まさか魔王が異世界で

小森 輝

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6 アペルピシアという魔王

まさか魔王が異世界で 36

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「なかなかやるではないか小娘。だが、防御ばかりでは我を倒すことは出来ないぞ」
「くっ…………」
 今もまだ魔族に立ち向かっているのは、ミラだけだった。だが、状況はよくない。
「どうした? 伯爵である我、邪神モラクスに恐れをなして攻撃も出来ぬのか?」
 一方的に攻撃されて、ミラは防戦一方だ。防御魔法に優れたミラではそれもしょうがないのだが……。
「防御ばかりで飽いたな。そろそろ、終わりにしよう」
「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり!」
「防御魔法など、我のこの魔法の前には……うぐっ」
 魔族は魔法を使うのをやめ、突然空いた腹の大穴を押さえていた。
 あれは、ミラの魔法によるものだ。防御魔法を魔族の腹に展開し、肉を切り抜いたのだ。強力な防御魔法は内と外の空間を断絶させる。それが刃にもなると言うことを昨日の戦闘で確認したのだ。
「貴様ぁ……無駄な足掻きを……」
 無駄なんてことはない。ミラのあの一撃のおかげで、俺が間に合う。
「死して悔いるがいい!」
 魔族が魔法を発動させる。だが、もう遅い。
 魔力を収束させた黒い槍が、ミラに向かって放たれた。
 死を覚悟したミラは瞳を強く閉じる。
 しかし、ミラが魔力の槍に貫かれることはなかった。なぜなら、俺が素手で消し飛ばしてしまったから。
「弱い者をいたぶって弄ぶなど、人間のような真似をしてそんなに楽しいか? あぁ、そうか、伯爵なんて人間の貴族の真似事か。低俗だな」
「貴様、どこから湧いて出てきた」
「どこから? そうだな。強いて言うなら、異なる世界からだ」
「異なる世界など、あり得ない。ただの人間が……ただの……なんだ、その魔力は。明らかに人の域を越えている。それは魔族の……魔王に匹敵する魔力……」
 魔族の表情が、どんどん曇っていき、絶望の表情へと変わっていく。
「そう言えば、まだ名乗っていなかったな」
 今や、俺の姿は子供ではない。魔力量の増加に伴い、俺の体も成長し、ミラと同じぐらいの歳になっていた。
 まだ100%ではないが、それでも、魔王としての片鱗は宿している。
 だから、高らかに宣言しよう。
「我が名は魔王……いいや、今はこちらが相応しい。我が名は絶望王アペルピシア! さあ、我が絶望の糧となるがいい」
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