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そう言いながら体をクネクネとさせている姿は本当に気持ち悪い。心の底から早く消えてほしいと思う。
「しかし、まあ、案外、私が矯正しなくても、君はこちら側に進んでいるんじゃないのかな?」
「こちら側って……」
「もちろん、同性愛の世界さ!」
悪魔が両手を広げ、胸の中に飛び込んでおいでと言わんばかりの顔を見せる。ただし、僕が飛び込むなんてことはあり得ない。触れることすら嫌なのに、こんな変態全裸男の体に抱きつくなんて、想像もしたくない。
「そんなに嫌な顔をするなよ。お尻に物を入れておいて、同性愛の素質がないなんて言わせないよ」
僕が嫌な顔をしたのは、この悪魔のことが気持ち悪いと思ったからであって、同性愛へ嫌悪感を示した訳ではない。
そう、この悪魔が言うように、僕はそこまで同性愛を嫌ってはいないのではないのだろうか。
「試しに、その菊臣君と付き合ってみたらいいじゃないか」
「なっ……お前、そんな簡単に言うなよ!」
「いいじゃないか。お試しお試し」
「そんな軽い気持ちで答えを出せるかよ。そんなの菊臣だって……」
「そうかな? 喜んでくれるんじゃないかな? お試しであっても付き合ってくれるんだから、うれしいに決まってるでしょ」
「そうかな……」
「そうだとも! 同性愛は最上級の愛の形! 愛し合えるのなら、どんな歪な形だって受け入れてくれるはずだよ」
同性愛がそもそも歪な愛の形なのではないのかという言葉は胸の中に止めておいた。おそらく、これが悪魔がずっと言っている偏見というやつなのだろう。いったいいつから、僕たち人間は偏見という見方をしてしまうようになったのだろう。
「私がどうこうして矯正するよりも、菊臣君と接して見方が変わればいいんじゃないのかな? もし、変わらなければ、そこで別れてまた友達に戻ればいいんだし」
「そんな別れるの前提なんて……」
「不純だって言いたいのかい? それなら、不純はこの世にたくさん蔓延っているよ。体だけの関係だって、たくさんあるからね。それより、どうするんだい? 菊臣君の告白の答えは。先延ばしにするのかい? それとも……」
先延ばしにして、菊臣が悩み苦しむのは僕が望むことではない。
「分かった……。お試しってやつで……」
「おぉ! やっぱり素質があるじゃないか!」
「素質とか言うなよ! 菊臣だからってだけで……。それに、菊臣がそれは嫌だって言ったら、なしだからな!」
「分かってる分かってる。私はなま暖かい目で見守っておくよ」
この悪魔の口車に乗っているようだが、しかし、もし菊臣と付き合って、一緒に遊んだり買い物をしたりするのを想像すると、案外いつも通りなのかもしれないと思うようになった。そんなに特別なことではないのではないのかと。
しかし、付き合うとはどういうことなのか、このときの僕はまだ知らなかったんだ。
「しかし、まあ、案外、私が矯正しなくても、君はこちら側に進んでいるんじゃないのかな?」
「こちら側って……」
「もちろん、同性愛の世界さ!」
悪魔が両手を広げ、胸の中に飛び込んでおいでと言わんばかりの顔を見せる。ただし、僕が飛び込むなんてことはあり得ない。触れることすら嫌なのに、こんな変態全裸男の体に抱きつくなんて、想像もしたくない。
「そんなに嫌な顔をするなよ。お尻に物を入れておいて、同性愛の素質がないなんて言わせないよ」
僕が嫌な顔をしたのは、この悪魔のことが気持ち悪いと思ったからであって、同性愛へ嫌悪感を示した訳ではない。
そう、この悪魔が言うように、僕はそこまで同性愛を嫌ってはいないのではないのだろうか。
「試しに、その菊臣君と付き合ってみたらいいじゃないか」
「なっ……お前、そんな簡単に言うなよ!」
「いいじゃないか。お試しお試し」
「そんな軽い気持ちで答えを出せるかよ。そんなの菊臣だって……」
「そうかな? 喜んでくれるんじゃないかな? お試しであっても付き合ってくれるんだから、うれしいに決まってるでしょ」
「そうかな……」
「そうだとも! 同性愛は最上級の愛の形! 愛し合えるのなら、どんな歪な形だって受け入れてくれるはずだよ」
同性愛がそもそも歪な愛の形なのではないのかという言葉は胸の中に止めておいた。おそらく、これが悪魔がずっと言っている偏見というやつなのだろう。いったいいつから、僕たち人間は偏見という見方をしてしまうようになったのだろう。
「私がどうこうして矯正するよりも、菊臣君と接して見方が変わればいいんじゃないのかな? もし、変わらなければ、そこで別れてまた友達に戻ればいいんだし」
「そんな別れるの前提なんて……」
「不純だって言いたいのかい? それなら、不純はこの世にたくさん蔓延っているよ。体だけの関係だって、たくさんあるからね。それより、どうするんだい? 菊臣君の告白の答えは。先延ばしにするのかい? それとも……」
先延ばしにして、菊臣が悩み苦しむのは僕が望むことではない。
「分かった……。お試しってやつで……」
「おぉ! やっぱり素質があるじゃないか!」
「素質とか言うなよ! 菊臣だからってだけで……。それに、菊臣がそれは嫌だって言ったら、なしだからな!」
「分かってる分かってる。私はなま暖かい目で見守っておくよ」
この悪魔の口車に乗っているようだが、しかし、もし菊臣と付き合って、一緒に遊んだり買い物をしたりするのを想像すると、案外いつも通りなのかもしれないと思うようになった。そんなに特別なことではないのではないのかと。
しかし、付き合うとはどういうことなのか、このときの僕はまだ知らなかったんだ。
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