炎と風の反逆者

小森 輝

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小さすぎる世界への抵抗

炎と風の反逆者 55

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 顔も拭き、洗面所を出ると、命がベッドの上で枕に顔を埋めていた。また逆の構図だな。
「どうしたんだ? そんな顔して」
「失念だった。忘れてくれ」
 忘れてほしいのは、間違いなく寝起きの幼児退行だろうな。
「忘れてほしいのなら構わないけど、ああいうのもかわいいと思うぞ」
「か、かわ……」
 命は完全に顔を枕に埋め込んでしまった。
「それより、時間はいいのか?」
「時間?」
 命の視線は、俺から壁掛けの時計へと移動していった。時刻はもう9時を回っている。
「もうこんな時間か! 準備しろ、誘」
 俺はもう準備できている。命はまだパジャマ姿なのでそっちの方が急がないといけないだろうな。
 命は急いでいつものスーツに着替えようと上着を脱ごうとする。
「ストップ、ストップ」
 慌てて止める。
 危なかった。幸いにもヘソ辺りで止まってくれた。セ、セーフなのか?
 これは前言撤回、命はまだまだ寝ぼけている。
「俺は外で待ってるから、準備が出来たら出てきてくれ」
「あ、ああ。分かった」
 命は不思議そうに了解した。願わくは、着替え終わるころには元に戻っていてくれ。
 部屋を出て、扉の前で佇んでいたが、周りは慌ただしく走っている人たちばかりだ。今日は転覆を図る大事な日だ。慌ただしくもなるだろう。ただ、この組織のリーダー以外は。
「待たせたな」
 勢いよく開かれた扉からは、スーツをビシッと着たいつも通りの命が現れた。
「急ぐぞ、誘」
「急ぐって言っても、お姫様抱っことかはなしだぞ」
「してほしいのなら、しようか?」
「遠慮するよ」
 急ぐと言っても、早歩き程度だ。まったく問題ない。
 迷うことなくたどり着いたのは、昨日、幹部たちと挨拶を交わした部屋だ。
 一瞬の躊躇もなく命が扉を開くと、部屋の中から外以上の喧噪が聞こえてくる。
 とても忙しそうで、今日は命への挨拶もないようだ。
「あ、やっと来ましたか。まだ来ないようなら呼ぼうかと思っていたところですよ」
 伝宝さんがこちらを見てニコニコ、いやニヤニヤしている。伝宝さんは俺たちの永遠の宿敵になるのだろうな。
 しかし、命いじりもすぐにやめて再び念話を開始している。見れば、ほかのメンバーも何やら忙しそうにしている。
「な、なあ、邪魔になるんじゃないのか?」
「リーダーがどこにいろうが邪魔には思わないだろう」
 この部屋の上座に座り、隣の席に座れと椅子を叩いている。
 遠慮なく座るが、居心地が悪いことには変わりない。
 命はどうしているのかと思い見てみると、椅子を揺り椅子のように揺らしながら寛いでいる。流石、リーダーといった威厳なのだろうが、俺には暇を持て余しているようにしか見えないが。
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