炎と風の反逆者

小森 輝

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小さすぎる世界への抵抗

炎と風の反逆者 67

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「真登!」
 傷を負った俺やそれを心配する命よりも悲痛な声が上がった。
「マトちゃん!」
 もう1人の声も響き渡る。
 声の方向を見ると、紀彦と茜音が1カ所に集まっている。
 どうしたのかと思い、2人の方をよく見ると、紀彦が膝をついて透真さんを抱きかかえていた。
 透真さんの様子は、ここから見てもぐったりとしている。
 そして、頭からは血が……
 抜かった。無我夢中でサクセサーを使ったせいで、力の加減を誤ってしまった。打ち所が悪ければ最悪……
「何で……」
 茜音は涙を浮かべ、口を手で押さえて声を押し殺している。
 誰が見ても事故に変わりないのだが、俺がやったことに違いはない。
 俺が……この手で……
「なんで……どうして……真登が何したって言うんだよ」
 紀彦は自分を悔いているのか、歯を食いしばっている。
「お前が……お前のせいで……」
 紀彦が俺を睨む。その目には、嘗ての優しさはなく、憎悪だけに染められていた。
「お前なんて、もう親友でもなんでもない……」
 違うんだ。俺はただ、透真さんを助けようとしただけで……
 しかし、思いは言葉になってくれず、口からはかすれた息しかでない。
 心は押しつぶされ、体は鉛のように動かない。喉は乾ききっていて、吐き気さえ覚えるほどだ。
 こうなることを俺は考えないようにしていた。
 こうなることを俺は予見していた。
「この……」
 その一言だけで俺は崩壊する。
 もう外の喧噪さえ聞こえない。その一言を聞くまいと、脳が無意識に聴覚をシャットダウンしている。
 それでも、視線だけは紀彦の口から離れない。その動きから逃れられない。
 紀彦の口が動く。音は聞こえなくとも、動きだけで恐れていたその言葉は読み取れてしまう。
 「う」それは俺が最も恐れていた言葉。
 「ら」それは俺が今まで考えないようにしていた言葉。
 「ぎ」それは俺を現実から遠ざけていく。
 「り」それは俺の理性を壊していく。
 「も」それは俺の心を押し潰す。
 「の」そして、俺の視界は白く遠い世界へと消えて行った。
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