まさか魔王が異世界で

小森 輝

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5 魔王、戦う

まさか魔王が異世界で 20

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 自分が弱いことを認識した俺は、ミラの言いつけを守り、森の奥へは行かず、入り口周辺でのレベル上げを決めた。
「パワースラッシュ! パワースラッシュ!」
 先ほど逃げられた魔物と同じ種類のイノシシ型の魔物と戦っているのだが、相変わらず、攻撃は効いていない。
「やっぱり、別の場所の方が……」
「いいや、この程度の魔物を倒せなければ、どこへ行っても同じだ。こいつを倒せるだけの力をここで……」
 何度も切りつけるのだが、言葉通り歯が立たない。
 そのうち、俺にもミラにも攻撃できないということを理解した魔物は、先ほどと同じように逃げていった。
「くっそ……また逃げられた。後少しだったのに……」
「それは……どうかな……」
 障壁越しに見ていたミラは困り顔を見せていた。
 俺だって分かっているんだ。後少しどころではなく、ダメージなんて与えられていなかったことぐらい。相変わらず、剣に血はついていないし、モンスターを倒せることもない。しかし、これでいいのだ。
「ふっ……これで俺も着実に強くなっているはずだ」
「いや、モンスターを倒していないから経験値は入っていないはずだけど……」
「甘いな、小娘。モンスターを倒すことだけが強くなる方法ではない。こうやって、何度もスキルを使い、何度も剣を振るうことで熟練度が上がって行くものだ」
 俺が倒せないのにただ無意味に魔物を殴っていたわけではない。こうやって殴ることで、スキルや剣を扱う能力が上達して行くものだ。しかも、動きも攻撃もしない練習用のサンドバックを殴っていたわけではない。生きた敵、攻撃も防御も回避もしてくる敵を殴っていたのだ。これは熟練度の上達も期待できる。
「それは技術であって、レベルアップで筋力が上がらない以上、あっても仕方ないものじゃないかな……」
「知らないのか? 剣とは叩き斬るものじゃない。剣の達人は無駄な力を一切入れず、物体のつなぎ目に刃を沿うようにして入れることで、刃こぼれすることなく両断する事ができると。聞いたことはないか? 斬られたことに気づかず、数百メートル歩いたところで首が落ちたという話を」
「何それ、急に怖い話しないでよ」
「それだけ、技術というのは大事だという話だ。この子供の体であろうと、技術、熟練度さえ上げてしまえば、敵を倒すことは容易い」
 そう話しているうちに、次の魔物、またイノシシ型の同じ魔物が現れた。
「俺は何度も剣を振るい、この魔物に攻撃を当て続けた。そろそろ、熟練度は上がったはずだ。見ていろ。これが俺の初勝利だ!」
 そう意気込んで、イノシシ型の魔物の突進に合わせてスキルを叫ぶ。
「パワースラッシュ!」
 すると、剣はイノシシ型の魔物に直撃し吹き飛んだ。ただ、吹き飛んだのは俺の剣の攻撃にではなく、憑依影装の防御で吹き飛んだだけだ。
「両断できるとは、流石に思っていなかったが……。でも、ダメージは与えたはず!」
 剣を見てみるが、そこには魔物の毛すらついていない。新品のままだ。
「どうしてだ……」
 まだ熟練度が足りないと言うことだろうか。でも、もう俺の腕は乳酸が溜まってパンパンだ。
 そんな状態の中、危機は急に訪れた。
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