生が話しを引き継いでくれました。
「まあ、ここで議論していても片づくような問題じゃない。だから、行って実際に見てくればいいんだ。お前たちにはそれができるだろ」
私たちには、地球と火星を簡単に行き来することができるオートマーズがあるのです。この二つの惑星の隔たりをここまで縮めてくれているのです。例え、暗く冷たい崖の底だとしても大した距離ではないはずです。
「羽金、植物の箱はお前と一緒に飛ばされたんだよな?」
「はい」
「じゃあ、近くに落ちていなかったか?」
「ずっと抱えてたんで、一緒に崖の底に……」
「ちょうどいい。羽金が見た火星人を確認してくるついでに植物も回収してこい」
城山先生の言葉に先輩2人は少し難しい顔をしました。
ここは、私がもう一押ししなければならないようです。
「大丈夫です! 落ちはしましたけど、衝撃から守ったんで、中の植物は無事だと思います!」
竜巻に飲み込まれても守りきったのです。崖に落ちたときは思わず落としてしまいましたが、その程度で中の植物がダメになることはないでしょう。
私はちゃんと役目を果たしたと、自分を誇っています。みんなから私への賞賛の言葉を期待していたのですが、私が想像していた反応とは違い、城山先生なんて頭を抱えていました。
「努力に値段は付けれないが、お前が身を挺して守った植物よりもオートマーズの方が高価なんだからな」
「……へ?」
「オートマーズはいくらでも代えが利くが、高価な物に変わりはない。一応、生身の体と同じぐらい大事に扱えよ」
「す、すいません……」
私は勝手に、オートマーズのことを無茶をしてもいい体だと思いこんでいました。どうしてもゲームの感覚が残ってしまっていたのでしょう。それなのに、崖に落ちたときは生身の体と勘違いしてパニックを起こしてしまいました。恥ずかしいばかりです。
「火星人って、そんなわけ……」
私に反論しようと立ち上がった彦君ですが、転送酔いがまだ治ってないようで、すぐに椅子へと沈んでいきました。それでも、彦君は反論を諦めたわけではないようです
「いるわけないだろ。どれだけ探してると思うんだ。そんな運良く見つけれるわけがない。どこかで頭でも打ったんじゃないのか?」
「失礼な。この目でちゃんと見ました」
「目って、オートマーズでだろ。その目じゃない」
彦君には、ちゃんと突っ込まれてしまいました。転送酔いで辛いというのにずいぶんと余裕のようです。少し意地悪がしたくなります。
「そんな嫉妬されもねぇ。見たものは見たんだし」
そんな私たち1年生の喧嘩に大葉部長が入ってきました。ただし、私の援護にではなく彦君の援護にです。
「緋色さん、冗談とかではなく、本当に見たんですか?」
「はい! 間違いありません!」
「では、何かコンタクトはとりましたか?」
「コンタクト、ですか?」
大葉部長が言っているのは、もちろんコンタクトレンズのコンタクトではありません。火星人とのファーストコンタクトはうまくいったのかを聞いているのです。
「たすけてって言ってました」
城山先生と同じ場所に食いついてきたのは、まだ調子がよくない彦君でした。
「言ってましたって、なんでお前に分かるんだよ」
「……日本語だったし」
「日本語って……。やっぱり頭打っておかしくなったんだろ」
今度も失礼なと怒りたいところではあったのですが、実際、火星人と邂逅したとき、オートマーズは停止寸前のボロボロでした。頭を打つどころか腕まで千切れていたのです。何かしらの不具合が起きて幻覚や幻聴のようなことが起きていた可能性もあります。それを私は否定できません。
黙り込んでしまった私を見かねてか、城山先生が話しを引き継いでくれました。
「まあ、ここで議論していても片づくような問題じゃない。だから、行って実際に見てくればいいんだ。お前たちにはそれができるだろ」
私たちには、地球と火星を簡単に行き来することができるオートマーズがあるのです。この二つの惑星の隔たりをここまで縮めてくれているのです。例え、暗く冷たい崖の底だとしても大した距離ではないはずです。
「羽金、植物の箱はお前と一緒に飛ばされたんだよな?」
「はい」
「じゃあ、近くに落ちていなかったか?」
「ずっと抱えてたんで、一緒に崖の底に……」
「ちょうどいい。羽金が見た火星人を確認してくるついでに植物も回収してこい」
城山先生の言葉に先輩2人は少し難しい顔をしました。
ここは、私がもう一押ししなければならないようです。
「大丈夫です! 落ちはしましたけど、衝撃から守ったんで、中の植物は無事だと思います!」
竜巻に飲み込まれても守りきったのです。崖に落ちたときは思わず落としてしまいましたが、その程度で中の植物がダメになることはないでしょう。
私はちゃんと役目を果たしたと、自分を誇っています。みんなから私への賞賛の言葉を期待していたのですが、私が想像していた反応とは違い、城山先生なんて頭を抱えていました。
「努力に値段は付けれないが、お前が身を挺して守った植物よりもオートマーズの方が高価なんだからな」
「……へ?」
「オートマーズはいくらでも代えが利くが、高価な物に変わりはない。一応、生身の体と同じぐらい大事に扱えよ」
「す、すいません……」
私は勝手に、オートマーズのことを無茶をしてもいい体だと思いこんでいました。どうしてもゲームの感覚が残ってしまっていたのでしょう。それなのに、崖に落ちたときは生身の体と勘違いしてパニックを起こしてしまいました。恥ずかしいばかりです。
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