オレと猫と彼女の日常

柳乃奈緒

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小さな相棒

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✡✡✡✡✡✡ 

オレの名前は藤田誠二ふじたせいじ。30歳。
そして独身。彼女なし。

職業は、某大手企業の『カスタマーセンター』で
主にクレーム処理を、担当している。

自分でいうのもなんやけど…。

どこにでも居そうな、冴えない三十路男というわけやね。

毎日毎日…

ひたすら誤ってばかりの仕事に、少し限界を感じていた。

そんな時に。

同じ部署の独身男5人で、意気投合して
昨夜、勝手に自分たちで慰労会を決行した。

オレたちは、日頃から溜まっていた
愚痴をお互いに吐き出し合って
日付が変わるまで、飲み明かした。

そして、その結果。

オレには、小さなこの相棒が
もれなくついて来てしもたと言うわけやね。

とりあえず…

オレは、近所の動物病院をスマホで検索して
評価が、良さそうな病院にあたりをつけて
子猫を洗濯ネットに入れてから、
布製の手提げ袋へ入れて、家を出た。

『ミャーン……ミャーン』
「ちょっと我慢しててな。何か病気が無いか位は
診てもらっとかんとアカンからな」

鳴き声をあげている子猫に向かって
オレは、通じるわけがないってわかってても
一応病院へ行く理由を話して、我慢するように頼んでみた。

動物病院は、自宅から徒歩で10分位の場所にあった。
実家を出て、市内の母方の伯母夫婦の持ち家に
住むようになってから、猫も犬も飼ったことは
なかったので、こんなすぐ近所に動物病院が
あったなんて、気にもしていなかった。

《若林動物病院》

病院の看板を見上げて、オレは
そこで、何か決意のようなものを固めてから
病院の入り口に立った。

自動ドアが、開いて中へ入ると
すぐに受付があって、その受付には
優しそうな20代前半位の美少女が
オレを見てニッコリ微笑んでいた。

「おはようございます。…初めてなんですけど?」
「おはようございます。初めてなんですね? 
じゃぁ。この用紙に飼い主さまのお名前と
ご住所と連絡先に……えっと。猫ちゃんですね? 
猫ちゃんの、お名前を記入していただけますか?」

心地の良い、優しい声をした受付の彼女は
オレに用紙とボールペンを差し出して
わからないところは、空白で良いですよと付け加えると
また、ニコッと笑っていた。

記入し終えたオレは、受付の彼女に
そっと用紙を渡してから、待合のソファーに座って
診察を待った。正直…こういう場所は、いつ来ても緊張する。

案外、この子猫のやつのほうが、肝が座っていて 
鳴き声一つ上げずに、大人しく待っていた。

順番が来て診察室へ入ると
オレと同世代位の、男の獣医師が
オレから子猫を受け取った。

一通り診察を終えて、病気の心配は無かったが
ノミ取りと、回虫駆除の処置を勧められたので
オレは迷わずお願いした。

それから、感染症予防のワクチンは
子猫がまだ小さいので、2週間後にしましょうと言われた。

どうやらこの子猫は、まだ生後2ヶ月足らずで
性別は♂ということが、この診察であきらかになった。

動物病院を出て、一度家に帰ったオレは
近所に住んでいる伯母に連絡して
子猫を拾ってしまったことを、正直に話してみた。

「せいちゃんが子猫拾ったん? どれくらいの? 
小さいん? 今から見に行ってもええか?」
「良いんですか? 来てもらえるとオレも助かります。
ちっこいから、置いて買い物に出るのも
なんか心配やから。どないしようか、悩んでたんです」

オレが子猫のことを話すと…
伯母は、すぐに子猫を見に来ると言って電話を切った。

伯母のところにも猫が2匹おるから
子猫と聞いてジッとしてるわけが無い。
オレは、伯母が猫好きで良かったと
胸を撫で下ろしてから、子猫の飼育に
必要なものをリストアップして、スマホにメモしていた。

30分位したら、インターホンが鳴って
オレが出ると、伯母が息を切らして早く開けろと笑っていた。

「とりあえずや! 子猫用のミルクと缶詰。
それと猫のトイレにトイレの砂。あとは、
子猫は、冷やしたらアカンからこの湯たんぽ使い!」
「マジで? 陽子さんが来たら、オレが買いに
行こうと思ってたもん全部ある〰。
すごいわ〰! ありがとうございます〰」

オレが、何度も頭を下げてお礼を言って
財布を上着のポケットから、取り出して
お金を渡そうとしたら、伯母にすぐに付き返されてしまった。

「ええねん。ええねん。これから、なんぼでも
お金かかるからな。これは、うちとオトンからの
気持ちやと思って、もらっといて!」
「あ。伯父さんも帰ってるんですか? ほんまに
甘えてしもてええんですか? なんか…
ほんま、すんません。助かります。ありがとう」

『ミャーン……ミャー』

伯母に、オレがお礼を言うのと同時に。
子猫も伯母にすり寄って、甘えた声を出して鳴いたので
伯母がうれしそうに笑って、子猫を抱き上げて頬ずりしていた。

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