炎と風の反逆者

小森 輝

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小さすぎる世界への抵抗

炎と風の反逆者 56

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「なあ、同時なら時間とか決まっているのか?」
「日本時間で11時だ」
 もうすぐ10時を回るころだ。
「こんなところでのんびりしていて、大丈夫なのか?」
「のんびりとは失礼な。みんな忙しくしてるじゃないか」
 確かに、みんな忙しくしているが、時間が時間だ。
「俺たちも戦いに参加するのなら、そろそろ向かわないといけないんじゃないのか?」
「今から向かっていては、予定を大幅に早めてしまうぞ?」
「まあ、命のあのロケットみたいな飛行能力があれば、ある程度の距離ならすぐに到着するだろうけど、そのあとの戦闘のことまで考えるのなら、体力は温存しておいた方がいいんじゃないのか?」
 命は少し考えたのちに首を捻った。
「そんなに遠くないだけなんだけどな……」
「そうなのか?逃げるときは結構、走っていたと思うんだけど……」
「それはVの字みたいに迂回しただけだよ」
 Vの字……
 書き始めがクレイドルで、描き終わりがフラウロスだということか。
「それってかなり近くないか?」
「ああ、この山を下りればすぐだよ」
 すごい目と鼻の先じゃないか。
「よくばれなかったな」
「向こうに何人もスパイが紛れ込んでいるからな。情報操作なぞ容易いさ」
 おお、命がリーダーっぽいことを言っている。
「でも、その近さなら時間ぎりぎりまでここに居ても問題ないな」
「ああ、そういうことだ」
 教えてくれたなら、もう少し命を寝かせてやれたのにな。
「あんまり急ぐ必要なかったな」
「部下が忙しくしている手前、私が寝ているなんて示しがつかないだろ」
 命は誰にも聞こえないように小声で言った。しかし、この話、一番聞かれたくない伝宝さんには筒抜けですよ。
「しかし、こうなってしまっては暇だな」
「そうだな……教えてないこととかあるかな……」
 2人して悩む。
「明日が決戦の日でした」みたいな衝撃の事実が戦闘中に発覚なんてやめてほしい。
「作戦とかないのか?」
 これは重要なことを聞き忘れるところだった。
「私と誘は別動隊だからな。連絡を受けて、苦戦しているところで臨機応変に対応するとしか言いようがないからな」
「なんと……行き当たりばったりな」
「仕方ないさ。私たちは予定外のイレギュラーなんだから」
 俺も一昨日、此方に来たばかりだし、命も本来は戦いに参加しない予定だったようだし、仕方ないと言えば仕方ないか。
「まあ、そっちの方が気楽でいいか」
 作戦の根幹に関わることなんて、プレッシャーでどうにかなってしまいそうだ。
「ほかに何かあるかな……」
「大事なこと、大事なこと……」
 再び2人で悩む。
「当然、人を殺してはだめだぞ」
「大丈夫、肝に銘じているよ」
「あとは……」
 何かありそうな気がすごくするんだよな。
「う~ん……何も思い浮かばないな……」
「ないんじゃないか? たぶん」
 そのたぶんが不安なんだよ。
「たとえあったとしても、なるようになるさ」
 その屈託のない笑みも、今はとても不安要素だ。
「考えるのはその辺にして、そろそろ準備したら?」
 悩める2人の前に伝宝さんがやってきた。
「もうそんな時間か」
 時間は10時半だ。いい頃合いだろう。
「それじゃあ、行くか、誘」
「おう!」
 命と一緒に立ち上がった。伝え忘れがありそうで不安だが、まあ、命と一緒なら万事解決するだろう。
「さっさと出てってちょうだい。邪魔なんだから」
 手で払うように俺たちを追い出そうとしたが、何かを思い出してすぐにやめた。
「ん? どうしたんだ?」
「そうそう、戦闘中はずっと念話繋いどくから、あんまりイチャイチャするんじゃないぞ。お2人さん」
「イチャ……」
 命の顔が一気に赤く染めあがった。
「はいはい。それじゃあ頑張ってきてね」
「ちょ、ちょっと……」
 俺と命は伝宝さんに部屋の外へ押し出され、そして、扉まで閉められてしまった。まさに閉め出しを食らってしまったというわけだ。
「あいつ、今度会ったら、ただじゃおかないからな」
「ま、まあまあ」
 苦笑いを浮かべながら命を宥める。まったく、伝宝さんは無駄なことをしてくれる。今から一緒に行動する俺の身も考えてほしい。
「行くぞ、誘。ついて来い!」
「お、おう」
 一気に機嫌を悪くされたようだ。先が思いやられる。
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