56 / 70
小さすぎる世界への抵抗
炎と風の反逆者 56
しおりを挟む
「なあ、同時なら時間とか決まっているのか?」
「日本時間で11時だ」
もうすぐ10時を回るころだ。
「こんなところでのんびりしていて、大丈夫なのか?」
「のんびりとは失礼な。みんな忙しくしてるじゃないか」
確かに、みんな忙しくしているが、時間が時間だ。
「俺たちも戦いに参加するのなら、そろそろ向かわないといけないんじゃないのか?」
「今から向かっていては、予定を大幅に早めてしまうぞ?」
「まあ、命のあのロケットみたいな飛行能力があれば、ある程度の距離ならすぐに到着するだろうけど、そのあとの戦闘のことまで考えるのなら、体力は温存しておいた方がいいんじゃないのか?」
命は少し考えたのちに首を捻った。
「そんなに遠くないだけなんだけどな……」
「そうなのか?逃げるときは結構、走っていたと思うんだけど……」
「それはVの字みたいに迂回しただけだよ」
Vの字……
書き始めがクレイドルで、描き終わりがフラウロスだということか。
「それってかなり近くないか?」
「ああ、この山を下りればすぐだよ」
すごい目と鼻の先じゃないか。
「よくばれなかったな」
「向こうに何人もスパイが紛れ込んでいるからな。情報操作なぞ容易いさ」
おお、命がリーダーっぽいことを言っている。
「でも、その近さなら時間ぎりぎりまでここに居ても問題ないな」
「ああ、そういうことだ」
教えてくれたなら、もう少し命を寝かせてやれたのにな。
「あんまり急ぐ必要なかったな」
「部下が忙しくしている手前、私が寝ているなんて示しがつかないだろ」
命は誰にも聞こえないように小声で言った。しかし、この話、一番聞かれたくない伝宝さんには筒抜けですよ。
「しかし、こうなってしまっては暇だな」
「そうだな……教えてないこととかあるかな……」
2人して悩む。
「明日が決戦の日でした」みたいな衝撃の事実が戦闘中に発覚なんてやめてほしい。
「作戦とかないのか?」
これは重要なことを聞き忘れるところだった。
「私と誘は別動隊だからな。連絡を受けて、苦戦しているところで臨機応変に対応するとしか言いようがないからな」
「なんと……行き当たりばったりな」
「仕方ないさ。私たちは予定外のイレギュラーなんだから」
俺も一昨日、此方に来たばかりだし、命も本来は戦いに参加しない予定だったようだし、仕方ないと言えば仕方ないか。
「まあ、そっちの方が気楽でいいか」
作戦の根幹に関わることなんて、プレッシャーでどうにかなってしまいそうだ。
「ほかに何かあるかな……」
「大事なこと、大事なこと……」
再び2人で悩む。
「当然、人を殺してはだめだぞ」
「大丈夫、肝に銘じているよ」
「あとは……」
何かありそうな気がすごくするんだよな。
「う~ん……何も思い浮かばないな……」
「ないんじゃないか? たぶん」
そのたぶんが不安なんだよ。
「たとえあったとしても、なるようになるさ」
その屈託のない笑みも、今はとても不安要素だ。
「考えるのはその辺にして、そろそろ準備したら?」
悩める2人の前に伝宝さんがやってきた。
「もうそんな時間か」
時間は10時半だ。いい頃合いだろう。
「それじゃあ、行くか、誘」
「おう!」
命と一緒に立ち上がった。伝え忘れがありそうで不安だが、まあ、命と一緒なら万事解決するだろう。
「さっさと出てってちょうだい。邪魔なんだから」
手で払うように俺たちを追い出そうとしたが、何かを思い出してすぐにやめた。
「ん? どうしたんだ?」
「そうそう、戦闘中はずっと念話繋いどくから、あんまりイチャイチャするんじゃないぞ。お2人さん」
「イチャ……」
命の顔が一気に赤く染めあがった。
「はいはい。それじゃあ頑張ってきてね」
「ちょ、ちょっと……」
俺と命は伝宝さんに部屋の外へ押し出され、そして、扉まで閉められてしまった。まさに閉め出しを食らってしまったというわけだ。
「あいつ、今度会ったら、ただじゃおかないからな」
「ま、まあまあ」
苦笑いを浮かべながら命を宥める。まったく、伝宝さんは無駄なことをしてくれる。今から一緒に行動する俺の身も考えてほしい。
「行くぞ、誘。ついて来い!」
「お、おう」
一気に機嫌を悪くされたようだ。先が思いやられる。
「日本時間で11時だ」
もうすぐ10時を回るころだ。
「こんなところでのんびりしていて、大丈夫なのか?」
「のんびりとは失礼な。みんな忙しくしてるじゃないか」
確かに、みんな忙しくしているが、時間が時間だ。
「俺たちも戦いに参加するのなら、そろそろ向かわないといけないんじゃないのか?」
「今から向かっていては、予定を大幅に早めてしまうぞ?」
「まあ、命のあのロケットみたいな飛行能力があれば、ある程度の距離ならすぐに到着するだろうけど、そのあとの戦闘のことまで考えるのなら、体力は温存しておいた方がいいんじゃないのか?」
命は少し考えたのちに首を捻った。
「そんなに遠くないだけなんだけどな……」
「そうなのか?逃げるときは結構、走っていたと思うんだけど……」
「それはVの字みたいに迂回しただけだよ」
Vの字……
書き始めがクレイドルで、描き終わりがフラウロスだということか。
「それってかなり近くないか?」
「ああ、この山を下りればすぐだよ」
すごい目と鼻の先じゃないか。
「よくばれなかったな」
「向こうに何人もスパイが紛れ込んでいるからな。情報操作なぞ容易いさ」
おお、命がリーダーっぽいことを言っている。
「でも、その近さなら時間ぎりぎりまでここに居ても問題ないな」
「ああ、そういうことだ」
教えてくれたなら、もう少し命を寝かせてやれたのにな。
「あんまり急ぐ必要なかったな」
「部下が忙しくしている手前、私が寝ているなんて示しがつかないだろ」
命は誰にも聞こえないように小声で言った。しかし、この話、一番聞かれたくない伝宝さんには筒抜けですよ。
「しかし、こうなってしまっては暇だな」
「そうだな……教えてないこととかあるかな……」
2人して悩む。
「明日が決戦の日でした」みたいな衝撃の事実が戦闘中に発覚なんてやめてほしい。
「作戦とかないのか?」
これは重要なことを聞き忘れるところだった。
「私と誘は別動隊だからな。連絡を受けて、苦戦しているところで臨機応変に対応するとしか言いようがないからな」
「なんと……行き当たりばったりな」
「仕方ないさ。私たちは予定外のイレギュラーなんだから」
俺も一昨日、此方に来たばかりだし、命も本来は戦いに参加しない予定だったようだし、仕方ないと言えば仕方ないか。
「まあ、そっちの方が気楽でいいか」
作戦の根幹に関わることなんて、プレッシャーでどうにかなってしまいそうだ。
「ほかに何かあるかな……」
「大事なこと、大事なこと……」
再び2人で悩む。
「当然、人を殺してはだめだぞ」
「大丈夫、肝に銘じているよ」
「あとは……」
何かありそうな気がすごくするんだよな。
「う~ん……何も思い浮かばないな……」
「ないんじゃないか? たぶん」
そのたぶんが不安なんだよ。
「たとえあったとしても、なるようになるさ」
その屈託のない笑みも、今はとても不安要素だ。
「考えるのはその辺にして、そろそろ準備したら?」
悩める2人の前に伝宝さんがやってきた。
「もうそんな時間か」
時間は10時半だ。いい頃合いだろう。
「それじゃあ、行くか、誘」
「おう!」
命と一緒に立ち上がった。伝え忘れがありそうで不安だが、まあ、命と一緒なら万事解決するだろう。
「さっさと出てってちょうだい。邪魔なんだから」
手で払うように俺たちを追い出そうとしたが、何かを思い出してすぐにやめた。
「ん? どうしたんだ?」
「そうそう、戦闘中はずっと念話繋いどくから、あんまりイチャイチャするんじゃないぞ。お2人さん」
「イチャ……」
命の顔が一気に赤く染めあがった。
「はいはい。それじゃあ頑張ってきてね」
「ちょ、ちょっと……」
俺と命は伝宝さんに部屋の外へ押し出され、そして、扉まで閉められてしまった。まさに閉め出しを食らってしまったというわけだ。
「あいつ、今度会ったら、ただじゃおかないからな」
「ま、まあまあ」
苦笑いを浮かべながら命を宥める。まったく、伝宝さんは無駄なことをしてくれる。今から一緒に行動する俺の身も考えてほしい。
「行くぞ、誘。ついて来い!」
「お、おう」
一気に機嫌を悪くされたようだ。先が思いやられる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる