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疾走する紅蓮の導き
炎と風の反逆者 32
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殺さないことを掟とするこの組織には、居てはいけない能力なのだろう。
「それは分かったが、俺にどうしろって言うんだ?」
「火炎放射器には使う人間が必要だろ?」
俺に自分の力を制御しろと言いたいのか。
「それはいいが、俺の力は風だぞ。炎を操る能力じゃないんだが……」
「それは知っている」
人違いかと思ったが、そうではないようだ。
よかった。もし、人違いでした、なんてことになったらどうなるか想像もつかない。
「それじゃあ、何で俺なんだ?」
「君は風を操ることに長けているんだろ?」
「まあ、そうだが」
「では、問題ない」
「いや、問題あるだろ」
俺にどうしろと言うのだろうか。
彼女は意外そうに首を傾げているが、俺にはさっぱり分からないので、彼女に真似て俺も首を傾げてみた。
「風で私の炎を操れるだろ?」
「そんなこと……」
否定しようとしたが、それでは嘘になる。
風で小さな篝火を大きな火柱にしたことがあるので、無理とは言い切れない。
しかし、この場合、威力を強めただけだ。
結論から言うと、風は炎に捕食される関係なのだ。風が支配するなんてことはない。
しかし、支配は出来なくとも、誘導するとこぐらいはできるのではないだろか。餌で獲物を引き寄せるように、風で炎を引き寄せることが出来るのではないのだろうか。
どの道、やってみないことには何とも言えない。
「一度でいいんだ。試してはくれないだろうか?」
そう言って、手を握られ、顔は目の前まで近づいてきた。
「試すぐらいなら、何度でも構わないぞ」
「本当か?」
さらに顔が近づいてきた。
鼻もぶつかりそうな距離。相手の息遣いさえ聞こえてくる。
「も、もちろん」
逃げることも、頷くこともできない俺にはそう答えるしかなかった。
「ありがとう」
今日で一番の笑顔だった。
本来なら注視できないレベルなのだが、ここまで顔を近づけられると視線を逸らすこともできない。
「あ、あの……その……」
なんて言えばいいんだ。まったく言葉が思い浮かばない。こういう場面を経験していないからか。それとも目の前の女性が狂おしいほど美人だからか。おそらく、答えは両方ともだろう。
「す、すまない」
彼女は俺が言いたいことが分かったのか、慌てて俺の手を放し、顔を背けた。
彼女も自分のしていた行為に、今更、恥ずかしくなったのだろう。しかし、なぜ俺はこんなにも名残惜しい気分になっているのだろうか。
「きょ、今日は疲れただろ。先にシャワーを浴びて休むといい。ベッドはもちろん使っていいぞ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
俺は熱い顔を気取られないように、急いで浴室へと向かった。
雑念を洗い流すように頭からシャワーを浴びていると、浴室を隔てるドアから「着替えは置いておくからな」とそう言われた。
「それは分かったが、俺にどうしろって言うんだ?」
「火炎放射器には使う人間が必要だろ?」
俺に自分の力を制御しろと言いたいのか。
「それはいいが、俺の力は風だぞ。炎を操る能力じゃないんだが……」
「それは知っている」
人違いかと思ったが、そうではないようだ。
よかった。もし、人違いでした、なんてことになったらどうなるか想像もつかない。
「それじゃあ、何で俺なんだ?」
「君は風を操ることに長けているんだろ?」
「まあ、そうだが」
「では、問題ない」
「いや、問題あるだろ」
俺にどうしろと言うのだろうか。
彼女は意外そうに首を傾げているが、俺にはさっぱり分からないので、彼女に真似て俺も首を傾げてみた。
「風で私の炎を操れるだろ?」
「そんなこと……」
否定しようとしたが、それでは嘘になる。
風で小さな篝火を大きな火柱にしたことがあるので、無理とは言い切れない。
しかし、この場合、威力を強めただけだ。
結論から言うと、風は炎に捕食される関係なのだ。風が支配するなんてことはない。
しかし、支配は出来なくとも、誘導するとこぐらいはできるのではないだろか。餌で獲物を引き寄せるように、風で炎を引き寄せることが出来るのではないのだろうか。
どの道、やってみないことには何とも言えない。
「一度でいいんだ。試してはくれないだろうか?」
そう言って、手を握られ、顔は目の前まで近づいてきた。
「試すぐらいなら、何度でも構わないぞ」
「本当か?」
さらに顔が近づいてきた。
鼻もぶつかりそうな距離。相手の息遣いさえ聞こえてくる。
「も、もちろん」
逃げることも、頷くこともできない俺にはそう答えるしかなかった。
「ありがとう」
今日で一番の笑顔だった。
本来なら注視できないレベルなのだが、ここまで顔を近づけられると視線を逸らすこともできない。
「あ、あの……その……」
なんて言えばいいんだ。まったく言葉が思い浮かばない。こういう場面を経験していないからか。それとも目の前の女性が狂おしいほど美人だからか。おそらく、答えは両方ともだろう。
「す、すまない」
彼女は俺が言いたいことが分かったのか、慌てて俺の手を放し、顔を背けた。
彼女も自分のしていた行為に、今更、恥ずかしくなったのだろう。しかし、なぜ俺はこんなにも名残惜しい気分になっているのだろうか。
「きょ、今日は疲れただろ。先にシャワーを浴びて休むといい。ベッドはもちろん使っていいぞ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
俺は熱い顔を気取られないように、急いで浴室へと向かった。
雑念を洗い流すように頭からシャワーを浴びていると、浴室を隔てるドアから「着替えは置いておくからな」とそう言われた。
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